テスラ・フォルクスワーゲンと比べたトヨタのオワコン具合とは?【終わりの始まり・Prologue】
こんにちは、@kojisaitojpです。昨日トヨタ「AYGO」がガソリン車であることに失望しましてが、この会社のオワコン具合はその程度ではなかったようです。
何様のつもりなんだろう?
Toyota Asks Lawmakers To Support Advanced Powertrains, Not Just EVs https://t.co/sezZ1KOEMY— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 18, 2021
私も呆れるを通り越して怒りが込み上げてきたツイートでしたが、どうやらアメリカでロビー活動を行なっていて(これ自体はどこの会社もやっています)、アメリカ政府の補助金(以前も説明した7000ドルの税控除です)の対象に「水素燃料電池車」や「ハイブリッド車」も加えて欲しいと(どこまで要求してるかは不明確)嘆願していたという話です。
他にももっと露骨に「EV化の流れが性急すぎる」などと自社の動きが遅いのを棚に上げてEV化の流れ動きをスローダウンさせるように圧力をかけていることも話題になっています。
Toyota lobbies US government in its increasingly delusional effort to slow down electric vehicles – Electrek
Toyota is currently lobbying the US government asking them to slow their rollout when it comes to battery-electric vehicles as part of the Japanese automaker’s increasingly delusional effort to slow down the electric vehicle revolution.
記事の中でも「トヨタさん、パーティーに遅れて来たからといってパーティーを壊そうとしないで」と言われています。
既にヨーロッパ市場では大半の国でハイブリッド車やPHEV車の新車販売が禁止(最速のノルウェーが2025年、イギリス・オランダ・フランスなど他のヨーロッパ諸国は2030年以降)となる法律が成立してしまっているので他の巨大市場であるアメリカ市場は失いたくないということなのでしょうが。
そんなにハイブリッドとPHEVに固執しないでさっさとEVを本格的に作れば?少し前まで「EVなんていつでも作れる」と豪語してませんでしたっけ?と思うところですが。
というわけで本日は現在世界で醜態を晒しているトヨタとそのトヨタとは真逆の方向に進んでいるテスラとフォルクスワーゲンの違いにも触れてみたいと思います。
目次
電気自動車(BEV)化・ハイブリッドとPHEVは排除が世界の流れ
まず最初に確認しておきますが、現在のアメリカの自動車メーカーの動きは以下のような感じです。
- GM→2035年以降は全車電気自動車化
- フォード→2030年以降欧州では全車電気自動車化
- テスラ→電気自動車専業
他にもアメリカにはたくさんの新興EVベンチャーがあり、「Canoo」や「Lucid」「Rivian」「Lordstown」などは私のブログでも紹介してきました。
アメリカの新興EVメーカーをまとめて紹介【Rivian・Lordstown・Lucid】
アメリカの新興EVメーカーの中でこれまで取り上げたテスラとCanoo以外のメーカーとして「Rivian」「Lordstown」「Lucid」を紹介します。現在多数の新興EVメーカーと既存の自動車メーカーが電気自動車という新しい市場で競争していますが、ピックアップに特化、商用車に特化、高級車に特化とそれぞれ個性的です。
アメリカ連邦政府の立場になればわかることですが「自国の自動車業界が電気自動車(BEV)へ一直線に向いているのに何でハイブリッドやPHEVを助けなきゃいけないの?」となりますよね。
自国の産業が最も力を入れている電気自動車(BEV)を犠牲にしてトヨタに花を持たせるような政策を取ることはまずあり得ないです。
そもそも現在のバイデン政権は元々環境重視・対日政策は強硬派ですし(過去の貿易摩擦は民主党政権の時に激化する傾向があります)、連邦政府の公用車を全車EV化する、全米50万箇所に充電スポットを設置するなどの「グリーンニューディール」政策を打ち出して大統領に当選しています。
そのバイデン政権がトヨタのために公約を撤回して、政策を変更してくれると思う方がおかしいです。
こうなってしまうと後はカリフォルニア州のようにエンジンを搭載した車は全て販売禁止(もちろんHVもPHEVも不可)のルールが他の州に広がらないことを狙うしかないのでしょうが、バイデン政権・民主党政権に日本に有利は計らいを期待する方がどうかしてます。
販売規制の対象からハイブリッドを外してもらおうという試みは他にもイギリスで(こちらはホンダがロビー活動という噂)やってみたようですが、こちらもジョンソン政権に相手にされず、結果としてイギリスは元の2035年からの予定を更に5年早めて2030年から電気自動車(BEV)以外の新車販売を禁止(HVもPHEVも不可)と日本メーカーのロビー活動がとことん失敗しています。
さすがに日本市場だけは政府に上手く入り込んだのか、「2035年以降もハイブリッドOK」にさせて、「電動車」という日本国内でしか通用しないガラパゴスな定義を作り出すことには成功しています。
自国の産業を支援するのが国家の役目ですのでこれ自体にとやかく言うつもりはありませんが、日本メーカーが世界の販売台数の中で日本市場が占める割合は10%もあるかないか位です。
日本市場だけガラパゴスにしても日本の自動車メーカーは生き残れないでしょう。
残されたハイブリッドOKの大国は中国くらいになりますが、この国は政府の気分次第で排ガス規制・燃費規制を強化してハイブリッド車を追い出すことはいつでも可能です。
中国は国内の自動車産業が以前紹介した「BYD」や「NIO」、「Xpeng」などほぼ全てが電気自動車(BEV)専業です。
先ほどのアメリカと一緒で「自国の産業が電気自動車専業なのにどうして日本のハイブリッドやPHEVを助けなきゃいけないの?」となってしまいます。自国の産業を強化したいならむしろハイブリッドやPHEVは追い出した方がプラスです。
中国の規制強化で詰んでしまう日本の自動車メーカーはどうすべきなの?【いい加減EVやれ】
以前より言われていた中国での燃費規制強化、ハイブリッド車排除の動きがいよいよ現実化してきました。ヨーロッパに比べると緩めの規制で2035年以降もハイブリッドOKだった中国にも厳しい燃費規制が2025年からかけられるようで、プリウスなど一部のハイブリッド車以外はピンチです。今日はこの状況に日本はどう対処すべきか考えます。
実際に規制が強化されて、燃費規制をクリアできたプリウス・ヤリス以外のハイブリッド車は既に厳しくなってきています。
いつ梯子を外してくるかわからない国に依存した自動車生産ではリスクヘッジが全くできないと思うのは私だけでしょうか?
「トヨタVSテスラ・フォルクスワーゲン」の違いは「バッテリー生産」
ここまでトヨタがEVを嫌がる理由というのを私なりに考えてみたのですが、最大の要因は「EVに必要なバッテリーを確保できない」からではないか?と思いました。
ちなみにEV化ではるか先を行くテスラは世界に4箇所ある「ギガファクトリー」で、フォルクスワーゲンについては今週発表があったように2030年までにヨーロッパ内に6箇所のバッテリー生産工場を稼働させる予定です。
Rumor is that most planned #battery cell 🔋manufacturing in Europe 🇪🇺 is ramped up by asian manufacturers 🇯🇵🇨🇳🇰🇷 with low added value for EU …
Looking at planned #gigafactory capacity (©️ R. Zenn👇🏻) however it is actually ~50% (220/430 GWh) European companies ☝🏻 pic.twitter.com/RUPLKgUasP
— Dennis Kopljar 🔋⚡ (@DennisKopljar) December 31, 2020
フォルクスワーゲンが構想を発表する前の表ですが、世界各国のバッテリーメーカーが20GWhを超えるバッテリー生産能力を身につけていることがわかります。
これに対し先日の記事でも言ったように日本国内でトヨタとパナソニックが共同で電池生産を行っている「プライムプラネットエナジーアンドソリューションズ」の生産能力はたったの0.39Gwhで、テスラ・モデルSくらいの大容量バッテリーであれば4000台生産できるかどうかというレベルです。
片やテスラやフォルクスワーゲンが年間何百万台の生産計画を表明して、それを達成するためにバッテリーの確保を急いでいるのが世界のトップ争いです。
トヨタとパナソニックの事業に日本政府が1兆円の税金を投入して支援することは決まっていますが、政府が絡むと時間がかかるという日本の悪い癖が出てしまっていてまだ進展はないようです。
バッテリー事業に国家が投資するのは適切なの?<他にやることあるだろ?>
トヨタとパナソニックのバッテリー開発に日本政府が税金を投入して支援することが表明されました。これ自体は遅れている日本のバッテリー開発を進めるという意味ではプラスなのですが、国家が介入することのデメリットもあります。今日はそんな中途半端さ、チグハグさを感じる日本メーカーのいくつかの試みについて触れてみます。
せめて40GWhくらいのリチウムイオン電池を生産できるようにならないと海外勢と戦える状態にはなりません。
「トヨタは水面下できっとやってるはず」と思いたい気持ちはわかりますが、例えばテスラのギガファクトリーくらいの大規模工場を稼働させれば情報は漏れますし、そもそも一昨日の「AYGO」の発表も電気自動車になっていたはずです。
「トヨタVSテスラ・フォルクスワーゲン」の違いその2「充電スポット」を自社で設置
フォルクスワーゲンの「Power Day」において「バッテリー生産」と並んで今後のプロジェクトとして提示されたのが「充電インフラの構築」です。
2025年までに欧州で18800基、米中加で約2万基以上の急速充電器を設置するという巨大プロジェクトを発表し、バッテリーの生産体制と並んだフォルクスワーゲングループの2大プロジェクトとして提示してきました。
これについてはテスラは既に「スーパーチャージャー」という自前の充電スポットを日本中・世界中に増やしています。日本市場での設置数はまだ少ないですが需要のある中国・アメリカ・ヨーロッパなどでは既にかなりの数のスーパーチャージャーが設置されています。
片やトヨタは日本の充電器設置を手がける「日本充電サービス(NCS)」に出資はしているものの(トヨタ・日産・ホンダ・三菱の共同出資)自社のディーラーに設置した急速充電器はお店のクローズと共に使えなくなってしまい、24時間稼働が原則の日産には大きく水をあけられています。
ディーラー内に設置とはいえ充電インフラは公共の施設になりますので、自社の営業時間を過ぎたら開放しないと言うのは公益性という点からも問題のような気がしますが。
「充電インフラが足りないからEV化は性急すぎる」と言いたいのでしょうが、テスラやフォルクスワーゲンは自社で設置すると言ってます。世界最大の自動車販売台数を誇るメーカーが自腹で充電設備を設置する気がないというのも困った話です。
EV化後の世界ではトヨタは除外で「テスラ・フォルクスワーゲン・BYD」で世界の3強?
完全に私の個人的予想ですがいずれ「テスラ・フォルクスワーゲン・BYD」で「電気自動車3強」と呼ばれる時が来るような気がします。
「テスラ」と「フォルクスワーゲン(グループ)」についてはここまで述べてきたことで、私が勝ち組だと断言できる理由はおわかりかと思います。
「最後のBYDって何だよ?せめて日産を入れてくれ」と思う方もいるかもしれませんが、残念ながら日産だと会社の規模的に無理です。「ルノー・日産・三菱連合」でというならあり得ない話でもないと思いますが。
なぜ「BYD」かというと「元々はバッテリーメーカー」である点です。テスラやフォルクスワーゲンが苦労して苦労して自社生産に持っていこうとする中で、バッテリーメーカーゆえに即バッテリーを用意できるという点は大きなアドバンテージです。
その証拠に今年から乗用車で初の海外輸出となるノルウェーへの輸出も開始しますし、既に日本を含む世界50カ国以上にBYDブランドの電動バスの輸出しているなど中国メーカーの中で既に世界に進出している点も脅威です。
「BYD」など中国のバッテリーメーカーが電気自動車で仕掛ける戦略とは?【敵は強大です】
「BYD」という中国のバッテリー・電気自動車などのメーカーを知っているでしょうか?電気自動車化のトレンドの中で中国メーカーの発言力が増し、今や世界の覇権を取ろうとしていることは意外に知られていません。今日は「BYD」がリリースする電気自動車を紹介しながら、「BYD」や「CATL」などの中国メーカーの世界戦略に迫ります。
「BYD」の電動バスが世界中でシェア拡大中?【バスも日本オワコン?】
乗用車のみならずバスの分野でも電気自動車化は進んでおり、実は中国の「BYD」の電動バスが世界中でシェア拡大しており、日本のバス会社にも導入されています。路線バスだと運行する区間も決まっており、バスを電動化することは乗用車よりも簡単ですし、整備や燃料代がかからなくなることから今後どんどん普及する可能性が高いです。
ちなみに「BYD」が設立された直後にEMSでバッテリー生産を依頼したのがパナソニックです。ここにも日本メーカーが中国メーカーを育てた痕跡が残っています。
このままだと「電気自動車化(BEV)」という世界の流れを無視したツケがあと数年以内に回ってくる可能性が高いです。
まぁ別にどうしても電気自動車を作りたくないのであれば勝手にすれば良いと言うこともできますが、日本以外の市場では規制で売れなくなるという厳しい事実があるだけです。
昨日の記事でも言いましたが、「AYGO」につけられた「X〜Prologue」のプロローグが「トヨタ終わりの始まり」という意味のプロローグにならないことを祈るだけです。
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