「できない理由」ではなく「EVトラックを可能にする方法」を考えるメルセデスとテスラの計画とは?

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こんばんは、@kojisaitojpです。以前から噂になっていた「大型トラックのEV化」の話がいよいよ進み始めたようです。

この「大型電動トラック」というのは乗用車よりもEV化するのがはるかに難しい領域です。

搭載するバッテリーの容量が乗用車とか比較になりませんので、バッテリーの性能のみならず「充電はどうする?」という問題も生じます。

テスラが「Semi」とメルセデスは以前から開発を進めていましたが、それがほぼ同時に生産に入るというニュースが飛び込んできたのは驚きです。

そこで今日はメルセデスが大型トラックのBEVとFCVの生産に入るという話と、ほぼ同時に出てきたテスラ「Semi」も生産を開始するとの情報を用いて「大型トラックのEV化」について紹介します。

メルセデスがBEVとFCVのトラックを製造開始?

メルセデスのEVトラック
今回ダイムラートラックにより発表されたメルセデスの電動トラックの計画は、

  • 最も小型の「eActros」」が2021年10月から生産
  • 中型の「eEconic」は2022年から
  • 長距離用の「eActris LongHaul」は2024年から 

となっています。実用化において最も困難と思われる長距離用のトラックが最も後の生産になりますが、長距離用のトラックに関してはFCV(水素燃料電池車)モデルも2027年からの生産を予定しているという点が特徴です。

メルセデスのFCVトラック

乗用車と違い長い航続距離が求められる大型トラックの場合はBEVにすると膨大な量のバッテリーと充電時間という問題が生じるのは以前から言われているところです。

そこでメルセデスとしては長距離用のトラックのみBEVとFCVの2種類で行く方針のようです。

メルセデスEVトラック「eactros」

現時点で出てきている情報だとバッテリーは最大で容量420kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載し、最大400kmの航続距離が出るようです。

問題のバッテリーの充電には出力160kWの急速充電器が用意され、バッテリーの8割の容量を充電するのに、およそ1時間で済むとのことです。

トラックドライバーが法律で定められている休憩時間にから考えると、例えば日本の場合だと労働基準法で定められている「4時間走行した後に30分の休憩」の間に充電が可能な充電インフラが必要になりますので若干足りないくらいでしょうか。

それもあって2027年からは最大の航続距離が1000キロのFCV(水素燃料電池車)も投入するようです。

ただし水素は水素で同じように「水素ステーションをどうする?」という問題は残ります。水素ステーションを一箇所設置するのに日本だと億単位の投資が必要になりますので、長い航続距離から充電器ほどは必要ではないにせよ、BEVの場合と比べて採算が取れるかどうかは水素インフラの設置コストまで含めて考える必要があります。

街中を走る配送用のバンなども同様ですが商用車やトラックは一日に走る距離と範囲がほぼ決まっていますので、それに合わせて充電設備を用意すればいいだけです。実は走る距離や範囲が一定しない乗用車よりも簡単だということが案外知られていません。

長距離用のトラックの場合は高速道路のSAPAでの30分休憩の間に充電できれば問題ありませんが、乗用車とは規模の違うバッテリーをこの短時間で充電できるのか?という疑問はメルセデスの計画だとまだ少し疑問が残ります。

ですがこれを乗り越えてくるのでは?というテスラの「Semi」があります。

テスラ「Semi」もそろそろ生産開始?

テスラの電動トラック「Semi」
メルセデスがBEVとFCVの大型トラックの生産に入る一方で、同じように大型トレーラーの開発を行なっているテスラも「Semi」の生産に入るという情報が入ってきました。

テスラでは2021年1月に2020年の決算を発表した際に「2021年末より前にSemiの生産を開始する」と発表していましたが、予定通り準備ができつつあるようです。

以前の記事でも「Semi」については触れましたが、この時から計画に大きな変更はないようです。

最終的にはSemiはテキサス州のオースティンに建設中のギガファクトリーでの生産になるようですが、記事によると今回はパイロット版として例外的にネバダ州のギガファクトリーの近くにSemiの生産ラインを用意しているようです。

しかしテスラがSemiの生産を開始するということは疑問点が二つあり、

  • 結局「4680セル」はどこのメーカーのを使うのか?
  • 大型トレーラーも充電できる「メガチャージャー」はどうなる?

テスラ「4680セルバッテリー」はLGとサムソンで決まり?

テスラ4680バッテリー
「4680セル」については先日も記事にしましたが、パナソニックがまだ未完成、LGエナジーソリューションとサムソンSDIがサンプルを完成させたという状況です。

ということは「Semiに採用されるのは韓国製のバッテリー?」と予想がついてしまいます。

「テスラに見捨てられつつあるパナソニック」というのを昨日問題にしましたが、この懸念が現実になりつつあります。

「パナソニックは意思決定が遅い」と以前からイーロンマスクが批判していましたが、この「遅さ」が致命傷になるかもしれません。

最大充電出力「1MW(1000kW)」のメガチャージャーも誕生?

テスラ「メガパック」
これまでの乗用車とはサイズも重量も違うのでSemiには巨大なバッテリー(4680セル)が搭載されますが、そうなると当然「充電はどうする?」という問題が起きます。

これまでの報道によると800kWhの巨大バッテリーを搭載し、400マイル(644キロ)走る(400マイル以下のEVは提供しないのがイーロンマスクの方針)ことになりますが、大型トラックの休憩時間に充電をする必要があります。

となるとこれまでの250kWや350kWの乗用車用のスーパーチャージャーでは役不足なので「メガチャージャー」と呼ばれるSemi専用の急速充電器が必要になります。

トラックドライバーの30分の休憩の間に充電するためには約1.6MW(1600kW)の速度というお化け級の充電器になります。

これがネット上で拾える数少ないメガチャージャーの映像ですが、現行のテスラ車より大型の端子が用意されています。

単純に「速度倍増か?」と思いますよね。まぁ350kWが2倍になってもまだ700kWですので目標の半分にも達しませんが。

他には最初にテスラがメガチャージャーを設置すると噂されているカリフォルニア州のモデストには「Megapack」と呼ばれるテスラが開発した巨大な蓄電池が設置されているとのことです。

スーパーチャージャーも含めてテスラの充電施設は供給される電力と蓄電池を併用することで超高速の充電を可能にしていますので、「メガチャージャー」にはそれ以上の電力供給を可能にするメガパックを併用で用いるようです。

以前問題にしましたが、日本国内でeMobilityPowerの設置する急速充電器が200kWを6台でシェア、一台辺りの最高速度が90kWなどと言っているのとは次元の違う試みをテスラが実現しようしています。

「できるわけないだろ!」と日本人の感覚だと言ってしまいそうになりますが、反対に日本人だけが世界の流れから取り残されているということかもしれません。

片や「EV化はEUの陰謀」と言ってしまう日本メーカー

メルセデス「eactros」長距離版
このようにEVでは難しいと思われていた大型トラックにもメルセデスはBEVとFCVの両輪で、テスラはBEV一択でチャレンジしようとしている中で以前よりもガラパゴス色を全開にしているのが日本の残念な現状です。

記事を書いているのがトヨタの元エンジン技術者が先日私も取り上げたEUによる「2035年以降ゼロエミッション車以外の販売禁止(ガソリン車・ディーゼル車・ハイブリッド車・PHEV)」については「ヨーロッパによるトヨタ潰し」だと断言しています。

この「陰謀論」を信じる人は日本国内だとそれなりにいるのですが、忘れてはいけないのはヨーロッパでは日本メーカーはほとんど車が売れていないという点です。

2020年の統計だとヨーロッパ(EU+EFTA+英国の全30か国)での販売シェアはトップがフォルクスワーゲングループ(アウディやシュコダなども含む)、2位がプジョー・シトロエン(2021年からステランティス)、3位がルノー、4位がBMW、5位がヒュンダイ(ヒョンデ)と日本勢は上位にも入れず、トップ10の8位にようやくトヨタが現れますが、シェアがたったの6%です。

シェア6%の企業を潰すためにヨーロッパの自動車メーカーの今後大変な苦労を強いられるEV化を無理矢理導入すると言える神経が私には理解不能です。

タブロイド紙や週刊誌のネタであればまだ笑って流せるのですが、投稿先が「日経クロステック」という日経の中でも技術者向けのメディアというところに「日本って本当に変わる気がないんだな」という絶望感を感じてしまうところです。

今日はテスラとメルセデスの「大型トラックのEV化」に触れてきましたが、今になっても乗用車のEV化にすら抵抗し、先ほどのトヨタの元技術者のように「ヨーロッパは「合成燃料やバイオ燃料をこっそり開発してエンジンを残すはずだ」と自分の憶測でテキトーなことを言ってしまう状況です。

「バイオ燃料はエコじゃない」というのが世界の共通認識になりつつあるともはや呆れてしまいます。

このままハイブリッド車や内燃機関に執着して日本以外に自動車を売れる国がほとんどなくなるという未来が現実になりつつあるかもしれません。

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