NIO「ET7」がもたらす衝撃と破壊力とは?【電気自動車でテスラ超え?】
おはようございます、@kojisaitojpです。昨日Twitterなどで電気自動車に関してはこの会社の話題一色でした。
日本のメーカーが本気出せばすぐにこの位作れるとか言う奴いそうだけど無理だよ。 https://t.co/JyPyiupO4U
— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) January 9, 2021
「NIO」というメーカーを知ってますでしょうか? 先日「BYD」については紹介しましたが、同じ位の時期に中国で誕生した何百という新興EVメーカーの中で生き残ってきたメーカーで、ニューヨーク証券取引所にも上場しているので、むしろアメリカ株投資をやっている人の方が車好きの人より詳しいかもしれません。
まぁ、「なんだ中国のメーカーかよ」とか「どうせバッテリー爆発して終わるよ」とバカにする人もいることでしょうが、昨日の発表を見た限りだと日本の車メーカーでこのレベルの電気自動車を作れるメーカーは存在しないと思います。
いや、下手をすると「テスラ」すら超える可能性(まだ発売されていないのであくまで可能性です)を感じる「NIO」のフラッグシップセダン「T7」について紹介します。
先日の「BYD」もそうでしたが、「NIO」とか「Xpeng(いずれ紹介します)」などの中国の新興EVメーカーを知らないと車のことを語れなくなる時代が来るかもしれません。
目次
テスラ超えの超ハイスペックの「NIO ET7」の破壊力
昨日1/9は、日本ではなぜかあまり報道されていない「NIO Day」でした。「NIO(上海蔚来汽車)」は中国で最大規模の電気自動車メーカーで、NYSE(ニューヨーク証券取引所)に2018年に上場したことから、アメリカ株に投資している人の方が車業界の人より馴染みがあるかもしれません。
毎年1月に「NIO day」という新商品の発表を行うのですが、昨日発表されたのが「ET7」というフラッグシップセダンでしたが、これが驚異のスペックでした。
- バッテリー容量が70/100/150kWh(しかもバッテリースワップ)
- 航続距離は150kWhのものだと1000キロ超え
- NAD(NIO Autonomous Driving)という自動運転機能をオプションで
- AQUILA(NIO Super Sensing)という8MPのカメラ(Teslaの6倍の解像度)を装備(Lidar採用)
- 5G/Wi-Fi6/Bluetooth5.2が完備
- 全個体電池搭載(これまでのNIOユーザーの交換にも無料で対応)
できないと思って言ってるのでしょうが、ヤフコメや5ちゃんねるなどで「1000キロ走れるようになったら電気自動車買ってやるよ」とか「充電が5分で終わるようになったら買ってやるよ」的な物言いをよく見かけますが、「NIO ET7」はその両者をあっさりとクリアしてきました(笑)。
まぁ充電に関しては「バッテリースワップ」というバッテリー交換方式ですが、5分で交換可能と豪語してますのでクリアしたようなものです(後述)。
航続距離は中国基準のもの(NEDC)ですので、信用できる航続距離であるEPAに置き換えるとだいたい750キロ〜800キロくらいでしょうが、それでも東京から高速道路で広島県まで行ける距離ですから誰も不満を持つ人はいないでしょう。
またテスラのはるか上を行く解像度のカメラを搭載し、テスラが拒否しているLidarを搭載(おそらく自動運転用)し完全自動運転にも対応すると発表しています。
5Gを積極的に推進している中国らしく、5Gがスタンダードです。これもただ高速でネットに繋がるというだけではなく「完全自動運転」への第一歩になることでしょう。
4Gでは力不足だった自動運転用の膨大なデータ送信と、車からのドライバーの情報(どういう行動をするのかなどのパターン)をリアムタイムで収集できる(同じことはテスラもやってますがまだ5Gには非対応)ことで、AIが進化し完全自動運転が可能になるポテンシャルがあります。
ユーザーエクスペリエンスを高速で収集できるようになる、しかもテスラ以上のスピードでと言うのは驚異です。
もし完全自動運転レベル5に本当に対応してきたら、間違いなく世界が変わりますがどこまで行けるでしょうか。
「所詮中国だけの話でしょ?」とナメたことを思っている日本人は多いでしょうが、中国メーカーの中でも先日の「BYD」とか「Xpeng」などは既に輸出を始めています。
確かに中国は自動車の国際条約を批准していないので、中国の自動車メーカーが輸出をするには苦労を伴うのですが、徐々に輸出にも手を伸ばしてきています。
昨日発表された販売価格は、「70kWhが448000元(約719万円)、100kWhが506000元(約812万円)」です。
もちろん中国以外に輸出された場合はこれよりは高くなるでしょうが、テスラ・モデルS超えのスペックの電気自動車がこの程度の価格で買えてしまうのは驚異です(テスラ・モデルSは1000万超え)。
私が自動車関係の仕事をしていたら「NIOのインポーター(輸入総代理店)になって独占販売すればボロ儲けか?」と企んだところです(笑)。
ちなみにNIOの動画で見るとわかりますが、この顔の形をしたスピーカーは表情が変わります。
昔あった「ナイトライダー」という車が喋るドラマを思い出しました(笑)。
音声ナビが会話してくれるのは以前紹介した「ホンダ e」にもありましたが、こちらは音声のみならず表情まで変化します。
「バッテリースワップ」という独自のシステムは成功するのか?
航続距離(バッテリー容量)も驚異的なのですが、更に驚異的なのは「バッテリースワップ」という街中でバッテリー交換をしてくれるというシステムです。
なお最初に書いた記事では、私が英語を読み違えていましたが、ユーザーは「バッテリー代も込みの車体価格」で購入するか、「バッテリー代抜きの若干安い車体を購入して、バッテリーはサブスクで提供を受ける」のを選択できるようです。
そして「バッテリー交換」は全員無料という驚異のサービスです。
昨日の発表だとバッテリーをサブスク形式にした場合には、「70kWhモデルが月額980元(約15680円)、100kWhモデルが月額1480元(約23680円)」です。
これを高いと思うか安いと思うかは、その人の毎月の走行距離と何年同じ車に乗るかにもよるでしょう。
500キロ以上もあるバッテリーをわずか5分で交換できるというのは「本当かよ?」と思うところですが、もし実現すれば(というか既にNIOの既存車でサービスが開始されていますが)「充電」というプロセスすら省略できるので、自宅に充電設備を設置できない人でも気軽に電気自動車に乗れるということです。
公約では「ET7」がリリースされるまでに中国国内に500箇所設置すると言っていますので、テスラのスーパーチャージャーもびっくりです。
集合住宅住みが多い中国の事情に合わせたサービスですが、もし同じサービスを日本で実現できれば日本メーカーにとってかなりの脅威になります。
動画でも実際にバッテリー交換をやっている様子があります。
ただこの「バッテリー交換」は以前テスラがやろうとして挫折しているので、成功するかはわかりません。
以前テスラが挫折したことについては、こちらのブログで詳しく書かれていますのでよろしければご参照ください。
電気自動車のバッテリーを取り外し式にしたらいいんじゃない? | EVsmartブログ
電気自動車の走行可能距離を伸ばすために、バッテリーを交換式(取り外し式)にしたらいいのではないか?というお話。これは結論から言うと、おそらくあり得ないと思います。
まぁ実際に「テスラ・モデルS」や今回の「NIO T7」のように600キロ以上の航続距離があればわざわざ交換しなくても、たまに充電すれば大丈夫じゃないかとは思うところですので、これについては成功するかは私もわかりません。
ちなみに「NIO」というメーカーは車を売るだけではなく「NIOホーム」とか「NIOポイント」のような車以外のサービスも充実しており、生活全般にサービスを提供するメーカーに育つ可能性もあるのですが、これについてはまたの機会に書きます。
実は私も「売る時と修理の時しか訪れる機会のないディーラー」という存在には疑問があり、従来の車ディーラーとは違ったサービスを提供してくれるのかなとちょっと期待しています。
自動車で「日本>>>>中国」の時代はとっくに終わってます
これを言うと怒る人が多数現れるのはわかっていますが、もう日本の自動車メーカーが特別扱いされる時代はとっくに終わっています。
中国企業のテクノロジーの進化は驚異的なスピードです。深センなどに行ったことがある方ならわかるかと思いますが、ハードウェアのテクノロジーに関して中国は既に世界一の座にいると言っても過言ではないくらい進化しています。
私があのエリアに最後に行ったのは2012年ですが、その時点で「これ、日本人がイメージする中国じゃないよ」と思った記憶があります。
先にオワコンになってしまった液晶テレビなどがわかりやすいですが、海外で電気屋などを見ていると展示されているテレビはサムソン、LGなどの韓国メーカーかハイアールなどの中国メーカーです。
別に発展途上国の話ではなく、フランスで「FNAC」やアメリカで「ウォルマート」に行ってもこんな状況です。
電気自動車でもこの状況になる日が既に見えてきました。まぁ日産だけは電気自動車に力を入れているので多少の存在感はあるかもしれませんが。
もちろん今でもハイブリッド車という土俵では日本が最強で、その中でもトヨタがトップでしょう。
でも中国メーカーとの違いは「ハイブリットを世界基準にできなかった」という点です。
このブログでは繰り返し言っていますが、世界では中国が電気自動車化へ一直線、ヨーロッパも厳しい環境規制(例えば「内燃機関(エンジン搭載)車」の販売禁止を打ち出しているイギリスやオランダ、ノルウェーなど)によって電気自動車化へ、アメリカでさえバイデン大統領の誕生により「グリーンニューディール政策」によってトランプ政権時代に大幅に遅れていた環境重視・電気自動車化へと舵を切ることがほぼ確定しています。
この流れの中も「でも結局は電気自動車は失敗して、日本のハイブリッドが勝ち残る」と根拠なく自信満々なコメントなどをヤフコメなどで見ると「情報格差ってこんなに進んでるのか」と背筋が寒くなってきます。
このままだとオワコンだから急いで対応するという方向ではなく既得権益死守の方向に逆走してますから末期症状です…
— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) January 9, 2021
以前の記事でも「俺が生きてる間だけでも現状維持」というマインドが日本を滅ぼすと述べたことがありますが、テスラや「NIO」をはじめとする中国メーカーの進化のスピードを見ていると、高齢者にとっての「俺が生きている間」という期間の間に日本の自動車メーカーが滅びてしまう可能性も感じます。
つまり10年20年すら持つか怪しいということです。
このまま電気自動車に背を向けて「ハイブリッドが最強なんだ」と言ってる間に、例えばトヨタなどがテスラや中国メーカーに買収されるという未来が見えてきます。
ヨーロッパでも販売禁止、中国でも販売禁止、アメリカでも販売禁止(知ってる人は知ってるでしょうが、既にカリフォルニア州では確定してます)となって世界の誰もが買わなくなれば、仮にいくら日本国内で「電気自動車はクソ、ハイブリッド最強」とマインドコントロールに成功しても滅びます。
そんな恐ろしい未来を「NIO」の新車発表を見ていて予感してしまいました。
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