PHEVに依存する危険なトヨタのEV戦略とは?【EV作れない?遅れてる?】

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こんばんは、@kojisaitojpです。私も少し絡みましたが面白い議論がありました。

トヨタが具体的に出してきた今後のEV化戦略についての議論なのですが、トヨタ側が発表した数字が色々なことを示唆してくれます。

「世界最高の技術があるんだからEVなんていつでも作れる」のような感情論では何も話が進展しませんが、メーカー側が実際に出してきた数字を根拠に判断すると今後の電動化戦略がどのようなプロセスになるのかが予想できます。

というわけで今日は、2021年3月期決算発表の際にトヨタが公表した今後の電動化計画の妥当性について考えてみます。

PHEV偏重のトヨタのEV化戦略はわざわざヨーロッパ・アメリカに潰される戦略?

トヨタ「BZ4X」
トヨタが発表した電動化計画はEVよりもPHEVに軸足を置いた戦略になっています。それは2030年のバッテリー生産量が180Gwhと出ていることから計算するとわかることで、

メーカーが見積もったバッテリー生産量を元にPHEVとBEVではそもそものバッテリー容量が違うことからこのような計算が可能になります。

要は一言で言えば「バッテリーの生産量がメーカーの規模から考えると少なすぎる」ということなのですが。

PHEVについては私も先日記事にしたように「BEVへの移行への橋渡し」としてであれば使えるというのが正直な評価です。決して悪いものではありません。

しかし問題は「世界がこのようなスローペースな電動化を許すのか?」という話であって、

ヨーロッパではフォルクスワーゲンを筆頭にメルセデスやBMW、ジャガーなど「今後は新規でエンジン開発を行わない」ことを表明したりもっと進んで「〇〇年から全車EV化」を表明しています。

同じことはアメリカでも起きていてEV専業のテスラは関係ありませんが、GMが2035年から世界で販売する自動車を全車EV化、フォードは2030年以降EUで販売する自動車は全車EV化の方針です。

「PHEVが生き残って得をするのは日本メーカーだけ」という状況が非常に危ないことがわかりますでしょうか?

詐欺師のイメージ

私がヨーロッパやアメリカで政策立案する人間なら「PHEVに規制かけて使えなくしたらトヨタ詰むな」と思ってトヨタを潰す方向で政策を立てていきますよ。

忘れてはいけないのは「こういう自動車は売っていい」「こういう自動車は販売禁止」を決めるのは車メーカーではなく法律を作成する各国政府です。車メーカーがああしろこうしろと叫んだところで政治の世界で「法律」として通らない限りは売ることすらできません。

「EUと中国が結託してトヨタを潰そうとしてる」と怒っている向きをSNS上などでは多数見かけますが、「やることが汚い」と思います?

ビジネスの世界で「汚い」とか言ってもほとんど意味がないと思います。ライバルとなる会社が困るようなルール設定、法律の規制が入るというのは常套手段です。

特に「ハイブリッド車・PHEV車」で得をするのが日本勢、BEVで得をするのがヨーロッパ勢・アメリカ勢となっている状況でどこの国の政府が日本メーカーを優遇する政策を採用するでしょうか?

賄賂のイメージ

あ、一国だけありました。「電動車」という世界では通用しない謎のカテゴリーを作ってハイブリッド車もPHEVもOKにした「日本」という国が(笑)。

結局自国のメーカーに有利になるように政策を立案するというのはどこの国もやっていることで、それに対して「汚い」だの「陰謀」だのを言っても状況は何も変わらない、いや乗り遅れると企業の収益が減るという不利な方向にしかいきません。

私が以前「ハイブリッド車をEVに含めるかというルール設定で負けたんだから次はおとなしくEVで勝つ方法を考えるしかない」という趣旨の記事を書いたのはそういう意図です。

日本国内限定ならPHEVでもいいけど

自宅のコンセントで充電するプリウスPHV
なんて話をすると「お前もこの前プリウスPHVを推奨してたくせに」と思われます?

あれはあくまでも既にガラパゴス化してしまい、EVを乗ったこともないのに拒絶する層が一定数いそうなことから私が考えた苦肉の策です。

今回のトヨタの発表にしろ先日ホンダが発表した全車EV化戦略にしろ日本市場の電動化率はヨーロッパ・中国・北米よりもスローペースで設定しています。

これ自体は地に足がついた戦略であって間違いではないのですが、トヨタの2030年で「BEV+PHEV」で10%という計画は低すぎます。

この数字にはPHEVが含まれていませんが「そもそもその頃にはガソリンスタンドがどのくらい減っているのだろう?」と思ってしまいます。

閉店するガソリンスタンド

「あれ?エンジン要らなくね?」と思うユーザーが一定数を超えた瞬間に、あるいはその前にガソリンスタンドが急減したことにより「充電より給油の方が不便じゃね?」となる可能性が高く、その時にPHEVは役目を終えると私は予想しています。

ですのでEVの大半を小型のバッテリーで済むPHEVで想定しているトヨタの予想は甘いと思う次第です。

「日本の売上台数<海外の売上台数」なのにガラパゴスにこだわるトヨタの謎

ガラパゴス化の象徴ガラケー
「どうしてトヨタはEVに対して後ろ向きなのか?」については以下の点に集約されると思います。

  • まず本格的にEVを売るならバッテリーの調達量が致命的に足りない
  • 再三EVをDisる発言を繰り返す社長の存在
  • 各国政府にハイブリッドを優遇するよう圧力をかけるも日本以外はほぼ失敗

特に「バッテリーの調達をどうするの?」という問いにきちんとした回答をしてきたトヨタのファンの方を見たことがないのが本当に疑問です。

トヨタ・パナソニック製のバッテリー

「まぁパナソニックと協業したし、国も出資するから何とかなるでしょ」的な曖昧な回答しか返ってこないことが多いのですが、何度か言ったように国内でパナソニックと共同でバッテリー生産を行うプラネットエナジーソリューションズの年間生産量は0.39Gwhで、テスラのギガファクトリーの100分の1の規模です。

ここに日本政府が出資してどのくらいの規模に拡張できるのかは分かりませんが。

しかもパナソニックには「テスラ」という最大の顧客がいます。トヨタだけを見て仕事をしてるわけではありません

「部品なんて部品メーカ煽ればいつでも手に入る」と思ってるのだとしたら「バッテリーに関してはそうは行かないよ」というのが私がこれまでブログで再三指摘してきたことです。

それにそもそも根本の疑問なのですが、

「ハイブリッドでもPHEVでもエンジンが停止してる時間が大半だからエコだ」と力説している記事なのですが、それであれば「そもそもエンジン不要では?」と思ってしまいます。

そこまで書いてくれるとこの記事を書いた記者も私と同志になるのですが、どうしてもエンジンの存在を前提にしてしまうようです。

そうではなくむしろ「エンジンを外してその分バッテリー容量を大きくすれば万事解決するのでは?」と思ってしまうのは私だけでしょうか?

今後2025年のノルウェーを筆頭に、2030年頃からはイギリスなどヨーロッパの主要国で内燃機関を搭載した新車販売が禁止になればPHEVすら売れなくなります。

アメリカも2035年以降内燃機関車の新車販売を禁止するカリフォルニア州を筆頭に、EVと再エネの推進を公約に大統領に当選したバイデン政権によって急速にEV化が進んでいきます。

「中国が残ってる」と強気な方もいますが、NIOでもBYDでもXpengでも国内メーカーの大半がEV専業の国でPHEVをいつまで認めるの?と思ってしまいます。ああいう国ですからある日突然「明日からハイブリッドもPHEVも販売禁止」的に強権発動しないとも限らないマーケットに依存するのは考えものです。

するといつの間にかハイブリッドもPHEVも「日本でしか売れないガラパゴス規格」となってしまいます。その前に素直にBEV(どうしてもというならFCVも可)中心にシフトすべきだと思うのですが目先のことしか見えない日本人がまだまだ多いようです。

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