BMWが「i4(4シリーズ)」を投入してエンジン車をEVに置き換える理由とは?【日本勢以外は本気】
こんばんは、@kojisaitojpです。ドイツ勢の中ではEVシフトが遅れてるようにも見えるこのメーカーにもようやくスイッチが入ったようです。
昨日も言ったけどテスラ以外で唯一の本格セダンのEVであること、メルセデスより先に出せたことは結構大きいと思う。
BMWの新型EV「i4」が日本上陸! “駆けぬける歓び”は電気でも可能?(マイナビニュース)#Yahooニュースhttps://t.co/b7RN5192bu— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 19, 2022
先日EVとして「iX」や「iX3」を日本市場に投入したばかりのBMWが今度は本格セダンのEVとなる「i4」の発売を発表してきました。
ドイツ勢でいち早く「i3」を発売した後はEVに関して進展がないように見られていたBMWからも本気を感じさせる動きが出てきました。
ちなみに以前BMW「i4」がヨーロッパで発表された際に書いた記事はこちらになります。
BMW が投入する「iX」「i4」が意外とハイスペック?【意外とやる気?】
正月の箱根駅伝で先導のバイクがBMW製の電動バイクであったことが一部で話題になっていましたが、これが2021年にBMWが電気自動車(BEV)で日本市場に攻勢をかけてくる布告だったと言えるかもしれません。今日は2021年にヨーロッパのみならず日本市場にも投入予定の「i4」「iX」「iX3」について紹介します。
そこで今日はBMW「i4」のEVとしてのスペックについて触れた上で、急遽浮上した急速充電器の設置計画なども踏まえて「ついにEVに本気になったBMW」について解説します。
目次
エンジン車と同じプラットフォームだけど貴重な本格セダンEVのBMW「i4」
今回BMWが日本市場に投入するグレードは「iDrive40」(750万円)、「eDrive40 M Sport」(790万円)、「M50」(1080万円)の3種類です。
「4」という数字にこだわっていることからもわかるように、これまでの「4シリーズ」のラインナップに並べられるEVになります。
ちなみにBMWのパフォーマンスモデルであることを表す「M」のシリーズにEVが登場するのは今回が初めてとなります。
一応スペックを紹介しておくとEVとしての違いは「eDrive40」「M50」の二種類になっており、
- 「eDrive40(750万円)」
- RWDで航続距離590キロ(WLTC)、EPAだと484キロ
- 馬力が544PS、最大トルクが430Nm
- 「M50(1080万円)」
- AWDで航続距離510キロ(WLTC)、EPAだと434キロ
- 馬力が544PS、最大トルクが795Nm
私が紹介する際に馬力や最大トルクに触れることは少ないのですが「i4」の場合は、「M50」の544PSという馬力は「M3」よりもハイパワーであり、795Nmというトルクは4.4LのV型8気筒エンジンを搭載する「M8」よりも大きいというお化けスペックなのを強調したいので今回は引用します。
なお搭載バッテリー容量は83.9kWhと巨大で、その分重量もそれぞれ2080kg、2240kgと重くなり「電費」という観点ではあまり良くはありません。
ですがBMWのパフォーマンスモデルを買う人で「燃費ガー」とコスパを重視する人はいませんよね(笑)。
ちなみにガソリンエンジンの『420i グラン クーペ』が632万円と673万円、『M440i xDrive グラン クーペ』が1050万円なので価格面であまり差がない、しかもこの価格は本国ドイツとほとんど変わらない価格で投入してきてますのでBMWの中ではお得な車種と言えるでしょう。
サイズも「全長4785mm×全幅1850mmx全高1455mm」と他の4シリーズと同じサイズで、特に全幅1850mmはマンションなどの機械式駐車場でも問題のないサイズで比較的使いやすいかと思います。
とはいえこの「M50」をテスラの「モデル3・パフォーマンス」辺りと比較すると航続距離がEPAで「506キロvs434キロ」、0-100km/hの加速も「3.3秒vs3.9秒」と「モデル3・パフォーマンスの方が上、価格は「モデル3・パフォーマンス」が717万円、「eDrive40」と航続距離が近いロングレンジだと564万円とテスラの方が圧倒的に安く買えます。
と自分で言っておきながら「BMWの上級グレードを買うような顧客がテスラには乗り換えないよな」と思ったりもします(笑)。
ここには「ブランド」という今後テスラが乗り越えなければならない壁が存在すると思います。メルセデスにしろBMWにしろアウディにしろ長い歴史の中で確立されたブランドにお金を払う顧客はかなりの数います。
そういう方々に「こっちの方が性能がいいよ」とか「こっちの方がコスパがいいよ」などと言ってもまず聞いてもらえないでしょう。
実はこの記事を書くのと並行してDSの「DS3クロスバックE-Tense」の試乗に出掛けており、実際に乗った実感として「確かにEVとしての性能はテスラに遠く及ばないし、価格も高い。でもDSじゃなきゃ実現できない高級感もあるんだよな」と複雑な気分になりました。
それについては明日以降の記事で書きますが、要は「ルイヴィトンやエルメスのバッグをコスパを気にして買う人いないでしょ?」の一言で終わる話です(笑)。
BMWを「コスパ」でテスラと比較するのは間違い?
確かにEVとしての性能や価格を見ると「コスパ」という物差しではテスラ「モデル3」には遠く及ばないのは誰の目にも明らかです。
BMWとかメルセデス買う層に「こっちの方がコスパが良いよ」なんて言葉は響かないはず。
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 21, 2022
BMWやメルセデスを買う層というのは基本的に「ブランド」で車を決めます。
私の予想だと現在はメルセデスにしろBMWにしろ「ガソリン車・ディーゼル車と同じ車種に相当するEVも選択肢になりますよ」というのを旧来からのファンに提示してる段階だと読んでいます。
実際にメルセデスも以前取り上げた「EQS」が現在のSクラス相当、先日発表された「EQE」がEクラス相当と、これまでのガソリン車・ディーゼル車の他に「EVという選択肢もあるよ」と見せている段階です。
ですのでBMWの場合はこれが「ガソリン車・ディーゼル車の置き換え」という意味では本命でしょう。
ようやく7シリーズのEVも登場。 https://t.co/rSAqmpQpY9
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 22, 2022
そしてi4、i5、i7、つまり4シリーズ・5シリーズ・7シリーズと一通りラインナップを揃えた後の新型プラットフォームの話も既に出ています。
【2度目の大変革】BMW 生まれ変わった3シリーズEV、新時代を切り開く 「第2のノイエクラッセ」
BMWは新開発のEV用プラットフォームを使った3シリーズEVにより、電動化戦略を次の段階へと進めます。
「ノイエクラッセ」という1960年代から1970年代に発売したセダンから取った名称のプラットフォームを導入し、市販するクルマを再発明・再定義するというBMWの決心が現れています。
2025年末までに発売を予定している4台の電動セダンのうちの1台に新型プラットフォームを用いることで、これまでのエンジン車(ガソリン車・ディーゼル車)と似通ったデザインのEVも一新されるようです。
現在はこれまでのガソリン車・ディーゼル車のEVへの置き換えを進めるBMWですが、その先のこともきちんと見据えています。
150kW級の急速充電器を設置するBMWのEVへの意欲は評価
このようにEVとしての性能で見た場合には平凡な性能としか言えないBMW「i4」ですが、「iX」「iX3」に続いて本国ドイツで展開しているEVを次から次へと日本市場へ投入する意欲は感じます。
この「EVに対する意欲」という点に「ディーラーに自社のEVに見合ったスペックの急速充電器の設置」が含まれます。
BMW、新型EV『i4』を日本市場投入…価格は750万円より | レスポンス(Response.jp)
ビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン)は、『4シリーズ グランクーペ』に新型EV『i4』を追加し、2月16日より販売を開始した。納車は3月以降を予定している。
記事の中に「BMW店舗の150kW充電器」とあるように、いつまでにどの位の数のBMWディーラーに導入されるかは不明確であるもののディーラーに150kW級の急速充電器を設置する計画があることがわかります。
現在BMWのディーラーに置かれている急速充電器はこれまで発売してきた「i3」に合わせた50kWの充電器です。
BMWでは「i4」以外にも「iX」「iX3」を日本市場に投入するにあたって車のスペックに合った充電器を設置する計画があるということは、これまで論じてきたメーカーの中で「ポルシェ」や「フォルクスワーゲン・アウディ(同じ法人)」に続いて3社目となります。
自社で充電器を用意する会社はこれまではテスラのみでしたが、既存の日本の急速充電器が低速すぎて使いものにならないことを自覚しているのかここのところドイツ勢を中心に自社で急速充電器を設置(あるいは新規のEVに見合ったスペックへのアップグレード)が進んでいます。
また自宅に設置する普通充電器については現在であれば購入したユーザーに無料で設置するサービスをBMWが提供しているようです。
このサービスはアウディやメルセデスにも見られますが、現在が普及期と見てドイツ勢が積極的にサービスしている部分です。
他にも公共の急速充電器やBMWディーラーの充電器が一年間無料で、この点もメルセデスやアウディと全く同じで、「モデルS」「モデルX」の発売初期にテスラがスーパーチャージャーの永年無料やウォールコネクター(普通充電器)を無料でサービスしてたのを思い出す充実のサービスです。
その一方で「最大130kW」まで対応可能な「アリア」を用意しておきながら、まだ自社のディーラーに一基たりともアリアのスペックに見合う130kW以上の急速充電器を用意してない日産と比較すると意欲の差がはっきりとわかってしまいます。
充電インフラからも感じられるEVに対するドイツ勢の意欲
と今日はBMW「i4」を中心にBMWのEVについて取り上げてきましたが、同じドイツ勢で「2022年の日本市場へのEV投入」を予定しているフォルクスワーゲンからも「ID.4」について新しい情報が出てきました。
国内でも発売が予定されているVW ID.4の2022年モデルのEPA航続距離が発表、ベースモデルは前年比+20miの280mi(約450km)に。
更に急速充電も125kWから135kWに向上、実用性が進化しています👀
2022 VW ID.4 EPA Numbers Are Out, Base Model Gets 280-Mile Range https://t.co/U12zI7N8BN
— 🌸八重 さくら🌸 (@yaesakura2019) February 23, 2022
2022年モデルの航続距離について「高速道路を時速100キロで走行し、クーラーをつけても達成可能」なアメリカのEPAサイクルで約20マイル(RWDモデルの場合)アップし280マイル(約448キロ)の航続距離を達成しています。
AWDの場合は245マイルから251マイルとわずかのアップにとどまっていますが、それでも約401キロ走行可能で、日常生活を送るには何の支障もない航続距離です。
また急速充電の出力もアップしており、これまでの125kWから135kWにアップしています。
この数字と先日表明された「日本のフォルクスワーゲンとアウディの全てのディーラーに150kW級の急速充電器を設置」という計画がぴたりと付合します。
フォルクスワーゲングループが独自にEV用150kW急速充電と目的地充電インフラ拡充を表明 – EVsmartブログ
フォルクスワーゲングループジャパンが、2022年中にフォルクスワーゲンやアウディの全販売店の7割にあたる約250店舗に電気自動車用の高出力急速充電器を設置することを明らかにしました。当面はフォルクスワーゲン、アウディの両ユーザーが相互に利用できるようにし、将来的には他社ユーザーも利用できるようにしていきます。
正確には90kW〜150kWの急速充電器を設置するという計画ですが、私も繰り返し述べてきたように日本のe-MobilityPowerの充電器でこの速度を出せる充電器はありません。
本日紹介したBMWが150kWと表明したこととあわせて考えてもドイツ勢は日本でも150kW級の充電器を設置して攻勢をかけてくるようです。
片や日本メーカーは想像以上の低スペックだったe-MobilityPowerの急速充電器を今後も使い続けるようです。
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