バッテリー劣化を防いで快適にEVを運用するには普通充電器?【急速充電器はあくまで非常用】
こんばんは、@kojisaitojpです。今月は長距離ドライブの予定がほとんどないので日常生活でヒョンデ「IONIQ5」を色々と試しています。例えば最近やったことはこれです。
低速のくそCHAdeMOをどうにかして使いこなしながら「こうやれば少しはマシに運用できる」なんてブログや動画はウケ悪いかな(笑)。
— saito koji@IONIQ5で日本全国移動中 (@kojisaitojp) August 13, 2022
この時何をやったかというと「まずは30kWの低速のCHAdeMOで充電して、終わってからすぐ横にあるテスラのウォールコネクター(普通充電器)に移動して90%まで充電」です。
「そんな面倒なことやらなくても全部急速でやればいいのでは?」と言われそうですが、これも実験です。
EVの運用の話となると必ず出てくるのが「1000キロチャレンジ」とか「電欠寸前まで走らせて航続距離テスト」というのがメジャーですが個人的には「年に数回レベルの長距離移動」よりも日常生活での運用法を考える方が100倍重要だと考えますので。
そこで今日は自分がやってみた例も出しながら「どうすれば最もバッテリーを保護する運用ができるのか?」について考えてみます。
目次
ヒョンデ「IONIQ5」にも使える?テスラオーナー推奨の「バッテリーを劣化させない運用法」とは?
日本国内では情報が少なすぎるので海外のYouTuberから情報を集めようと色々調べてるとIONIQ5ではありませんが、テスラオーナーがかなり詳細にバッテリーの管理法を解説してる動画がありました。
なぜかこの動画は字幕が出ないので要点をまとめると、
- 自宅の充電器(普通充電器)で90%位まで充電
- 急速充電器は必要に迫られた時限定で使用(長距離移動など)
- 自宅の充電器は充電終了後も挿しっぱなしにしておく(放電を防ぐ)
- 数ヶ月に一度100%に充電し10%位まで放電させる(キャリブレーション)
- EVを使用しない時はプラグに接続しておく
- 日常使用では20-90%の範囲内にしておく
という感じです。
ただしテスラ車だとモデル3のスタンダードレンジプラス(上海工場製のLFPバッテリーを使用したもの)については「週に1回くらい100%まで充電(もちろん普通充電器で)することを推奨」だそうです。
これは通常使われるNMCの3元系バッテリー(ニッケル・マンガン・コバルト)とレアメタルのコバルトを使用しないLFPバッテリー(リン酸鉄リチウムイオンバッテリー)の性質の違いです。
テスラだと「モデル3」のスタンダードレンジプラスのみ(今のところ)の話ですが、LFPバッテリーという点では先日紹介した中国・BYDの3台(ATTO3・Dolphin・SEAL)もLFPバッテリーですので共通した性質になりそうです。
「LFPバッテリー」については以前も解説してますのでこちらもご参照いただければと思います。
テスラ「モデル2(仮)」にBYD「Blade Battery」が採用される?【2Qの決算も紹介】
テスラが中国BYD社のバッテリーを採用する?というニュースが出ました。BYDは「Blade Battery」という独自の形態のLFPバッテリーを開発しており、低コストで搭載バッテリー容量を増やせるというメリットから新型の「モデル2(仮)」に搭載される可能性があります。2Qのテスラの決算内容の紹介と合わせて解説します。
ちなみにこの時予想した「テスラがBYDのバッテリーを採用」というのは一旦は打ち消されましたが、結局採用されてギガベルリンで既に使用されているようです。
またBYDの「Bladeバッテリー」の優位性についてはこちらでも紹介しています。
「Blade Battery(LFPバッテリー)」を持つBYDが最も怖い中国メーカー?【EVバスはとっくに日本上陸】
BYDが電気自動車(BEV)の輸出をジンバブエ・ケニアとアフリカ諸国に、年内にはオーストラリア・ニュージーランドへの輸出も予定しています。最大の魅力が「LFPバッテリー」と「Bladeバッテリー」という技術です。レアメタル不使用でコストを削減した安価なバッテリーが発展途上国を含む世界に受け入れられる可能性は高いです。
話を「バッテリーを保護する運用法」に戻します。
要はベストの運用法は「なるべく自宅で普通充電」ということになるのですが、「信用ならん!」と怒る人はいるでしょうからイーロンマスクのツイートも引用しておきます。
Not worth going below 80% imo. Even 90% is still fine. Also, no issue going to 5% or lower SoC.
— Elon Musk (@elonmusk) December 1, 2018
このように自宅に駐車する際に「80%以下にする価値はない」「90%でも問題ない」と言ってます。
80%なのか90%なのかは人によって言うことが違うところですが、私はイーロンマスクを信じて(テスラオーナーでもないのに…笑)90%でキープしておくようにしています。
「自宅の普通充電器で常時80-90%にキープしておくこと」がベストなのではないでしょうか?
もちろん自宅に充電器がないと「ケーブルに繋いだままにしておく」ことは不可能ですが。
It’s not a big deal. Charge to 90% to 95% & you’ll be fine. At 100% state of charge, regen braking doesn’t work, because the battery is full, so car is less energy efficient.
— Elon Musk (@elonmusk) April 16, 2019
また別のツイートでは5%幅を持たせて95%でもOKと言ってます。ですが「100%にすると回生ブレーキが効かなくなるのでやめておいた方がいいよ」とも言ってます。
とはいえこれも数ヶ月に一回の長距離ドライブでたまに100%にするくらいなら問題はありません。
バッテリーの大敵は「熱」です
なぜこの「普通充電」に私がこだわるかというと「バッテリーの大敵である熱の発生を可能な限り抑えることができる」からです。
こちらはヒョンデ「IONIQ5」を90kWの充電器で充電した際のバッテリー温度ですが40度を超えています。これは正直に言ってバッテリーに良くはありません。
長距離ドライブの際にはやむを得ないので仕方ありませんが、実は日常から高速の急速充電器を使うのはあまり良いこととは言えません。
もちろんそれと引き換えに「IONIQ5」はテスラオーナーからもあり得ないと言われる「80%を超えても81kWの速度で充電」が可能になっているわけですが。。。
テスラと比較した際の「IONIQ5」の強みはこの「充電速度があまり落ちないこと」です。比較の意味で並べておくとテスラ「モデル3」の充電推移はこんな感じのようです。
ただし長所は一歩間違うと短所にもなります。
後日また取り上げますが、ヒョンデ「IONIQ5」には「充電性能が高いってことはそれだけバッテリーの寿命を犠牲にしてないか?」という疑問は言われています。
まぁ個人的には「ヨーロッパのように200kWで充電するならいざ知らず、日本の低速CHAdeMOだとどこまで影響あるのか?」と思ってますが。
90kWで充電すると上記のようにバッテリー温度が上がってますが、30kWの低速CHAdeMOを使った時はこれです。
これ実は普通充電器を使った際のバッテリー温度とほとんど差がありません。
ってことは「90kWとかの高速の充電器使うと影響あるけど30kWとかの低速のCHAdeMOだと影響ないのでは?」という仮説が立ちます。
それで今回は「まずは30kWのCHAdeMOで充電してから(時間短縮のため)テスラのウォールコネクター(普通充電器)に接続して90%へ」というのを試してみた次第です。
ちなみに「30kWのCHAdeMO・テスラのウォールコネクター・200V普通充電器」を全部用意していてしかも無料で使えるのは(駐車場代はかかります)練馬区の「光が丘IMA」というショッピングセンターですので紹介はしておきます。
住所:東京都練馬区光が丘5-1-1
海外のサイトなどを調べても「30kWなど低速の充電器を使った際のバッテリーへの負荷」ということを論じているサイトが現時点では見つからないので仮説の答え合わせがまだできてませんが。。。
海外では既に350kWの急速充電器が普通になってますから見つかるわけないような気もしますけど(笑)。
「急速充電」に依存したがる日本のおかしなEV運用を変えるべき?
今日の話はもちろん理想的な運用法であり、誰でもできるものではないことはわかっています。
ですが「なるべくこの理想に近づけた運用をするために考える」ことは重要だと思います。
ところがこれを主張すると必ずと言っていいほど「そんなこと言われてもマンションに住んでると普通充電なんかできないんだ!」とか「そもそも長い時間かけて充電する暇なんかないんだ!」と怒る人がいます。
厳しいことを言えば「じゃあEVなんか買わなければ?」というのが正直な感想です。
私の場合はマンション暮らしで現時点では自宅に充電器なし(現在設置できるように交渉中)ですが、それに近い運用ができる位の時間的余裕があるからヒョンデ「IONIQ5」を購入しました。
もちろん自宅に普通充電器がないのは大きなマイナスであり不便であることに変わりはないので、どうにかして設置したいとは思っています。
そして上手く設置できたら「こうやればマンション住まい(賃貸)でも充電器は設置できる」というノウハウは公開したいと思っています。
話を戻しましょう。
冒頭で見せた充電もその一例で確かに「30kWの低速CHAdeMOで充電(バッテリー温度が上がらないから)した上でテスラのウォールコネクターに繋いで90%まで普通充電」という面倒くさい作業です。
私の場合はこの作業をやるために夜中に車を出して移動して「CHAdeMO→ウォールコネクター」の合計2時間くらいの時間であればパソコンを持ち込んでちょっと仕事したり、ブログ・YouTubeの更新をやっていれば余裕で消化できますので。
- 一軒家に住んでいて自宅で充電できるなら今すぐでもEVを買うべき
- マンション住まいで自宅充電が厳しいなら他の条件が整わないとまだEVを買うべきではない
という結論が出ます。
日本の急速充電器をめぐる環境は目を覆いたくなるくらい悲惨なので充電器の話をする際にはどうしても急速充電器のスペックばかり語ってしまいがちになりますが、「でも速度が上がる→バッテリー温度も上がる→実はバッテリーにあまり良くない」という側面にも目を向けるべきでは?と思うところです。
だからこそ「急速充電は高速道路を使った長距離移動などの限定的な場面での使用にとどめて、日常は普通充電器をなるべく使う」というベストのEV運用法を今後も強調していこうと思います。
要はマンションだろうが「駐車場に普通充電器・コンセントを設置するのが当たり前」になってくれれば問題ないわけですから。
まぁ「低速のCHAdeMOだとどうなる?」というのは半分笑い話だと思っていただければと思いますが、こちらも色々検証してみたいと思います(笑)。
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