実はヨーロッパでEVは売れてない?【2021年7月の統計から考える】

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こんばんは、@kojisaitojpです。ヨーロッパ・中国に続いてアメリカもいよいよ本格的にEV化へ踏み出します。

具体的な内容としては「2030年までにEVの普及率50%を目標」とのことです。ヨーロッパと違うのはPHEVは許容されたことですが、これがアメリカという国土の広大さから考えて過渡期の移行措置と言うべきでしょうか。

何度か話題にしましたが日本の某メーカーの「ハイブリッドも入れてくれ」というロビー活動はあえなく失敗したようです。

そして今度は主張を変えて「消費者がEVを欲していない」という方向にEV批判の内容を変えてきました。

では実際にどのくらい「消費者が買わない」のでしょうか? ちょうど2021年7月のヨーロッパでの販売台数が出たところなので実際に見てみたいと思います。

世界で最もEV化の進んだノルウェーの2021年7月の売り上げ台数は?

2021年7月ノルウェーのEV化率
まずは世界で最もEVの普及率が高いノルウェーのデータです。

2021年7月はBEVが64.1%でPHEVが20.6%で合計のEV化率は84.7%です。この数字は先月や先々月とほぼ同じ水準です。

あえて言えばPHEVの比率が下がってきていることが違います。ノルウェーは世界で最も早く2025年から内燃機関車(ガソリン車・ディーゼル車・ハイブリッド車・PHEV)の新車販売を禁止にすることが決まっていますのでそろそろPHEVすら買うメリットがなくなってきています。

2021年7月ノルウェーの新車販売ランキング

車種別で見ると先月に続いてフォードの「マスタング・マックE」が首位、他にはヒュンダイ(ヒョンデ)の「IONIQ5」が発売直後にも関わらず4位にランクインしています。

中国メーカーのNIOやXpengなどもヨーロッパ進出の際に最初の販売国をノルウェーにしていることからもわかるように。世界各国のEVが素早く販売されるのも需要のあるノルウェーならではかもしれません。

ヒュンダイ(ヒョンデ)の「IONIQ5」は私も一押しのEVですので過去に紹介した記事があります。

またEVの中では既に「古参」になる日産リーフも今もトップ10にランクインしているのもノルウェーのEVに対する懐の深さでしょうか。

などと言うと「ノルウェーは電力のほとんどが水力発電だ」とか「ノルウェーの駐車場にはコンセントがあって(元々はオイルヒーター用)EV化しやすいからだ」と反発されるのはわかっています。

ですがそんなノルウェーもほんの4年前のEV化率はこんなものです。

今でこそ8割を超えるEV化率ですが、たったの4年前はその半分の4割でした。

ノルウェーのEV化率推移

「指数関数的上昇」という言葉を知ってますでしょうか?

指数関数的上昇のイメージ画像

最近であれば「新型コロナウイルス」という悪い例がありますが、つい先日まで100人200人だった東京都の感染者数があっという間に5000人まで来ましたよね? 

数学がわからない人向けに言っておけば「弾みがつくと一気に上昇する」というのは別にコロナウイルスでもEVでも同じことです。昔はスマホもこのように急激に普及しました。

2021年7月のフランスのEV化状況

2021年7月フランスのEV化率
さて次は先日の記事でもルノーが本格的にEVに取り組むことを表明したフランスです。

2021年7月はBEVが6.5%、PHEVと合わせた電動化率は15.9%と、前年同月が9.5%ですので2倍弱の伸びを見せています。

先月と比べると若干EV化率は落ちていますが、新型コロナウイルスの影響で33%自動車の売り上げ台数が減ってます。

また6000〜7000ユーロ出ていたEVに対する補助金が1000ユーロに減額となっている影響もあるかと思われます。

フランスは車種別の統計が出るのが遅いのでまだ7月の具体的な車種別の詳細はまだ出ていませんが、先月首位のテスラ「モデル3」は例によって4半期末に納車を集中させるので7月はそもそもフランス国内に入ってきた車体自体がほとんどないようです。

ランキング常連の「ルノー・ZOE」や「フィアット500e」「プジョーe-208」などのコンパクトカーが上位入っていることは確実のようです。

2021年7月のスウェーデンのEV化状況

2021年7月スウェーデンのEV化率
次は先日第二弾のEV化計画として「航続距離1000キロ、充電時間も半分」という2025年以降のプランを公表したボルボの本国であるスウェーデンを見てみましょう。

BEVは15.1%、PHEVと合わせた電動化率は37.6%と、前月から若干下がっています。

数字が下がったことを出すとEVが嫌いな方は喜ぶのでしょうが、スウェーデンでは7/1から社用車(company car)に対する増税とほとんどの乗用車が対象の増税も行われているので、自動車全体の販売台数自体が2021年の中で最低の台数になっています。

税控除や補助金がなくなるとEVが売れなくなるということを主張する人が日本ではなぜか多いですが、それでもEV化率37.6%です。

2021年7月スウェーデンの新車販売ランキング

台数自体が大幅に減っているのでアテにはなりませんが車種別だと「Kia Niro EV」が首位、それにフォルクスワーゲン「ID.3」、フォード「マスタング・マックE」が続きます。

先月の記事でも取り上げた中国資本の傘下に入って復活した「MG」の「ZS EV」も相変わらず5位に入っています。

まぁ中国メーカーと言っても工場はイギリスにありますので実質ヨーロッパのメーカーと言うべきでしょうけど。

今後秋以降には以前サブスク形式での提供で話題になった「C40 Recharge」が続き、更にボルボが打ち出した新コンセプト「Volvo Concept Recharge」に沿ったEVである「2025年から更に高性能なEV(航続距離1000キロ)」の発売もアナウンスされていますので注目です。

後は他のヨーロッパ諸国と大きく違うのはスウェーデンが本国のボルボが去年まではEVよりもPHEVに軸足を置いていた影響から今もPHEVの比率が高いのもスウェーデンの特徴です。

「EVが怖いと思うならPHEVで試してからEVへ」というのは私も推奨していることで以前書いた記事がありますので、こちらをご参照いただければと思います。

既にEVに慣れたオーナーの方々からは「今更PHEVなの?」と指摘されたりもしましたが、乗ったこともないのにEVの悪口を言っているような層にまず電気で走れる状態を体験してもらう、電気だけで走れる状態を知ってしまうと「ガソリンを消費したくない」という意識が働いてなるべく電気だけで走行しようとすることは既に明らかになってますので、電気自動車後進国の日本で有効な方法ではないかと思っています。

2021年7月のドイツのEV化状況

2021年7月ドイツのEV化率
ではヨーロッパ一の自動車大国ドイツはどうでしょうか?

BEVだけでも10.8%、PHEVも含めた電動化率は23.5%と前年同月比の2倍の数字です。

それ以上に特筆すべきなのは、ガソリン車が過去最低の39.4%にとディーゼル車の売り上げも20%以下へと、内燃機関車のシェアがガクッと落ちていることが特徴です。

ガソリン車とディーゼル車を合わせて59.2%というのは過去最低の数字だそうです。

この数字を聞いてどう思いますか? 「まだ半分売れてるんだ!」「10%くらいしかシェアのないEVを消費者は望んでない」と言えますか?

指数関数的上昇のイメージ画像

もう一度「指数関数的上昇」のグラフを出しますが、前年比でEVの比率は2倍に増えています。

2倍に増えたこととそれでも内燃機関車の比率が50%を超えていることのどっちを重視するかはお任せしますが、確実にEVの売り上げ台数は伸びています。

しかも最も売れている「テスラ・モデル3」に至ってはまだドイツ国内の「ギガファクトリー・ベルリン」で生産できていません。

これについては自国の自動車メーカーからの圧力?という説もあるほどです。メルセデス・BMWにフォルクスワーゲングループとドイツは日本と同レベルの自動車大国ですからテスラの工場ができることへの抵抗は強いようです。

テスラがヨーロッパで生産できていないということはアメリカか中国からの輸出になりますのでかなり割高な車両価格で売られていて、それでも首位を争うレベルだということです。

ですが今後はメルセデスがフラッグシップの「EQS」を発売しますし、BMWも「iX」や「i4」など本気でEVを投入してきますので、ドイツ勢vsテスラの熾烈な争いになると思われます。

ヨーロッパ諸国の「前年比2倍」と「EVのシェア10%」のどっちが重要なのか?

Hyundai「Ioniqi5」
このように各国の2021年7月の統計を見てくるとノルウェーだけはぶっちぎりでEV化率が高いのですが、それ以外のドイツ、フランスは10-20%、PHEVの比率が高いスウェーデンは37.6%(BEVに限ると約15%)です。

これに対して「たった10%や20%しか売れないなら消費者のニーズがない」と捉えるか「前年比で2倍以上のペースでEV化が進行している」と捉えるのかという話になります。

指数関数的上昇のイメージ画像

何度も出しますがこれが「指数関数的上昇」のグラフです。

東京都コロナウイルス感染者推移

現在東京都で5000人を超える新規の新型コロナウイルス感染者が出ていますが、1ヶ月前は1000人行くか行かないかとレベルでした。6月だと500人以下で推移してた時期もあります。

「増え出すと一気に増える」というのはウイルスに限ったことではなく、新しい商品が市場に広まるときも一緒です。

おそらく10年前の今頃であればスマートフォンを持っている人の方が少数派で、まだガラケーを使っている人が多かったのではないでしょうか?

現在EV化率8割を超えるノルウェーでもたった4年前の2017年には半分の4割程度、更に戻ると2014-2016年頃は10%-20%で一時期停滞しています。

ノルウェーのEV化率推移

先ほどヨーロッパのEVへの補助金や車への税制改革(増税)によってフランスやスウェーデンで足踏みということに触れましたが、これがノルウェーでいう2014年-2016年だと思えませんか?

先日も取り上げたように欧州委員会で「2035年以降ゼロエミッション車以外の新車販売禁止」がテーマに上がっている状況で、これからガソリン車・ディーゼル車・ハイブリッド車を買おうと思う人がどれほどいるでしょうか?

「たった10%くらいで」と思うのはもちろん自由ですが、これまでの上昇ペースを考えるとどこかのタイミングで爆発的にEV化率が上昇する予感しかありません。

その時にEV化を渋っている日本メーカーはどうなるのでしょうか? ヨーロッパではハイブリッドもPHEVも禁止、アメリカでもハイブリッドは禁止、中国こそまだハイブリッドを認めているものの中国メーカーの大半はEV専業です。

「EV化の流れが予想できなかった」という言い訳が通用しない段階まで来ていると思うのは私だけでしょうか?

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