RAV4の発火案件とEVにおけるバッテリーの重要性【やっぱりトヨタはオワコン?】
こんばんは、@kojisaitojpです。以前も少し触れましたが、どうやらかなりの大規模なリコールになる可能性も出てきたようです。
トヨタ「RAV4」を米当局が調査、発火の恐れ-約190万台対象
米運輸省道路交通安全局(NHTSA)はトヨタ自動車のスポーツタイプ多目的車(SUV)「RAV4」について、発火の恐れがあるとして調査を開始した。
先日のヒュンダイのリコールが8万台でしたが、190万台となるとケタが違います。
PHEVでバッテリーとなると「またリチウムイオンか」とか「やっぱり電気自動車は…」という電気自動車批判の方が飛んできそうですが、RAV4の場合は「12Vバッテリー」とあるので、これは電気自動車に使われるリチウムイオンバッテリーではなく、ガソリン車にも装着されている「鉛蓄電池」のことです。
となると電気自動車以前に「トヨタの車大丈夫なの?」となりますよね? 日本では案外騒がれていないところが奇妙ですが。
先日のようにヒュンダイが発火事故を起こすと「ほら、韓国車のクオリティなんて」とか、テスラ・モデル3のLFPバッテリーも中国のCATL製であるとわかった途端に「中国のバッテリーなんて」と批判している人がTwitterやヤフコメなどで多数見受けられます。
ところがこれがトヨタの話になると「アメリカ政府から言いがかりつけられてるだけ」などと擁護するのだから不思議なものです。
何でも自動車業界でトヨタの批判をするのはタブーらしいのですが、私は自動車業界の人間ではないので遠慮なく批判します(笑)。
てか私が起業して電気自動車と関わるようになっても遠慮なく批判しますけどね。
というわけで本日はトヨタRAV4のバッテリー発火案件についてと、この会社の今後の電気自動車への展望について考えてみます。
目次
発火以前に「バッテリー不足」から始まったトヨタ「RAV4」
今回の件で落ち着いて考えなければいけないのは「RAV4」はPHEV(プラグインハイブリッド)です。
しかも駆動用のバッテリー(18.1kWh)のリチウムイオン電池ではなく、12Vの「鉛蓄電池」です。
あれ?「高品質の日本車はどこ行った?」となりますよね。
ちなみにトヨタに関しては、PHEV車に使われるような18.1kWhという比較的小型のバッテリーすら満足に調達できていなかったのが現実です。
「現実解」のPHVに電池の壁、トヨタRAV4年内打ち止め
トヨタ自動車がSUV(多目的スポーツ車)「RAV4」のプラグインハイブリッド車(PHV)の国内受注を発売から約3週間で停止した。消費税込みで469万~539万円と決して安くない車両価格にもかかわらず、月販300台という販売目標を上回った受注に年度内は電池の生産が追いつかないというのが理由だ。RAV4のPHVは欧米などでの発売やスズキへのOEM(相手先ブランドによる生産)供給も予定しているが、電
これ昨年2020年の話ですよ。今回の12Vバッテリーの騒動以前にそもそも車の生産能力にも問題があったわけです。
「生産能力?たかが電池でそんな言うな」と怒る人いそうですよね。
駆動用の車載バッテリーこそが「電気自動車のキモ」であることは以前も説明しました。
電気自動車(BEV)のレイヤーマスターは「バッテリー」?【中国企業を育てたのは日本企業】
ガソリンエンジンではエンジンを作る自動車メーカーを頂点としたトップダウン型のサプライチェーンでしたが、電気自動車でレイヤーマスターとなるのはバッテリーメーカーです。バッテリーの世界シェアを握った企業が自動車メーカー本体より力を持つということなのですが、ここを日本企業はBYDやCATLなどの中国メーカーに取られています。
以前も言いましたが私が「電気自動車化」にどのくらいやる気を見せているかの指標として、
- 自社でバッテリーを調達できる体制を整えているか?
- 電気自動車専用のプラットホームで生産しているか?
という2点を挙げていますが、トヨタの場合「バッテリーの調達」の時点でアウトです。プラットホームについては以前書いた記事でも触れましたが一応あるようです(PHEVとの兼用でしょうがないよりはマシ)。
トヨタとパナソニックのバッテリー事業の限界とは?
となると中国のCATLや韓国のLG化学に対抗できるだけのバッテリー調達能力がないといけないことになるのですが、現実はこの状況です。
トヨタとパナソニックの新会社がリチウムイオン電池の生産体制を強化〜不思議な合弁会社はなぜ生まれたのか | EVsmartブログ
トヨタとパナソニックの合弁会社「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ」は10月6日、徳島県に生産ラインを新設して車載用リチウムイオン電池を増産することを発表。年間生産量はハイブリッド車50万台分。
「ハイブリッド車50万台」とか言われると大規模なように錯覚しますが、年間の生産能力は「約0.37GWh」です。
Rumor is that most planned #battery cell 🔋manufacturing in Europe 🇪🇺 is ramped up by asian manufacturers 🇯🇵🇨🇳🇰🇷 with low added value for EU …
Looking at planned #gigafactory capacity (©️ R. Zenn👇🏻) however it is actually ~50% (220/430 GWh) European companies ☝🏻 pic.twitter.com/RUPLKgUasP
— Dennis Kopljar 🔋⚡ (@DennisKopljar) December 31, 2020
「トヨタが本気になればEVなんてすぐにできる」と豪語する人は多いですが、RAV4のようなPHEVの小さなバッテリー(18.1kWh)の調達でさえ苦戦しているのに、電気自動車に使えるような、例えばテスラなどに見られる100kWh級の大容量のバッテリーをどうやって調達するのでしょうか?
引用した図にあるようにCATLが14GWh、テスラが20GWh、LG化学が15GWh(年間の生産量)です。ヨーロッパエリアだけの生産でこの量です。
わかりやすいようにテスラのモデルSのように100kWhのバッテリー容量の車で計算すると、テスラのドイツの工場の生産量20GWhであれば年間20万台生産できます。
ちなみにアメリカ国内のギガファクトリーで生産される電池の量はもっと多いです。
片やトヨタ・パナソニックの年間0.38GWhの生産量だとたったの年間3800台です。。。
以前「ホンダe」の紹介記事で最初の国内販売がたったの1000台、「マツダMX-30」の紹介記事では国内販売が500台と書きましたが、この程度のバッテリー生産能力だとこの程度の生産台数になるよねという話です(実際にマツダはパナソニック製のバッテリーを使用)。
100倍くらいの格差がある状況に日本政府の出資が入ったとしてどのくらい詰められるでしょうか? 私には焼け石に水に見えます。
ちなみに「日本製のバッテリーなら安全」というのも妄想です。
【電子版】テスラ、「モデルS」の4月発火事故 バッテリーモジュールが原因
【北京、東京=ロイター時事】米電気自動車(EV)大手テスラは28日、4月に上海で発生した主力車「モデルS」の発火事故について、バッテリーモジュールの一つが原因だったと明らかにした。
中国版ツイッタ…
確かにテスラやヒュンダイの発火案件を見ての通りでLG化学のバッテリーが最も発火件数が多いですが、パナソニックだろうが中国のCATLだろうが発火案件は起きています。
「日本製だから安全」「中国製や韓国製は危ない」のような意識も、既に偏見、時代遅れのものになっています。
そのくらい「リチウムイオン電池」というのは取り扱いが難しいもので、実際に我々がスマホなどを充電するモバイルバッテリーにも同じような危険性があり、例えば飛行機などへの持ち込みは制限されています。
制限のあるお手荷物(お手荷物) – JAL国内線
160Wh以上は不可(EVのバッテリーとはケタが違いますが)、160Wh以下なら機内持ち込みはOKだけど手荷物として預けることは不可というそれなりに厳しい規制がかかっています。
要は「どんなに小型のリチウムイオン電池でも貨物室で万が一発火したら手に負えない」と航空会社も警戒しているということです。
日本のメディアやSNSを操作しても漂う「トヨタ=オワコン」の臭い
と本日のように「バッテリー」という点に注目して電気自動車を見ていると、ただの感情論ではなく論理的にトヨタなどの日本メーカーが電気自動車を生産する能力はとても低いと言わざるを得ません。
などというと必ず怒る人はいるでしょうが、バッテリーの供給が先ほどのような状況ではそもそも電気自動車を作ることなどできません。
それとも皆さんの大好きなLG化学とか中国メーカーに頭を下げてバッテリーを供給してもらったら納得しますか?
だからでしょうか、最近は「揚げ足取り」「言いがかり」のようなEV批判がマスコミの報道やSNS上で増えてきています。
このEVと原発を直結させる寒いEV叩き何とかならんかね https://t.co/RxcX6HDXnq
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 6, 2021
ここでも言われている「電気自動車が増えたら原発が10基必要になる」のような言い方がその典型です。
真面目に反論するのも次第に馬鹿馬鹿しくなってきますが、大抵の人が電気自動車を充電するのは夜間・深夜です。電力使用が分散されるので電力不足にはなりません。
しかも私も以前「V2H」について触れて記事でも言ったように、電気自動車を蓄電池として活用すれば、1月に実際にあったような「電力供給危機」の際には電気自動車から家庭に給電するようにすれば電力の消費量をコントロールできるという隠れた機能もあります(太陽光発電などがあれば更にプラス)。
「Vehicle to Home」で災害時・停電時も安心?【日産リーフ・三菱アイミーブの別の用途】
「Vehicle to Home(V2h)」という言葉を知ってますでしょうか? 電気自動車は「蓄電池」として活用することが可能であり、災害時・停電時も車から電気の供給を受けて日常生活を送れるという隠れたメリットがあります。航続距離が少ない初期型のリーフや軽自動車の三菱アイミーブの隠れた活用法を今日は紹介します。
デタラメの何の根拠もないような電気自動車への誹謗中傷と言ってもいいような暴言も、某一流自動車メーカーの社長が言えば正しいことになるのでしょうかね?
そういう暴言のような発言を何の吟味もしないで報道するマスコミも同罪です。
iPhoneが出てきたときにタッチパネルは不便だとか、折りたたみじゃないと画面が傷つくだとか、性能の悪いPCだとか否定して、買わない宣言や流行らないなどと言っていた人が数多くいました。 またガラケーで先行していた日本メーカーが作ればもっとすごいものが作れる、本気になればスマホなんていつでも作れると言っている人たちもいました。
前者はBEV否定派、後者はトヨタが本気を出せば派と重なるように感じます。
「スマホと自動車を一緒にするな」とか「トヨタだけは違う」と猛反発する人はいるのでしょうが、過去の歴史を見て「〜だけは特別」「〜だけは違う」的な言い方が正しかった例を見たことがありません。
「もう実は詰んでいるのでは?」というのが今の時点での私の見解です。
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