テスラが相手でもパナソニックにも生き残る道が?【パナは4680セル・LFPはBYDのを採用?】
こんばんは、@kojisaitojpです。貯まっているネタを消化していくので以前も取り上げたネタですが、テスラのQ3の決算発表の後から再度話題になっているようです。
以前も噂になってたけど再びBYDがテスラにLFPバッテリーの供給が噂に。
Rumor: BYD To Supply Tesla With 10 GWh Of LFP Batteries https://t.co/2NKpVeji7e @insideevs.comより— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) October 22, 2021
噂が出ては消えるBYDによるテスラへのバッテリー供給ですが、また再燃しているようです。
ちなみに私が以前「BYDのLFPバッテリーをテスラが採用?」というテーマで論じた記事はこちらになります。合わせてご参照いただければと思います。
テスラ「モデル2(仮)」にBYD「Blade Battery」が採用される?【2Qの決算も紹介】
テスラが中国BYD社のバッテリーを採用する?というニュースが出ました。BYDは「Blade Battery」という独自の形態のLFPバッテリーを開発しており、低コストで搭載バッテリー容量を増やせるというメリットから新型の「モデル2(仮)」に搭載される可能性があります。2Qのテスラの決算内容の紹介と合わせて解説します。
記事のリンクを貼っていて気づきましたが、この噂もQ2の決算直後でしたね。。。
少し前の話ですが、イーロンマスクは以前こんな発言をしています。
We intend to increase, not reduce battery cell purchases from Panasonic, LG & CATL (possibly other partners too). However, even with our cell suppliers going at maximum speed, we still foresee significant shortages in 2022 & beyond unless we also take action ourselves.
— Elon Musk (@elonmusk) September 21, 2020
要は一言で言えば「バッテリーが足りない」ということです。テスラが要求する量のバッテリーを調達するには自社で生産するだけでは全く足りず、パナソニックや韓国・LG、中国CATLや今回噂になっているBYDなど協力関係を築けるあらゆる企業から調達する必要性を訴えています。
今日は最近のテスラから出てきた情報として、上記のBYDのBladeバッテリーを採用するという噂とついにあの4680セルがギガベルリンで公開されたことでパナソニックにもまだ希望の光が見えたことについて解説します。
目次
テスラの「4680」はパナソニックが担当?
まずは先日ついに一般公開されたテスラのギガファクトリー・ベルリンの見学に行った方々がアップしてるこの画像を見て何を感じますでしょうか?
Picture on the left shows 2170 cells and on the right 4680 cells 😍 $TSLA #GigaFest pic.twitter.com/gEbtTc4PWh
— james (@j_power1) October 9, 2021
シャシーにバッテリーが埋め込まれている「セルトゥシャシーか?」と思わせる構造も注目なのですが、これについては今日の本題ではないので次回以降の記事で取り上げます。
本日注目して欲しいのはシャシーに敷き詰められているバッテリーのサイズです。右側のシャシーには明らかに大きなサイズのバッテリーが搭載されてますよね。
これが現在テスラが協業先のパナソニックや韓国・LGと開発中の新型バッテリー「4680セル」です。知らない方向けに行っておくと4680というのはバッテリーのサイズで「46mm×80mm」という通常の電池と比べるとかなり大きなサイズです。
パナソニックエナジーの只信社長インタービューまとめ
✅4680セルの技術的なメドはほぼ立った
✅4680は2170の5倍の容量、バッテリーデー前から議論✅LFPより安全性と容量に優れ、トラックにも使用可
✅現時点ではLFPの生産は考えていない
✅新技術を開発後に増産に投資https://t.co/A7lyfOUjbi— 🌸八重 さくら🌸 (@yaesakura2019) November 5, 2021
バッテリーのサイズが大きくなることで、バッテリーを敷き詰めた際に電池の面積が大きくなるのは簡単にわかるかと思いますが他にもメリットが多数あり、
- エネルギー密度が5倍になる
- バッテリー容量アップにより航続距離が16%伸びる
- 従来のバッテリー(2170)と比較して14%のコストダウン
このようなハイパフォーマンスを期待できるのでテスラが現在開発中の大型の車両、サイバートラックやSemiなどで活用されることが期待されています。
「じゃあ何で今まで大きな電池がなかったんだよ?」と思うでしょうが、ハイパフォーマンスとトレードオフとなるデメリットもあり、
- 大きなサイズのせいでセルの中心部分を冷却できなくなることによる発熱・発火のリスク
- 発熱のリスクがあるので充電速度を抑える必要があるのでバッテリー容量がアップしてもメリットがない
このような理由から大型のバッテリーはこれまで開発されてこなかったわけですが、そこは以前から私も強調している「テスラの本質はバッテリーマネージメント(熱管理)の会社」という長所がフルに発揮されるところです。
以前「オクトバルブ」などのテスラのバッテリーマネージメント(熱管理)について解説した記事がありますのでこちらもご参照いただければと思います。
オクトバルブとBMS(バッテリーマネージメントシステム)を用いるテスラのイノベーションとは?
テスラがモデルYから投入した「オクトバルブ」という独自の温度管理システムについて解説します。「BMS(バッテリーマネージメントシステム)」によってバッテリーの温度調整の成否が電気自動車の航続距離やバッテリーの寿命も左右する電気自動車の要のシステムにイノベーションをもたらすことで、テスラが更に進化したことがわかります。
そんな熱管理のスペシャリストであるテスラと駆動用バッテリーの開発でこの前まで世界でトップを走っていたパナソニックがたどり着いた現時点でベストのサイズが「4680」というサイズのバッテリーなのです。
このサイズであればバッテリーセルの発熱を抑えて、充電速度もキープしたまま最大のパフォーマンスを発揮できる
「Canoo」にも「AppleCar」にもパナソニックのバッテリーが採用?
ちなみに4680セルのおかげでテスラから見放されることを回避できそうなパナソニックにはこんな噂もあります。
BYDとCATLが乗って来なかったのは意外。
アップル、EV電池調達でパナソニックを候補に 中国2社との協議不調=関係筋(ロイター)#Yahooニュースhttps://t.co/fNk2H8H6UN— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) October 22, 2021
Appleが開発中のEVにバッテリーを供給先として交渉しているのが、以前から噂のBYDやCATLではなくパナソニックという話です。
ですがあまりのスピード感のなさにテスラを怒らせてしまったパナソニックが、テスラと同等かそれ以上の高い要求を突きつけることで有名なAppleとやっていけるとはとても思えません。
やはりAppleの製造を請け負うのは、先日も取り上げたフォックスコン(ホンハイ)しかないのかなと思うところです。
まさかCanooがパナソニック選ぶとは思わなかった(笑)。
Canoo Picks Panasonic As Battery Supplier For Its Lifestyle Vehicle https://t.co/bNqkgnPhan @insideevs.comより— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) October 26, 2021
元BMWのメンバーが作った新興EVベンチャーの「Canoo」には実は私も個人的にかなり期待しており、以前も何度か取り上げたことがありますのでよろしければご参照いただければと思います。
「Canoo」のPickupTruckや「サイバートラック」が提供するEVのワクワク感とは?【日本メーカーが失ったもの?】
斬新なデザインと多目的にアレンジ可能なワゴンやバン(BEV)を発表していたアメリカの新興企業「Canoo」が今度はピックアップトラックを発表しました。5メートルを切る小型のピックアップでありながら、BEDと呼ばれる拡張機能、キャンピングカーのようにアレンジも可能な魅力的なピックアップが2023年から発売予定です。
カヌー「MPDV」でハイエース・キャラバンもEV化しないとオワコン?
カヌー(Canoo)というアメリカの新興EVメーカーが「MPDV」というトヨタハイエースや日産キャラバンに対抗できる規模の商用バンを電気自動車でリリースします。カヌー社は他にもサブスクリプション式の車種を発表していたりと「CASE」という近年のトレンドを踏まえた斬新なビジネスモデルを提供しているので取り上げてみます。
テスラが開発中のサイバートラックよりは小型で日本で発売されても実用的な感じがするピックアップトラックや、独自開発のスケートボード式のプラットフォームで確保した空間が配送用のバンとして理想的な「MPDV(MULTI-PURPOSE DELIVERY VEHICLE)」、最初から完全自動運転を視野に入れたかのような湾曲したベンチシートを搭載し、4.4メートルの比較的小型の車体に7人が圧迫感を感じないで乗れる車内が特徴の「Canoo」などEVであることを最大限に生かした斬新な車両を開発しており、私も大いに期待している新興EVベンチャーの一つです。
この「Canoo」のバッテリーにパナソニックがテスラと共同開発した2170セルを使用する(もちろんテスラ側は許可してます)、将来的には今話題の4680セルの提供もあり得るとテスラ以外にもパナソニックがバッテリーを供給できる可能性が広がってきました。
これまでパナソニックはテスラ以外だとトヨタと共同で設立した「PPES(プライムプラネットエナジーソリューション)」位しかバッテリー供給を行う自動車メーカーが存在せず、元は世界トップだった駆動用バッテリーの世界シェアを韓国LGや中国CATLなどに取られる一方でしたが、ようやくシェア拡大のチャンスが訪れています。
「AppleCar」の方は現時点では噂のみですし、あの世界のどこよりも品質管理やサプライヤーへの要求が厳しいことでも知られるAppleがパナソニック製のバッテリーを採用するかはわかりませんが、「Canoo」との発表の方はテスラからの許可も得た上での正式発表です。
私のブログでも「実はパナソニックはオワコン?」「いずれテスラにも捨てられる?」と先行きを危惧したことがありましたが、世界中でバッテリーが足りないという事情も良い方向に作用したのかどうにか生き残っていけるかもしれません。
急成長のテスラに付いていければパナソニックも復活へ?
このネタを出すと発狂する方々がいるので出すべきか悩むところですが、事実は事実なので遠慮なく引用します。
【テスラ( $TSLA )2021 Q3決算まとめ】
1)単期収支○車両
✅売上:約120億ドル(+58%)
※Credits 2.8億ドル含む
✅粗利:約37億ドル(+74%)
✅利益率:30.5%(+2.8p)○合計
✅売上:約138億ドル(+57%)
✅粗利:約37億ドル(+77%)
✅利益率:26.6%(+3.1p)✅過去最高益・売上、9期連続黒字達成! pic.twitter.com/gzDEDJdKsf
— 🌸八重 さくら🌸 (@yaesakura2019) October 21, 2021
ニューヨーク市場でテスラの株価は決算後もグングン伸びており、これまでの史上最高値を超えて既に未開の境地に達しています。
株式の話になると昨年テスラがトヨタの時価総額を超えて、自動車メーカー(テスラにこの表現が当てはまるかも疑問ですが)の中で世界一に立って以降「実態を反映しない虚業だ」とか「仮想通貨やCO2クレジットで儲けてるだけ」など悪口が色んな方向から飛んでくるのですが、これが世界の現実です。
と言ったところで「どうせCO2クレジットで儲けてるだけだろ!」と怒る人はいるのですが、先日発表になったQ3の決算はそんな外野からの野次を吹っ飛ばす数字です。
37億ドルの粗利のうち、いつも叩かれるクレジット販売はたったの2.7億、後はEVや蓄電池、太陽光パネルなどいわゆる「実業」で稼いだものです。
それだけではありません。経営者でも個人事業主でもいいですが自分で事業をやっていると「利益率30%」という数字の恐ろしさわかりますよね?
しかもテスラの場合はスーパーチャージャーという急速充電ステーションや先ほども引用したギガベルリンやギガテキサスなど新規の設備投資が目白押しです。
その中でこの利益なのですから、本来であれば世界が認める企業に成長したと素直に認めるべきでしょう。
実はこのスピードについて行けてなかったのがパナソニックで、
「テスラ・サイバートラック」の4680バッテリーが韓国メーカーに?【パナソニックもオワコン?】
テスラがサイバートラックなどに搭載予定の最新のバッテリー「4680セル」を何と韓国のLGとサムソンが共同でサンプルを作成したというニュースが出ました。これまでテスラの主力のバッテリーサプライヤーだったパナソニックも4680セルが採用されなければ超大口顧客を失いピンチに陥る可能性が出てきました。その原因を探ってみます。
上記の記事でも解説しましたが、パナソニックは4680セルの開発が韓国LGよりも遅れており、先にサンプルをテスラに提出したのがLGで「このままだとパナソニックが負けるぞ」と懸念されていました。
ですが世界中でバッテリーが足りない状況がパナソニックに味方したのか「開発のスピードが遅い」と度々イーロンマスクが不満を漏らしていたパナソニックにもまだチャンスが残っていたようです。
テスラに4680セルが採用され、「Canoo」や「Apple」へのバッテリー供給先として選ばれるようであれば一度は世界のトップシェアから滑り落ちたパナソニックに復活の芽があるかもしれません。
もはや自動車メーカーの方にはほとんど期待できない状況ですがパナソニックはEV化の時代にもしぶとく生き残る可能性が出てきたと思います。
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