EV化で最優先すべきは急速充電器ではなく普通充電器?【EV普及のたった一つの方法】

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こんばんは、@kojisaitojpです。面白い記事があったので早速引用します。

先日記事にしたようにマツダ「MX-30」に試乗して以来何でもかんでもMX-30で計算する習慣が付いてますが(笑)、神奈川県→東京都までの往復120キロの通勤であれば現在発売されている全てのEVで問題なくできます。

ですが記事の中をよく読むと「わざわざ不便に感じるようにEVを運用してるな」と思う部分がいくつかあったので、問題となる部分を考えていると「これが日本でEVの普及を妨げる原因だな」と思いました。

そこで今日はこの記事とこの記事にぶら下がってEVを批判しているヤフコメから「日本で散々言われる充電インフラガー」ってのはどこを解消すれば最大限の満足が得られる、どこを改善すればEV化が進むのかについて考えてみます。

「EVの充電インフラ=急速充電器」は大間違い?

アウディQ4e-tron
冒頭に引用した記事を読んで私が感じた疑問を最初にまとめると、

  • e-tronに乗れて自宅一軒家なのに自宅充電なし?
  • 職場の充電器が6kWなら結果は変わる
  • 往復120キロの通勤に急速充電は不要

これらの疑問点をこの方が使用するアウディ「e-tron 50 quatro」のスペックも見ながら考えてみます。

アウディQ4e-Tronスポーツパック

まず「e-tron 50 quatro」の航続距離は、余程エコドライブができる人以外は日常使いで達成することが困難なゆるゆるの日本WLTCモードで335キロ、「高速道路を時速100キロで走行し、クーラーをつけても達成可能」なアメリカの最も厳しい基準であるEPAサイクルで300キロ前後です。

95kWhの更に大きなバッテリー搭載の「e-tron 55 quatro」のEPA航続距離は発見できましたが、71kWhの50quatroのEPAは発見できませんでしたので推定です。

まず往復120キロしかないのになぜ途中で急速充電をしたのだろう?という疑問があります。この後の「職場で充電」というのができる環境なので謎です。

次に職場での充電で「現在の電池残量が30%で満充電になるまでの時間が20時間と49分かかる」という謎の表記です。

アウディ「e-tron 50 quatro」は日本メーカーのEVと比較すると大きめの71kWhのバッテリーを搭載してますが、3kWの普通充電器だと確かに空の状態から満充電まで20時間近くかかります。

ですが6kWの急速充電器で10:00-18:00まで充電すると約48kWhつまり約2/3の容量が充電できます。

まだ初期の日産リーフや三菱アイミーブしかなかった頃であればバッテリー容量も小さい(24kWhや16kWh)だったので3kWの普通充電器でも問題なく運用できましたが、現在のようにテスラやアウディなど搭載バッテリー容量の大きなEVが増えてくるともう限界です。

数万円の費用で調達できますし、契約アンペアを上げても大きな出費にはなりませんのでこれからEVを購入するのであれば最初から6kWのものを設置すべきですし、既に3kWのものが設置されているなら置き換えるべきかと思います。

逆に考えるとこの程度の充電器を自宅や職場に設置できれば朝自宅を出発する際にも夜会社から帰宅する際にも常に満タンに近い状態で出発できます。

往復120キロの通勤というのは一般的に考えても少し長めの距離だと思いますが、自宅や職場に普通充電器があれば旅行などで長距離乗る時以外は急速充電器が不要の生活になります。

記事の中では結構不便な印象を与えるように(なぜか途中のSAでも充電してます)書かれていますが、「自宅に充電器を設置」と「職場の普通充電器を3kW→6kWにアップグレード」だけで日常通勤するには何の問題もなく使えます。

「いちいち充電するのが面倒くさい」と思いますか? スマホが、特にiPhoneが発売された当時も同じことが言われてました。

「1日しかバッテリーがもたない携帯電話なんて売れるわけない(ガラケーは数日持ちました)」と。それがiPhoneの発売から15年経った2022年になっても同じことを言ってる人がいますか? 

いませんよね。私も含めてほとんどのユーザーは夜に家に帰ったら、あるいは職場などでもPCでコンセントにケーブルを繋いで充電してますよね。

単なる習慣の問題です。しかも自宅や職場の駐車場で充電しておけばOK、常に満タンで出発できるのであれば今までのように「ガソリンスタンドへ行く」という行為も無くなります。今まではガソリンを入れるという目的だけのためにいちいち外に出て車で出かけるという面倒な行為がありましたが、これがEV化によって消滅します。

こんな楽な生活はないと思うのは私だけではないと思いますがいかがでしょうか?

高速道路の急速充電器よりも大事な自宅や職場の普通充電器

VoltaFreeCharge
私が自宅や職場などへの普通充電器の設置、他には旅行の際に立ち寄るホテルなどへの普通充電器(これを「目的地充電」と言います)の設置に強くこだわるようになったのは「日本の急速充電インフラがひどすぎる」というのがきっかけでした。

先日もe-MobilityPowerが大黒PAに設置した充電器のスペックのひどさに触れましたのでよろしければご参照いただければと思います。

また数日前にマツダ「MX-30」を借りて私が実際に充電した際の悲惨な充電速度についてはこちらの記事で触れてますので、こちらもご参照いただければと思います。

EVに批判的な方々は必ずといっていいほど「充電インフラが充実しないうちはEVなんて普及しない」と言いますが、「どの充電インフラをどのくらい普及させれば快適に使えるか?」について語る人がほとんどいません。

  • わざわざ燃料を補給しに出かけるのが内燃機関車(ガソリン車・ディーゼル車)
  • 使ってない時間帯にプラグインしてエネルギー補給(充電)するのがEV

この違いがわかってないと「ガソリン車は5分で給油できるんだ!」などと急速充電だと30分、自宅や職場での普通充電だと数時間かかるEVを攻撃してきますが、これ自体がそもそも「走ってる途中で燃料補給するのがガソリン車」「使ってない時間、駐車してる時に充電するのがEV」という違いを見ようともしないで発言してるだけのトンチンカンな批判になります。

ロンドンで充電中のテスラ
ロンドンで充電中のKiaNiroEV
充電中のモデル3

実際にEVの普及率が上がっているフランスやイギリスの例を私のブログでも取り上げましたが、パリやロンドンの街中で見かける充電器はこのように普通充電器がほとんどです。

以前から日産ディーラーには急速充電器が設置されているのもあり日本だとなぜか「EVの充電=急速充電」のように捉えられがちですが、それはEVの本来の使い方ではありません。

最近になりようやく新築のマンションにEV用の普通充電器を設置する動きが見られるようになってきましたが、これが実現すると先ほども言ったように「自宅を出発する際にはいつでも満タン」です。

テスラ車であれば400-500キロ、私がここのところワーストな例としてネタのように引用するマツダ「MX-30」でも200キロ弱なら問題なく走れます。

テスラとパワーウォールのある生活

1日にこれ以上の距離を走る場面が年間に何回あるでしょうか?

テスラを例にしても「テスラだからね」で片付けられそうですが、EVの中で航続距離がワーストレベルのMX-30でも問題なくいけるよと言われると説得力ありますよね(笑)。

自宅充電可能なだけでもこの位ですから、当然折り返し地点に当たる職場の駐車場、あるいは旅行の際なら宿泊するホテルの駐車場に充電器があればこの2倍まで行けることは言うまでもありません。

私が以前記事にしたように、テスラ「モデル3」を借りて「東京⇄仙台」を往復した際には宿泊したウエスティンホテル仙台の駐車場にあるテスラの「ウォールコネクター(普通充電器)」だけで往復できましたが、その時の記事がこちらです。

同じことをMX-30でやってみろとなるとそれなりに困難を伴いますが、それでも「年間に1、2回の長距離ドライブを基準に考えてもねぇ」と思うところです。

日常生活で問題なく使えることの方が100倍重要だと思うのは私だけでしょうか?

EV充電器が増えても電力不足にはならない?

宮古島の太陽光発電
「今年の冬のように電力供給がギリギリの時にEVなんかが増えたら電力が足りなくなる。だから駐車場に普通充電器なんか不要だ!」と怒り出す人が必ずいますが、この「電力が足りなくなる」という指摘自体も的を射てません。

見ていただくとわかりますが、日本の電力事情を見ると最も消費してるのは家庭用ではなく、産業用です。産業用の電力を日本で最も消費してるのが愛知県ですが、これは言わなくてもトヨタ関連だということは誰でもわかりますよね。

「脱炭素」「カーボンニュートラル」のためにはこの電源構成を変える必要があり、実際グローバル企業ではこのような動きが当たり前になってきています。

これはAppleの例ですが、既にAppleは取引先のサプライヤーに「今後取引を続けたければ再生可能エネルギー100%にすること」という条件を課しており、これができないサプライヤーは取引が打ち切りになります。

以前ESG投資についてお話しした時にも言いましたが、上場企業は自社のみならず取引先のサプライヤーなども再生可能エネルギー100%にしないと「脱炭素へ向けて積極的ではない」と見なされ投資先としての評価が下がります。

それは自動車メーカーにしても同じことで、もし仮にトヨタが今後脱炭素へ向けて現状の電源構成を変えることができなければ世界の投資家から投資対象として不適格と見なされて株が売られてしまいます。

「株価の暴落=企業価値の毀損」ですからそんなことになればトヨタと言えども経営危機です。投資マネーをバカにして企業は存続できません。

ですのでEV化云々とは別次元の話で「工場の脱炭素化」を進めています。

産業用の電力が再生可能エネルギーを中心とした脱炭素に向かう一方で家庭用の電力も新築の住宅やマンションへの太陽光パネル設置が増えれば既存の送電網から送られてくる火力発電中心の電力を使う量は間違いなく減ります。

明日いきなり全ての車がEVに置き換わるならそれは電力供給が間に合わず大変なことになりますが、これから10-15年かけて徐々にEVが増えていくのでその間に電源構成も徐々に変化させれば良いだけの話です。

この辺りのタイムラグがわからない人々には次のような暴言を吐かれたりもしますが。

これは私が以前コンサルに言われて頭に来た例ですが、「太陽光パネルと蓄電池を設置することで会社の電力構成の中心に据えて、足りない分は再エネ100%のエネルギーを購入することで再エネ100%の会社にする」というアイディアでしたが、この事業計画を出すだけで「今から太陽光なんてやってもfit価格(固定価格買取制度)が下がってるんだから儲からない」だの「太陽光パネルや蓄電池という設備投資が無駄遣い」呼ばわりされたことがありました。

かと言って既存の送電網を使ってEVのビジネスやりたいなどと言おうものなら「火力中心の電力使ってEVやるのか?」と叩かれるわけで、脳みそがアップデートされていない年寄り相手に話すると疲れるだけだったりします。

「これまで前提だった既存の送電網を使う」という電力供給の前提自体が再生可能エネルギーの普及によって変わるものだと私は思っていますが、そもそもの前提が違う方々とは対話不能になるのが頭の痛いところです。

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