「ドイツカーオブザイヤー」を取った「ホンダe」から感じるやる気のなさとは?

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こんばんは、@kojisaitojpです。これはホンダとしては嬉しくない受賞だったのかもしれませんが、何でも日本車で初の受賞だったそうです。

電気自動車に乗り気ではないように見えるホンダが初の「ドイツカーオブザイヤー」受賞が電気自動車だったというのは皮肉ですが。

ドイツカーオブザイヤーを受賞したホンダe

ですが前から述べているように世界最大の自動車販売台数を誇る「フォルクスワーゲン」がグループのアウディやポルシェなども含めて全車電気自動車化を打ち出している、電気自動車の先進国のようなドイツ(日本は電気自動車については発展途上国どころか後進国です)でホンダの電気自動車が認められたことは快挙です。

ちなみに日本でも2020年10月から発売され、現在は購入のみならずホンダのカーシェアである「EveryGo」にも導入されていますので、私もそのうち試乗してきます。

ただこの「日本でも発売」というのがくせ者で、「ホンダ e」の持つ魅力を生かしきれない、ユーザーが電気自動車に変な先入観を持ってしまうのでは?と思うところが問題です。

今日はそんなホンダの電気自動車「ホンダ e」について触れてみます。

「ホンダe」ってどんな電気自動車?

ホンダeのイメージ画像
いつもであれば電気自動車に対し「航続距離が足りない」を筆頭に、ひたすらネガティブな側面ばかり強調したがる日本のマスコミも、「ホンダ e」に対しては好意的な評価をしています。

ホンダeのイメージ画像

この辺りが自動車メーカーに対する「忖度」のような臭いがするのは気に入らないところですが。

この車が開発されたきっかけが「CAFE(企業別平均燃費基準)規制」を逃れるためというのがアリバイ工作的ではありますが、サイズ的にも日本やヨーロッパの狭い道を走るのに適したコンパクトなサイズ、内装にも12.3インチLCDパネルを横に2枚使った「デュアルディスプレイ」や「OK Honda!」のウェイクアップワードでパーソナルアシスタントが起動し、自然言語で会話が進められるなどソフト面も充実しています。

ホンダeの内装

AC給電がついていますので、充電時や休憩時にコンセントに繋いでパソコンを使用したり、大画面でゲームをすることも可能です。

ホンダeのディスプレイ

パーソナルアシスタントに指示を出せば「オススメのレストランを探してもらう」とかiPhoneのSiriのような仕事もしますし、ナビも自分で入力する必要もなく音声でOK。

テスラばりの「走るスマホ」のような機能が充実しているのも「ホンダ e」の長所で、このような「未来の車」というイメージを実現させるところはさすがはホンダというところです。

しかし当然ではありますが、欠点もあります。

日本で売られる「ホンダ e」の懸念すべき点とは?

ホンダeのプラットフォーム
欠点については挙げるとキリがないですが、大きくはこの3点です。

  • 日本で発売するのがたったの1000台
  • 価格がヨーロッパでの販売価格より高い
  • 航続距離が短い(

日本での販売台数がたったの1000台というのは、2021年から強化される二酸化炭素(CO2)排出量規制のCAFE(Corporate Average fuel Efficiency=企業平均燃費)を達成するというそもそもの開発理由のため、欧州販売用のリチウムイオンバッテリー確保が優先され、日本で販売できる台数が制限されたそうです。

まぁ確かに急速に電気自動車化が進むヨーロッパでは「リチウムイオンバッテリー」の確保が世界中のメーカーで争奪戦になっているのは事実です。バッテリーが確保できなければそもそも車を生産できないというのもあり、近年ではテスラやフォルクスワーゲンは外注ではなく自社でのバッテリー生産に力を入れ始めています。

ホンダeのリチウムイオンバッテリーは、特別仕様としてパナソニックと共同開発をしたものであるそうです。まだ自社でバッテリーを開発する段階にないという時点で遅れています。

とはいえ台数の問題は、ホンダのカーシェアである「EveryGo」で積極的に貸してくれますので、まずはどんな車なのかを体験する、電気自動車の入門としては悪くないかもしれません。

次の「販売価格」が問題です。

ホンダeのカラー

「ホンダ e」は日本の工場で生産されていますが、販売価格がなぜか「Honda eが4,510,000円、Honda e Advanceが4,950,000円」とヨーロッパでの発売価格より100万円以上高いです。

これではこの前も問題にした「電気自動車=高い」という偏見を強化するだけです。

国や自治体の補助金を駆使してもまだ300万円代ですと、昨日紹介した最新の日産リーフと比較しても100万円以上高いです。

これでは正直「売る気ないよ」と宣言しているような印象です。

最後は「航続距離」の問題です。

ほぼ全ての自動車評論家などが指摘している「航続距離」については約280km(WLTC)という走行距離ですので、実際に走ると200キロくらい、これも日産リーフと比較すると少ないです。

ただし冷静に考えると記事の中でホンダの開発責任者の一瀬智史氏が言っているように「東京と横浜は十分往復できる」「1日あたりの平均移動距離が90キロ以下の人が90%」というのは全くその通りです。

私のブログでも先日初期型の日産リーフを例に、航続距離が150キロ前後の電気自動車でも日常生活を送るのには十分だということを指摘しましたが、これを車メーカーの側も認めたようなものです。

この点については私も同感で、「そもそも毎日300キロも400キロも乗る人いるの?」と思うところです。

しかも日本より間違いなく走行距離の増えるヨーロッパでこの航続距離の電気自動車を販売した、更にドイツカーオブザイヤーを獲得する評価を受けたわけですからちょっと謎だと思いませんか?

サイズはヨーロッパの「街乗り」に最適

パークハイアットパリヴァンドーム
片やテスラのモデルSが600キロを超える走行距離だったり、徐々に電気自動車の走行距離が伸びている中でホンダはあえて短い航続距離の電気自動車をだしたのでしょうか?

理由は「パリやロンドンでは狭い道が多く、縦列駐車で限られたスペースに駐車している光景を非常に多く目にした。だったら、小回りがきき、サイズも小さくて運転しやすいクルマにしないと使いにくいだろう、ということで「街中ベスト」を打ち出した(先程の開発責任者の一瀬氏)」とのことです。

私はパリにもロンドンにも10回以上行っていますが、狭い路地に入ると「狭い」と思うことが多いです。

テスラモデルSが典型ですが「航続距離を重視すると超大型バッテリーを積む必要がある=車も大型になる」という問題があります。実際テスラモデルSのサイズは、「全長 4970 mm x 全幅 1964 mm x 全高 1445 mm」で、ベンツSクラスが「全長 5030-5465 mm x 全幅 1900-1915 mm x 全高 1420-1500 mm」とロングボディがあるゆえ長さはベンツSクラスの方が長いですが、幅はテスラの方が大きいなど、運転するとベンツSクラスと違いを感じない大きなボディになります。

これだとパリやロンドンの狭い道は通れないか、かなり苦労します(それでもロンドンやパリのタクシー運転手はプロ中のプロなので狭い道に入って行って驚くこともありますが)。

「街乗り」を重視すると「ホンダ e」のように軽自動車に近いようなスペックの車の方が間違いなく走りやすいです。

その分電池が小さくなり、航続距離が短くなりますが、ヨーロッパではこれに対する対策が万全です。

でも「ヨーロッパ基準」ではない急速充電が「ホンダe」の持ち味を消す?

急速充電スタンド
実はヨーロッパでは「急速充電器」の規格が100kw以上です。先日の記事で日本で初の250kwの急速充電器が導入された話をしましたが、これはテスラ専用です。

これ以前はテスラスーパーチャージャーでも150kwが最大でした。

テスラの充電ステーション

テスラ以外の日本の大半の急速充電器は「50kw(CHAdeMO規格)」です。これに合わせた日本仕様では30分の急速充電で100キロ分くらいの電力しか充電されません。
(この辺りの事情は多くのYouTuberやブロガーが実験していますので、検索すればいくらでも出てきます)

もっとハイパワーの急速充電器があればもっと走れるのに…と思いませんか?

実はこの急速充電器のパワーのなさが、「ホンダ e」と同じようにヨーロッパから上陸したプジョー「e-208」の持ち味も殺しています。

プジョーの2シリーズはフランスを代表するコンパクトハッチですので、小さいボディに積めるバッテリーには限界があり、航続距離が300キロ前後と小型です。

ところがヨーロッパ基準の急速充電器を用いると、たったの30分で200キロ分以上充電できます。

実はバッテリーが小さい電気自動車の場合も急速充電器が充実していれば、ちょっとの休憩時間に充電できるので不便は感じません。

プジョーe208の充電

「ホンダ e」にしろ「プジョーe-208」にしろコンパクトカーを生かすためにはここが必須なのですが、日本の急速充電が貧弱なせいで魅力が半減します。

プジョーe208

運転中に充電が必要になる場面というのは、大抵は高速道路上です。買い物や食事で30分ほどSAで休憩している間に 200キロ以上充電されていれば東京から仙台や名古屋まで一回の充電で行けます。

プジョーe208

東京から仙台や名古屋へ車で行くのに一回も休憩しない人はまずいないでしょうから、不便を感じないで移動できるはずなのに…と思ってしまいます。

航続距離より急速充電で「ホンダe」を生かす

テスラの充電シーン
航続距離の話をすると、すぐにアンチ電気自動車の方々がわいてきて「ほら、だから電気自動車はダメなんだよ」「トヨタが全個体電池(いずれここでも取り上げます)開発するまで無理無理」と嬉しそうに批判してくるのがありきたりのパターンすぎて呆れるのですが(笑)。

繰り返しますがバッテリーの問題ではなく、急速充電の問題です。

急速充電のパワーを上げることでバッテリー容量を物理的に小さくせざるを得ないコンパクトカーの欠点も解消できます。

まぁバッテリーも超巨大バッテリーで走行距離を伸ばして、急速充電も250kwの超ハイパワーで「5分間で最大75マイル(約120km)分の充電が可能」とコーヒーどころかタバコ一本吸っている間に充電できてしまうテスラが最強ということになってしまいますが。。。

「バッテリー」と「急速充電」への対応を見ても、電気自動車ではやはりテスラが無敵です。

ですがアメリカの広大な国土と違って、狭い道や市街地を走ることも多い日本やヨーロッパではコンパクトカーが必要になりますので、ニーズに合ったバッテリーや充電器の整備が求められます。

「ホンダ e」の日本市場における取り扱い方を見ているとホンダにそのような気概を感じないところがやはり「電気自動車後進国日本」を象徴しているように思えてしまいます。

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