電気自動車(BEV)は本当に寒さに弱いのか?【寒さ対策あり】

趣味

こんにちは、@kojisaitojpです。どうも日本政府による「ガソリン車販売禁止」の方針が出て以来、電気自動車を攻撃しようとする人が増えています。

ひどい例を出すと「災害」なども自分に都合の良いように利用したがります。

新潟の大雪の際に、「電気自動車は寒さに弱い」との思い込み(後で説明しますが間違いではないです)から「バッテリーが切れれば電気自動車は終わる」と思って叩いていた人が結構いました。

災害の時にドヤ顔で悪口を言うのも人間としてどうかと思いますが。

しかも大事な視点が抜けていて「ガソリン車もガソリンが切れたらおしまい」「排気ガス大丈夫?」です。

「ガソリンはいつでも補給できる」「一台一台給油はできても、充電はできないだろ」とあたかもガソリン車が優秀であると語るのですが、このくらいの大雪ですと、マフラーに雪が溜まって塞がれてしまいますので、寝る間を惜しんで除雪をしないとエンジンがかかっていて暖房は来ていても、排気ガスが逆流してきて一酸化炭素中毒で死にます

反対に電気自動車は後で説明しますが、工夫次第で案外バッテリーを持たせられます。

このように何か災害などが起きると謎のマウント取りをしてくる人が最近増えています。電気自動車を作る気のない某メーカーの工作員か?と思ってりするのはうがった見方をしすぎでしょうか?

というわけで今日は「電気自動車は本当に寒さに弱いのか?」について考えてみます。

日本より寒いノルウェーで普及率80%?

オスロの街並み
以前の記事でも取り上げましたが、現在世界で最も電気自動車の普及して国がノルウェーです。

2020年11月は新車販売に占める電気自動車の割合が80%(この数字はEVとPHEVの合計)、プラグインハイブリッド車を抜いた純粋な電気自動車だけでも50%を超えています。

ノルウェーで充電中のテスラ

とノルウェーという単語を出すとアンチ電気自動車の方々は「ノルウェーは水力発電が充実していて日本とは違うから…」と話をそらして叩いてくる傾向がありますが、不思議なことに「ノルウェーはヨーロッパのかなり北にあるから寒い」という事実、寒いのに電気自動車が世界で一番普及しているという客観的事実にはダンマリです。

オスロの気温
山形の気温
札幌の気温

ノルウェーの首都オスロの現在の気温です。さすがに札幌市よりはマシですが、山形市と同等くらいの気候です。普通に雪も積もります。

でも純粋な電気自動車の普及率が50%を超え、2025年から世界で最初の「内燃機関(エンジン)」を搭載した車の販売を禁止する国になる予定です。

寒くても何とかなってますよね? アンチの方々は都合の悪い事実を無視して、自分に都合のいいことばかり熱く語る傾向があります。

この動画は「世界で一番電気自動車に乗ってる人物」とも言われている、ノルウェー在住の「Bjørn Nyland」さんのものですが、見ての通り北海道・東北並に雪が積もっています。

私の趣味の領域からも一点出しましょう。

モクシーベルゲン

こちらはマリオットの公式サイトによるとノルウェー北部の街ベルゲンにオープン予定の「モクシーベルゲン」の写真です。マリオット系のホテルとして首都のオスロとこのベルゲンにモクシーがオープン予定となっています。

モクシーベルゲン

来年の夏にでも電気自動車の「視察(笑)」も兼ねて行ってみたいところですが、今のコロナの状況だとちょっと厳しいかもしれませんが。

以前の「モクシー 東京錦糸町」の滞在記についてはこちらをご覧ください。

このように北海道・東北並に厳しい冬が訪れるノルウェーで全く問題なく電気自動車が普及していく以上「寒さ」は電気自動車を否定する理由にはなりません。

冬は電気自動車の航続距離が落ちるのは事実

ノルウェーのオーロラ
まずは車に乗っている人であれば誰でもわかっていることですが、ガソリン車だろうが電気自動車だろうが燃費(電費)は冬になると落ちます。

冬場に航続距離が落ちる理由はいくつかあり、

  • スタッドレスタイヤの使用
  • 暖房としてのヒーターの使用
  • リチウムイオン電池の性能低下

などが主な理由です。

ただし「スタッドレスタイヤの装着によって転がり抵抗が」というのはガソリン車も全く同じですので比較の対象になりません。

大きな違いが出るのが他2点です。

暖房用のヒーターは2種類あり「温水型PTCヒーター」と「ヒートポンプ」があります。

温水型PTCヒーター バッテリーの電気を電気抵抗であるヒーターに通して熱を発生させる仕組みですが、バッテリーの電気をそのまま使うので航続距離が落ちます。

初代前期型の「日産リーフ」の場合は、ヒーターを使うと通常時より40%ほど航続距離が落ちていました。

ヒートポンプの場合は、簡単に説明すると家庭用のエアコンの暖房と同じ仕組みで、外気から入る排気エネルギーを活用します。

こちらの方が消費電力が少ないです。

雪道を走るテスラ

とはいえバッテリーの電気を消費することは変わりませんので、確かにアンチ電気自動車の方々が「ほら、やっぱり電気自動車はダメだ」とドヤ顔をするポイントであることは否定できません。

更に電気自動車特有の問題として、低温状態だと「リチウムイオン電池」が十分な性能を発揮できない点があります。

例えば「回生ブレーキ」によって回収したエネルギーをリチウムイオン電池に十分電力を戻せないというエネルギー効率の悪化があります。

また低温時の急速充電はバッテリー性能を十分に発揮することができず、スピードが低下します。

相性が悪いのは事実です。

ただしメーカーも黙って見ているわけではなく、例えばテスラなどはバッテリーにヒーターとクーラーを用意しており、寒い時はバッテリーを温める、暑い時バッテリーを冷やすことでバッテリーを常に適温に保つことで航続距離を伸ばそうとしたり、効率よく充電できるように調整します。

日産リーフも北米仕様だとバッテリーの温度調整ができるようですが、残念ながら日本市場では搭載されていません。

三菱アイミーブ

ちなみにもう一時代前の電気自動車になりますが(商品化はテスラより早い)、三菱のアイミーブ・ミニキャブミーブに搭載されている「東芝SCiB電池」は優秀で寒さへの影響を受けにくいバッテリーと評判でした。

ミニキャブミーブ

アイミーブは2020年をもって生産終了になるようですが、実は「電気自動車で唯一の軽自動車」「気温の変化を受けにくい優秀なバッテリー」などテスラを超えるポテンシャルがあったんじゃないの?と残念な気持ちになるところです。

バッテリーを減らさないコツはあります

ノルウェーで路駐する日産リーフ
とあえて電気自動車の冬場におけるデメリットを挙げて来ましたが、ちょっとした工夫で航続距離を伸ばすことは可能です。

例えば以下のような対策があります。

  • シートヒーターやステアリングヒーターをONに
  • 回生ブレーキを工夫する
  • 充電完了タイミングを工夫する

シートヒーターやステアリングヒーターの方が暖房よりも少ない電力で暖まれることが案外知られていません。

体に触れる部分を直接暖めるカイロのような存在ですので、シートヒーターをONにしていれば暖房を切っても平気なことは結構多いです。

ブレーキをかけて摩擦熱に変換したり、回生してバッテリーに戻さないブレーキの踏み方を工夫するのも有効です。

ブレーキはなるべく回生ブレーキを使わず、アクセルを微妙に調整して自然に減速するようにするのが良いです。ガソリン車でマニュアル車やセミオートマ車などに慣れている人であればブレーキをドンと踏むよりもアクセルワークやエンジンブレーキを使ってブレーキを踏むのを最小限にとどめるのは電気自動車でも有効です。

最後にバッテリーは、ある程度の温度範囲に入っているときに、高い性能を発揮できます。暑くても寒くても、本来の性能を発揮できません。

自宅から出発する場合は、出発直前に充電が完了するタイミングで充電をする、充電スポットでは、充電が終わったら車を寒いところに放置せず、すぐ出発するなどバッテリーが暖まっている状態で車を動かすことがバッテリーの効率をよくしてくれます。

気付いた方はいらっしゃるでしょうが、実はこれ、バッテリーの話以外はガソリン車でも燃費を良くする工夫として前から用いられている手法です。

「エコな運転」というのは結局のところガソリン車でも電気自動車でも変わりはないということです。

冬に合った正しい電気自動車の乗り方をマスターすれば良いだけ

ノルウェーの水力発電所
このように適切な電気自動車の乗り方さえマスターすれば、気温がマイナスになるような環境でも何十キロという単位で航続距離を増やすことは可能です。

ガソリン車時代に身についたエコドライブの経験は電気自動車でも生かせます。

ガソリン車で燃費の悪い運転習慣が身についている人は、電気自動車に乗っても同じことを繰り返すでしょう。

ユーザーが適切な行動を取れるようになれば、後は「充電インフラの整備」など政府や自治体。車メーカーの頑張り次第です。

サークルKで充電

よく見たらこの充電器サークルKって書いてありますね。。。コンビニの駐車場なども有効活用しています。

ノルウェーでは政府が主導して充電スタンドを整備しているため、バッテリーの電力だけで移動して困らない環境が整えられています。

民間の充電スタンドネットワークが全国規模で整備されており、主要な道路には約30マイル(約48km)以下の間隔で充電スタンドが設置されています。人気のある海沿いの夏の別荘地(ノルウェーには世界で2番目に長い海岸線がある)や、スキーリゾート(山間部や寒冷地)へのルートも網羅しており電気自動車での移動に困らないように配慮されています。

50キロ毎に充電スタンドが整備されていれば、先ほども出したヒーターに問題があり冬場の航続距離が120キロくらいに落ちると言われる初代の日産リーフ(2010年〜2012年)でも問題なく移動できる位です。

2035年までに本気で電気自動車化するのが国の方針なのであれば、政府が率先してこのくらいやる必要があります。

「何で電気だけ優遇するんだよ!」と怒る人もいるかもしれませんが、それでは先日のトヨタの社長と同レベルの次元の低い話になります。

電気自動車で日本のはるか先を行っているノルウェーやドイツなどを見ても、それなりに苦労しながら新しい世界の流れ(電気自動車化)について行こうとしています。

ガソリン車・ハイブリッド車の優位性ばかりを日本人向けに叫んでいるだけでは世界から孤立する一方です。

「寒さ」を理由にして電気自動車を否定しようとしても「もっと寒い北欧で普通に乗れてるよ」と反論されれば終わりです。

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