2021年12月のヨーロッパのEV化率から読み取れる「PHEV→BEV」の流れとは?【過去最高の国続出】
こんばんは、@kojisaitojpです。毎月恒例のヨーロッパの新車販売に占めるEVの統計が出てくる時期ですが、一つ引っかかったことがあります。
何回も言うけどノルウェーはPHEVも入れると90%、ドイツ・フランスだと30%になるので定義をしっかりした上で記事書いて欲しい。
21年の新車EVシェア、ドイツは14% ノルウェーは65%: 日本経済新聞 https://t.co/xZevXSW7Bu— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 6, 2022
私が統計を引用しているのは「CleanTechnica」や「insideeves」が多いのですが、これらのメディアはEV化率を「BEV+PHEV」で出します。つまり「プラグインして充電できる車=EV」という定義です。
ところが引用した日経新聞の記事ではBEVのみをEVとして定義しているので、私がこれから取り上げるヨーロッパのEV化率よりも低い数字が出てきます。
もしかしてEVが案外普及してないってことにしたいから意図的に低くなる基準を用いてないか?というのが素朴な疑問です。
今日は2021年12月のヨーロッパ(イギリス・フランス・ドイツ・ノルウェー・スウェーデン)の最新の新車販売に占めるEV化率について取り上げますが、「意図的に低めに店ようしたらどうなるか?」についても触れながら解説します。
目次
2021年12月イギリスのEV化率は?
いつもであればノルウェーを最初に取り上げて「ノルウェーではもうガソリン車・ディーゼル車が消滅寸前」であることを強調しますが、今回はやり方を変えてイギリスから取り上げてみます。
ですがちょっと前のイギリスのEV化率はこの数ヶ月でもこのように23.1%から33.2%と一気に10%近く伸びています。
冒頭で触れた日経新聞の定義であるBEVのみで見ても2021年10月が15.2%なのに対し12月が25.5%と伸びています。
というか伸びてるのがBEVだけでPHEVは伸びてないのにお気づきでしょうか?
ちなみにこれが一年前の数字です。
一年でBEV(バッテリーのみで動くEV)の比率が9%から25%と約3倍に増えていることがわかります。
私が昨年ヨーロッパに旅行した際にも「1泊しかしてない割にロンドンで見かけるEVが多い」という何となくの印象が数字でも裏付けられています。
ヒースローの駐車場でUber待ってるわずかな時間にこれだけEVが見つかるわけで😱😱😱 pic.twitter.com/LbeLkx6yzR
— saito koji@ヨーロッパから帰国 (@kojisaitojp) December 6, 2021
この写真はロンドン・ヒースロー空港でUberを待っている10-20分の間にUberの待ち合わせ場所である駐車場で撮影したEVです。。。
他にもホテルの近くのパーキングスペースでも常に充電しているEVがいたりと、2021年10月からロンドン市内に乗り入れる車に対する排気ガス規制が厳しくなった影響もあるのかBEVだらけです。
私が旅行中に見てきたEVについては以下の記事で紹介してますのでよろしければご参照いただければと思います。
タウンホールホテルアンドアパートメンツ(ロンドン)宿泊記【DesignHotelsはマリオット系】
ヨーロッパ到着の1日目はロンドンの「Townhall Hotel&Apartments」に宿泊しました。エドワード7世の時代の市庁舎を改装したクラシックなホテルで、古き良き時代のヨーロッパのテイストを感じられるホテルです。「DesignHotels」というブランドは日本では馴染みがありませんが、マリオット系の一員です。
ロンドンシティ空港を使ってフランクフルトまで移動した話【空港へのアクセスはEVで】
ロンドンシティ空港というマイナー空港を使ったという記事です。滑走路1500メートルでヨーロッパ内の移動専用の空港で、市街地からのアクセスの良さと、コンパクトな空港ゆえの乗りやすさが魅力です。侵入角度が5.5度で羽田空港もびっくりの急降下が見られるのも特徴です。配車アプリできた起亜NiroEVの紹介と合わせて解説します。
車種別の統計についてはまだ出ていませんが、メーカー別の統計は出ています。
圧倒的にテスラなのですが、これも私がロンドンで大量テスラ車を撮影していた事実とも符合します。それ以外では日産(EVだとリーフのみの数字)が案外検討していること、上記のロントンシティ空港へ行く記事にあるようにライドシェアでも「起亜・NiroEV」に乗りましたが、ヒュンダイ・起亜も上位に入っているのが特徴です。
2021年12月フランスのEV化率は?
次はフランスです。
2021年11月のフランスではBEVが14.6%、PHEVが9.8%で合計が24.4%と、BEV13.5%、PHEV10.0%で合計23.5%だった11月の数字を超えてきました。
前月のEV化率が過去最高だったのですが超えています。しかも先程のイギリス同様にBEVの比率が上がってPHEVが減ってます。
車種別では先月2021年11月の際には「何とDacia Springが首位」と私も驚いて取り上げましたが、12月はルノー「Zoe」が首位を奪い返したようです。
日本でいう日産リーフ並に歴史があるのでルノー「Zoe」ですから私が滞在した際にもパリ市内で見かけるEVは「Zoeかテスラか」という勢いでしたが、12月も「Dacia Spring」がテスラ・モデル3より上位にいますので、今度フランスに行く際には実物を見れるかもしれません。
なお「Dacia(ダチア)」はルノー傘下のルーマニアのメーカーで「Spring」については以前取り上げた記事がありますので、こちらもご参照ください。
日産・三菱の軽自動車規格「IMK」の全貌を予想してみる【「Dacia Spring Electric」がヒント?】
数日前に日産が三菱と共同で開発する軽自動車規格のEVが2022年にも発売されると報道が出てきました。まだ公式な発表ではないので全貌は明らかになってはいませんが、「ルノー・日産・三菱」のグループから発売される軽自動車に近い規格の「Dacia Spring Electric」という電気自動車から予想してみます。
私が訪れた際にはこのようにカーシェアの車両として「フィアット500e」と「ルノーZoe」が借りれる状態になってました。
ホテルから数分のところにあるとアプリが教えてくれたからフィアット500e見てきた。 pic.twitter.com/pNCtLCwFiP
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) November 24, 2021
コンパクトカーが人気のフランスらしい売れ方と言えばそうですが、もしかしたら近いうちにこのラインナップに「Dacia Spring」も加わるかもしれません。
2021年12月のノルウェーのEV化率は?
としていつもと違う順番で取り上げるあのノルウェーです。
ここのEV化率が高いのはもう常識ですが、BEVが67.1%、PHEVが22.9%で合計のEV化率がちょうど90%と、BEVとPHEVを足すと90%という数字がもはや普通になってきました。
「EVは雪国では普及しない」「EVだと大雪で立ち往生したら凍死する」などとネット上でデマを撒き散らしている勢力は相変わらず日本では見られますが、日本よりはるかに緯度が高い上に北海道同様に雪国のノルウェーの数字を見て何を感じるのでしょうか?
もちろんノルウェーにはノルウェー固有の「EVを普及させやすい事情」はあります。それについては以前触れましたのでこちらもご参照ください。
ノルウェーが電気自動車最先進国になった理由とは?【2025年にはエンジン禁止?】
日本とは真逆の電気自動車化で最先端を行くノルウェーについて取り上げてみます。PHEVと合わせた電動化率が8割を超えるノルウェーではむしろ電気自動車に移行しない方が国民が損をするように上手に誘導しています。産油国でありながら2025年にはエンジンのある車自体の販売を禁止する予定のノルウェーで電動化できた理由を探ります。
寒冷地ゆえに元々エンジンの始動をスムーズにするためのブロックヒーターを使用するためのコンセントが駐車場に設置されているのが当たり前だったという環境がノルウェーがEV化しやすい理由としてあったのは事実です。
ですが「じゃあ日本でもコンセントつければ?」と思うのですが、実は日本でもこんな話が出ています。
小池都知事が本紙に語った危機感「駐車場にコンセントさえない」、コロナ「敵が入れ替わった」 #SmartNews https://t.co/lJgyz8SvRB
— 再生可能エネルギー (@mi3518ki) January 3, 2022
東京都は世界を代表する都市としてロンドンやパリ、ニューヨークなどと比較される対象ですから動きが早い印象です。
ですがこの動きが例えば北海道などの雪国でも進めば「EVは寒いと航続距離が短くなるので使えない」などという批判もシャットアウトです。
ノルウェーの話から脱線しましたので戻します。
誰が見てもわかるようにテスラのモデル3とモデルYがぶっちぎりです。
ただよく見るともはやEVの中では古豪に入る日産リーフが5位に入って大健闘(実はこれだけEV化が進んだノルウェーでも今でもリーフは毎月売り上げ上位です)しているのが目につきます。
他にはヒュンダイ「IONIQ5」やBYD「Tang」など他の国ではまだ目にすることが少ないEVもランキングに入っている、それだけEVのバリエーションが豊富なのもノルウェー市場の特徴です。
ちなみにこの位BEVの比率が高いとEV以外の車も入れたランキングでもせいぜいトヨタの「RAV4PHV」が入るくらいで「大半はEV、たまにPHEV」というのがノルウェーの現実です。
2021年12月のドイツのEV化率は?
次はヨーロッパトップの販売台数を誇る自動車大国であり、私も昨年フォルクスワーゲンの「アウトシュタット」を訪れた際にも触れたドイツです。
ドイツでは先月34.4%という過去最高のEV化率を達成しましたが、12月はBEVが21.3%、PHEVが14.4%で合計のEV化率が35.7%と過去最高を更に更新しています。
しかもドイツでもBEVの比率が上がってPHEVの比率が下がってることにお気づきでしょうか?
7月頃に若干EV化率が下がった際にアンチEVの方々が「ドイツ人はEVの限界に気づき始めた」とヤフコメなどではしゃいでいたのが遠い昔の話です(笑)。
というかそれは単純に「テスラが6月に納車を集中させて7月は空っぽの月」というだけの話だったのですが。
車種別の統計も出ており、「テスラ・モデル3」「フォルクスワーゲン・e-Up!」「ルノー・ZOE」がトップ3です。
注意して欲しいのはノルウェーなど他のヨーロッパ諸国では顔を出す「モデルY」なしでこの数字だという点です。
これはフランクフルトで訪れたテスラストアに展示されたいた「モデルY」ですが、まだロングレンジのみ(パフォーマンスは2022年発売と記載あり)が発売されているようです。
現時点ではまだギガベルリンが稼働していないので上海からの輸入になるのもありまだ割高ですが、こんな情報もあります。
🇩🇪 Giga Berlin
A German Model Y performance reservation holder informed me he was contacted by Tesla to prepare for delivery in 2 weeks to the end of the months
Is Giga Berlin preparing for the first deliveries?
— Alex (@alex_avoigt) January 5, 2022
あらゆる団体に妨害に近いようないちゃもんをつけられていたギガベルリンがついに稼働しそうです。稼働して今より安いモデルYがドイツ市場に大量に出てきたらドイツのEV化率は今の水準では済まなくなるはずです。
ちなみに「ギガベルリン」とそこで披露されたテスラの最新技術についてはこちらの記事をご参照いただければと思います。
テスラ「ギガベルリン」が世界のEV化を加速?【ギガプレス・Structural Battery】
テスラがギガベルリンで公表した新技術は先日解説した4680セルだけではありません。ボディのチリ合わせを不要にする一体成形のボディを作り出す「ギガプレス」や車体にバッテリーが埋め込まれて一体化した「Structural Battery」によってバッテリー容量と航続距離の増加と安全性の向上と斬新な技術がてんこ盛りです。
2022年も「ノルウェーは特殊。EVに乗ったら凍死」と叫ぶのが日本人クオリティ?
ノルウェーばかり例に挙げていると「ノルウェーが特殊なんだよ!他の国ではそんなに普及してねぇんだ!」と怒る人がいるので、最後はノルウェーの隣国スウェーデンを取り上げてみます。
ノルウェーの隣ということは当然雪も降りますし、冬はマイナス10-20度くらいには普通になるのがスウェーデンですが、ここでもノルウェーには及ばないにしてもBEVが36.4%、PHEVが24.3で合計60.7%とかなり高いEV化率になっています。
スウェーデン市場は2020年まではPHEVの比率が非常に高く、BEVの比率が高くなり始めたのはスウェーデンが本国であるボルボが「2030年までに全車EV化」の方針を打ち出したことと関係があります。
「ボルボ」のBEVへの方針転換については以前の記事で書いてますのでご参照いただければと思います。
ボルボの「全車電気自動車化(BEV)」とOTAアップデートの衝撃とは?【対照的なガラパゴス日本】
今度はスウェーデンのボルボが2030年からの「全車電気自動車化(BEV)」を発表しました。オンライン販売に切り替えながらも「サブスク形式」という独自の販売方法で既存のディーラー網を残す方向で(雇用を維持する方向で)電気自動車化するという北欧らしい電気自動車への対応方法を発表したボルボの戦略について解説します。
ボルボはEV化の障壁になると私も以前から述べている「ディーラー網」について、「今度はサブスクと整備の拠点として再編成する」という方針を表明しており、2022年には日本でもスタートする新型EVの「C40」はサブスク形式で提供とEV化の時代に合わせた新しいビジネスモデルを構築し、「ディーラー網の整理による雇用の減少」を食い止めようと模索しています。
「サブスク化」と「ディーラー網の活用」というボルボの試みについては以前記事にしましたのでこちらをご参照ください。
ボルボが「C40Recharge」で提起する「所有」へのチャレンジとは?【サブスク・カーシェアへ】
先日取り上げたボルボの2030年からの全車電気自動車化には「サブスクリプション」で提供するという、自動車業界では当たり前だった「所有」という概念すら覆す可能性があります。「若者の車離れ」などと言われますが、月額課金で維持費もかからない、いつでも解約できるとなれば若者の車への興味を復活させるポテンシャルがあります。
この辺りになるべく雇用を大事にする北欧の会社らしい「人に優しい」姿勢が見えるところです。
そしてスウェーデンで実際にテスラを使用しているユーザーからはこんな声があります。
ストックホルムでテスラに乗ってます。先日-18℃になりましたがご覧の通りスーパーチャージャーは大盛況。ちなみに6年住んで-18℃より下がったことはないし-10℃以下になる日も滅多にないです。-30℃には遠く及ばすスミマセン。スウェーデンも南北に長いので北の方ではどうなってるのか知りません。 https://t.co/6h3FfPQO56 pic.twitter.com/E695yl5Luj
— 吉澤智哉🇯🇵→🇸🇪/Tomoya Yoshizawa (@livinnovation) January 5, 2022
年末年始私が帰省していた北海道札幌市も今年はかなり寒い冬になっていますがそれでもマイナス18度以上になったことはありません。
よく札幌を例に「世界の大都市で最も気温が低い」だの「世界の大都市で最も豪雪地帯」だからEVには向かないと主張する方は多いのですが、マイナス18度まで行くストックホルムで使えて札幌で使えないという話にはなりません。
と言うと必ず「北海道でも札幌なんて暖かい方なんだから例に出すのは不適切だ!」と怒る人がいるのですが、私が「大都市」と断ってることくらい見て欲しいところです。
ちなみに北欧でもこれが現実なのですが。。。
-30℃や-40℃(記録は-51℃)の寒波に襲われるノルウェーの北極圏内でも充電器が導入され、増えております。https://t.co/6MH5PIDH25
もちろん、バスも導入されてます。https://t.co/CsWoKy1iad pic.twitter.com/wIbwGbEGin— Keiichiro SAKURAI (@kei_sakurai) January 5, 2022
私も北海道出身なので札幌より寒くなる都市があることは100も200も、いや500くらい承知してます。
ただそういうエリアに住む人って日本全体の人口の何%なの?と言いたいだけです。
先ほどのノルウェーでもガソリン車3.3%、ディーゼル車3.5%と10%に満たない数字ですが新車で内燃機関車を買う層はいます。例えば軍事用の車両など現時点ではEV化が困難な車両もあることはあります。
ですがその数%を根拠に「だからEVなんて使えないんだ!」とEVを全否定することが適切なのでしょうか? 私は全くそうは思いません。
反対に「市場シェア取れてるうちにEV化して現行のハイブリッドユーザーをそのままEVへ」とは思わないんだな。
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 9, 2022
先日のニュースで「アメリカでの販売台数でトヨタがGMを抜いた」というのがありましたが、シェアをキープできているうちにEVシフトを進めるべきだと思うのですが、これが遅れてアメリカだとテスラやGM、フォードなどにシェアを取られてからEV投入では遅いと思うのは私だけでしょうか?
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