「日本のEV充電インフラが貧弱」なのはどこを改善すべきなのか?【目的地充電】
こんばんは、@kojisaitojpです。ちょっと間隔が空いてしまいましたが、この間に宮城県・山形県・福島県・栃木県と周遊していました。
99%の宿泊客が車で来る場所なんだから普通充電器くらい設置して欲しいと思ってしまう。 pic.twitter.com/t1FhzmYIMU
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) July 12, 2021
今回はテスラをカーシェアできなかったので走行距離20万キロ超えのフォルクスワーゲン・ゴルフ5という既にご老体のガソリン車で行ったわけですが、当然泊まるホテルなどでEV充電器の有無はチェックしています。自分がテスラを購入した後に備えておく必要がありますので。
今回は「ウエスティンホテル仙台」と「フェアフィールドバイマリオット栃木宇都宮」の2箇所に泊まったのですが、EVの充電インフラを巡ってあまりにも対照的だったので取り上げて紹介しようと思います。
そして各々の充電インフラを見ることで、日本で充電インフラについて語る際に必ず言われる「こんな充電インフラじゃEVなんて普及しない」的な批判に対して「じゃあ充電インフラのどこがマズくて、それをどのように改善すべきか?」について考えてみます。
目次
EV用に200Vが2個、ウオールコネクターもあるウエスティン仙台は合格
まずは先に泊まった「ウエスティンホテル仙台(とホテルのある仙台トラストタワー)」についてですが、ここには何とテスラのウォールコネクターが2個ありました。
仙台トラストタワーのホームページには「最大12kW」と表記されていますが、テスラのウォールコネクターは最大9.8kWだったよなとも思うところで、今回はテスラで行ったわけではないので実際に充電したらどのくらいの速度が出るのかを測定できないのが残念でした。
またテスラ車だけではなく他のEVにも使える200Vのコンセントも2個あります。合計で最大4台のEVが充電できます。
これは日本の充電器設置状況を考えるとかなり優秀なのではないでしょうか?
ウエスティン仙台の宿泊客と仙台トラストタワーのオフィスなどに来た人が滞在している間に充電できる「目的地充電」として機能するわけですが、長時間滞在が前提のホテルやオフィスですから普通充電器で問題なく充電できます。
そう考えると「東京→仙台」は約360キロですので、例えばテスラ・モデル3のスタンダードレンジプラスの航続距離がEPAサイクル(この移動は「高速道路を時速100キロで走行し、クーラーをつけても(ry」の基準を使う場面です)で約423キロですので途中充電なしで東京から仙台まで行けます。
実はこの程度の距離であれば高速道路のSAPAなどでの急速充電さえ不要で移動できるくらいまでEVは進化しています。
航続距離1000キロとか350kWの急速充電ってそもそも日常生活に必要なの?という疑問。
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) July 9, 2021
EVという存在が黎明期なのもあり「こんなハイスペックなことができるんだぞ」的に世の中にアピールすることは大切なのですが(イーロンマスクなどは明らかにそれを狙ってやってます)、実際にEVを運用する段階になるとこのように「東京→仙台」くらいの移動であれば途中充電不要で行けてしまいます。
同じ「テスラ・モデル3」のロングレンジであればEPAサイクルで568キロですので東京から仙台に移動した上に「仙台⇄山形」の往復約150キロも充電なしでこなせてしまいます。
先日「eMobilityPower」の高速道路上への充電器設置計画が残念すぎるという批判をしましたが、実は自宅と目的地できちんと充電できれば高速道路のSAPAでの急速充電すら不要になります。
e-mobilityPowerの残念な充電インフラ設置計画が判明【これじゃ日本ではテスラ一択?】
電気自動車(BEV)で不可欠なのが公共の充電設備の設置なのですが、日本でこれを担う「e-mobilityPower」が急速充電器を高速道路上に設置するプランを出しましたが、残念な計画で、テスラのスーパーチャージャーと比較するとかなり問題があります。ワクチンでも見られる兵站や補給路の確保が下手な日本の欠点が露呈してます。
もちろんガソリン同様に必要な時に充電できる環境は必要ですが、先日も論じたように現在ヨーロッパなどで「IONITY」などが進めている350kW級の超急速充電って必要なの?という疑問が生じます。
「大容量バッテリー」「350kW級の超高速充電」をEVに求めるのは間違い?【価格とのバランス】
BYDがバッテリーを自社生産できるメリットを生かした格安で航続距離400キロ近いEVの発売計画を出してきました。EVが新しいものなのもあり、ついハイスペックなものに注目が行きますが、ハイスペックで高価格なものより「そこそこのスペックで低価格」なものの方が売れるのは歴史が証明していることで、日本人が忘れていることです。
後でまとめますが私は充電器設置が遅れている日本では「とりあえず150kWくらいの急速充電器を高速道路のSAPAに設置(ただし複数台)できればとりあえずの5-10年は大丈夫」という見解です。
設置にも高額な費用がかかる急速充電器の設置に血眼になるくらいならホテルなどの「目的地充電」を充実(こちらは普通充電器なので格安)させるべきなのでは?と思います。
なお「ウエスティンホテル仙台」については過去にホテルの紹介記事を書いていますので、ホテルの中身についてはこちらをご参照ください。
「ウエスティンホテル仙台」宿泊記【今回はプレミアルーム】
先月に続き「ウエスティン仙台」に滞在してきたのでもう一度紹介します。都内のマリオット系のようにプラチナ会員の増加でカオスになっていることもなく快適に過ごすことができました。今回はプレミアというビューバス構造、スイート以外では最上位の部屋ですので部屋についてと、前回紹介できなかったラウンジの代替サービスも紹介します。
「ウエスティンホテル仙台」宿泊記
札幌の次は仙台に来ていますが、ここでの定宿「ウエスティンホテル仙台」の紹介です。東北エリアでトップクラスのラグジュアリーなホテルで、近隣で最も高いビルの高層階にあるゆえの絶景も魅力です。コロナ禍で訪れるのは初ですが、サービス面での変化、マリオットボンヴォイの上級会員への対応などについても変化があるので説明します。
「道の駅プロジェクト」なのにEV充電器がないフェアフィールドバイマリオット栃木宇都宮
次は「フェアフィールドバイマリオット栃木宇都宮」ですが、こちらは充電器がありません(笑)。
以前も取り上げたことがありますが、このホテルは積水ハウスとマリオットの共同プロジェクトで「日本中の道の駅にホテルを作ろう」という計画なのでホテルに行くのは車以外では困難なホテルがほとんどです。
「なのに充電器ないの?」というのが正直な感想です。
99%の宿泊客が車で来る場所なんだから普通充電器くらい設置して欲しいと思ってしまう。 pic.twitter.com/t1FhzmYIMU
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) July 12, 2021
まぁホテル側の言い分としては「隣接の道の駅に充電器があるから…」となるのですが、この道の駅が欠陥だらけで失笑するレベルでした。
なお「フェアフィールドバイマリオット栃木宇都宮」のホテルについての紹介は以前の記事で書いてますのでこちらをご参照ください。
「フェアフィールドバイマリオット栃木宇都宮」宿泊記【キャッシュレスホテル】
「フェアフィールドバイマリオット栃木宇都宮」の宿泊記になります。「道の駅プロジェクト」として積水ハウスとマリオットが提携して日本中の道の駅にホテルを建てる計画で、最も早い時期にオープンした一つが宇都宮になります。簡素な宿泊施設でリーズナブルという「外資系=高級」のイメージを壊すホテルですが、快適に滞在できるホテルです。
実は私のブログはEVの話をしつつ旅行、特にホテルの記事を書いたりと「モビリティ」という意味で記事が関連しています(笑)。
隣の道の駅「宇都宮ろまんちっく村」にはEV充電器があるものの…
さて「フェアフィールドバイマリオット栃木宇都宮」に隣接の道の駅「宇都宮ろまんちっく村」には急速充電器が一基ありますが、このようにぱっと見は充電用のスペースが区切られており、他の充電ステーションでありがちな「ガソリン車に場所を占領されていて充電できない」ようなトラブルは起きません。
また速度も44kWと書いており、現行のチャデモの中ではまぁまぁ許せる水準です。
ところがこの貼り紙を見ての通りツッコミどころが満載すぎます(笑)。
まず充電器を使うためには「係員を呼びに行く」手間がかかります。これは私も以前「フェアフィールドバイマリオット日光」の近くの充電器でも経験しましたが、非常に面倒です。
次に「現金払い」というのが「キャッシュレスの時代に何言ってるの?」となりますよね。何より日産のZESP3を始めとする充電カードが使えないという事実に呆れてしまいます。
そしてトドメが「9:00-16:30」という時間です。仮に昨日の私がテスラで仙台から来ていれば到着が夜中でしたので充電できません。
正直に言って「これ、本気で充電器使わせる気あるの?」というレベルです。
この急速充電器に頼るくらいならホテルの駐車場に普通充電器があれば…と思ってしまいます。
たまたまホテルの駐車場に他の宿泊客の日産リーフが停まっていましたが、「充電できないなら使いにくいよなぁ」とオーナーに同情してしまいます。
一応ホテルから車で3分くらいのところにあるファミリーマートに充電器があるのを発見しました。こちらは24時間使えるようですが速度が「20kW」です。。。
ウエスティン仙台のウォールコネクター(つまり普通充電器)が12kWだったんだぞと思ってしまいます。
このように「利用者のことを本当に考えてるの?」というのが日本の急速充電器の残念な設置状況です。
EVの充電インフラの優先順位は急速より普通充電?
このように高速道路以外にある急速充電器の残念な設置状況を旅行のついでに見てしまいましたが、もし今回私が予定通りテスラをカーシェアして出かけていたら仙台までは何の不満もなく充電できてましたが、宇都宮に着いた途端発狂していたことでしょう(笑)。
とはいえ一台設置するのに百万単位で費用がかかる急速充電器を「設置してくれないと困るんだよ!」と抗議したところで簡単に設置してくれるものでもないでしょう。
高速道路上のSAPAは別です。不十分なことは散々批判していますがeMobilityPowerも一応は各SAPAに複数台が同時に充電できる急速充電器を設置する計画が出ていますので。
となると今回見てきた中では「ウエスティン仙台(仙台トラストタワー)」のようにビルの駐車場に複数台普通充電器を設置する「目的地充電」が最も低コストで、しかもユーザーからの不満が出にくい形で充電器を増やせるのでは?と思います。
私が以前から主張してきた「目的地充電>急速充電」が実際に長距離移動しながら見てみると証明されたことになります。
EVで「自宅充電」「目的地充電」があれば「急速充電」がしょぼくてもOK?【もう一つの充電インフラ】
EVの充電というと「自宅充電(普通充電)」と高速道路のSAPAなどでの「経路充電(急速充電)」に注目が集まりやすいですが、「目的地充電(デスティネーションチャージ)」の存在を忘れてはいけません。実は滞在先のホテルなど長時間いる場所に普通充電器が設置されていれば高速道路上の急速充電をアテにしなくても長距離移動が可能です。
「日本では充電インフラが貧弱なのでEVは普及しない」と今でも主張する人がいますが、その充電インフラをユーザーにとって最もありがたい方向で、しかも低コストで実現できるのが「目的地充電」なのではと思います。
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