NIOが発表した「NeoPark」という巨大プロジェクトとは?【時価総額GM超え】
こんばんは、@kojisaitojpです。いつもやることのスケールが違う国が中国なのですが、ここのところ何度か話題にしているEVメーカーのNIOがまたまた驚異的なプランを発表しています。
中国EVメーカーのNioが新工場…というか、都市を着工。16950エーカー(約6859万m2)。年産100万台&バッテリー100GWh。集積によって輸送コストだけで一台あたり$463削減を狙う。 https://t.co/vag1oKs68U
投資額500億元(8400億円)。— Keiichiro SAKURAI (@kei_sakurai) April 30, 2021
年間のバッテリー生産量が100GWhというのはテスラのギガファクトリー1箇所で40GWhくらいですので2倍以上の規模です。
先日はNIOのノルウェー進出について述べましたが、現時点で年間の販売台数が10万台程度(しかもEMS生産)だったNIOが世界中に進出するきっかけとして100万台規模で生産可能な超巨大な「NeoPark」という構想を発表しました。
今日はNIOが発表した「NeoPark」が与える衝撃と、未来に希望を持たせるワクワク感を与えられない日本企業の現状について対比しながら考えてみます。
目次
テスラの数倍の規模の「NIO」の「NeoPark」
今回発表された「NeoPark」の概要を簡単にまとめると、中国の合肥市(ヒーフェイ市)に建設される施設で、
- 16950エーカーの広大な敷地(テスラのフリーモント工場の12倍)
- 100GWhのバッテリーと年間100万台の生産
- 研究開発施設やショールームも併設
- サプライヤーも誘致し、輸送コストも削減
- 8800億円の投資金額(第一フェーズのみ)
どこに注目するかは人によると思うのですが、面積でテスラのフリーモント工場の12倍、100GWhのバッテリー生産能力はテスラのギガファクトリーの2倍以上、年間100万台の生産台数は既存メーカーでいうとスバル級、マツダなどもすぐ手が届く範囲です。
しかも既に工場の建設は着工しているようで、第一フェーズの工事は2022年には完成するようです。
第一フェーズだけで総工費8800億円ですからプロジェクトの完了までに数兆円の投資になることが予想されますが、「必要な投資は絶対に惜しまない」という中国らしいダイナミックな計画です。
この辺にも成長する国の勢いを感じます。
そして私が最近バッテリー供給や新型コロナウイルスのワクチンの供給や接種において散々言っている「ロジスティックス(物流網・サプライチェーン)」への配慮が見られるのも驚異です。
NIO側のコメントによると「これまで部品の輸送などのロジスティックス関連でかかっていたコストがNeoParkに集約させることで一台辺り463.5ドルの費用と901キロの移動距離を節約できる」とのことです。
「NeoPark」にサプライヤーなども誘致して同じ場所で部品の生産も行うことでコストの削減と時間のロスを無くすという見事な計画です。
「EVなんていつでも作れる」と豪語しつつも「どうやってバッテリーを確保するの?」という問いには答えられない日本の自動車メーカーや「ワクチンは確保したもののどうやって国民全員に接種させるか?」の計画が全くなかったことからいつまで経っても接種が進まないどっかの国の政府よりは間違いなく「ロジスティックス」の重要性を認識していると思いました。
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あ、先日述べた「e-MobilityPower」の充電器設置計画もそうです。世界標準に近い高速の急速充電器を購入したはいいが、実際の運営は90kWの速度も出るか怪しいというのも「ロジスティックス」の甘さから来ていると思います。
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なお具体的な「NIO」のEVや「NIOハウス」「バッテリー交換ステーション」などの情報については以前の記事で書いていますので、よろしければご参照ください。
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2022年には全固体電池を搭載するとかEVメーカーで唯一採用しているバッテリー交換ステーションなどの技術・スペック的側面もそうですし、「NIOハウス」のようなEVを超えたライフスタイルにも絡むソフト面のサービスも充実のNIO本格的に世界進出を視野に入れた動きに入るきっかけが本日紹介した「NeoPark」のように思えます。
ちなみに「中国メーカーなんてどうせ嘘八百でしょ」的な言い方は誹謗中傷になるのでやめましょう。
特にNIOの場合はニューヨーク証券取引所に上場してしますので、虚偽の発表などしようものなら現在時価総額でGMを抜いているNIOの資金源が吹っ飛んでしまいます。
あ、「時価総額なんてアテにならない」とかテキトーなこと言って誹謗中傷するのもやめましょう。トヨタがテスラに時価総額で抜かれたのが不満なのでしょうが、世界のマーケットからの評価を冷静に受け止めるべきです。
中国企業というだけで根拠不明確な誹謗中傷をする人が必ずいますが、このように将来のイメージを与えてくれるワクワク感を与えてくれる企業は私の中だと他にテスラやAppleくらいしか思い付きません。
日本企業でこのような夢のあるビジョンを出してくれる会社があればいいのですが、特に自動車メーカーの場合旧態依然のままで将来の希望を持たせてくれる会社ばかりです。
ワクワク感を提供してくれるのはテスラもNIOも一緒
NIOではなくテスラの話になりますが、この週末はなかなか衝撃的なパフォーマンスを行っていたようです。
Cybertruck in NYC pic.twitter.com/Q7JnSo1QoX
— Tesla (@Tesla) May 8, 2021
これまでもテスラのサイバートラックが公道を走っている光景は度々アップされていましたが、今回はニューヨークのマンハッタンを走っています。
デザインも個性ありまくりですが、後ろを伴走しているのがテスラ・モデルYですからサイズの違いもなかなか驚異的です。
私もこのタイミングでニューヨークに行って、ついでにワクチンも接種してくればよかったのかなと若干後悔しています(笑)。
NIOは「衰退途上国」の日本には上陸しない?
ではテスラのように年間の生産キャパシティを100万台に拡大したNIOは日本市場に上陸するのでしょうか?
おそらく中国の脅威を煽りたがる方々は「中国のEVが日本を侵略する」と騒ぐのでしょうが、そもそも「所得が年々減少し、衰退途上国のような日本にNIOが魅力を感じるのか?」という視点が抜けています。
「中国企業に日本人の富が収奪される」と騒ぎたければ騒げばいいと思うのですが「収奪したいと思ってもらえるほどの富が残ってるの?」という疑問が生じます。
というのもNIOの場合現時点では高級車路線です。日本ではただでさえ少ない数の富裕層をターゲットに「NIOHOUSE」や「バッテリー交換ステーション」までコストをかけて投資しようと思うのでしょうか?
ノルウェーのGNI(国民総所得)は8万2440米ドル。22位の日本は3万7930米ドル|#NHKニュース https://t.co/DzYbN9xP6F ←出勤前に見て改めてショック受けた。日本人の個人所得はノルウェーの半分以下。NHKも実は北朝鮮と比較するためじゃなく日本人の所得の低さを知らせたかったのではw pic.twitter.com/X2M8kjQ7yK
— Mnemosyne 日本の癌はマスコミ (@sea_of_memory) June 15, 2018
先日上陸が発表されたノルウェーの場合「国民総所得(GNI)」で見た場合世界一位です。
(「どうせ税金高いんでしょ?」とか聞きかじりの知識で非難しても無駄です。個人の所得税で見た場合最高税率はノルウェーの38%に対し日本は56%です)
Twitter上でもテスラとは違ったサービスを提供するNIOも日本に来て欲しいという声は結構多いです。ですがそのためには「NIOの立場で見て日本市場に参入することが魅力的」になる必要があります。
反対に低価格のEVを売りにしている「Wuling HongGuang Mini EV」や「Ora R1 BlackCat」辺りは日本市場を食ってやろうと虎視眈々だとは思いますが。
以前も取り上げた日産の軽自動車規格のEVが2023年、先日取り上げたホンダの軽自動車規格のEVが2024年発売と発表されていますが、これ以上遅いと中国メーカーが満を辞して乗り込んでくる可能性があります。
コロナウイルスは病気以外の側面で日本の崩壊スピードを大幅に早めたような気がする。
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) May 9, 2021
ここのところワクチンや充電器設置計画などを取り上げて「日本のロジスティックスがオワコン」ということについて述べていますが、様々な分野がオワコンであることを明らかにしたのが新型コロナウイルスではないかと思うことがあります。
おそらくコロナウイルスがなければ5-10年かけてじわじわと崩壊していたであろうことがこの1、2年で急速に崩壊しているような嫌な予感がします。
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