「やっちゃえ日産」ではなく「やっちまったな日産」?【謎だらけのEV戦略「Green Pass」】
こんばんは、@kojisaitojpです。昨日は「ルノー・日産・三菱連合」を取り上げて「ようやく遅ればせながら本気のEV化へ」と持ち上げた翌日に日産がやらかしてくれました。
GREEN PASS|日産発のEVオーナー優遇サービス
#いいじゃんEVオーナー そんな声が、広がる社会へ。誕生。GREEN PASS。地球にやさしいあなたにちょっとやさしい取り組み、はじまります。
数日前から日産が「EVに関する新たな発表がある」と言われていたので、「もしかしてアリアの他のグレードの発売日が出るのか?」とか「やっと公約だった130kW級の急速充電器を発表か?」「それとも既に三菱が発表した軽自動車EVの日産バージョンが出るのか?」とネット上では期待感いっぱいのツイートなどが流れていましたが、実際に記者会見を見ると「???」という内容でした。
別に最新のニュースをメインに取り扱うブログではないのですが、今日は日産の発表を見て「こりゃあかん」と思ったので記事にしてみます。
目次
「130kWの急速充電器」も「アリアの発売日」もなかった日産の「Green Pass」とは?
一応日産の記者発表も貼り付けておきますが、正直見るだけ時間の無駄かもしれません。
具体的なサービスは以下の2点です。
- 海老名SA下りには、EVオーナーだけが入室できる特別なラウンジを設置
- 東名高速道路・圏央道5カ所のSA・PAで使える、EVオーナー限定のクーポン
これが主な発表内容なのですが、サービス内容を見ても「???」だらけです。まぁ後半のクーポンについてはSAPAの売店で使えるクーポンというだけなのでそれ以上の説明はいらないかと思います。
肝心なのは海老名SA下りに設置される「Green Lounge」についてですが、
- 気候変動の影響で生産量の減少が危惧されている素材を使ったハンバーガーの提供
- ラウンジ内の家具をはじめとした内装は、段ボールとリサイクル可能素材を使用
と非常に乱暴な言い方をしてしまうと「ダンボールハウスでハンバーガー食わせてやるよ」というサービスです。。。
まぁ「EVオーナー」と書いてあるだけですのでテスラなど他社のオーナーでも入室できるのかなとは思いますが、そもそも「EVオーナーが望んでいるサービス」なのでしょうか?
しかもよく見るとツッコミどころ満載で、例えばハンバーガーに記載されている「気候変動の影響で生産量の減少が危惧されている素材」というも私からすると「それってSDGsの観点からどうよ?」と思うところです。
SDGsについては以前の記事で解説してますので多くは語りませんが、「持続可能な社会」を目指す企業が絶滅の危機にある食材を提供するという時点で日産の株主、特にESG投資という縛りがある外国人投資家から怒られるんじゃないの?と思ってしまいますが、私の感覚がおかしいのでしょうか?
「ESG投資」「SDGs」で世界から見放される日本?【EVがハイブリッド?・再エネが原発?】
今日は「ESG投資」とその指標でもある「SDGs」について説明します。環境や人権などに配慮した適切な企業運営ができているか世界から厳しい目に晒されるので「ハイブリッドもEVだ」とか「二酸化炭素出ないから原発推進」のような頓珍漢なことを言っていると世界の投資マネーが逃げていき、日本が世界から見放されることにつながります。
ちょっと大げさかもしれませんがこれだけでも「サステイナブルを重視しない会社への投資は引き上げる」と外国人投資家が怒っても不思議はないレベルです。日産の株主構成はルノーが大株主である以外詳しく知りませんが東証一部上場企業の株式の50%以上は外国人投資家が握っています。
外国人投資家の怒り(というより失望の方が適切?」)を招いて株が叩き売られたらとか考えないのでしょうかね。
EVオーナー、特に日産のEVに期待する人々が切望する「アリアのスペックに見合った150kW級の急速充電器」とか「B6以外のアリアの発売日」「軽自動車EV(サクラ?)の発表」とかを全くアナウンスせずにこのようなイベントをやったところでファンからの不信感を招くだけでは?と思うのは私だけでしょうか?
今回の記者発表で残念ながら日産が「EVを購入する顧客のニーズ」をつかめていないことがバレてしまったような気がします。
「EVを購入する顧客のニーズ」をつかんでるのは海外メーカー?
同じ市場で争うのでどうしても同業他社との比較になりますが、日産とほぼ同時にこんなニュースも出てきています。
BMWも150kW用意するのか。
BMW、新型EV『i4』を日本市場投入…価格は750万円より https://t.co/HUTQwIidtO— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 16, 2022
BMWが最初の本格セダン型EVの「i4」を日本でも発売しますが、BMWは購入者に「ディーラーに150kWの充電器を設置」と「ディーラーの充電器とe-MobilityPowerの公共の充電器が1年間無料」というサービスを付けてきました。
自分が初めてEVを買う立場であれば「1年間燃料代がタダ」なのと「数は多くないけどディーラーに行けばその辺にある充電器より高速で充電できる」と思えば単純にうれしいですよね?
「EVを購入する顧客のニーズ」をつかんでるという意味ではこちらも同じです。
営業の話うろ覚えだったけどきちんと見たら「1年間充電無料」と「普通充電器サービス&工事費用補助」の大盤振る舞いだった。EV買う客が望んでるサービスってこういうのでしょ?という話。しかも純正の普通充電器は8kW。https://t.co/pibtNqaDJY
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 16, 2022
私が先日「e-tron」の試乗に行ったアウディですが、こちらは「1年間の充電無料」と「普通充電器(自宅用)は無料、工事費も17万5000円まで補助」と大盤振る舞いです。
しかもアウディとフォルクスワーゲンのディーラーに150kWの急速充電器を設置し、両方のユーザー専用です。
他にも私が先日試乗に行ったメルセデスでも充電は1年間無料と自宅用の普通充電器はサービスするようなことを言ってました(ディーラーによって違う可能性あり)。
ドイツ勢各社のサービスは「充電」に絡む、つまり「初めてEVを購入するユーザーがもらって嬉しいもの」を提供しています。
先日日本市場への再参入を表明したヒョンデ(ヒュンダイ)についてはまだ「IONIQ5」の予約は始まってませんので具体的なサービスは不明ですが、他の外国車メーカーが「充電無料」などのサービスを提供していることから似たようなサービスを提供してくる可能性は大いにあります。
ファッション誌やガジェット系に掲載してくるところに狙いを感じる。
新型ヒョンデIONIQ 5日本上陸! 479万円からの韓流最新EVとは? https://t.co/rHxNXQyjpZ @GQJAPANより— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 16, 2022
具体的なサービスが発表される前の段階でも既に「IONIQ5」の紹介記事が普通の自動車メディアだけではなくファッション誌やガジェット系のメディアにも頻繁に登場しており、これまでのユーザーとは違う層へのアピールをしようという意欲的な姿勢を感じます。
ちなみに現在はサービスを打ち切っていますがテスラも以前であれば「スーパーチャージャー永年無料(2017年まで)」とか「ウォールコネクター(自宅充電器)かCHAdeMOアダプターを無料で提供」のサービスをやっていました。現在は安定した売上台数が出るようになったのでやめたようですが顧客が「EVに変えても困らないサービス」を提供していたという意味では一緒です。
「EVオーナーのニーズ」をつかめていない日産などの日本メーカー
海外勢がこのように「充電」へのサービスを売りにしたり、ファッション性・ガジェットなど違う分野へのアプローチも行っているのと今回の日産の「Green Pass」を比較すると冒頭で私が「やっちまったな日産」と言いたくなるのがお分かりいただけたかと思います。
それやってたら評価爆上がりですよ💦
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 16, 2022
まぁ別に顧客向けのラウンジが悪いというわけではないので、例えば海老名SAに設置するラウンジの横にアリアの性能に見合った150kW級の充電器を複数台置いて「今後この充電器を全国のディーラーに設置します」と宣伝活動でもするのであればEVファン、特に日産のEVが欲しいという層に強く訴えることができたのに…と思ってしまいます。
「いや、150kWの充電器は開発できてないから」というのは既にポルシェが設置してる上に今後アウディ・フォルクスワーゲンの全てのディーラー、先ほど引用したBMWのディーラーにもこのレベルの急速充電器が設置(多分スイス・ABB社製でしょう)されることを考えると「できない理由」にすらなりません。
(上記のものはポルシェディーラーの90kWのものです)。
2010年に日産リーフを世界で最初に全世界に販売したパイオニアとしての日産の歴史を考えると「もうちょっとマシな広報活動できないの?」と思ってしまうところです。
片や日本を代表する自動車メーカーであるトヨタでもこのような記事が出ています。
トヨタEV8年後に350万台の衝撃試算、売上50兆円でも利益は「ハイブリッド車」に依存
満を持して、トヨタ自動車が「2030年にEV(電気自動車)350万台を販売する」大方針を掲げた。トヨタはこの大本営発表をもって「EVに及び腰」という世間の認識を払拭したい構えだ。それでもトヨタにとって、EVシフトはガソリン車やハイブリッド車(HEV)で極めた「勝ちパターン」を自ら取り下げるようなものである。EV350万台を達成した時点のトヨタの業績を大胆に試算し、EV大攻勢へ舵を切るトヨタの苦悩に迫った。
先日私も取り上げた「EV16車種、350万台販売」という計画の中身に触れた記事ですが、どうやらEVをいくら売っても利益が出ないようです。
しかも別途週刊誌などでこの発表の際に並べられたEVのほとんどが「ハリボテ」であることも暴露されてますし、見た目はトヨタでも「中国BYDからのOEMでは?」という噂もあり「本気でEVやる気あるの?」と疑いの目は晴れません。
トヨタのEV化計画から感じる疑念とは?【BYDの電池?合弁?】
12月中旬にトヨタが今後のEV化戦略として「数年以内に16車種投入」「レクサスは全車EV化」など総額4兆円の投資計画を発表しました。しかし内容を見るとVWやダイムラー、GMなどと比較して特段に大きな投資ではなく、しかもトヨタのEVの影にはバッタリーのサプライヤーとして中国で合弁会社を設立した「BYD」の影も見えます。
私も実物を間近で見てきましたが、確かに2022年に発売が予定されている「bz4X」以外は車っぽい感じがしない模型のように見えてしまいました。
このように日本を代表する自動車メーカーである日産やトヨタが「本気でEVやる気あるの?」と思われる残念な状況です。そりゃ先ほどあげたアウディやBMW、日本市場に再参入するヒョンデ(ヒュンダイ)から見ても「EVだったら今まで日本勢に勝てなかった日本市場で勝てるかも」と期待して参戦してくるよなと思ってしまいます。
先日六本木ヒルズにヒョンデ(ヒュンダイ)「IONIQ5」を見学に行った記事にも書きましたが、日産「アリア」とほぼ同じくらいの装備・スペックの「IONIQ5 Lounge」が549万円、片やアリアの「B9Limited」は740万です。
もちろん内装の豪華さなどアリアが上回っている部分はありますが、そこに200万余計に出せる人がいるの?と思ってしまいます。
反対に740万出せる顧客であれば先ほど紹介したアウディ「Q4e-tron」やBMW「i4」も予算的には許容範囲でしょう。
日本勢の出すEVの中でようやくテスラなどとも同様の勝負ができると言われていた「アリア」がこの有様では先が思いやられてしまいます。
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