「リース」「残価設定ローン」と「サブスク」の区別がつかない日本の自動車業界【EVの普及にも悪影響】
こんばんは、@kojisaitojpです。前回は「カーシェア」に関する誤解について話をしましたが、私が「自動車の所有という概念に代わるもの」として同時に主張しているものに「サブスク(月額課金制)」があります。
この「サブスク」も日本だとなぜかおかしな方向に行きたがるようです。
サブスクじゃなくて残クレの改訂版でしょ。免責30万ってのも微妙。こんな買い方するくらいなら買い切りの方がマシ、カーシェアの方がいい、ってなるんだけどな。本気度見えない。 / ホンダ、新車サブスク「楽まる」開始免責30万円など独自色 (レスポンス) #NewsPicks https://t.co/u1N4l0vKOC
— 逢澤翔太 (@shotaaizawa) May 25, 2021
以前「サブスク」について取り上げた時はトヨタの「KINTO」が「これじゃリースとほとんど変わらない」と言いましたが、今度はホンダが出してきた「サブスク」です。
先に結論を言うとこれだと今までも存在した「残価設定ローン(契約期間満了時に買い取るか手放すか選べる)」とほとんど変わりません。
元々リースとサブスクの区別は曖昧なところがあるのですが、今回のこのシステムだと月額課金で「使いたい期間だけ使う」というのが困難です。
そこで今日も従来の「所有」という概念を変えるものとしてカーシェアに続いて「サブスク」について考えてみたいと思います。
目次
ホンダを例にあえて車の「リース」と「サブスク」に線引きをしてみる
まず冒頭で引用したホンダのサブスクである「楽まる」についてですが、これまで日本の自動車メーカーが行ってきた「サブスク」と称するサービスと比較しても変更点、というか「これじゃサブスクとは言えないのでは?」と思う部分については改善されていません。
- 契約期間が3年〜と長期過ぎる
- 免責30万円までという微妙な制限
契約期間が3年からとこれも従来のリースと全く変わりません。リース契約は全額経費として計上できる会社であれば有益ですが、個人が契約しても旨みはありません。
個人が「サブスク」として使うメリットを感じるためにはもっと短期での契約ができるようにならないと意味がありません。
また免責についても同様で「内外装に関する減点が300点以内、かつ月間走行距離1,000㎞以下が条件となります。この条件を超えた場合、内外装に関する減点1点につき1,000円、走行距離1㎞につき車種ごとの規定金額がお客様のご負担」とあり減点が総額30万円以内に収まった場合追加の自己負担なしとのことですが、これも条件が厳しいです。
「土日しか車を使わない」ような都会在住者であれば辛うじて使えるかもしれませんが、地方で毎日車を使うような生活の場合は論外です。
とはいえ都会で土日しか使わないようなユーザーであればサブスク形式など使わないで「カーシェア」で十分代わりがきくので、コスト的にはこちらの方がお得です。
どうも日本の自動車メーカーは本来の意味の「サブスク(1ヶ月毎の定額払いでいつでも解約可能)」にはしたくないようでトヨタでもホンダでも日産でもこのようなプランしか出てきません。
現時点では2021年秋からボルボが新しいEVの「C40 Recharge」をサブスク形式のみで提供すると発表しており、詳細はまだ出ていませんが「3ヶ月単位の契約更新」という契約期間は明言していますので、本来の意味の「サブスク」に近い形態になるのではと期待できます。
ボルボ「C-40」のサブスクについての詳細は以前書いた記事がありますのでご参照ください。
ボルボが「C40Recharge」で提起する「所有」へのチャレンジとは?【サブスク・カーシェアへ】
先日取り上げたボルボの2030年からの全車電気自動車化には「サブスクリプション」で提供するという、自動車業界では当たり前だった「所有」という概念すら覆す可能性があります。「若者の車離れ」などと言われますが、月額課金で維持費もかからない、いつでも解約できるとなれば若者の車への興味を復活させるポテンシャルがあります。
具体的なプランはまだボルボジャパンから発表されていませんので、発表され次第このブログでも取り上げます。
特にEVの場合は「興味はあるけど試す機会がない」「興味はあるけど買うのは何となく怖い」という人が日本ではまだまだ多いでしょうから、カーシェアやサブスクを通してEVを体験することが購入につながるのではと思っています。
サブスクで数ヶ月試してみたことによって「そのまま購入したい」とかできるようになれば利用価値が出てくるのではと思うのは私だけでしょうか?
EVを購入する最大のメリットは「維持費」?
ちなみに本日は「サブスク」という月額制で乗ること(形式的にはリース同様に所有者は車屋で使用者がユーザー自身)のメリットをお話ししていますが、仮に「これならEVでも問題なく使える」と判断して購入に至った場合には更にメリットが出てきます。
それが「維持費」です。
実際に数字を聞いて何を感じるのかは個々人の生活環境によって違いますが、これまでのガソリン車の場合いわゆる「維持費」がかなり高額でした。
気づいていないフリですか?車の維持費はバカにならない。自家用車の平均稼働率はたった4%。固定ツイにも書きましたが、特に都心では贅沢品。駐車場・ガソリン・高速料金・車検・税金・保険・オイルやタイヤetc。年50万円以上かかると知りすぐに手放した。カーシェアとタクシーでもお釣りが返ってくる.
— ラビ💊 (@Rabi_HealthHack) May 26, 2021
駐車場代・ガソリン代・保険代・税金のように保有しているだけで必ず消えていくものもありますし、ツイート内には「オイルやタイヤ」とありますが、5000キロ毎にオイルの交換や数万キロ毎のタイヤ交換が必須でした。タイヤ交換はEVでも必要になりますが、ガソリン車と変わらない出費はせいぜいこれ位です(ブレーキパッドも回生ブレーキが中心なので簡単に減らない)。
またガソリン車の場合2年毎の車検の際にもウォーターポンプだタイミングベルトだ何だとエンジンとその周辺(冷却系や吸気系など)の整備に10万20万という金額が簡単に飛ぶのが普通でした。
私の場合は過去に乗っていた車が全て外車(ルノー・シトロエン・ジャガー・フォルクスワーゲン)だったのもあり更に高額の費用を「車検代」としてふっかけられることが普通でした。
まぁ私の場合だと一個一個の項目をチェックして「この整備今回は不要じゃないですか?」とか「この部品ネットで調達できるので削ってください」とか言って毎回車屋とバトルになっていましたが。
中には「これじゃ車検通らない(実際は通るのに)」と称してあれも直すこれも直す的に整備費用をふっかけてくるお店もありました。
どうも自動車業界というのは「客が店の言う通りに整備しないと怒る」傾向があるので(これも「エンジン」という専門家にしかわからないブラックボックスの存在が原因)理解のある車屋を探すのに毎回苦労していました。
しかしこれがEVになると故障も非常に少ないので修理に出すということもガソリン車と比べると非常に少ない、ガソリン代が電気代になると何分の1で済む、つまり「維持費が格安」というメリットがあります。
サブスクでもカーシェアでもEVに対する「正しい情報発信」と「需要喚起」を行わないと日本がオワコンに?
というEVのメリットをただ説いたところでEVに乗ったことのない人にはなかなか実感できるものではないかもしれません。
そこで私が提唱する「EVを試してみる」方法として先日取り上げた「カーシェア」、本日取り上げている「サブスク」、それから「EVに至るまでの過渡期としてPHEVを購入して電気だけで走る状態を体験する」という三つの選択肢が出てきます。
PHEVを試すことについては先日「プリウスPHVを買って電気だけで走ってみよう」的に推奨する記事を書いていますのでこちらをご参照ください。
プリウスPHVにみんなで乗ることがEV化への近道?【案外本気です】
これまでガソリン車しか経験がない、ハイブリッド車しか経験がないという人でも「プリウスPHV」であれば悩むことなくバッテリーのみで走るEV走行を体験できます。一旦バッテリーのみで走行する楽しみを知ってしまうと極力ガソリンスタンドに行かない生活になるようで、EVを試してみたいけど何となく不安という人にもオススメです。
EVに実際に乗っていてEVのメリットを理解している人間であれば当たり前に感じることが、EVを体験したことがない、EVをよく知らないユーザーの目線からするとEVに対する何となくの(実際はほとんどが根拠がないのですが)不安を解消するためのステップが必要になります。
- EVは寒さに弱い
- 駆動用のバッテリー交換が高額
- 近隣に充電ステーションがない
EVのことを知らないとよく出てくる疑問ですが、実際はほとんど根拠のないことばかりです。
「EVが寒さに弱い」というのがデタラメであることは以前記事にしましたのでこちらをご参照ください。
寒さに強いのが「電気自動車」と「再生可能エネルギー」?【日本では逆走中】
2021年2月19日現在、テキサス州でこれまで想定しなかった寒波が襲来し、送電線が凍結するなどの理由で州の大部分が停電に見舞われています。そんな中でテスラの太陽光発電とパワーウォール(蓄電池)を装備した家庭では非常時の電源として機能し、寒さに凍えずに済んでいます。このことが示唆することを日本の文脈でも考えてみます。
電気自動車(BEV)は本当に寒さに弱いのか?【寒さ対策あり】
雪で身動きが取れなくなるような災害が起きると「電気自動車じゃ凍え死ぬ」ような批判を持ち出してくる人がいますが、実は電気自動車でも長い時間暖まりながら耐えることは可能です。世界で最も電気自動車化が進んでいるノルウェーは日本より北にあり、北海道・東北のような気候でも電気自動車化に成功してるという事実を忘れてはいけません。
「駆動用のバッテリー交換が高額」というのは確かに間違いではありませんが、近年のEVはバッテリーの耐久性がかなり向上していますので10万キロ20万キロというレベルでは交換不要なことも世の中には全然知られていないことでしょう。
「劣化の不安のある駆動用バッテリー」とか書いてしまう時点でEVに興味ない人なのがバレる。
ベンツの電気自動車「EQA」が640万円で大人気 サブスク利用も https://t.co/yWZoYxlaS6 #日経クロストレンド— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) May 27, 2021
これに関しては自動車ジャーナリストを名乗っている方でもEVのことをよく知らない場合安易に言ってしまいがちのようで、EVを知っている人間がもっと情報発信していく必要を感じます。
「充電ステーション」に至ってはもっと誤解されているもので、「自宅で最悪100Vコンセントでも(速度は遅いですが)充電できる」ということを知らない、あるいはガソリンスタンドと同じ感覚で「充電しにどこかへ行く」と捉えるからこそ勘違いしてしまうわけで、自宅で充電できればどんな田舎でも問題なく使えます。
この「EVは都会以上に田舎で向いている」というのも以前テーマにしたことがありますのでよろしければご参照ください。
「EVは都会で乗るもの」は勘違い?【むしろ田舎の方が向いてる】
「EVは都会で金持ちが道楽で乗るもの」的な偏見が今でも根強いようですが、実は田舎の方が電気自動車に適した環境であることが知られていません。一軒家率が高くて自宅で充電することが容易、道路が空いてて電費も良い田舎の道路事情などEVは田舎でこそ向いている点、ガソリンスタンドが減少する今後はますますそうなる点について触れます。
このような「実は障害でも何でもないのに勘違いされているEVに対する誤解」を手っ取り早く解消するには「実際にEVに乗ってみること」です。
そのために「カーシェア」や「サブスク」など「お試しで乗ってみる機会」を作り出す必要があると感じています。
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