テスラの決算(2021年Q4)から感じるEVの可能性とは?【スバルの次はマツダ超え?】

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こんばんは、@kojisaitojpです。4半期末恒例ですが先週テスラの2021年Q4の決算が出ました。

とてもよくまとまっているツイートなので決算発表がある度に引用させていただいてますが、売上や利益率などを見てもこれまでとは比較にならない数字が出ています。

ですが株をやってる方は思い通りにならないのでイライラしてるかもしれません(笑)。

私は投資に関する発言はトラブルになるので極力言わないようにしてますが、テスラのように期待先行で買われる銘柄は「Buy the rumor , Sell the fact(噂で買い、事実で売る)」という相場格言がぴったり当てはまるようで決算発表が出る度にいわゆる「利益確定売り」のようなもので下落する傾向があります。

テスラの株価推移

しかも今回の場合はタイミングが悪くFOMC(連邦公開市場委員会)の次回会合(3月)からの利上げ、金融引き締めの方針が示されたことで世界中の株価が売られるというタイミングでの決算発表だったのもありテスラ株はかなり売られました。

ですがその後あっというまに巻き返しているのもテスラの恐ろしいところですが。

というわけで今日はテスラの2021年Q4の決算の内容とそこで示された今後の方針について解説したいと思います。

テスラの決算(2021年Q4)の全体像のまとめ

テスラSemiとメガチャージャー
まず冒頭で引用したツイートや英語メディアの情報から今回の決算の重要ポイントをいくつかピックアップすると以下のような特徴があります。

  • 売り上げ160億ドルのうち排出権取引はたったの3億ドル
  • 車両販売の利益率30%
  • メガパック(蓄電池)やソーラールーフ(太陽光)の売上も大幅に上昇

2022年になっても「テスラは二酸化炭素排出権を他の自動車メーカーに販売してるから利益があるように見えるだけだ」と浦島太郎のようなことを言っている人がいますが、5年前に当てはまったことは既に化石となっています。

見ての通り2021年Q4では売り上げ160億ドルのうち排出権の売上はたったの3億ドル、比率に直すと1.8%です。

テスラのことを「排出権取引で儲けて株価を吊り上げるだけの虚業」などと言っている人を見かけたら「情報のアップデートができない化石脳の人」と思って近寄らない方が無難かもしれませんね(笑)。

以前テスラの決算(2021年Q3)に触れた記事を書いた時にも言いましたが、車両販売の利益率が30%というのも通常の製造業ではあり得ない数字です。

この利益率が出せる秘密は、以前から「ディーラー(販売網)がないことで経費がかからない」「広告宣伝費もゼロなので更に経費がかからない」にあると指摘しましたが、この部分は既存の自動車メーカーにはできない領域です。

昨日の記事で私が実際にテスラセンター板橋へ行って感じたことについて述べましたが、「本日ご購入されるのでしたらそちらのPCから注文を入れてください」と発言するスタッフは既存の自動車メーカーではいないですよね(笑)。

営業マンに払うインセンティブやディーラーという中間搾取業者が存在しないことで圧縮できるコストが膨大である証拠が、他の自動車メーカーには絶対に出せない利益率30%という驚異の数字に示されています。

テスラストア・パリマドレーヌのソーラールーフ

またテスラが高収益な体質なのはこのような側面の他にも「ソーラールーフ(太陽光パネル)やパワーウォール・メガパック(蓄電池)」などの自動車以外の販売でも利益が出せるというのも大きいです。

テスラストア・パリマドレーヌのパワーウォール

太陽光や蓄電池は個人の住宅に販売するだけではなく「メガパック」と呼ばれる産業用の巨大蓄電システムも含まれており、例えば上記の記事にあるようにAppleなども導入してます。

収益源が多角化されているのもテスラの強みです。私がよく「テスラは自動車メーカーではないよ」と言う意味がわかるかと思います。

2022年も最新技術てんこ盛りのテスラの計画

4680セル搭載のモデルY
そしてテスラの決算発表の際に営業利益以上に世の中が注目するのが「今後の開発計画」です。

たくさんの計画が出ていますが、その中で主要なものをまとめると、

  • テキサスで製造のモデルYに4680セルとStructuralBattery搭載
  • 現在6万人に提供のFSD(完全自動運転)を更に拡大
  • Optimus(人形ロボット)に注力

この辺りが中心かと思います。

テスラらしい先端技術の話ばかりですが、今注目の「4680セルバッテリー」とシャシーとバッテリーが一体になる「Structural Battery」について稼働したばかりの「ギガファクトリー・テキサス」で生産するモデルYに搭載されることが発表されました。

私のブログでは以前「ギガファクトリーベルリン」の内覧会で「4680セル」と「StructuralBattery」を搭載したモデルYが展示されていて話題になったことに触れましたが、どうやらのこの最新スペックのモデルYは同じ新規稼働の工場でもベルリンではなくテキサスでの製造になるようです。

そして現在アメリカで一部の優良ドライバーにのみ試験的に配布されている「FSD(完全自動運転)」を2022年中に一般のドライバーにも配布する計画も出ています。

テスラの自動運転に関してとやかく文句を言う人は多いですが、論より証拠、このようにネット上に大量にアップされている自動運転の動画を実際に見てから言うべきではないでしょうか?

テスラのロボット

EV以外では以前「Tesla bot」について解説したことがありますが、「Optimus」という名の人間型のロボットの本格的な開発に入り、「designed for dangerous, repetitive, or boring work that people don’t like to do」と人間がやるには危険だったりやりたがらない労働に投入する方針が示されました。

ロボットに関してはイーロンマスク自身も「most important product」とEV以上に注力することを示唆するコメントを出してますので、私も今後の動向を追い続けて記事にしていきたいと思います。

もちろんテスラのネガティブ材料もあります

テスラ・モデル2
もちろんいい話ばかりではなく残念なニュースもあります。

残念な発表は「2022年から製造予定のサイバートラックは2023年からの製造に延期」「25000ドルレベルのコンパクトEV(通称「モデル2」)は他を優先させるため開発ストップ中」の2点です。

完成目前のサイバートラック

サイバートラックに関してはドアミラーやワイパーなどを搭載した市販モデルに近いものが公開されていましたので「ついに製造か?」と色めきたったところでしたが、「バッテリー以外の部品の調達に時間がかかる」とのことで製造開始は2023年からに延期です。

そしてイーロンマスクが「モデル2と呼ぶな」と何故か怒るおかげでネーミングが長くなる「25000ドル水準のコンパクトハッチEV」については現在開発を中断しているとのことです。

日本の道路事情にも合うコンパクトサイズのEVの発売が大幅に遅れるのはちょっと残念です。

この「25000ドルのコンパクトEV」を知らない方向けには以前「モデル2(仮)」について書いた記事がありますのでこちらをご参照ください。

また一時期「BYDのBladeバッテリーを搭載するのでは?」と噂されたことについてはこちらの記事をご覧ください。

まぁ現時点で工場がアメリカのフリーモントとテキサス、中国の上海、ドイツのベルリン(しかもまだ稼働してない)と生産能力が限られている以上優先順位をつけて後回しになるものが出てくるのは仕方ないところです。

バイデン政権からは冷遇されても世界に浸透するテスラ

テスラストア・パリマドレーヌのスーパーチャージャー
例えば最新のニュースでテスラの浸透具合を知るのにちょうどいいニュースもあります。

ヨーロッパで徐々に他社のEVにもテスラのスーパーチャージャーが開放されてきています。

現時点ではノルウェー、オランダ、ドイツ、フランス、ベルギーの一部のスーパーチャージャーのみですが、テスラの充電ネットワークが他社のEVにも使われ始めています。

もちろんこれはヨーロッパで発売するテスラ車が「CCS2」というヨーロッパ共通の充電規格を採用しているため、他社のユーザーもテスラアプリで登録するだけで使えるという有利な条件ではありますが。

日本で同じことをやろうとすると「テスラ→CHAdeMO」の変換アダプターを開発する必要があるので障壁はありますが(反対の「CHAdeMO→テスラ」のアダプターは既にあります)。

このようにヨーロッパで浸透しつつあるテスラですが、別にアメリカ政府が味方となってバックアップというわけでもありません。

以前「自動車の未来は電気だ」と演説をしてEV化を積極的に進めていくことを表明したバイデン政権について触れたことがありますが、実はテスラには案外冷淡です。

原因として考えられるのはテスラが全米自動車労働組合に参加してないこと(もちろん言及されたGMやフォードは加盟してます)、アメリカ民主党の支持基盤が労働組合であることからGMやフォードは優遇してもテスラは無視ということでしょうか。

意外なことに地球温暖化に懐疑的だったこの人の方がイーロンマスクをテスラを認めていたのかもしれません。

まぁテスラの躍進は政権や大統領に関係なくトランプ政権時代からですので、政治家が何を言おうが関係なく世界で支持されているということですが。

昨日はテスラセンター板橋に行った記事を書きましたが、他にもディーラーを持たないテスラだけでは足りないアフターサービスについてはオートバックスとの提携を発表したりと日本でも徐々に存在感を高めています。

と「2022年はどこまで伸びるんだ?」と今年のEVの動向を語る際にはテスラ抜きでは語れない一年になりそうです。

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