「科学」や「論理」を無視して妄想に固執するようになったらオワコン?【EVのバッテリー消耗を例に】

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こんばんは、@kojisaitojpです。日本が日本人が「科学立国」であるという幻想は捨てた方が良いかもしれません。

以前の記事で「新型コロナ対策の失敗」と「EVシフトへの遅れ」に日本人の共通した失敗パターンがあるということを述べると「コロナとEVを一緒にするんじゃねぇ」などとかなり口汚いコメントが飛んできたりしましたが、「科学の軽視」とその裏返しの「自分が信じたいものならニセ科学でも信じる」というのは新型コロナウイルスへの対策を見ても、EVシフトへの遅れを見ても共通であるという私の見解は変わりません。

例えば先日の記事でも取り上げた「LCA(ライフサイクルアセスメント)」というのもその典型で、「ガソリン車もEVも二酸化炭素の排出量は変わらない」のようなことが語られる(典型が「マツダ論文」)時はなぜかガソリン車やハイブリッド車の数値は最もコンディションの良い条件で測定したものを採用し、EVに関しては最もコンディションの悪い条件(しかも再エネシフトが進んでいない10年以上前のデータが多い)を並べて「ほら、EVになってもトータルの二酸化炭素排出量は変わらないぞ!」とドヤ顔をする人が結構多いです。

このような「LCA理論」のインチキ具合については以前詳しく論じてますのでこちらをご参照ください。

我々は何となく「日本=技術立国・科学の強い国」のように錯覚しているのではないでしょうか?

実は「科学」や「論理」を信じるのではなく「自分の思い込みや希望的憶測」を信じる国民なのでは?と思うことが増えてきました。

というのを今日は「EVのバッテリー消耗」を例に解説してみます。

30万キロ走っても10%しか消耗しないテスラのバッテリー?

「テスラ・ロードスター(2代目)」その5
EVに関してはもう「科学」とか「論理」とかいうよりただのでっち上げだろうと思うようなトンデモ記事をマスコミが出してくることもあるので驚きます。

この記事では「テスラ車や日産リーフのバッテリーが消耗しないというのはコンピューターを操作したイカサマだ」と主張している記事で、翻訳記事であるところから海外のアンチEVの方々が書いた記事だろうなという予想が付きます。

これを否定するのが今日の本題ですが、実際に「テスラ車のバッテリー消耗率」を走行距離ごとに算出したグラフが以下のものです。

テスラ車のバッテリー消耗率

最初の25000マイル(4万キロ)で5%消耗したあとはほとんど減ったか減ってないかわからないような横ばいのグラフを描いて、20万マイル(32万キロ)の時点で10-15%の消耗率です。

引用した記事はこちらになります。

このような客観的な数字を見せても「スマホだってもっとバッテリー消耗するのにあり得ないだろ!」と怒り出す人がいそうですが(だからこそ先ほどのように「数字を誤魔化してるだけだ」的な誹謗中傷記事が出る)、テスラの最大の武器と言っても過言ではない「BMS(バッテリーマネージメントシステム)を知らないのかな?」と思ってしまいます。

iPhoneのバッテリー消耗率

これは私のiPhone11Proの現時点でのバッテリー残量です。一昨年の発売直後に買って毎日使っていると約2年で20%減っています。

以前と比べればAppleもソフトウェア(iOs)でバッテリーが消耗しないようにコントロールできるようになってはいますが、それでもYouTubeやDAZNをつけっぱなしにしてしばらく放置しているとスマホが熱くなる経験は私以外でも体験していることでしょう。

iPhoneでもバッテリーの「熱管理」まではできていない(というかEVと違ってサイズ的に不可能?)ということです。

テスラはEVのバッテリーを「強制水冷」のシステムによって常に温度管理を行っており、充電した際に熱を持たないように制御していることがバッテリーの寿命を伸ばす秘訣であり、これを「BMS(バッテリーマネージメントシステム)」と呼んでいます。

以前の記事でもテスラの「熱管理」についてはオクトバルブを例に取り上げたことがありますので、詳しくはこちらをご参照いただければと思います。

テスラは高性能のバッテリーもパナソニックやLG、CATLなどと協業で生産していますが、バッテリーの温度管理を担う「BMS(バッテリーマネージメントシステム)」を扱う部署にはパナソニックの関係者も絶対に立ち入りできない領域となっているトップシークレットのようです。

このバッテリー温度管理こそが私はテスラが他社と比較して最も優れているところではないかと思う次第です。

30万キロ乗っても10%程度しか消耗しないのであれば「EVはバッテリーがダメになるから交換費用がかかる」のようなEV批判をしてくる方々は無視していいレベルです。

初代初期型のリーフのイメージを捨てられない「進化をやめた日本人」

自宅で充電するリーフ
などというと「それはテスラだけだろ?」とか「日産リーフなんてすぐバッテリーがダメになるぞ」と猛反発してくる人もいることでしょう。

リーフのバッテリー消耗率

こちらは私が以前から引用している「日産・リーフ」のバッテリー消耗度を販売年度別にまとめたものです。

この表だと2013年からしか出ていませんが、確かにこれ以前のリーフ(2010-2012年のもの)は急速充電を繰り返すとすぐにバッテリーが劣化して、元々容量が小さい(24kWh)のでJC08モードでさえ航続距離200キロ(実走行だと150キロ以下)の航続距離がみるみる減って行って100キロも走れないようなリーフが普通にあります。

旧型日産リーフ

まぁそれでも私は以前「蓄電池としてはまだまだ使えて、必要なら数十キロは走れる『走る蓄電池』として考えれば初代初期型リーフも使い道がある」とは主張しましたが、それは自宅でV2Hなどの設備がある方に限った話で、一般に勧められるものではありません。

ですが表の通りで2013年以降、特に2016年2017年以降は(要は初代の末期とモデルチェンジ後)「空冷式」であるにもかかわらずこの程度の消耗率に抑えることに成功しています。

先ほどのテスラはBMS(バッテリーマネージメントシステム)を搭載していて、バッテリーの温度を厳密に管理していますので消耗しないのは当然と言えば当然なのですが、「自然空冷式(BMSなし)」のリーフでこの消耗率は驚異です。

同じ空冷式の私のiPhoneでさえ2年で20%消耗してるのにと思うところです(笑)。

これが日産が10年リーフを生産する中で学習して、例えば急速充電時の出力を調整してバッテリーが加熱しにく充電方法を開発するなど進化させた成果なのです。

しかしここがわからないで「EVはすぐバッテリーが消耗して使えなくなる」とか「走っていると電欠の恐怖が待っている」などと初代初期型と変わらないようなEV批判をしている人が多いのが日本の残念な現実です。

最初のEVが登場してから10年以上経つのですから、自分の脳みそもアップデートすべきだと思うのは私だけでしょう?

信じるべきなのはEVに対する統計なのか?それとも信念なのか?

陰謀論のイメージ
まだEVの普及率が1%にも満たない日本のことしか見えていないと信じられないでしょうが、世界の流れ的にEV化はこのようなペースで進行します。

この予想は「世界全体での販売台数」です。

この数字には日本の自動車メーカーが主戦場にしている「北米」と「中国」も当然含まれています。

本日取り上げた「バッテリー消耗」についても同じでしたが、私からするとこのように「日本メーカーの売上の半分以上が北米と中国市場」という事実を無視して「EVなんか普及しない」と言い張る人々の頭の中が理解不能です。

つまり「2035年からはハイブリッド車、PHEVも含めた内燃機関車の新車販売禁止」という最も厳しい規制を検討中のEUを除いても本格的にEVシフトをしないと生き残れないということです。

実際にこのような規制がヨーロッパだけであれば、以前の記事でも解説したように日本メーカーはせいぜいトヨタが6%のシェアを持っているだけですので、市場から締め出されてもほとんど問題ないでしょう。

しかしこの以前の記事でも述べたように「2030年までにEV化率(含・PHEV)50%」の目標を掲げるアメリカ、「NEV(新エネルギー自動車)」には電気自動車[EV]、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHEV]の3種類しか含まれない中国(ハイブリッドは禁止ではないものの減点対象)を無視してどうやって生き残ろうというのでしょうか?

「日本ではハイブリッドOKだろ!」と言ったところで、日本の主要メーカーの売上のせいぜい10-20%の市場だけでやっていけるわけではありません。

もちろんこれに対して「どうせ失敗してガソリンエンジンに帰ってくる」と逆張りをしたいのであれば勝手にすればいいと思いますが、世界がEVにシフトして先ほどのグラフの予想のように2023年くらいにガソリン車の売り上げ台数と

この頃には以前も取り上げましたがガソリン車の減少によって今よりも更にガソリンスタンドの数が減っていることが濃厚(仮にEVじゃなくてハイブリッドの台数が増えても「ガソリン需要減」→「ガソリンスタンドが廃業」なので同じこと)です。

既に「町にガソリンスタンドが1つしかない」ような自治体も出始めているわけで、5年後くらいには田舎だと「最寄りのガソリンスタンドが何十キロも先」などという光景が普通になっているかもしれません。

反対にEVであれば仮に急速充電できる場所が思ったほど増えなかったとしても、自宅に帰ってコンセントに繋げば翌日には満充電で出発できます。

都会以上に持ち家比率が高い田舎であれば自宅のコンセントを利用して充電というのは比較的簡単にできます。

「ガソリン車よりEVの方が便利で快適」という時代はすぐ目の前に迫っている事実を認識して、脳みそをアップデートすることが今の日本人に可能なのでしょうか?

可能じゃなかったとすると自動車産業の衰退により今より更に国民の所得が減少し、貧乏になっているかもしれません。

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