新型電池「4680セル」と「サイバートラックmini」が次のテスラの武器?【パナソニックも復活?】

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こんばんは、@kojisaitojpです。私の言葉で表現すると「首の皮一枚で生き残ったな」というのが正直な感想です。

パナソニックはテスラにかなり早い段階からバッテリーの供給をしていましたが、近年は中国CATlや韓国LGなどに押されて明らかに劣勢な立場に追い込まれてました。

今回発表した「4680セル」についても韓国勢が先行してる報道について以前取り上げた時にも「パナソニック切られるかも」と懸念しましたが、どうやらパナソニック製の4680セルをテスラが採用してくれるようです。

そこで今日はパナソニックの「4680セル」の生産計画と、この電池によってようやく生産への道が開けてきたサイバートラックの新しい情報も紹介します。

4680セルのおかげでテスラとの関係維持に成功のパナソニック

パナソニックの4680セルバッテリー

今回のパナソニックの発表は、テスラとパナソニックが共同で開発を進める新型バッテリの「4680セル」をパナソニックの和歌山工場で生産を始め、2022年中には試作品を、2023年には完成品をテスラに納入する計画のようです。

「日本で生産するの?」と驚くところですが、パナソニック側の説明だと「住之江工場(大阪市)や本社周辺の研究開発拠点に近い」方が熟練の技術者を確保できて開発が早いことを理由に挙げています。

以前のアメリカ・ネバダ州の「ギガファクトリー1」立ち上げの際に苦戦した経験を生かしてるという意味では進歩の跡がうかがえます。

2014年にテスラとの共同のプロジェクトに合意したものの、当時の新型だった「2170セル」の生産に4年かかってしまいイーロンマスクにも「パナソニックは遅い」と批判された失敗を2回は繰り返さないということでしょう。

「パナソニック=何をやっても遅い」というのが当初独占だったテスラへのバッテリー供給が中国CATLや韓国LGの進出を許してしまった原因なことを認識してるようです。

4680セル搭載のモデルY

「46mm×80mm」と従来の電池と比較してかなりサイズが大きくなりますが、これによって航続距離が16%伸びる上に、従来のバッテリー(2170)と比較して14%のコストダウンが可能になります。

「4680セル」の具体的な解説は以前書いてますので、こちらもご参照いただければと思います。

上記の記事でも指摘しましたがバッテリーのサイズが大きくなるということは「電池の中心部までの冷却が困難→発熱・発火のリスク」という問題があることからこれまで実現してませんでした。

そこにバッテリーの冷却、つまり「熱管理」のスペシャリストであるテスラの役割が発揮されます。

なおこの「オクトバルブ」というテスラの熱管理技術については以前の記事で詳しく取り上げてますので、ご参照いただければと思います。

テスラの最大の武器がこの「オクトバルブ」などに代表される「熱管理」の技術であり、一番わかりやすい例だとバッテリーの温度管理を行う「バッテリーマネージメントシステム(BMS)」です。

4680セル最大の問題である「冷却をどうする?」をテスラの熱管理技術で克服することが、新しいサイズの電池を可能にしました。

ですので4680セルはパナソニックとテスラの技術が合わさったことで可能になるもので、4680セルのおかげでサイバートラックやSemiのような大型車両のEVが可能になります。

ただしここで得られたノウハウは他社の製品でも生かされるものですので、テスラとのプロジェクトが成功した後にはパナソニックから他の自動車メーカーへの4680セルの供給もあるかもしれません。

一言だけ日経に苦言を

日経新聞の表
ちょっと今日の本題からは外れますが、先ほどの日経新聞の表を引用します。

この表をEVのことをある程度知ってる人間が見ると「航続距離の基準が書いてない」と誰もが疑問を抱くところです。

WLTCモードだとしても2種類ありますし(日本WLTCと欧州WLTC)、日本にはJC08モードという更に甘い基準もあります。他にもアメリカで用いられる「高速道路を時速100キロで走行し、クーラーをつけても達成可能な」EPAサイクル(少し厳しすぎるとの見解もあります)もあり、「どの基準で距離書いてるの?」とツッコミが入ります。

一番酷いのが表の一番下の「全固体電池 1000km」という表記であり、まだ実用化すらされていない全固体電池が勝手に1000キロ走れる前提にするなよと思ってしまいます。

ちなみに全固体電池については以前の記事で「過剰な期待は禁物」ということについて触れてますので、こちらもご参照いただければと思います。

ちなみにEPAサイクルに換算した航続距離を計算されているツイートも見かけましたので引用しておきます。

まぁ結局は全固体電池に関しては「1000キロ走ると言ってるよ(自称)」でしかないのですが、それよりも4680セルをテスラ「モデルS」に搭載した場合の739キロという距離に注目すべきでしょう。

現行のリチウムイオン電池でも既に1000キロが視野に入る位まで進化してる事実が重要です。

「全固体電池が出れば一発逆転」と言っている間に世界の自動車メーカーが現行のリチウムイオン電池で1000キロ近い航続距離は可能になったら全固体電池の役割は?となってしまいます。

あのサイバートラックに「Mini」も登場?

完成目前のサイバートラック
「4680セル」についてはパナソニックが主となるプロジェクトでしたが、テスラ側も新しい情報が出てきました。

それが上の画像にもある「サイバートラック」です。

完成目前のサイバートラック

一目でわかるかと思いますが、公道を走れるようにサイドミラーやワイパーを装着するなどの変更が行われていることにお気づきでしょうか?

サイバートラックのドアを開ける

相変わらずドアハンドルがないのでどうやって開閉するのかは依然不明ですが。

またこちらの記事では「サイバートラックMini」があるかも?という指摘がされています。

これまでもサイバートラックの試作品が公道を走った機会はありますが、現行のサイズだとヨーロッパで販売できないなどの問題が生じます。

そこで「サイズを20%小さくしたサイバートラックMiniも用意してるかも」という噂が出ています。

サイバートラックの車内

現在のサイズ(推定)だと全長が6メートル以上、全幅も2メートル以上と思われますが、これが20%小さくなると全長が5メートル以下、全幅も1.8メートル以下になる可能性があり、日本でも気軽に乗れるサイズになるかもしれません。

いずれにせよサイバートラックの今後の情報は2021年Q4の決算発表後にイーロンマスクから発表されるようです。

テスラ・スーパーチャージャーもアップグレード

御殿場スーパーチャージャーとモデル3
とテスラ・パナソニックの新しい情報を書いてきましたが、4680セルという新型電池、新型電池を搭載するサイバートラックの情報と同時にスーパーチャージャーのアップグレードの話も出ています。

現在最大250kWの充電出力のスーパーチャージャーがアップデートにより324kWになるという話です。また現行のV3スーパーチャージャーの後には新型のV4スーパーチャージャーもリリース間近とのことです。

充電速度のすごさもですがスーパーチャージャーを設置した時から将来の充電性能の向上、アップグレードまで視野に入れて設計されていたことが驚きです。

一番最初は120kW、第二世代からは250kWと徐々に速度を上げてきましたが、ついに324kWにアップグレードされる背景には本日解説してきた4680セルなどに代表されるテスラの「熱管理技術」の向上も影響してると思われます。

現在の日本では最大でも90kW、しかも6台でシェアすると格段に速度が落ちるという大黒PAのCHAdeMO充電器を使ってる状況と比較すると次元の違う世界にテスラが行ってしまっています。。。

ちなみに私がマツダ「MX-30」を借りて充電した時は10kW位の速度だったという話はこちらでしてます。

また車種によって不具合続出の大黒PAの急速充電器についてはこちらの記事でまとめてあります。

日本ではなぜかアンチテスラの姿勢の人が多く、例えばボディのチリが合ってないなどの瑣末な欠点だけを取り上げて「こんな会社いつでも倒せる」かのようにテスラを叩く方々がいますが、現在の日本メーカーでテスラ車のような航続距離や急速充電性能を出せるメーカーがいるでしょうか?

テスラストア・フランクフルトのモデルY

テスラが航続距離も伸びて価格も下がる4680セルを武器にサイバートラックだけではなく、近いうちに日本でも発売が予想されるモデルYや数年以内に登場が噂される25000ドルの小型EV(通称「モデル2」)が日本だけでなく世界中で猛威をふるう日はすぐそこまできています。

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