テスラの値上げを叩く「デフレマインド」こそが日本衰退の原因?【実はディーラーよりお得】

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こんばんは、@kojisaitojpです。日本人の場合「値上げ」という単語を聞いただけでカッとなる人が多いのが残念(後述)なところですが、「テスラ・モデル3」の価格が値上げされました。

テスラは自動車メーカーの中では非常に珍しく頻繁に価格変更をする会社ですが、今年に入ってから既に3回目(日本市場の場合)です。

とはいえ日本市場の場合は2月の値下げが100万円を越える大規模な値下げでしたので、依然として昨年と比べるとお得感があるのですが、なぜかネット上では不満の声だらけです。

「デフレマインド」に侵されてる日本人が多いなぁという感想ですが(笑)。

あ、先に言っておきますが、某YouTuberのように「早くポチらない奴はチキンだ」とか煽る気は一切ありませんのでご安心を(笑)。

今日はテスラの値上げ(価格変更は今年既に3回目)に着目して、「なぜテスラは頻繁に価格を変更するのか?」「なぜ他の自動車メーカーの価格は変動しないのか?」について考えてみます。

テスラ車の価格推移と値上げの原因とは?

伊豆マリオット修善寺とモデル3
日本市場でのテスラの価格変更は2021年に入ってから3回目ですが、過去の推移をまとめると、

  • 2021年2月→「モデル3」の大幅値下げ(SRで82万、LRで156万2000円)
  • 2021年4月→「モデル3」の値上げ(SRで5万、LRで10万)
  • 2021年6月→「モデル3」の値上げ(SRで5万、LRで10万)

先に結論を言ってしまうと「年明けに100万以上下がったのに10万くらいの値上げで文句言うなよ」が私の感想です(笑)。

とはいえこれは日本市場だけの特殊なパターンで、2021年2月の値下げはこれまでカリフォルニア州のフリーモント工場から輸送されてきた「モデル3」が昨年から稼働している上海工場製に切り替わったという地理的な条件が原因でした。

駐車中のモデル3

この上海製「モデル3」に関しては私もフリーモント製と両方に実際に試乗して「質が上がった」という感想を持ちましたので、以前の記事をご参照していただければと思います。

そして今回の値上げの原因は冒頭に引用したイーロンマスクのコメントにもあるようにシンプルに「資源価格の高騰」です。

他にも車(EV)で使われるものの価格推移を並べるとこんな感じです。

アルミニウムの価格推移
ニッケルの価格推移

テスラ車の場合ボディがアルミですし、バッテリーに使用するリチウムなどもこのように上がっています。

原因は単純で「コロナショックに対応するために世界各国が金融緩和」したからです。アメリカ、EU、日本とどこの中央銀行もじゃぶじゃぶに資金供給を行っていることで、「通貨発行量が増えると貨幣価値が下がってインフレ(物価上昇)になる」という公民や政治経済の授業などで習った教科書通りの展開です。

日本の株価を見ても去年の今頃20000円前後だった日経平均株価が30000万円付近。特に景気が良くなった実感もないのにこれだけ株価が上昇しているというのはそれだけ日本円の貨幣価値が下がっていることの現れでもあります。

同じことはアメリカでもヨーロッパでも起きており、どこの国でもコロナ前の株価を大幅に超える状況で推移しています。

あ、「これだけ貨幣価値下がってるのに投資しない奴はチキンだ」とか煽る気もないのでご安心ください(笑)。

まぁここで「投資しない奴はアホだ」と煽りまくって証券会社のアフィリエイトリンクを貼りまくると儲かるというのが現実ですが、そういうコンセプトでこのブログやってませんので。

ちなみに原油もこんな感じです。

原油の価格推移

原油やガソリン価格がどんどん上がっているのに「だから再エネをもっと積極的にやろう」という声が出てこないのは私のようなEV推進派からすると理解に苦しむところですが。

反対派の言い分はわかってますので「日本で再エネは向かない」とか余計な茶々は入れないでください。Twitterで生産性のない絡み方をしてきた場合は即ブロックしますので。

テスラが販売価格を実質「時価」にするのも旧来の「ディーラー」への挑戦

テスラのショールーム
テスラのように頻繁な価格変更によって実質「時価」のような価格でユーザーに販売するというビジネスモデルは、実は旧来の「ディーラー」を活用した販売モデルでは不可能であるという意味でも革新的です。

外からは見えにくいですが、自動車メーカーとディーラーは本来別の組織です。

自動車メーカーはディーラーに新車を販売し(もちろん販売価格より安く)、それをディーラーが利益を乗せた販売価格で(パンフレットなどに掲載されるのはこの価格)販売しています。

そうすると「ディーラーがメーカーから仕入れた価格」以下に値引きすることは不可能ですし、販売用のパンフレットやチラシなど、価格が変更する度に作り直すのも多額の費用がかかるのでその時の資材の価格に応じて販売価格をいじるということが実質不可能なのが「ディーラー」を活用した販売モデルです。

トヨタディーラーのイメージ

以前もテスラは「ディーラーという自動車業界旧来の販売システムを根本から破壊する」と述べましたが、最近見られるような柔軟な価格変更という面でも実は革新的なことをやっています。

「ディーラーで値引きされても実際は全然得してないよ」というのを知らない人が多い、テスラのようにディーラーを通さず直接ユーザーに販売するからこそ実は安くなっているということにも鈍感な消費者が多いのが日本の残念な現実です。

「値引き」が当たり前と勘違いする日本の自動車業界

デフレ脳に侵された日本人
ちなみに「テスラはネット販売だから値引きしてくれない」という不満をネット上でよく見かけることがありますが、そもそも「値引き」というのもディーラーという販売システムが生み出す「顧客を錯覚させるシステム」だと私は見ています。

元々ディーラーが自動車メーカーから仕入れた価格に利益を乗せて販売しているわけで、ホームページやパンフレットに掲載される価格自体が既に割高になっています。

その割高な価格から多少「値引き」してもらったところで結局は割高なまま買わされるという現実に変化はありません。

ディーラーなしでメーカーが直接顧客に販売するテスラのビジネスモデルの場合、この「ディーラーが上乗せする利益」の部分が最初からありませんので、市場に出てくる価格が旧来のモデルで言えば「自動車メーカーがディーラーに販売する価格」で販売できます。

実はテスラのモデルの方がユーザーにはお得なのに「値引きがない=高い」と錯覚する人が多いのが日本の残念な現実です。d

「値上げ=悪」というデフレマインドが日本を滅ぼす?

既得権益のイメージ画像
「値下げはスルー、値上げに発狂したかのように怒る」という日本人のマインドを私は「デフレマインド」と呼んでいますが、正直言ってこのマインドには害悪しかありません。

今年に入ってからのテスラに対する反応がまさにその典型ですが、2月に100万円以上の値下げ(もちろんこれは上海工場の製品に切り替わったという特殊事情)があったことは忘れたかのようにたかが5万円10万円の値上げに文句を言う姿勢自体が日本人の「デフレに侵された脳みそ」を象徴していると思います。

基本的に経済というものは物価が上昇しない限り賃金も上がらない、つまり経済成長しないという事実から目を背けて「とにかく安くしろ」と主張することがまるで良いことであるかのようにまかり通ってきました。

デフレスパイラル

「物価が上がると年金生活の高齢者ガー」というのが真っ先に上がってくる批判ですが、こういう発言を見るたびに日本の政治が誰の方向を見てこれまでデフレ経済を続けてきたのかがわかります。

「一番偉いのは高齢者だ、若い奴は高齢者のために犠牲になれ」で、経済成長をストップさせてしまっては国そのものが滅んでしまいます。

ただし先ほどいくつかの資源価格の推移を引用したように、世界全体がインフレ方向に向かい物価の上昇が避けられない環境に向かいつつありますので今後否応無しに物価上昇・賃金上昇の方向へ向かわざるを得ないと思うのは私だけでしょうか?

「物価なんてその時々によって変わるものだよ」という当たり前の事実をテスラが教えてくれているように思えます。

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