ガソリンスタンド感覚でEV充電を語るのは「加齢臭」?【それとも既得権益の温存?】
こんばんは、@kojisaitojpです。SNS上にも定期的に現れますが、こういう記事がマスコミに堂々と掲載されるのが日本の終わっている状況です。
またガソリンスタンド感覚でEVにケチつける記事かよ。
電気自動車推進派が触れたがらない不都合な事実。急速充電スタンドは、ビジネスとして成立するのか!?(安藤眞) – Y!ニュース https://t.co/h1pWY1owZb— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 11, 2021
この手の記事に群がるヤフコメなどを見ていると、「こんな充電インフラじゃEVなんか普及しない」「5分で満充電できるようじゃないと話にならん」的にガソリン車の給油感覚でEVを語る人が非常に多いのが残念です。
私のブログでも何度も解説していることですが、「EVにおける充電」と「ガソリン車における給油」は全く別物に捉える必要があり、わざわざ「充電ステーションに充電しに行く」という発想をすること自体が既にEV化の世界の流れに乗り遅れていると言えます。
今日はたまたま理論武装(と言えるレベルでもないですが)して「EVは絶対に普及しない」と言い張る記事をいくつか見つけたので崩してみます。
目次
「ガソリン車の給油」と「EVの充電」は別物だとわからないのは「加齢臭」?
冒頭で引用した記事の主な要点は、
- 急速充電の電気代は高い(家庭での充電との比較)
- 充電ステーションをビジネスにするのは困難
なのですがEVのことを少しでも理解している人であれば「え?今更何言ってるの?」というレベルの話ですよね(笑)。
以前私も「急速充電」と「普通充電」の違いについて述べたことがありますが、急速充電はあくまでも「普通充電」の補助手段であり、長距離移動の高速道路上などのあくまでも限定した場面で使うことを「自動車ジャーナリスト」を名乗っている人々でもわかっていないのには呆れることが多いです。
EVの急速充電と普通充電の違いとは?【基本は自宅で普通充電】
電気自動車(BEV)について語る際に充電の問題は避けて通れないのですが、「普通充電」と「急速充電」の違いやそれぞれどういうケースで使うべきなのかが日本では案外浸透していない傾向があります。そこで本日はそれぞれの充電方式の違いと、電気自動車の性能をフルに発揮させるためにはどのような充電方法が良いのか考えてみます。
EVのメリットは「ガソリン車のようにわざわざ給油のために出かけなくても自宅で充電できる」という点です。
夜に自宅に帰宅したらスマホを充電するような感覚でプラグインしておけば翌朝には満充電で出発できるという快適さがEVの大きなメリットの一つなのですが、なぜか世の中ではその方向での議論を避けているようです。
これは日産のCMですが、出演している木村拓哉さんも「起きたら100%」と言っているように「自宅で充電する」という使用法を日産も想定しています。
日産の情報発信が下手なのもあるかもしれませんが(笑)、なぜかねじ曲げられて「EVの充電=急速充電」という方向に持っていかれやすいです。
私ならここに「もしかしてガソリンスタンドの既得権益?」という臭いを感じます。
EV充電設備、ENEOSのGSへ NECとガソリンスタンドでの充電ネットワーク拡充で協業(ねとらぼ) – Yahoo!ニュース
ENEOSとNECは5月20日、EV(電動自動車)の充電事業で協業検討を開始すると発表しました。
最近は今後のガソリン需要の減退を見込んでか、ガソリンスタンドに充電器を設置するという試みが見られますが、このような動きは私から見ると「ガソリンスタンドがこれまでの給油を充電に切り替えさせることで生き残ろう」という既得権益を維持したいという臭いを感じます。
EVの充電をガソリンスタンドで給油するのと同じ感覚で捉えてしまうと「30分もかかるのかよ」とか「5分で充電できないんじゃ困るんだよ!」となるのはある意味当然ですが。
EVとガソリン車ではエネルギー補給のあり方が根本から違う、つまり「自宅などで車を動かさない時間帯に充電するのがEV」であり、「移動中に自らガソリンスタンドへ出かけて給油」するのがガソリン車だという違いを理解する必要があります。
冒頭に引用した記事に戻りますが自動車ジャーナリストを名乗る人間でもこの違いを理解できないでEVが不便だと語ってたりするのが日本のお寒い状況です。
日産も「自宅での普通充電」を推奨しています
実際に自らもリーフに乗って通勤しているという日産の副社長も「自宅での普通充電」が基本であるとはっきり述べられています。
日産の星野副社長もオススメする「電気自動車の正しい充電方法」とは?【週刊クルマのミライ】 | clicccar.com
■電気自動車の普及に急速充電インフラ整備を求めるのは間違い? カーボンニュートラルやゼロエミッションという言葉が飛び交う昨今、電動化時代に向けて日産自動車の次世代を担う新設計の電気自動車「アリア」の先行予約が始まりました。
日本メーカーで唯一「リーフ」「アリア」と複数のEVを発表し、来年には軽自動車規格のEVの発売も控える日産からも「正しいEVの充電方法・運用方法」について積極的に発信して欲しいなと思うところなのですが、この手の発言を積極的に取り上げるメディアが非常に少ないのが残念なところです。
発言の中でも「急速充電インフラは高速道路などを中心に充実しており、高速道路で移動するのであれば、どこに行くにも困ることは少なくなっている」と急速充電自体が高速道路などの長距離移動の際に使うものであって日常使うものではないことが明確に述べられています。
もちろん以前私も記事にした通り「今の急速充電器の速度じゃマズい」というのはありますが、「急速充電を主に使う場所はどこなのか?」という指摘自体は全く正しいです。
e-mobilityPowerの残念な充電インフラ設置計画が判明【これじゃ日本ではテスラ一択?】
電気自動車(BEV)で不可欠なのが公共の充電設備の設置なのですが、日本でこれを担う「e-mobilityPower」が急速充電器を高速道路上に設置するプランを出しましたが、残念な計画で、テスラのスーパーチャージャーと比較するとかなり問題があります。ワクチンでも見られる兵站や補給路の確保が下手な日本の欠点が露呈してます。
まぁ「大手のマスコミが取り上げないからこそ俺が取り上げてやる」と私のような人間がますますやる気になりますけど(笑)。
以前も取り上げましたが、「自宅充電」と「目的地充電」さえあれば、無充電で300キロ400キロ走ることが可能になるわけで、急速充電が必要になるのは長距離移動をする高速道路のSAやPAだけでも十分となります。
EVで「自宅充電」「目的地充電」があれば「急速充電」がしょぼくてもOK?【もう一つの充電インフラ】
EVの充電というと「自宅充電(普通充電)」と高速道路のSAPAなどでの「経路充電(急速充電)」に注目が集まりやすいですが、「目的地充電(デスティネーションチャージ)」の存在を忘れてはいけません。実は滞在先のホテルなど長時間いる場所に普通充電器が設置されていれば高速道路上の急速充電をアテにしなくても長距離移動が可能です。
冒頭の記事のピントがずれているなと感じたのはこの目的地充電に対しても「急速充電スタンドを商業施設や遊興施設、時間貸し駐車場に併設し、併設施設の売り上げと合わせて利益を確保しようという試みが行われていますが、将来的に10分程度で充電できる電池が実用化されれば、ユーザーは充電しながら車内で待機することになり、併設施設にお金は落ちません」とあくまでも急速充電が前提なのが謎です。
ホテルやレストランなど長時間滞在することが前提な場所であれば「普通充電」さえあれば十分です。
コスト的にも急速充電器を一基設置する費用で普通充電器を何台も設置できますので、充電可能な台数を増やすことも可能になり、よく言われる「充電待ち」が発生する確率も下がり、宿泊施設やレストランを利用する際に「滞在している間に充電できるから行ってみよう」という需要の掘り起こしも可能なのですがそういう発想にはならないようです。
むしろ「なぜそこまでして急速充電にこだわるの?」と聞いてみたくなります。
集合住宅でもEV充電器を設置する方法はあるのに「できない理由」にするマインドが問題
このようなことを言うと「うちは集合住宅だから充電器なんて設置できねぇんだよ!」と怒り口調でTwitterなどで絡んでくる人が必ず現れるのですが(なぜかこういうリプライを寄越す人が大抵喧嘩腰なのは謎ですけど)、それも根拠のない思い込みです。
実際にマンションの駐車場などに充電器を設置した例はいくらでも出てきます。マンションのオーナーや管理組合にお願いしてみればいいだけの話です。
なんて言うと「いちいち交渉してる時間なんかねぇんだよ!」と怒り出す人はいるでしょうけど、昨今ではこのような「集合住宅への充電器設置」をオーナーや管理組合との交渉から請け負ってくれる充電器設置会社はいくつもあります。
電気自動車(EV)充電器をマンションへ導入 – ユアスタンド
電気自動車(EV)充電器をマンションへの導入運用ならユアスタンド!弊社は、集合住宅・戸建て・オフィスなどに電気自動車の充電設備を導入し、自社開発のアプリで制御管理させていただいております。既設マンションへの設置実績は日本一を誇っています!
ググれば似たような会社は何社出てきますが、このように集合住宅への充電器の設置を交渉段階からやってくれる会社にお願いして、成功すれば「集合住宅なので」という理由でEVを否定する、あるいは急速充電に依存するという状況を変化させることは可能です。
ですので「やればできるのにやろうとしないだけ」「やりたくないから一生懸命やらない理由を探してるだけ」のように私には見えてしまいます。
「できない理由を探すマインド」が日本を滅ぼす方向に動いているような嫌な予感がします。
「貧乏マインド」はぶっ壊そう!
「貧乏マインド」とは金銭面での貧乏ではなく、メンタル面のことを指します。現状に不満があるのに行動しようとしない人特有のメンタリティで、周りの人間のやる気まで奪ってしまう有害なものです。今日は、この貧乏マインドの特徴について説明した上で、これを金持ちマインドに変換して、人生を楽しくする方法を考えます。
ブログ設立当時の記事ですが、私が世の中を見ていて一番イライラするのがこの「貧乏マインド」、今日のテーマに合わせると「できない理由を探すマインド」です。
アリババの創設者ジャック・マーも「口先だけは大学教授なみ。でも行動は、盲人以下」と厳しく批判していますが、揚げ足を取るように「できない理由」を探し新しいものを拒絶することは誰でもできる簡単なことです。
私は冒頭に引用したような「ガソリンスタンドで給油という旧来の価値観・習慣を捨てきれずにその視点でEVの悪口を言う」ようなタイプの人間を「加齢臭」と批判しますが、年齢は関係ありません。
若者でも頭の中が加齢臭な人はいますし、先日取り上げたスズキの会長のように90歳を超えても頭がしっかりしている人はいます。
スズキ会長の「軽自動車もEV化が必須」発言から感じる危機感とは?【世界のルールに逆らえない】
スズキの鈴木修会長が退任を前に「軽自動車もEV化する必要」を表明しましたが、世界がEVにシフトしている中では当然であり、主戦場であるインドでもテスラが上陸し、EV化していく流れを的確に把握した発言でした。どんな自動車を売って良いのかを決めるのは車メーカーではなく、法律を制定する政府であることを忘れてはいけません。
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