ボルボの「Volvo Concept Recharge」の衝撃とは?【アンチEVの批判を一掃?】
こんばんは、@kojisaitojpです。2030年までに販売する自動車を全てEVにしていると宣言するボルボが、今後のプランとコンセプトを公表してきました。
ボルボが2025年頃に発売される次世代EVを発表、1.5倍のエネルギー密度と構造用バッテリーパックを採用して1,000kmの航続距離を実現。
100%再エネ電力で製造され、V2Xにも対応するとされています👀
Volvo Electric Cars Will Focus On More Range And Faster Charging https://t.co/DX2S9qIjil
— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) June 30, 2021
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現在「XC40-Recharge」と「C40-Recharge」をEVのラインナップにボルボは載せていますが、これらは既存の内燃機関車のをベースにした車両であり、私があらゆる記事で「本気のEV化のために必須」という電気自動車専用のプラットフォームではありません。あくまでも「とりあえずEVを販売するためのもの」という位置付けです。
以前のボルボのEVに関する記事はこちらをご参照いただければと思います。「C40 Recharge」については年内にも日本市場への投入が予定されています。
ボルボが「C40Recharge」で提起する「所有」へのチャレンジとは?【サブスク・カーシェアへ】
先日取り上げたボルボの2030年からの全車電気自動車化には「サブスクリプション」で提供するという、自動車業界では当たり前だった「所有」という概念すら覆す可能性があります。「若者の車離れ」などと言われますが、月額課金で維持費もかからない、いつでも解約できるとなれば若者の車への興味を復活させるポテンシャルがあります。
「ボルボXC40 Recharge」と「日産アリア」を徹底比較【2021年発売予定】
2021年に日産がいよいよ投入する「アリア」を同じミッドサイズSUVでスペック的にも競合することが予想されるボルボ初の電気自動車「XC40 Recharge」と比較してみます。PHEVに注力していたボルボがようやく電気自動車に全力投球してきましたが、早い時期から電気自動車を販売していた日産がどう迎え撃つか注目です。
そのボルボが「EV化戦略第二弾」として2025年くらいから実現予定のプランが今回発表された「Volvo Concept Recharge」です。
先に結論を言ってしまうと、「EVに関して必ず言われる懸念材料をほぼ払拭」というのがプランを見た私の感想です。
今日はなぜかEVを受け入れようとしない人が依然として多い日本でもよく言われる「EVの欠点」とされる批判をほぼ解消するボルボの「Volvo Concept Recharge」について解説します。
目次
EVの懸念材料をほぼ解消する「Volvo Concept Recharge」の内容とは?
今回の「Volvo Concept Recharge」で登場したボルボのコンセプトカーはこれまでのボルボが発売したEVと比較するとこれまでの内燃機関車のアレンジからEV専用設計にシフトしたことが伺えます。
EVプラットフォームらしい空力を意識した外装で(例えばドアハンドルがないなど)、内装もEV専用プラットフォームだからこそ可能になるフラットな車内、広い車内空間が実現しています。
この内装を見ると先日取り上げたヒュンダイ(ヒョンデ)の「IONIQ5」を連想させる車内空間です。
そしてEVとしての性能を左右する「バッテリー」と「ソフトウエア」もこれまでのEVとは全く違う規格で来るようです。
今回ボルボが提唱する「Structural Battery」というのはテスラでもよく名前が出てきますが、これまでとは違うバッテリーの搭載方法です。
もう充電ガー交換ガーなんて次元の低い話はとっくに終わってるということ。
Volvo Cars to focus on higher-density Li-ion batteries and fast-charging for its next generation of EVs – https://t.co/xSg63LTyW7 https://t.co/mteLqJBgk6— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) July 3, 2021
近年の傾向で「航続距離を伸ばすためにいかにバッテリーの搭載量を増やすか?」が一つのテーマとなっており、「Cell to Pack」「Cell to Chasis」など通常であれば筒状のバッテリーを組み合わせて「モジュール」という形にし、それを車体の下に敷き詰めるというのが一般的でしたが、それでは無駄なスペースができてしまいます。
これはテスラが「バッテリーデイ」で出した資料ですが、航空機の燃料タンクを例に無駄なスペースを廃することで大幅に燃料(バッテリー)の搭載量を増やせることの根拠になります。
フォルクスワーゲンが提唱する「Cell to Chasis」も基本的には同じ発想です。
「Structual」という言い方をしますが、すごく簡単に言えばバッテリーを構造、つまり車体の一部にしてしまおう、それによってバッテリーの搭載量も増やせる上に車両重量も軽くなる、つまり今より大幅に航続距離を伸ばせるという計画です。
以前私のブログでも「EVが出始めた初期と違ってバッテリー交換式は普及しない」ということについて解説しましたが、このようにバッテリーがシャシーなどに直接埋め込まれることが主流となっている現在のトレンドで交換式は不可能というのが私の見解です。
EVは普及しても「バッテリー交換方式」は普及しない?【NIOは例外?】
ENEOSが私が先日取り上げたアメリカ「Ample」社と提携してEVの「バッテリー交換ステーション」を設置する計画を打ち出してきましたが、反対にEVを作るメーカーの側はバッテリーをシャシーに埋め込むなど車体に一体化することで容量を増やし、航続距離を伸ばす計画です。バッテリー交換が過去に失敗した例も挙げながら解説します。
ボルボも同様に「Structural Battery」を提唱しており、これによって航続距離は1000キロまで実現(2025年頃の予定)できると主張しています。同様に充電時間も現在の半分の時間で可能になるとのことです。
「1000キロ走れないようなEVじゃ」とか「充電時間がかかりすぎる」というEVに批判的な勢力が定番のように主張するポイントをボルボはあっさりとクリアするようです。
またバッテリーと同じくらい今回のボルボが強調していたのが「自動運転」とボルボの最大のセールスポイントである「安全性」を実現するためのソフトウェアです。
GoogleとNVIDIAの技術を活用した「VolvoCars.OS」が早ければ2022年から発売するEVに搭載される予定ですが、2030年頃には自動運転を実現させるとのことです。
なおテスラと違う点は「RiDAR」を活用する点です。この部分に関してはテスラの方針と他社で対応が分かれている部分です。
またきちんと見なければならない重要ポイントは「安全性を実現させるための自動運転」というのをボルボが強調している点です。
以前も解説しましたが、このソフトウェアのアップデートはOTAアップデート、つまりテスラ同様にオンラインで行われます。
ボルボの「全車電気自動車化(BEV)」とOTAアップデートの衝撃とは?【対照的なガラパゴス日本】
今度はスウェーデンのボルボが2030年からの「全車電気自動車化(BEV)」を発表しました。オンライン販売に切り替えながらも「サブスク形式」という独自の販売方法で既存のディーラー網を残す方向で(雇用を維持する方向で)電気自動車化するという北欧らしい電気自動車への対応方法を発表したボルボの戦略について解説します。
将来の自動運転につながるソフトウェアの開発を自社で行う点、そのアップデートはオンラインで行う(間違ってもディーラーでアップデートではない)辺りに世界の流れに乗ろうとしているボルボとそうではないメーカーの差を感じる部分です。
EVのカギは「バッテリー」と「ソフトウェア」
EVの話をしていてバッテリーとソフトウェアこそが重要という点を強調しているとなぜか日本では叩かれることがあります。
バッテリーとソフトウェアが重要と言ってたら「そんなんじゃ車動かねぇよ、文系脳」と罵られたけどボルボが俺と全く同じ方向性を示してますけどって話。
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) July 1, 2021
これは実際に私のところに来た誹謗中傷の一例なのですが、「EVの動力源はバッテリー=バッテリーの性能が車の性能を決める」という点と「自動運転を制御するのはソフトウェア(AI)」というEV化、そしてその先にある自動運転を見据えた時に中核となる技術がバッテリーとソフトウェアだと言ってたら「文系脳」と罵られました。
「文学部出身だけど何か?」と言い返そうかと思いましたが大人げないのでやめておきました(笑)。
内燃機関車と違ってEVの場合はバッテリーが動力となるわけで、このバッテリーのレベルが低いと性能を発揮できないのですから内燃機関車でいうエンジンのようなものです。
多分「車のソフトウェア」という単語でエンタメ程度しか連想ができない貧しい想像力なのでしょうが。。。
バッテリーとソフトウェアが命だからこそ、Appleが進めるAppleCarについても「バッテリー」に関するニュースが次から次へと出てきます。
元BMWの幹部を引き抜いた「AppleCar」への本気度とは?【バッテリーも自社生産】
ヒュンダイとの提携話が破談に終わって以来音沙汰がなかった「AppleCar」ですが、元BMWで「Canoo」の前CEOを引き抜いたというニュースが伝わってきてAppleが本気でEVを開発しようという意欲が伝わってきました。同時にBYDやCATLとのバッテリー工場の噂も出てきて、ある意味日本の自動車メーカーより本気です。
Appleの場合は最初から「自動運転」を前提としているようなので「バッテリーの耐久性」というのが最重要なポイントになります。だからこそ以前も解説しましたがBYDやCATLが開発を進める「LFPバッテリー」に関心を示しているようです。
日本メーカーのEVでボルボやテスラに対抗できるのは日産だけ?
EVに対して後ろ向きな姿勢が目立つ日本メーカーですが、ようやく肯定的に評価できる試みが日産から出てきました。
なぜか日産のやることはボロクソに叩くのがヤフコメ(笑)。
日産、中国企業と英国にEV電池工場新設 投資額1500億円(ロイター)#Yahooニュースhttps://t.co/xh5gBhgqKe— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) July 1, 2021
日産がこれまでリーフなどを製造していたイギリス・サンダーランドの工場をバッテリー工場に改装するとのニュースです。
年間のバッテリー生産能力が9GWhで、リーフ・アリアレベルのEVが年間10万台分賄える量の生産が可能になります。しかも生産能力は年々拡大し、2030年には年間25GWhに達する予定です。
この規模であればテスラのギガファクトリーや現在フォルクスワーゲンがヨーロッパ中に設置計画を立てているバッテリー工場と同じくらいの水準です。
ようやく世界で戦える規模のバッテリー工場を自社の手の届く範囲内で調達できるようになります。
それもあってか工場の完成式典にはイギリスのボリス・ジョンソン首相もお祝いに訪れたようで、このプロジェクトに対する期待度がうかがえます。
このような動きを見せた日本メーカーは日産が初めてですので、今後アライアンスを組むルノーも巻き込んだEVへの本格参入に期待ができます。
元々日産はリーフ、ルノーはZOE、三菱アイミーブと世界の自動車メーカーの中でかなり早い段階からEVを投入していたメーカーが数多く存在する「ルノー・日産・三菱連合」の巻き返しについてはまた後日取り上げますが、日本勢にも久々に明るいニュースかと思います。
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