中国の新興EVメーカー「Xpeng」が実は脅威?【バックにアリババ・シャオミ・ホンハイ】
こんばんは、@kojisaitojpです。ここのところいくつかの中国の新興EVメーカーを紹介してきましたが、この会社も既に「新興」とは言えない位成長しています。
【PSA】コバルトフリーのLFPバッテリーを搭載したXpengP7が3月3日に登場します。開始価格は約200,000元(30,900米ドル)です。#EV https://t.co/E5ZzhCPTsU
— ガスフリング⚡️テスラ/EV/自動運転/水素/投資 × 🎬VYONDアニメ (@Gusfrin92486024) March 2, 2021
コバルトフリーの「LFPバッテリー」は先日テスラ・モデル3のスタンダードレンジプラスに搭載されたばかりの新しい技術です。もうそういう水準まで進化しています。
2014年に設立された「小鵬汽車(Xpeng)」は、アリババやシャオミなどから出資を受けて成長した会社で、2018年に最初のEVである「G3」を発売し、2020年にはニューヨーク証券取引所に上場した現在急成長中の電気自動車メーカーです。
同じように2010年代に入ってから誕生し、急成長した中国の電気自動車メーカーとして以前「上海蔚来汽車(NIO)」も紹介しましたが、NIO同様にXpengもどちらかというと日本では電気自動車好きの方々よりもアメリカ株を投資している方々の方に知名度があるかもしれません。
NIO「ET7」がもたらす衝撃と破壊力とは?【電気自動車でテスラ超え?】
中国の新興EVメーカー「NIO」がET7という驚異のスペックの電気自動車の発売を発表しました。バッテリー容量の大きなものだと1000キロを超える航続距離、充電が不要になる「バッテリースワップ」というわずか5分でバッテリー交換をするシステムなど、日本のメーカーどころかテスラすら凌駕する電気自動車を紹介します。
後で説明しますが、よく言われる「テスラのパクリ企業」という揶揄を跳ね返すような成長力が期待され、既に中国国外に輸出(後述)を開始していることからも近いうちに日本メーカーにも脅威になるメーカーである可能性があります。
今日はそんな「Xpeng」が脅威になる理由と現在発売されている「G3」「P7」という電気自動車についても紹介します。
目次
「Xpeng」や「BYD」などの輸出可能な中国EVメーカーがなぜ脅威なのか?
まず「Xpeng」が脅威である点として既に中国国外に輸出を始めている点です。
Xpeng To Soon Deliver 1st 100 G3 Electric Crossovers In Norway
This weekend, we saw on Twitter that the first batch of Xpeng G3 electric crossovers for Europe has arrived in Norway. I reached out to Xpeng to see …
「たった100台かよ」と言われるかもしれませんが、中国の電気自動車メーカーにとってはこの100台だけでも歴史を変える重要性があります。
というのも中国企業が自動車を輸出するというのは非常に困難なことだからです。
欧州や北米市場の自動車には「COCペーパー」や「WVTAラベル」、「FMVSSラベル」などといった技術基準への適合性を証する書面があり、それを利用して日本でのナンバー登録が可能です。
ところが中国はこれらの技術基準を定めた協定に参加していません。ゆえに中国国外に輸出しようとすると、ヨーロッパやアメリカの基準への適合性を証明するために、極端に言えば部品の一つ一つから証明して認可を取る必要があります。
以前紹介した日本でいう軽自動車サイズの「Wuling HongGuang Mini EV」や「Ora Blackcat」などを現時点で日本に輸出することは非常に困難ですし、仮に輸出可能になったとしても手間暇がかかるため、中国国内での販売価格より大幅に高くなってしまう可能性が高いです。
ちなみに上海ギガファクトリーで生産しているテスラ・モデル3や同じように上海で中国企業との合弁で生産しているフォルクスワーゲンの場合は、中国製ではありますが元々がアメリカ・ヨーロッパの基準に合わせて生産していますので、日本に輸入するのはアメリカやヨーロッパから輸入するのと同じくらい簡単にできます。
現時点で中国国外に「輸出」、特にヨーロッパやアメリカへの輸出も可能になっている中国の電気自動車メーカーは先日紹介した「BYD」とこの「Xpeng」くらいですので、他の中国メーカーより既に先に進んでいるということもできます。
「BYD」の電動バスが世界中でシェア拡大中?【バスも日本オワコン?】
乗用車のみならずバスの分野でも電気自動車化は進んでおり、実は中国の「BYD」の電動バスが世界中でシェア拡大しており、日本のバス会社にも導入されています。路線バスだと運行する区間も決まっており、バスを電動化することは乗用車よりも簡単ですし、整備や燃料代がかからなくなることから今後どんどん普及する可能性が高いです。
「BYD」など中国のバッテリーメーカーが電気自動車で仕掛ける戦略とは?【敵は強大です】
「BYD」という中国のバッテリー・電気自動車などのメーカーを知っているでしょうか?電気自動車化のトレンドの中で中国メーカーの発言力が増し、今や世界の覇権を取ろうとしていることは意外に知られていません。今日は「BYD」がリリースする電気自動車を紹介しながら、「BYD」や「CATL」などの中国メーカーの世界戦略に迫ります。
輸出するための国際基準をクリアするのは大昔の日本車も苦しんだ歴史がありますが、BYDやXpengのように既に乗り越えつつある中国メーカーが現れてきていることを日本の自動車メーカーはもっと危機感を持って受け止める必要があると思います。
ヨーロッパに輸出を開始したXpeng「G3」
さてそのように大変なプロセスを経てヨーロッパ市場への進出を始めたXpengの最初の車種が「G3」です。
パッと見で何かに似ていると思いませんか?
「なんだよ、テスラ・モデルXのパクリかよ」とバカにした目線で見る日本人が多いのはわかります。
でもこの「G3」がテスラより高品質で低価格だったらどうします?
サイズ的にはCセグメントとモデルXよりはかなり小さいのでそのまま比較するのは難しいですが、「G3 460」が「搭載バッテリー容量57.5kWh、EPA航続距離360キロ、30-80%の急速充電が40分前後」、上位グレードの「G3 520」が「搭載バッテリー容量66.7kWh、EPA航続距離400キロ、30-80%の急速充電が約40分」と電気自動車のスペックやサイズ的には現行の日産リーフのe+に近い水準です。
2010年からEVを販売している日産と2018年から販売を開始しているメーカーが互角のスペックというだけでも驚異的です。
そして価格も驚異的で460が143800元(約220万円)、520が159800元(約240万円)です。輸出第一弾のノルウェーでは約400万で売られているようですので、まだ輸出にかなりのコストがかかるのが現実ですが、中国国内の価格で勝負したらテスラどころか日産リーフすら勝負にならない水準です。
いずれ輸出でも価格差のないモデルが出てきた時は、日本メーカーにはとんでもない脅威になります。
「でも中国産だから」と言われるでしょうけど、見た目がテスラにそっくりなだけではなく、「Xmart OS In-car Intelligence System」というインフォテイメントシステムがかなり優秀で、既にOTAアップデートにも対応している点で日本メーカーより先を行っています。
Xpeng側も「テスラから多くの影響を受けている」と認めていますが、この価格で日産リーフと変わらないスペックの電気自動車を既に販売できる水準に成長しています。
フラッグシップセダンのXpeng「P7」はテスラそっくり?
次にまだ中国国内でしか販売されていませんが、フラッグシップセダンの「P7」の紹介です。
こちらはサイズ的にはテスラ・モデル3に近いサイズです。外装は違いますが、内装はやはりモデル3にそっくりです。
「P7 ロングレンジ」が「搭載バッテリー容量70.8kWh、EPA航続距離約500キロ、急速充電は不明」、上位グレードの「P7 スーパーロングレンジ」が「搭載バッテリー容量80.9kWh、EPA航続距離約600キロ、急速充電は不明」になります。
中国国内でしか販売されていないので情報がある部分とない部分がありますが、急速充電についてはXpengが自社で最大出力120kWhの充電設備を整備しており、中国国内62都市に200箇所以上普及させています。
テスラのスーパーチャージャーには負けますが、今後日本では考えられないスピードで充電設備が増えていくことは間違いありません。
なお価格はロングレンジが229900元(約340万円)、スーパーロングレンジが254900元(約400万円)ですので、テスラ・モデル3とか互角に戦える水準です。
また先ほども述べた「Xmart OS In-car Intelligence System」が「G3」より更に進化しており、パフォーマンスモデルとなる「P7 Wing」が発売されています。
テスラ・モデルXのようなファルコンウイングが装備されており、「Xパイロット3.0」と呼ばれるテスラ同様のオートパイロット機能が搭載されており、高速道路の追い越しにおけるレーンチェンジ、信号を読み取り青信号になったら発車を促す機能、場所を指定しておけば自動で駐車してくれる機能など自動運転にも対応してます。
なおテスラではイーロンマスクが自動運転において搭載を拒否した「Lidar」を使用しており、iPhoneやiPadでも搭載されている「レーザー光を照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、物体までの距離や方向を測定」する機能がテスラ車とどのような違いを生み出すのかも注目のポイントです。
ちなみに現在は「P7 Wing」のみに搭載のオートパイロット機能ですが、他のグレードの「P7」にも搭載はされているのでOTAアップデート、つまりディーラーなどに行くこともなくある朝突然自動運転機能が使えるようになる日がいずれ来ます。
この点を見ても既にテスラの背中が見えている、もしかしたらテスラを捕まえるかもしれないという水準まで進化しています。
「P7」はまだ輸出されていませんが、中国国外に出るようになった時には世界各国で猛威を振るう可能性があります。
XpengやBYDに日本市場も食われる?
このように中国メーカーが優秀な電気自動車を開発していることを聞かされるとなぜか不快感を持つ方がいるようですが、これが現実です。
ヒュンダイはバッテリーが爆発するとかXpengはテスラのパクリだとかバカにするくせにトヨタは全面擁護という(笑)
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 2, 2021
こんな感じの認識の日本人が圧倒的に多数かと思いますが、日本メーカーも元々はアメリカやヨーロッパの自動車を「真似」するところから始まっています。
今はパクりと言えば韓国中国って扱いするけど元々はトヨタもアメリカ・ヨーロッパのパクリだったよな。
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 2, 2021
成長すると忘れてしまうところが恐ろしいですが、元々はトヨタなどの日本メーカーはアメリカ・ヨーロッパの自動車(具体的にはフォードやメルセデス)などを徹底的に研究し、アメ車やヨーロッパ車の抱える欠点を解消し、「真似」でありながら高品質・低コストの自動車を世界に輸出することで成長してきたのが特徴です。
トヨタが嫌われる理由を徹底分析。何が悪くてこんなに嫌われてるの?
…
電気自動車の世界では最先端を突っ走っているのが「テスラ」であることは誰も否定できないと思いますが、大昔にトヨタがフォードやメルセデス(当時の最先端)の真似をしてより品質の良い、低価格の自動車を生産したのと同じことをXpengがテスラをモデルにやっていると考えることはできないでしょうか?
「ナメてると気がついたときに足元をすくわれるのでは?」というのが私がXpengやBYDなどの中国メーカーを見ていて感じることです。
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