EVバスがフランスのパリのモビリティを変える話【BYDでも日本メーカーでもない】

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こんばんは、@kojisaitojpです。昨年のうちにヨーロッパへ行った時のネタは大体出尽くしていたのですが、一個だけ触れてなかったネタがありました。

パリの市バスに「100%electric」のものが、つまりEVバスが導入されているのを目撃した話です。

ただ色々調べてるとBYDが「フランス工場(EVバス専用)を閉鎖」というニュースもあり、今フランスのバス事情がどうなってるのかを調べる必要があったので後回しになってました。

先に結論を言ってしまうと、「フランスのバスは全車EV化、FCV(水素燃料電池車)も中止」です。

そんな風に日本の先を行くフランスのバスのEV化について解説します。

フランス・パリで導入が進むEVバスがモビリティを変える

パリのEVバス
パリ市とその周辺の市町村を含めた「イルドフランス」全体の交通を担う「RATP」が2019年から2021年にかけて50台のEVバスが納入されており、私がパリで目撃したバスもその一台だったようです。

フランスのバス製造メーカーの「Bluebus」や「Heuliez Bus」が(冒頭引用した私がパリで見かけたEVバスは「Heuliez Bus」社製)精力的にRATPへEVバスの納入を進めているようです。

パリのEVバス

4700台のRATPのバスのうち現在は1000台がハイブリッド、250台がバイオガス、3300台がディーゼルバス、150台がEVバスになりますが、これが「Bus 2025」のロードマップによるとEVバスの台数が2024年までに800台に増える予定です。

パリ市内はフランス全体と比べて厳しい排気ガス規制が予定されており、2024年(つまりパリオリンピック)までにディーゼル車の乗り入れ禁止、2030年にはガソリン車の乗り入れを禁止する予定になっており、公共交通機関のバスも例外ではなくゼロエミッション車両への変更を迫られています。

上記の記事でも指摘されているように、パリ市民は60%が自動車を保有してない事実もありますのでバスを含む公共交通機関が全面的にEV化するとパリ市とその周辺も含めたイルドフランス全体のゼロエミッションへのスピードが飛躍的に上がります。

同じことは自動車の保有率が低い東京都(特に23区の都心部)にも当てはまるかと思います。東京都が「都バスを全車EV化」と宣言するかのようなインパクトのある変更が現在パリで行われていることです。

「バスならEVじゃなくてFCVでもいいだろ?」という声もあるかもしれませんが、これについては否定されつつある流れになってます。詳細は最後の項で同じフランスのモンペリエについての話で触れます。

BYDのEVバスはフランスからハンガリーに工場移転

BYD製の電動化されたロンドンバス
私がこの話を取り上げるべきか悩んでたのはこの話があったからです。

なんとBYDのフランスのバス製造工場が閉鎖になっていました。

「ヨーロッパでEVバスの需要が急増してるんだ!」と勢いよく記事を書いても「でもBYDの工場閉鎖になったぞ」と突っ込まれると返す言葉がなくなるところでしたので。。。

ですがこういうことだったようです。

BYDのハンガリー工場の生産能力を拡張させることで、元々それほど需要のなかったフランス工場の分も移行させるようです。

フランス・ドイツなどの西ヨーロッパの主要国と比べて人件費の安い東ヨーロッパに生産拠点を移すというのはヨーロッパでもよくあることです。

プジョー107

私の趣味に引きつけると以前から「プジョー・シトロエン・トヨタ」も合弁で「プジョー108」「シトロエンC1」「トヨタアイゴ」をチェコで生産しています。

最も小型のAセグメントを3社共通のプラットフォームで以前から生産してますが、残念ながら日本市場には上陸してません。トヨタへの配慮なのでしょうが、プジョーもシトロエンも結局並行輸入でしか買えない状態が続いています。

トヨタアイゴ
私も「並行輸入でいいから欲しい」と思ったことはありますが、案外高くつくのとシトロエン「C3プルリエル」を買った直後でローンが残ってたのもあり断念した過去があります。

話はそれましたが、BYDは西ヨーロッパ(フランス)から東ヨーロッパ(ハンガリー)に生産拠点を移すだけの話だったようです。

フランスのバスも「FCV→BEV」へ

トヨタMiraiの水素燃料電池
このようにパリ市がバスをBEVに一本化しつつある流れの中で、フランス第三の都市モンペリエでこんな決定がされました。

一言で言うと「これまで発注していたFCVバスを全てキャンセル(50台)し、BEVに切り替えるとの発表をしました。

その際の理由はただ一つ「コスト」です。

記事の中でもモンペリエ市長が「FCVにするとBEVにした時の6倍のコストがかかる」と言っています。

以前私も「FCV(水素燃料電池車)が普及しにくい理由」の一つとして「EVの充電インフラと比較した際の水素インフラのコスト」を問題にしたことがあります。

それでも「長距離トラックなどでは水素ステーションの数が少なくて済むので(ターミナルとなるエリアに限定的に設置すればOK)まだ可能性はある」とフォローしたつもりでしたが、水素ステーション1箇所の設置に数億円かかるというコストだけでも尋常なコストではありません。

これに対しBEVの充電ステーションであれば例えば高コストと言われるテスラのスーパーチャージャーでもせいぜい数千万です。これは高い方で急速充電器であれば数百万、普通充電器であれば10万もあれば設置できます。

路線バスの運用がメインであれば夜間のバスが運行しない時間帯に普通充電でもやれるのでは?と考えると実際の運用コストが1/6以上のコストの削減になります。

しかも既に研究によって明らかになっている「水素のエネルギー効率の悪さ」という致命的な問題もあります。

EVとFCVの対比

記事に掲載されていた図をそのまま拝借しますが、例えば太陽光などで発電した電力をそのまま使えるEVと違って、水素の場合は「発電した電力→水素に変換→水素ステーションにトラックなどで運搬→ようやくFCVに水素充填」とこの回りくどいプロセスを見ただけでも、水素そのもののエネルギー効率の悪さに触れる前から「効率悪そうだな」と思いますよね。

水素と電気のエネルギー効率

「エネルギーを貯蔵する手段としての水素」というのは再三言われますが、蓄電池が世界中で普及するにつれ「いちいち水素にするより直接蓄電池に貯めたほうが良くないか?」となるのは当然の流れです。

「バスの巨大なバッテリーなんか時間がかかる。どうやって朝まで充電するんだ!」と怒る方がいるかもしれませんが、テスラはそれを本気でやろうとしています。

テスラが開発してるのは「Semi」という電動大型トレーラーですが、EVバスでも搭載されるバッテリー容量は似たようなものでしょうから「メガチャージャー」であれば我々がテスラ車をスーパーチャージャーで充電するような感覚で充電できるようになるかもしれません。

「大型車両でBEVなんかでできるわけない」と「できない理由」を並べるのではなく「どうすればできるようになるか?」という方向で進化を続けるのが世界の流れだと感じる場面だと私は感じます。

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