「LCA理論」を持ち出す人も要注意?【EVでも再エネでもニセ科学】

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こんばんは、@kojisaitojpです。昨日の記事の最後で「気候変動や脱炭素を陰謀呼ばわりする」傾向を問題にしましたが、例えば「気候変動」を否定する方々には共通する特徴があります。

「気候変動」に対して「ヨーロッパが仕掛けた陰謀だ!脱炭素はインチキだ!」と叫ぶ人が増えていますが、本気でそう思うのであれば学術論文でも書いて発表すればいいと思うのですが、そのような動きはありません。

せいぜい新聞や雑誌、テレビなどで叫ぶだけで、学術論文を書いて学問的に認められた例がありません。

これができないのであれば「エセ科学」「ニセ科学」と言われても文句を言えないと思うのですが。

というわけで今日はこの「ニセ科学」が日本のEVや再エネに与えた悪影響について特に「LCA理論」の問題点、更には新型コロナウイルスへの対応にも失敗した原因となっていることを解説します。

「ニセ科学」の典型例がEVの「LCA(ライフサイクルアセスメント)理論」か?

ライフサイクルアセスメント(LCA理論)
EVの「LCA(ライフサイクルアセスメント)理論」というのは以前も触れたことがありますが、「製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)における二酸化炭素排出量で考えよう」という理論です。

EVは電気で走りますので当然ですが走行中に二酸化炭素は一切出ません。反対にガソリン車やハイブリッド車は走行中に二酸化炭素を排出します。

ところがEVの場合は工場でバッテリーを生産する段階で多くの二酸化炭素が発生します。

「ライフサイクル」ですから工場で製造される段階から廃車となってバッテリーの廃棄やリサイクルが行われるまでのトータルの二酸化炭素排出量を考えようという理論です。

バッテリーが改善されたリーフの充電

EVを否定したい方々が必ず持ち出すのが「工場でバッテリーを生産する際に多くの二酸化炭素が出る」という点と「走行中には二酸化炭素が出なくてもバッテリーに充電する電力が火力発電だったら二酸化炭素を排出している」という批判です。

EV好きの方々には悪名名高き「マツダ論文」というのもこの「LCA理論」の一つで、生産から廃車までのトータルの二酸化炭素排出量を比較しようという試みで、これ自体は間違いでも何でもありません。

しかし問題は「マツダ論文」では2012年前後の古いデータを使っていること、なぜかEVの方は「バッテリーが劣化して交換する」ことを前提に計算されているので、「EVもガソリン車も大差がない二酸化炭素排出量」に見えてしまいます。

なお「マツダ論文」において述べられている二酸化炭素排出量の計算方法の問題点や具体的な数字についてはこちらを参照いただければ詳しく解説されています。

これを最新のデータで計算するとこうなります。

ICE車とBEVの二酸化炭素排出量

ヨーロッパ・アメリカ・中国・インドと4箇所で検討していますが、どのエリアでも内燃機関車(ICEV)よりBEVの方が二酸化炭素の排出量が少なくなっています。

しかも注目する必要があるのは2021年のデータよりも2030年の予想になるとBEVの方は更に二酸化炭素の排出量が減るのに対し、内燃機関車(ICEV)の方は横ばいか微減だという点です。

再エネの普及で更に二酸化炭素排出量が減るのがEV

再生可能エネルギー
なぜこうなるのか?というのは簡単な話で「再生可能エネルギーの普及」です。

Appleの例を挙げましたが、他にもGoogleやAmazon、自動車メーカーでもポルシェなどは既に部品を供給するサプライヤーにも「再生可能エネルギー100%」、ゼロエミッションで生産することを要求しています。

何度か言及している「ESG投資」という観点から、サプライヤーも含めて全てがゼロエミッションを達成しないと投資マネーが引き上げられるというリスクを今や世界のあらゆるメーカーは抱えています。

ですので「工場から排出される二酸化炭素」というのは年々減る一方です。片やガソリン車については走行中に燃料を燃やして二酸化炭素が出ますので削減できる量にも限界があります。

再生可能エネルギーの進歩を考慮しない「LCA理論」は無意味?

時代錯誤な「昭和マインド」
「マツダ論文」については先ほど「2012年頃の」と言いましたが、この頃のEVと言えばまだ「日産リーフ」「三菱アイミーブ」「ルノーZOE」位しかない時代で、テスラが「モデルS」を出すか出さないかくらいの時期です。

ノルウェーで充電中の日産リーフ

「日産・リーフ」については何度も論じてきましたが、「初代初期型(2010〜2012年)」のものは確かに欠陥も多く、充電を繰り返すとバッテリーが消耗するという欠点がありました。

バッテリーの温度を調節する機能(BMS)が搭載されていないリーフの欠点だったのですが、その後日産はBMSこそは搭載しないものの充電の際の温度上昇を抑えるように工夫するなどの技術革新により現在ではこの程度までバッテリーの消耗を抑えています。

リーフのバッテリー消耗率

海外メディアでも「BMS非搭載のリーフがこの程度のバッテリー消耗で済んでるのは奇跡だ」と驚いていますが、これは日産の誇る技術力の賜物でしょう。

BMSのないリーフでこの程度の消耗率なのですから、BMSを搭載したテスラ車などでは更に消耗しないということです。

実際ネット上では20万キロ走っても10%くらいしか消耗してないというテスラオーナーがゾロゾロ出てきます。

つまり「マツダ論文」の時代と比べるとバッテリーの耐久性も上がったので交換不要、バッテリーを生産したり充電する際の電力は再生可能エネルギーが中心となることで現在では大幅に二酸化炭素の削減に成功しているということです。

こちらはイギリス・ガーディアン紙での調査結果ですが、「世界の95%の地域でEVの方が内燃機関車より二酸化炭素排出量が少ないという結果が出ています。

この95%の中にはヨーロッパではダントツに石炭火力発電の比率が高いポーランドなども入っており、現時点で再エネ比率が高いとは言えない日本も当然含まれています。

「日本は再エネに向かない国なのでぇ〜」とできない理由を熱く語っても結果は変わりません。

「ニセ科学」がEVでも再エネでもコロナでも悪影響?

陰謀論のイメージ
「マツダ論文」が典型例ですが、科学をある特定の勢力に都合の良いように悪用してくるというのは、別にEVや再エネの話に限ったことではなく、最近の日本のあらゆる分野で見られる悪い傾向です。

新型コロナウイルスの感染がどんどん拡大してしまった原因にしても、本日扱ったEVや再エネを否定する原因にしてもいわゆる「ニセ科学」を信じて、世の中で正当とされる科学を否定した結果です。

となると物事を論理的に、公正中立に見る必要があるのですが、EVを嫌う方々が絶賛する「水素」については現実はこの状況です。

「水素」は大気や水から取り出せると勘違いしている方が多いですが、実際にはLPガス、石油や天然ガスを分解して、水素ガスを取り出すのが一般的です。

上記のオーストラリアの例では石炭を燃やして水素を取り出すという日本が以前からオーストラリアでやろうとしているものです。

「水素のために石炭を燃やす?」で気づいて欲しいところですが、当然二酸化炭素が大量に出ます。それをいかに減らすか(地下に埋めるだけですが)が課題なのですが30%しか減らなかったという記事です。

EVに攻撃的な方々がよく言う「電力を化石燃料燃やして発電してるなら二酸化炭素出るからEVにしても意味がない」というのを実は水素を絶賛する側がやっているというブーメランになっています。

自分と対立する勢力を攻撃すると「自分も同じことをやっていた」というのはよくあるお寒い話ですが。

BEV、FCV、ICEそれぞれのエネルギー効率

また「水素」はエネルギー効率が良くない(BEVの73%に対してFCVは22%)というのも問題で自動車の動力には向かないのでは?というのが近年の研究で明らかになっています。

テスラのイーロンマスクCEOにしろフォルクスワーゲンのアルベルト・ディースCEOにしても「水素燃料電池車(FCV)」の可能性を明確に否定しているのは「非効率的」という理由です。

「水素」の生成過程でも二酸化炭素が排出される、実際に自動車の動力として活用した場合にもエネルギー効率が悪いと指摘される水素を絶賛する意味が私にはわかりません。

これだけ悪材料がそろっている上に、以前も解説した「水素ステーション」がEVの充電インフラと比較しても絶望的に足りてないという状況を冷静に認識すべきだと思うのは私だけでしょうか?

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