e-MobilityPowerの新型充電器がオワコン?【これが専門家・プロのやること?】

お金 ビジネス 趣味

こんばんは、@kojisaitojpです。ヨーロッパ旅行の後に(もちろん自主隔離明け)Perfumeのライブで大阪と広島に行ったので飛行機やホテルの記事を書きたいのですが、割り込みでこのネタを取り上げないわけにはいきません。

首都高の大黒PAにe-MobilityPowerの新しい充電器が設置されたので広島からの帰りに羽田空港から直接向かってみたのですが、行く前からツイッターには多くのEVユーザーから「速度が出ない」「接続できない」などの不満が続出していました。

私が行った時には誰も充電してる人がいなかったので実際に速度を見せてもらうことはできませんでしたが、「セッかく6台同時に充電できるというのは大きな進歩だったのに」という印象です。

そこで今日はe-MobilityPowerが大黒PAに設置した急速充電器のオワコン具合と日本でEVを普及させるために必要な充電インフラについて考えてみます。

欠陥だらけの大黒PAのe-MobilityPower充電器

emobilitypowerの新型充電器
まずは実際に大黒PAの充電器を使ってみたオーナーの声を引用します。

テスラ・モデルXのオーナーですが、速度が15kWと「自宅のウォールコネクター(普通充電器)とほぼ同じ出力」と、とても急速充電器のスペックではないことを指摘しています。

こちらはテスラ・モデル3のオーナーですが「20分で6kWh」ということは60分で18kWh(もう少し速度は落ちるでしょうけど)、速度は18kWということになります。

15kW前後の充電器は世界基準で見ると「普通充電器」の範囲に入る低スペックです。

アウトシュタットのIONITY

こちらは私がドイツ・ヴォルフスブルクのアウトシュタットで見てきた「Ionity」というヨーロッパの急速充電器ですが最大で350kWと桁の違う充電性能を誇ります。

e-MobilityPowerの新型充電器は「6台トータルで200kW、1台のMAX速度は90kW」と元々の性能から問題ありなのですが、その本来のスペックすら発揮できない有様です。

「まぁテスラは外車なんだから」と日本のEVじゃないことを言い訳にする人もいるでしょうが、国産のEVでもこの有様です。

アイミーブのオーナーは充電不能だったようです。他にもホンダeで充電できなかったという例も上がってきており、「もしかして日産リーフ以外のEVテストしてないの?」と思われる惨状です。

e-MobilityPowerの側からも既に不具合のリリースが出されています。

ですがテスラ車も「モデル3」の不具合は上がってますが、上記のツイートにあるように「モデルX」でも速度が全く出ない状態ですからこのリストに加えられることでしょう。

e-MobilityPowerよりオーナーが先に気付くというのは異常事態だと思いませんか?

事前に日本国内で販売されているEVを全部テストしないままリリースしたの?と思ってしまいますよね。

「EVユーザーナメてるの?」と罵声を浴びせられても文句を言えないe-MobilityPowerの失態です。

そもそものe-MobilityPowerの新型充電器のスペックから問題

emobilitypowerの新型充電器

そもそもe-MobilityPowerの新型充電器は当初のスペックから問題だらけだったのは以前の記事でも解説してますので、ご参照いただければと思います。

「終わってる充電器」であることはこの画像にまとまっています。

eMobiltyPowerの新型充電器のスペック

  • 最大200kWと言っても1台辺りの速度はMax90kW
  • 6台でシェアすると1台辺り25kW〜50kWに落ちる
  • 仮に1台で充電しても90kW出るのは最初の15分だけ

当初予定されているスペックから終わっているのですが、このカタログ値に遠く及ばない充電速度だったり、そもそも不具合が出て充電できないEVが続出しているのですから更に終わってますが。

ディーラーに急速充電器よりも経路充電の充実がキモ

日産グローバル本社

e-MobilityPowerの充電器設置計画に疑問を感じてるからなのか、日産やトヨタが新しい充電器設置計画を打ち出していますが、これもピントのズレた計画になっているようです。

多くの日産ディーラーが充電器設置の補助金を申請していたことから「日産もアリアの発売に向けて充電器をハイスペックなものに更新か?」と噂になっており、実際入れ替え中のディーラーも多いのですが最大で90kWと来年以降発売される「アリア」の最大充電出力130kWにすら対応できない充電器を設置しています。

なんて話をすると「いや、日本のCHAdeMOで90kW以上の高速充電するための水冷ケーブルがないから」とか「ハイスペックにすると電力契約が高圧になって高額になるから」などとできない理由がたくさん飛んでくることはわかってますけど。

日本のCHAdeMO規格が日本のEV化推進の障害になっていることは、以前プジョー・e-2008を取り上げた記事で触れてますのでご参照いただければと思います。

後日私のブログでも取り上げますが、先週トヨタが今後のEV化計画を発表しましたが、この中で「トヨタの全ディーラーに急速充電器を設置し、他社のEVにも開放する」という発表を行っています。

トヨタのEV化計画についてはいくつか疑問を感じる点があるので後日取り上げますが、充電インフラに関しても「ディーラーに設置」というのはピントがずれた計画です。

  • 原則は自宅で普通充電するのがEV
  • 長距離移動の際に高速道路のSAPAで急速充電をするのが「経路充電」
  • ディーラーの充電器は自宅で充電できないユーザー向けの補助的なもの

これがEVの充電インフラの基本です。

私も以前取り上げましたが「自宅と目的地で普通充電器を設置」が原則で、「急速充電は長距離移動する際の経路充電」というのが基本スタイルです。

ですので日産やトヨタの計画も高速道路のICの近くのディーラーに急速充電器をガンガン設置するのであればまだ理解できるものです。

ですが全てのディーラーに設置というのもピントがズレています。

もちろん「自宅で充電できないユーザーにインフラを提供する」と言い分があるのはわかりますが、「そこ力入れるポイントなの?」と思ってしまいます。

むしろ「ディーラーで充電できるから別にいいや」と簡単な工事で普通充電器を設置できる一軒家や集合住宅の駐車場への充電器設置の妨げになるのでは?という嫌な予感すらします。

「専門家・プロが言うんだから間違いない」が大間違いの典型例がe-MobilityPower

emobilitypowerの新型充電器の外観j
まぁ私のところにもよく「トヨタのような一流企業がそんなことも考えてないと思ってるのか!」とか「トヨタの社長になられたような優秀な人が間違えるわけないんだ!」という批判が飛んできます。

一言で返してやると「一流企業だから間違えないとなぜ言えるの?」「トヨタの社長になった=絶対に間違えない位優秀となぜ断言できるのか?」に尽きると思いますが。

この前のトヨタを批判する記事を書いた時にはこのようなクソコメントが大量にきましたが、今日のようにe-MobilityPowerを批判する記事を書いても同様でしょう。

e-MobilityPowerは東京電力と中部電力が主要な出資者(トヨタ・日産・ホンダ・三菱も少しだけ出資)ですので役員はみんないわゆる「一流企業」の出身者ばかりですが。

もちろん「専門家・プロなんだからきちんと考えた上でやってないんだ!」と擁護する声もあるでしょう。

  • 90kW以上の急速充電に対応する水冷ケーブルがない
  • 電力契約が高圧で非常に高額になるからコスパが悪い

このように「できない理由」であればいくらでも並べることができます。

ですが実際にテスラは日本国内においてもスーパーチャージャーという150kW〜250kWの急速充電が可能な充電ステーションをどんどん設置しています。

2021年だけでこれだけのスーパーチャージャーを設置しています。日本で設置するのが不可能という言い訳は通用しないと思います。

他にもポルシェが自社のディーラーに90kW以上の急速充電器を設置しています。

ポルシェの場合もテスラ同様に自社のオーナー専用の充電器のようですが150kWまで対応するようです。

テスラの充電プラグはテスラ独自のものですが、ポルシェは日本市場にはCHAdeMO規格で入っています。

「CHAdeMOだと水冷ケーブルがないのでぇ」というできない理由を自社で開発することで返上しようとしています。

片やe-MobilityPowerはとても急速充電器とは言えない低スペックな充電器を「10年先を見据えた先行投資」とドヤ顔で設置している状況です。

「自動車の専門家・プロが素人でも思いつくことを検討してないとでも思ってるのか?」「検討した上で無理だと判断したに決まってるだろ!」という批判もありましたが、検討した結果がこの惨状でしょうか?

テスラ車のみならずアイミーブ・ホンダeのような国産のEVが充電できるかどうかのテストすらやっていなかった会社をかばうことはできないと思います。

私からすると「一流企業」「社長」「専門家」「プロ」だから全面的に正しいとなぜ思えるのか?と逆に聞きたくなるところですが。

人気記事電気自動車専門のカーシェア・サブスク・EV販売店立ち上げのためのクラウドファンディングを始めます!

人気記事電気自動車(EV)を日本で普及させるために誤解を解消する【過去記事総まとめ】