ホンダの「2040年までに全車EV化」がグローバルで生き残る手段?【日本郵便のEV化計画も紹介】
こんにちは、@kojisaitojpです。前の記事で「ホンダは本当にやる気あるの?」的な疑問を呈してしまったことは私の判断ミスでした(笑)。中国でのEV発売の後にこのようなプランを公開しましたので。
こちらは #ホンダ の会見記事です。カーボンニュートラルを明言されました! 軽のEVも注目ですが、バッテリーの再利用なども非常に興味深い内容でした。バイク、どうなるんだろう・・・!https://t.co/394s08Hzdg #energyshift @EnergyShift_jpより
— EnergyShift (エナジーシフト / エナシフ)公式 (@EnergyShift_jp) April 26, 2021
自分の読み違いは素直に認めます。ここを誤魔化して自分を正当化しようとすると人として終わりですから。
2040年という時期に関しては世界の流れからすると少し遅いかなと思ったりもするのですが、EVの開発・販売において先を行く日産や三菱より先にホンダが日本メーカーとして初めて「全車EV化する」と宣言したことには大きな意味があります。
というわけで今日は「ホンダが公開した2040年までにEV化」の具体的な内容とその他の日本企業の動向について説明します。
目次
EV化に遅れてるように見えたホンダの「2040年までにEV化」の詳細とは?
今回ホンダが発表した「2040年までのEV化計画」は以下のようになります。
- 2030年までに40%がEVとFCV
- 2035年までに80%がEVとFCV
- 2040年にはEVとFCVが100%
というのがグローバルな計画です。細かい部分はエリアによって若干の違いがあり、例えば主要国で最もEV化が遅れている日本市場の場合は「2030年では20%、2035年には80%(ただしハイブリッドも込み)」と2030年の比率が低かったり2035年の計画にハイブリッド車が含まれている(北米や中国市場の計画はハイブリッド除外で80%)などの違いはありますが、2040年に100%を達成するというプランは共通です。
私が特に驚いたのは「ハイブリッド車を含めない」という点です。日本では「電動車」という謎のガラパゴスカテゴリーが作られてしまい、この中にはハイブリッド車もPHEVも含まれるという中途半端なEV化計画なのですが、ホンダはグローバルな基準に合わせてハイブリッド車は含めないと明言(PHEVは不明)している辺りに「本気で世界基準に合わせる気だな」というやる気を感じます。
ちなみに先日上海モーターショーで発表された中国で発売予定のホンダのEVについてはこちらの記事をご参照ください。
ホンダも公開した「SUV E:Prototype」は本気のEVなのか?【中国メーカーとGMに依存?】
「ホンダe」以外にほとんどEVを発売していないホンダが中国市場限定ではありますが「SUV E:Prototype」がベースのEVを2022年に発売すると発表がありました。具体的なスペックは不明ですが、先行するフォルクスワーゲンやテスラなどと比較してプラットホームやバッテリー生産体制、充電インフラの構築などに注目です。
実はこれ以外にも今回のホンダの発表は先日の記事において私が呈した疑問に答えるような内容になっています。
- EVの生産はGMに委託するだけ?→それは北米市場だけ
- 電気自動車専用プラットホームは?→2025年までに自社で導入
- バッテリーの調達は?→北米・中国・日本とそれぞれ別途に調達
私が以前からホンダに抱いていた「本気でEVやる気あるの?」というツッコミがほぼ解消されるようです。
一番懸念していたのは「実はEVの生産は全部GMに丸投げ?」「それじゃそのうちGMに吸収合併されるぞ」という部分でしたがどうやらそれは北米市場だけのようです。
ホンダがGMに電気自動車を作ってもらう未来が来る?【提携という名の依存?】
昨年からホンダがGMと提携して、GMのプラットフォームで電気自動車を生産するという情報が流れていますが、このことが持つ大きな意味について考えてみます。先日発売された「ホンダe」がバッテリー調達に失敗したことから考えると「ホンダに電気自動車を生産する能力がない?」という可能性まで浮上してくる重大な意味を持つ業務提携です。
北米市場ではGMのプラットホームとLGのバッテリー、中国市場ではCATLなどの中国メーカーのバッテリーを使用し、日本市場においては「日本の国内産業を保護・育成する」という観点から日本国内で生産(ということは協業するのはパナソニック?)すると言う地域に合ったビジネスモデルを構築する計画のようです。
また日本市場に関しては日本のユーザーが待ち望んでいる「軽自動車規格のEVを2024年に発売する」と明言しました。日産と三菱が計画している「IMK」と比較すると2年ほど遅れることにはなりますが、それでもユーザーの期待に応えようという姿勢には好感が持てます。
日産・三菱の軽自動車規格「IMK」の全貌を予想してみる【「Dacia Spring Electric」がヒント?】
数日前に日産が三菱と共同で開発する軽自動車規格のEVが2022年にも発売されると報道が出てきました。まだ公式な発表ではないので全貌は明らかになってはいませんが、「ルノー・日産・三菱」のグループから発売される軽自動車に近い規格の「Dacia Spring Electric」という電気自動車から予想してみます。
むしろ日産や三菱と比較してEVの開発が遅れていることをホンダが自覚した上で実現可能なプランを提示してきたという風に解釈すれば今後に期待の持てる今回の発表ではないかと思います。
私が日本メーカーを褒めるのは珍しいと思いましたか? いや、適切な行動を取ってくれればいつでも褒めますよ(笑)。
別に電気自動車はテスラや中国メーカー・フォルクスワーゲンが独占するものではありませんので。
片や「水素エンジン」などと言ってる企業もあります
片やちょっと呆れてしまうような翼賛記事を見かけたのが我慢ならないので引用します。
さりげなくテスラを揶揄するような嫌味言ったり「本気になればすぐ作れる」という相変わらずの論調。
トヨタがいよいよEVと自動運転 ライバルたちを一気に抜き去るのか、それとも?(ITmedia ビジネスオンライン)#Yahooニュースhttps://t.co/rXNpSjVUNa— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) April 26, 2021
まぁテスラの悪口を言うのは日本のマスコミのいつものパターンなのでもうあれこれ言う気もないですが、水素エンジンが「日本の自動車産業がこれまで培ってきた高いエンジン製造技術を、今後も武器として持ち続けるためには水素を燃料として利用する方法もある」などともはやトヨタ以外の世界の自動車メーカーが主張していないものを未来の規格として翼賛するのは意味不明です。
そもそも私のブログでも繰り返し言ってきましたが、「エンジンという専門家以外に扱えないブラックボックスの存在がディーラーや整備工場が暴利を貪る温床になる」という重要な問題があります。
電気自動車(BEV)が露呈させる販売網の再構築とは?【ディーラーもオワコン】
昨日は「バッテリー」という技術面で旧来の自動車メーカーが不利な立場に陥ることについて説明しましたが、今日は「販売網」という面から指摘したいと思います。旧来の「ディーラー」という販売・整備を行う拠点を前提としたビジネスモデルはガソリン車に比べて整備の頻度が減る電気自動車では高コストで不要なことをテスラが示唆してくれます。
テスラが破壊するのは既存ディーラーだけじゃなく中古車店も?【既得権益の打破】
テスラが既存の車メーカーやディーラーなどの既得権益を破壊する存在であることはこれまでも書いてきましたが、メーカーとは直接繋がらない「中古車販売店」すら破壊する存在であると言われてイメージが湧くでしょうか?これまでのようにエンジンとその関連部品の整備で儲けてきた既存の中古車店はEV化に対応できず滅びる可能性が高いです。
テスラのようにディーラー網を持たないオンライン販売専門の会社が現れたことで人々が初めて気づくことができたとも言えますが、EVの場合はエンジンのような専門家以外は扱えない複雑なシステムがないからこそ可能になったビジネスモデルであると言えます。
反対に「エンジンを温存」という姿勢自体が「今後もユーザーがディーラー等で整備が必要なようにしておいて儲けよう」という旧来の自動車業界の構造を温存したいだけでは?という疑問もわいてきます。
いずれにせよ先程のホンダのところでも話したように水素(エンジンにしろ水素燃料電池にしろ)は世界全体のシェアの中でニッチなレベルに留まることは明白ですので、これに固執することにどんな意味があるのかは私は理解できません。
こういう会社にせめてわきまえて欲しいのは「ホンダとか日産とかEVに力を入れている企業の足引っ張らないでね」ということだけです。
ホンダ以外にも日本郵便の実現性のあるEV化計画もあります
本日取り上げたホンダのEV化プランとは全く別の話ですが、日本企業の中にもこのようにカーボンニュートラルの実現を目指して頑張ろうとする企業もあります。
用途に応じて普通充電と急速充電使い分けたり地に足がついたプランに見える。
郵便局にEV用急速充電器を設置 日本郵政と東電が協力へ https://t.co/t9yvsoboVx— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) April 26, 2021
なぜかEVや再生可能エネルギーの話をするとロクに具体的なプランも見ないで「非現実的だ」とか「机上の空論だ」という批判が飛んでくるのですが、この日本郵便と東京電力の計画はかなり実現性のある計画です。
「走行距離の長い集荷用EVは帰局した時に急速充電器で充電」「その他は夜間に普通充電で充電」と用途に応じて急速充電と普通充電を使い分ける計画は地に足がついており実現性が高いと思いました。
帰局して荷物を下ろしたり次の集荷へ出るまでの間に急速充電をして次の集荷に備えることができますし、「急速充電器が空いている時は地域のEV利用者に提供」というように郵便局の利用者にも便利な計画です。
そして郵便局の屋根を利用した太陽光発電で局内の電力は再生可能エネルギーで賄う(夜間はEVに充電された電力で賄う)となればゼロエミッション・カーボンニュートラル達成で、日本郵便という会社自体がグローバルな視点で評価されます。
ただしこのプランを実現しようとすると現在マトモなEVを一車種も発売していないトヨタは除外されることになります(実際に以前も紹介したように日本郵便は四輪に三菱のミニキャブミーブ、二輪にホンダのベンリィeを導入しています)。
三菱のミニキャブミーブは既に生産を終えていますので、先日の佐川急便のEVバンの話で紹介したような中国で生産されたEVが入ってくる可能性は大いにあります。
佐川急便の名誉のために繰り返し言っておきますが、あのEVバンは日本の会社が企画したものを中国メーカーが製造するEMS生産ですので日本の車です。それを「中国産の」と言ってしまうのはiPhoneを中国産と言ってしまうのと同じくらい次元の低い話になります。
ここにも変な難癖をつけて邪魔をしてくるのでは?という良からぬ想像をしてしまいそうになるのは私だけでしょうか?
人気記事電気自動車専門のカーシェア・サブスク・EV販売店立ち上げのためのクラウドファンディングを始めます!