電気自動車(EV)を日本で普及させるために誤解を解消する【過去記事総まとめ】
こんばんは、@kojisaitojpです。昨年から電気自動車(EV)についての記事を書き続けてきましたが、気がついたら200記事近く(毎日更新なので当たり前ですが)書いていることに気づきました。
で、昨日の頭悪い記事に対する俺からの反論がこれ。
ガソリンスタンド感覚でEV充電を語るのは「加齢臭」?【それとも既得権益の温存?】 https://t.co/oJ1fg0RiwS— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 13, 2021
例えばこの記事は先日書いたものですが、「ガソリンスタンド感覚で充電に行く」という前提条件自体がおかしいという旨の内容です。
これに対して「集合住宅で充電器なんか設置できるわけねぇだろ、バカ!」などという誹謗中傷に近いコメントが飛んできたりもしましたが、「このブログの以前に書いた記事とか見て言ってくれよ」と思いました。
例えばですが「急速充電」と「普通充電」のそれぞれの適材適所について書いた記事がこれだったりします。
EVの急速充電と普通充電の違いとは?【基本は自宅で普通充電】
電気自動車(BEV)について語る際に充電の問題は避けて通れないのですが、「普通充電」と「急速充電」の違いやそれぞれどういうケースで使うべきなのかが日本では案外浸透していない傾向があります。そこで本日はそれぞれの充電方式の違いと、電気自動車の性能をフルに発揮させるためにはどのような充電方法が良いのか考えてみます。
他にも「目的地充電」という滞在先で寝ている間に普通充電するというのを推奨したこともあります。
EVで「自宅充電」「目的地充電」があれば「急速充電」がしょぼくてもOK?【もう一つの充電インフラ】
EVの充電というと「自宅充電(普通充電)」と高速道路のSAPAなどでの「経路充電(急速充電)」に注目が集まりやすいですが、「目的地充電(デスティネーションチャージ)」の存在を忘れてはいけません。実は滞在先のホテルなど長時間いる場所に普通充電器が設置されていれば高速道路上の急速充電をアテにしなくても長距離移動が可能です。
まぁ今の例はただの誹謗中傷で私の話なんか聞く気もない人間なのはわかりますが(じゃなかったら初めてコメント寄越す時に「バカ」とか言いません)、この位の記事数になってくると新しくブログを見つけた方々から「それ結構前の記事で書いたんだけどなぁ」と思うような質問をいただくことも増えてきました。
そこで数日かかりますがこれまでのEVに関する記事をまとめる記事を作成して、ブログのトップページから参照できるようにしようと思います。
目次
第一弾は「初心者がEVに対して抱きやすい誤解」からまとめます
EVに関する情報の絶対的な量が不足していること、大手マスコミや車関係のメディアが旧態依然なことも影響しEVについて正しい情報を発信しているメディアが非常に少ないのが問題です。
例えば初心者向けに問いかけますが、
- EVは寒さに弱いから立ち往生したら大変なことになる
- EVはバッテリーが消耗するから交換で高額な費用がかかる
- EVは充電に時間がかかるから嫌だ
もしこのような見解をEVに対して持っているのであればそれは「偏見」です。大手マスコミや自動車関連のメディアが流す情報を鵜呑みにしてしまった結果かもしれません。
元々私が「EVに関する情報発信をしよう」と思ったきっかけも「EVのことをきちんと論じているメディアがあまりにも少ない」という現実を前にしてでした。
ですのでこれまでのEVに関する記事のまとめ第一弾は「初心者がEVに対して抱きやすい誤解」に関するものを以下の項目でまとめてみます。
「EVは寒さに弱い」という誤解
昨年高速道路が大雪に見舞われて多くの車が立ち往生した頃からでしょうか、誰が言い出したのかわかりませんが「EVは寒さに弱い」という言説が飛び交うようになりました。
昨年の災害の際に立ち往生した車の中にEVは一台もいなかったというのが実際のところのようですが、いつの間にかEVを叩く代名詞のように使われています。
ですが「EVは寒さに弱い」ということが迷信だと直後に私が書いた記事がありますのでご参照ください。
電気自動車(BEV)は本当に寒さに弱いのか?【寒さ対策あり】
雪で身動きが取れなくなるような災害が起きると「電気自動車じゃ凍え死ぬ」ような批判を持ち出してくる人がいますが、実は電気自動車でも長い時間暖まりながら耐えることは可能です。世界で最も電気自動車化が進んでいるノルウェーは日本より北にあり、北海道・東北のような気候でも電気自動車化に成功してるという事実を忘れてはいけません。
ですが、世界で最もEVが普及している国であるノルウェーなどは世界地図を見ればお分かりですが、日本よりはるかに北部で冬は雪で埋もれます。
そんなノルウェーでEVが普及する事情についてはこちらの記事をご覧ください。
ノルウェーが電気自動車最先進国になった理由とは?【2025年にはエンジン禁止?】
日本とは真逆の電気自動車化で最先端を行くノルウェーについて取り上げてみます。PHEVと合わせた電動化率が8割を超えるノルウェーではむしろ電気自動車に移行しない方が国民が損をするように上手に誘導しています。産油国でありながら2025年にはエンジンのある車自体の販売を禁止する予定のノルウェーで電動化できた理由を探ります。
また2021年に入ってからアメリカのテキサス州という本来は温暖な地域で、これまででは考えられない規模の寒波に襲われた際にもEVを保有している家庭、太陽光発電を導入している家庭は無傷だったという興味深い事実があります。
寒さに強いのが「電気自動車」と「再生可能エネルギー」?【日本では逆走中】
2021年2月19日現在、テキサス州でこれまで想定しなかった寒波が襲来し、送電線が凍結するなどの理由で州の大部分が停電に見舞われています。そんな中でテスラの太陽光発電とパワーウォール(蓄電池)を装備した家庭では非常時の電源として機能し、寒さに凍えずに済んでいます。このことが示唆することを日本の文脈でも考えてみます。
またテスラ車には搭載されていませんが「日産・リーフ」や「三菱・アイミーブ」にはV2HというEVに蓄電された電力を家庭の電力として供給することも可能で、地震や災害の多い日本で停電が起きた際に困らないという隠れたメリットもEVにはあります。
「Vehicle to Home」で災害時・停電時も安心?【日産リーフ・三菱アイミーブの別の用途】
「Vehicle to Home(V2h)」という言葉を知ってますでしょうか? 電気自動車は「蓄電池」として活用することが可能であり、災害時・停電時も車から電気の供給を受けて日常生活を送れるという隠れたメリットがあります。航続距離が少ない初期型のリーフや軽自動車の三菱アイミーブの隠れた活用法を今日は紹介します。
どこで誰がどういう意図で言い出したのかは不明ですが「EVは寒さに弱い」というのが何の根拠もないデマであることはこれらの記事を読んでいただければわかります。
EVのバッテリーに対して初心者が抱きやすい誤解
次に「バッテリー」も誤解されやすい領域で、スマホのバッテリーと同じ感覚で「使っていると消耗して交換が必要になる」と思っている人が多いのもよくある誤解です。
確かに2010年の発売直後の「日産・リーフ」はまだバッテリーの温度管理などに欠陥がありましたので、消耗(セグ欠け)が起きて徐々に航続距離が短くなるというトラブルが発生しましたが、近年のリーフはほとんどバッテリーを消耗しないことが明らかになっています。
「EVのバッテリーが消耗するから交換が必要」って本当なの?【蓄電池として第二の人生もあり?】
EVのことをよく知らない人の抱く誤解の一つに「バッテリーが消耗・劣化する」というのがありますが、スマホのバッテリーと違いEVのバッテリーは電池が劣化しないように様々な工夫がされていることを日産リーフを例に説明します。また車としての使用が終わった後も「蓄電池」としてV2Hで活用し続けることができるのもEVのメリットです。
テスラ車などは「バッテリーマネージメントシステム(BMS)」というバッテリーの温度管理をする機能を搭載することで、適切なバッテリー温度での充電が可能なようにコントロールされているので何十万キロ走っても消耗しない(つまり新車時とほとんど航続距離が変わらない)ことが広く知られています。
オクトバルブとBMS(バッテリーマネージメントシステム)を用いるテスラのイノベーションとは?
テスラがモデルYから投入した「オクトバルブ」という独自の温度管理システムについて解説します。「BMS(バッテリーマネージメントシステム)」によってバッテリーの温度調整の成否が電気自動車の航続距離やバッテリーの寿命も左右する電気自動車の要のシステムにイノベーションをもたらすことで、テスラが更に進化したことがわかります。
これに対して「日産・リーフ」はこの「BMS」が搭載されていないのにバッテリーがほとんど消耗しない水準まで進化したことも驚異ですが。
また売り上げ台数が振るわないまま生産が終わってしまった「三菱・アイミーブ」は「Mグレード」で使用されている東芝製のSCiBバッテリーがとても優秀で、10万キロ20万キロ走っても全くバッテリーが消耗しないことで有名です。
「電気自動車=高い」はフェイクニュース?【三菱i-MiEVとHongGuang mini EVを比較】
「電気自動車=高い」という偏見を破壊すべく中国のメーカーであるWolingが「HongGuang mini EV」という約45万円で買える激安の電気自動車を発売して、現在中国国内で爆発的に売れています。しかし日本にも三菱i-MiEVという軽自動車の手頃な電気自動車があることを忘れてはいけませんので同時に紹介します。
バッテリーの交換なんてほとんど不要、自宅で充電すればガソリン代よりはるかに安い電気代で済むという「EVのコスパ」に注目した記事はこちらになります。
電気自動車(BEV)を買うとテスラ車でも節約できる?【ガソリン代が高騰】
「電気自動車(BEV)=高い」というイメージが形成されていますが、実はこれは思い込みに過ぎません。車体価格でも現在のように補助金が充実していればハイブリッド車と大差のない価格で買えますし、何よりガソリン代と比較するとEVの電気代は非常にコスパが良いことを紹介します。自宅充電できない環境でもコスパの良い生活が待ってます。
「でも車両価格が高いだろ!」と怒る方が必ず現れるのですが、現在中古のリーフやアイミーブの比較的程度の良いものを100万円以下で購入することが可能だというのがこちらの記事で書かれています。
中古の「日産リーフ」がオススメできる理由とは?【コスパも価格も最強?】
「電気自動車=高い」という偏見のようなイメージができているのも日本で電気自動車化が進まない理由の一つのような気がしますが、中古車市場ではあまり人気がないのもあり格安で日産リーフが買えます。電気自動車の入門としては中古のリーフは年式とバッテリーに気を付けさえすれば快適な電気自動車生活を始めるきっかけとしてオススメです。
EVの充電に対して初心者が抱きやすい誤解
そして「EVの充電」というのもEVが最も誤解されやすい領域の一つです。
冒頭でも引用しましたが、EVのことをよく知らない人ほどガソリンスタンド感覚が抜けないのか「5分で1000キロ走れるくらい充電できない困るんだよ!」と怒ったりしますが、「ガソリン車はガソリンスタンドに出かけて給油」「EVは自宅や職場、ホテルなど長時間駐車してる間に充電」という風に根本から考え方が違うことが理解できていない証拠です。
「ガソリンスタンド感覚で充電を考えちゃダメ」という記事がこちらになります。
ガソリンスタンド感覚でEV充電を語るのは「加齢臭」?【それとも既得権益の温存?】
EVの充電とガソリン車の給油とは本来全く別物なのですが、日本にはガソリンスタンドに給油に行く感覚でEVの充電インフラを批判する人が多いのが問題です。基本は自宅で普通充電、長距離移動などの際の「経路充電」だけが急速充電の使い方なのですが、これが理解できずに「できない理由」にしてEVを批判する人が多いのは残念な状況です。
「充電=急速充電」という感覚、「充電するために充電ステーションに出かける」という初心者が何となく持ってしまいがちな意識を改善していく必要があります。
それは同時に「こんな充電インフラじゃEVなんて買えない」という意識につながってしまい、「買う人が少ないから充電インフラが充実しない」というある種マッチポンプ、鶏が先か卵が先かのような悪循環に陥る危険性を指摘した記事がこちらです。
「充電インフラが増えないからEVが買えない」だと永久に買えない?【テスラの「Commercial Charging」が解決?】
EVを買う買わないの話になると必ず「充電インフラがないのでぇ〜」と不満を言う人がいますが、ユーザーが増えない限り充電インフラも増えない、充電インフラが増えないとEVも増えないという悪循環からいつまで経っても抜けられません。この悪循環を打破する一つの方法をテスラ、というかイーロンマスクが提案しており必見です。
ただし主に高速道路などの長距離移動の際に必須となる「急速充電網」もアメリカ・ヨーロッパと比較して大きな問題があることは否定できず、日本の「急速充電」の抱える問題について述べた記事はこちらになります。
e-mobilityPowerの残念な充電インフラ設置計画が判明【これじゃ日本ではテスラ一択?】
電気自動車(BEV)で不可欠なのが公共の充電設備の設置なのですが、日本でこれを担う「e-mobilityPower」が急速充電器を高速道路上に設置するプランを出しましたが、残念な計画で、テスラのスーパーチャージャーと比較するとかなり問題があります。ワクチンでも見られる兵站や補給路の確保が下手な日本の欠点が露呈してます。
同時に日本独自の急速充電規格である「チャデモ」が抱える問題について論じた記事はこちらになります。
日本のEV化の阻害要因はハイブリッド車ではなくチャデモ?【プジョーe-2008を見て感じたこと】
プジョー「e-2008」のCM曲にPerfumeの曲が採用されていることから個人的に「e-2008もいいな」と思ったのですが、落ち着いて考えると「チャデモ」という日本のガラパゴスな充電規格でかなり不便な運用を強いられる可能性が高く購入を悩んでしまいます。実はこの充電インフラの貧しさがEVが普及しない原因かもしれません。
「EV化できない理由」を探すより「どうやったらEVが使えるか?」という意識改革が必要
人間というのは困った動物で、いわゆる「できない理由」を探すことにかけてはある意味天才のようなところがあります。
できない理由なんて絞り出せば無限に出てくるわけで、問題は限定された条件の中にどう解決策を導き出すかだろ。
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 14, 2021
個人的には「寒さに弱いのでぇ」「うちは集合住宅だからEVは無理」だとか「5分で充電できないんじゃ困る」的な意識はこの「できなり理由」を並べ立てる行為に見えてきます。
実際はそのような環境でも工夫一つでEVを運用することは可能なわけで、できない理由にはならないのが現実です。
などというと「そこまでして何でEV買わなきゃいけないんだよ!」と怒る人が現れるのですが、そもそも日本国内を見ても人口の少ない田舎からガソリンスタンドが消滅しつつあるという厄介な問題も生じ始めています。
「いつでも給油できるからガソリン車の方が便利」とか既に言えなくなってきたことについて述べた記事がこちらです。
「EVは都会で乗るもの」は勘違い?【むしろ田舎の方が向いてる】
「EVは都会で金持ちが道楽で乗るもの」的な偏見が今でも根強いようですが、実は田舎の方が電気自動車に適した環境であることが知られていません。一軒家率が高くて自宅で充電することが容易、道路が空いてて電費も良い田舎の道路事情などEVは田舎でこそ向いている点、ガソリンスタンドが減少する今後はますますそうなる点について触れます。
「田舎」を例に挙げましたがこれは都会でも一緒で、「自宅で充電できるならガソリンスタンドがあろうが無かろうが関係なし」というのが本当の姿です。
とは言われても何となくの感覚で「まだEVは怖い」という人もいるかと思います。
そんな人に私が最近提案しているのが「EV入門としてプリウスPHVに乗ってみる」という策です。
プリウスPHVにみんなで乗ることがEV化への近道?【案外本気です】
これまでガソリン車しか経験がない、ハイブリッド車しか経験がないという人でも「プリウスPHV」であれば悩むことなくバッテリーのみで走るEV走行を体験できます。一旦バッテリーのみで走行する楽しみを知ってしまうと極力ガソリンスタンドに行かない生活になるようで、EVを試してみたいけど何となく不安という人にもオススメです。
「プリウスPHV」であればバッテリーの電力だけでも50キロ前後は走れます。つまり日常の通勤・買い物くらいの距離であればガソリンを使うことなく電気だけで移動できます。
もちろんバッテリーが無くなった時には自動的にエンジンがかかってハイブリッド車として走行できますので、EVに馴染むための保険として十分活用できます。
ガソリン代が高騰している昨今の状況だと「ガソリンを消費しないで電気だけで走れる」ということに気づくだけでも意識を変えるきっかけになるかもしれません。
案外そんな単純な事実に気づくことから日本におけるEV化が普及するきっかけになるのでは?と個人的に思っていたりもします。
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