テスラ「モデル2(仮)」にBYD「Blade Battery」が採用される?【2Qの決算も紹介】

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おはようございます、@kojisaitojpです。私のブログでも何度か「そろそろ生産開始?」と取り上げたことのある「テスラ・モデル2」に関連すると思われる面白い情報が出てきました。

テスラが昨年から稼働している「ギガファクトリー上海」では中国CATL製のバッテリーを使用しているというのは既に広く知られていることですが、今度は中国のバッテリーメーカーの中ではCATLに次ぐ規模のBYDがテスラにバッテリーを供給するのでは?と話題になっています。

BYDについては私も以前から「日本メーカーに最も脅威となる中国メーカーでは?」と注目しているので何度も触れています。

今日はそんなテスラの最新情報と先月末に公表された好決算について解説します。

「排出クレジット」にも「ビットコイン」にも頼らないテスラの好決算

テスラ・モデル3とイーロンマスクjpg
先月7/26に発表されたテスラの4-6月期の決算もこれまでとは内容が一変する好決算でした。

営業利益が過去最高なのはもちろんなのですが、その要因が「EVの販売台数」「蓄電池(パワーウォール)」「太陽光パネル(ソーラールーフ)」です。

以前であればテスラといえば「排出権取引で利益を出してるだけ」とか「ビットコインの売買で儲けてるだけ」のように本業以外で利益を出している「虚業」のような言われ方をされていました。

昨年トヨタの時価総額を超えた際にも「株価を吊り上げるだけの虚業」のような言われ方をしましたが、実体を伴ってきています。

4-6月期の販売台数が約18万台(しかもモデルS・モデルXの納車が始まったばかり、ギガベルリンがまだ稼働してないなど誤算もあり)で、生産が順調に進めば年間100万台の売り上げ台数も見えてきました。

世界の自動車販売ランキング2019

こちらは2019年の世界の自動車売り上げ台数ランキングですが、100万台というとスバル辺りが射程圏に入ってきました。

日本のメディアではテスラを「株価だけ吊りあがった実体のない企業」ということにしたいようですが、売り上げ台数でスバルを抜いて、次のマツダも数年以内に抜けそうという状況になっても同じように批判を続けるのでしょうか?

「モデル2(仮)」にBYDの「Bladeバッテリー」を搭載?

テスラ・モデル2
そしてこのように絶好調な決算を発表した直後にテスラから出てきたニュースが冒頭の「BYDのバッテリーを採用か?」という話です。

もちろん現時点でテスラやBYDが公式に認めた発言ではありませんので、どこまで信憑性があるのかは不明です。

ですが決算発表の少し前に「2021年末に上海で新型EVのプロトタイプを生産」というニュースが出たのは私も取り上げましたが、「25000ドルのEV」と廉価モデルである「モデル2(仮)」には現在上海で生産されている「モデル3・スタンダードレンジプラス」同様にLFPバッテリーを搭載してくる可能性が濃厚です。

なお上記の記事のようにテスラが現在LFPバッテリーの供給を受けている中国CATLとの契約を延長してます。となるとモデル3(と同じプラットフォームのモデルY)にはCATL製のLFPバッテリーが搭載されると考えるのが自然だと思います。

私の予想を裏付けるように後日BYD側が「テスラへのバッテリー供給」を否定するコメントを出したようですが、これは「今すぐ(2021年)ではない」「モデルYには採用されない」というだけですので、以前として「2022年以降にモデル2(仮)へ」という可能性は残されています。

ですが次に発売予定の「モデル2(仮)」であれば日本のパナソニックや韓国のLGエナジーソリューションなどバッテリーの供給先を多様化しているテスラ的に、このラインナップにBYDを追加してくる可能性は大いにあります。

今回名前が出たBYDという会社、BYD独自の技術である「Blade Battery」については何度も取り上げたことがありますが、LFPバッテリー(リン酸鉄リチウム)の特徴と合わせて特徴を挙げると、

  • レアメタルであるコバルトを使用しないため廉価
  • 発火しにくいというメリット
  • エネルギー密度の低さという欠点を解消するBYDの「Blade Battery」という技術

LFPバッテリーは正極素材に「リン酸鉄リチウム」を使用するバッテリーで、レアメタルであるコバルトやニッケルを使用しないので安価に製造可能なバッテリーです。

BYDのBladeバッテリーその2

現在EVで用いられる標準的なバッテリーであるニッケル・コバルトを使用した「三元系」と呼ばれるバッテリーと比較するとエネルギー密度が低い(その分航続距離が少ない)、その代わり発火などの事故のリスクも低く、耐久性も抜群というのが特徴です。

「安価で耐久性はあるけど、航続距離に難がある」というのが特徴です。

ジンバブエのBYDディーラー

「中国のバッテリー」という単語を聞いただけで「燃える」だの「安全性ガー」と言い出す人が現れると思いますが、バッテリーに釘を刺したBYDの実験結果が以下のものです。

BYDの電池に釘を刺す実験

このようにバッテリーに釘を刺すことによる変化をバッテリー上に卵を置いてみる実験でも、「三元系」のバッテリーが500度まで発熱して発火したのに対し、「Blade Battery」はたったの30-60度までしか上昇せず、当然発火も起きず置いた卵も調理すらされていないという驚異の技術です。

BYDはこのような特徴を持つLFPバッテリーに、従来からのバッテリーに前提だった「モジュール」を撤廃する「Blade Battery」として市場に出しています。

LFPバッテリーを長さ2メートルにまで引き延ばし、厚さを13.5ミリに抑えています。そしてバッテリーをモジュール化せずにバッテリーパックに直接仕上げ、結果的に空間利用率を高めているのが「Blade Battery」の特徴です。

従来のバッテリーパックはバッテリーをモジュールに、モジュールをバッテリーパックにと大量の構造部品を用いて連結や固定を行う必要があり、空間利用率は40%に留まるのが一般的でした。

簡単に言えば「無駄なスペースが多い」ということであり、搭載できるバッテリーの容量が小さくなればその分航続距離が短くなります。

「BladeBattery」搭載のプラットフォーム

これが「Blade Battery」になることで無駄なスペースを活用できるようになり、空間の堆積を50%増加させることができます。

イーロンマスクは「250マイル(400キロ)以上走れないEVに商品価値はない」と明言しており、モデル3より更に小型になるモデル2にはモデル3以上にバッテリーを詰め込まないと航続距離が出せません。

となると論理的に考えると「モデル3はCATLのLFPバッテリー」「モデル2にはBYDのBladeBattery」と役割分担をしてきても不思議ではありません。

ちなみに本日触れた点以外でのBYDの驚異な点については、以前記事にしていますのでこちらもご参照いただければと思います。

「LFPバッテリーを開発する気なし」と宣言する日本メーカーで大丈夫なのか?

トヨタ・パナソニック製のバッテリー
先日も「パナソニック大丈夫なの?」というテーマでトヨタとパナソニックの協業である「プライムプラネットエナジーアンドソリューション(PPES)」について触れましたが、当時は「2025年までハイブリッドとEVのどちらが主流になるか見極める」という社長の発言が「遅すぎる」と批判しました。

実はこのインタビューにはもう一点「大丈夫か?」と思わせる記述があり、現在CATLやBYDなどの中国勢が開発を進めるLFPバッテリーについて「プライムプラネットとしては取り組まない」と明確に宣言しており、「これで中国勢とどうやって競争するの?」という疑問があります。

片やBYDは自社のEVのみならず他社へも「Blade Battery」を供給することを表明しており、同じ中国のCATLと共に世界にシェアを拡大していくことが濃厚です。

「格安EVにはLFPバッテリー」「高級車には三元系や将来的には全固体」という方向に世界が進んでいる中で、今後最もニーズがあると思われる大衆車セグメントのバッテリー生産に力を入れないようでは「この会社大丈夫か?」と思うところです。

以前の記事で「プライムプラネットに日本政府が出資」という話もしましたが、せっかく投入される資金(元は税金です)が無駄になるのではと懸念してしまいます。

「ジャパンディスプレイの二の舞では?」という懸念が徐々に現実になっています。

もちろん以前紹介したトヨタが2022年に発売と表明している「BZ4X」のサプライヤーにBYDが名を連ねていますので、PPESの方がLFPバッテリーを生産しなくてもBYDからバッテリー供給を受けることによってLFPバッテリーが採用される可能性はあります。

ただしこのようにバッテリーを「外注」していると地政学的リスクなどに対応できない、EV生産の根幹となるバッテリーの供給を中国メーカーに握られてしまうというハイリスクな生産体制になってしまいます。

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