「ルノー・日産・三菱連合」がようやく出したEV化計画とは?【ECU統合とOTAアップデートも】

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こんばんは、@kojisaitojpです。ここのところ「ヒョンデ(ヒュンダイ)・起亜グループ」のことをたくさん取り上げてきましたが、EVでは古豪とも言うべき「ルノー・日産・三菱連合」も少しずつですが動き始めています。

個人的には記事の中で強調されている「全固体電池」はおまけのようなもので大して重要ではないと思いますが。

それよりもようやく「ルノー・日産・三菱連合」が本格的なEV化へ向けて動き出すことの方が重要かと思います。

他にも日産からこのような噂も出ています。

まぁ日本市場や中国市場でのエンジン開発終了は決まってないと会社から声明は出ましたが、まずヨーロッパでエンジンの開発を止めてそこから他の地域にも波及していくことはおそらく確定でしょう。

というわけで今日は「ルノー・日産・三菱連合」が遅ればせながら表明したEV化戦略ともう一つの重要ポイントの「コネクテッド」について解説します。

「ルノー・日産・三菱連合」で共有のプラットフォーム・バッテリーでEV化を推進

世界の自動車販売ランキング2019

まずは当たり前の事実を確認しておきますが「ルノー・日産・三菱連合」トータルでの売上台数はトヨタ・フォルクスワーゲンに次ぐ世界3位の巨大グループで、私がここのところ取り上げている「ヒョンデ・起亜」が世界5位なので更に格上の存在です。

そもそも「ルノー・日産・三菱」に関してはルノー「Zoe」・日産「リーフ」・三菱「アイミーブ」と世界でいち早くEVを市場に出したメーカーで(テスラがモデルSを市販化したのはその後)、いわばEVの世界で「古豪」です。

ところが最初のEVを市販化して以降はEVを推進する動きが停滞しており(日産「アリア」を巡るグダグダ具合が日本だと一番わかりやすいでしょうが)、EV化の動きに関してはフォルクスワーゲングループやヒョンデ・起亜グループよりかなり遅れているように見えました。

それがようやく今後5年間で電動化に総額230億ユーロ以上の投資を行ない、2030年までに35車種の新型EVを投入する予定とし、そのうち90%の車種は5つの共通EVプラットフォームで生産するとの計画を発表しました。

金額で言えばトヨタより多く、ヒョンデ・起亜やメルセデスと同等、フォルクスワーゲンより若干少ないくらいの規模です。

日産アリアのプラットフォーム

5つのプラットフォームの中で有名なのは日産「アリア」にも用いられている「CMF-EV」でしょうか。ルノー「メガーヌ E-Tech エレクトリック」にも用いられるものです。

日産グローバル本社のアリア
ルノー「メガーヌ・e-tech」

またこのプラットフォームの他には私のブログでも何度か紹介したダチア「スプリングelectric」にも使われる小型車向けの「CMF-AEV」なども既に使われています。

DaciaSpringElectric

そして日産「アリア」発表時から言われている「そろそろプラットフォームが古くないか?」という指摘に応えるかのように「CMF-BEV」という新しいプラットフォームを2024年から導入し、現行のルノー「ゾエ」との比較でコストを33%削減可能、消費電力も10%以上改善と進歩する予定です。

このプラットフォームは、ルノー、アルピーヌ、日産の各ブランドで年間25万台分のEVのベースとなり、この中にはルノー「5」や、日産「マイクラ(マーチ)」の後継となる新型コンパクトEVも含まれることになっています。

ルノー5EV

ルノー「5EV」については以前のブログでも解説しましたので、こちらもご参照いただければと思います。

日産「マイクラ」のEV化には私のブログでは触れたことがありませんでしたが、ルノー5EVと同じプラットフォームを使用し、ルノーがフランスで生産することになります。

またバッテリーの調達計画については昨年もブログで取り上げた通りで、ルノーと日産のコアマーケットでは共通のバッテリサプライヤーを選択(日産の元子会社「エンビジョンAWSC」)するようです。

グループで共通のバッテリー調達体制を整えることで、2030年までに世界の主要生産拠点で合計220GWhのEV用バッテリーの生産能力を確保できるとのことで、ようやく本格的なEV化への目処が立ちました。

「全固体電池」については私はコメントしません(笑)。

既存メーカーには困難な「ECU統合」と「OTAアップデート」をGoogleでクリア

という感じのEVという「車」の話には私はあまり興味がなかったりもします(笑)。

もっと重要なのは同時に発表された「プラットフォームと電子システムの共用化」であり、2026年までにアライアンス全体で45車種に運転支援技術(おそらく日産のプロパイロット2.0がベース)を搭載し、1000万台以上販売する計画だという点です。

現在でもグループで約300万台の車両がアライアンス・クラウドに「コネクト」された状態ですが、これが約2500万台に増大し、収集された膨大なデータを将来の完全自動運転にも生かすものと思われます。

電動化された車両からの運転データの収集は日産「リーフ」やルノー「Zoe」の時代からやってきた「古豪」らしいアドバンテージになります。

またGoogleのエコシステムを用いることによって、電子機器のハードウェアとソフトウェアのアプリケーションを統合し、一体型の共通電気・電子アーキテクチャーを開発する計画で、これによって「OTAアップデート」も可能になり、古い車両も常に最新の状態で使うことが可能になります。

ちなみに先日私が見てきたヒョンデ(ヒュンダイ)「IONIQ5」の場合は、世界レベルではソフトウェアも含めた「OTAアップデート」に対応してますが、日本では現時点ではナビのアップデートのみに留まるようです。

もちろんこの「ECUの統合→OTAアップデート」というのはテスラがとっくの昔からやっていることで、苦戦しながらではありますがフォルクスワーゲンも実現しています。

「今更かよ」とは思うところですが、当然やらないよりはやった方が良いので歓迎される話です。

「OTAアップデートをしにディーラーへ行く」などというお寒い結果にならないことを祈りますが。

「ルノー=フランス企業」からくる謎の偏見が支配する日本

日産「マイクラEV」
と「ルノー・日産・三菱連合」も遅ればせながらようやく日産とルノーの長所を生かすような形式で本格的な電動化へ踏み出すことができるようです。

もちろん先行するドイツ勢やテスラなどにどこまでついていけるのかは未知数ですが、EV界の「古豪」がようやく動き出すことは評価していいと思います。

しかしEV化の話からは外れますが、ルノーがフランスの企業なのもあり「フランスは原発で電力が豊富にあるからEV化しても平気だけど」などと意味不明のことを言ってくる輩が必ず現れるのが謎です。

日本だとなぜかこのニュースが「フランスは原発を推進してる」という側面ばかりが強調され、同時に太陽光発電も100GWに増やすという計画はなぜか語られません。

私の見解としてはフランスのように地震や津波がほぼ存在しない国では(原発そのものの危険性はあるものの)「脱炭素を達成するためのつなぎの手段」として原発に頼ることは間違っているとは思いません。もちろん将来的にはなくすべきだとは思いますが。

ですが日本のように地震や津波が頻繁に起きる国で、大きい地震が起きるたびに「原発は大丈夫か?」といちいち気にしなければならない国で「原発こそが日本に向いてる発電だ」と叫ぶ意味がわかりません。

またこのような醜悪な発言も目立ちます。

以前から私のブログで度々批判している某インフルエンサーですが、「こういうこと言っておけば日本人の耳触りがいいだろう」的に軽口を叩くのが正直我慢ならないことが多いです。

そもそもヨーロッパにおけるフランスは電力の輸入国です。このことはフランス政府自体も公式に認めており、「フランス国内の電力不足をどう解消するか?」に頭を悩ませているのは最近のニュースでも言われています。

ドイツの電力供給

ついでに掲載するとこれがドイツの電力供給状況です。むしろフランスはドイツから電気を買う立場なことは統計を見れば一目瞭然なのですがなぜ嘘をつくのでしょうか?

危惧しているのが「再エネ開発が進んだとしても制御可能な技術が開発されなかった場合、2030年代の供給予備力が500万~900万kW不足する可能性」ですから誰も「原発をガンガン推進して電力確保」とは言ってませんよね。

今日はルノーのEV化計画を取り上げましたが、フランス企業でいえばプジョーやシトロエンも少しずつEV化の方向に舵を切っています。

2021年12月フランスのEV化率

これ昨年12月のフランスのEV化率ですが、現在はPHEVを入れても20%前後のフランスのEV比率が上がって来ればEVを蓄電池として活用する道も開けてくるのでは、それも見越した大規模な太陽光発電の強化なのでは?と思うところですが。

いずれにせよ地震や津波のないフランスと日本を同列に扱うべきではないと思います。

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