「ルノー・日産・三菱連合」のバッテリー工場とEV化計画の本気度は?【ようやくお目覚め?】
こんにちは、@kojisaitojpです。いくつかの記事でチラッとは触れてますが、この写真を見て何を感じるでしょうか?
日産、英国初の大規模バッテリー工場の建設に協力…新型EVに搭載へhttps://t.co/HsJDx6JL76#日産 #電気自動車 pic.twitter.com/3BrReoF6oR
— レスポンス (@responsejp) July 4, 2021
イギリスのボリス・ジョンソン首相が先日日産がイギリス・サンダーランドにバッテリー工場をオープンさせたのに合わせて日産の工場にお祝いに来ています。
先日はアメリカのバイデン大統領がフォードの工場を訪れて「F-150Lightning」の試乗を行った上で、「自動車の未来は電気だ」とEV化を全面的に支持する演説をしたことに触れましたが、これは少し意地悪く観れば「まぁフォードはアメリカのメーカーだからね」と言うこともできます。
フォードが「F-150 」をEV化したことから感じる本気度とは?【バイデン大統領も全面支持】
フォードが「F-150 」をEV化した「F-150Lightening」を2022年から発売することを発表しましたが、ワールドプレミアに先立ってバイデン大統領が試乗し、フォードの工場で演説を行ったことからアメリカ政府もEV化を本気でバックアップするという姿勢が明確になりました。アメリカもいよいよ全面的にEV化します。
ところがイギリスにおける日産は「外国メーカー」です。自国の自動車産業が弱いイギリスとはいえ、一国の首相が外国メーカーの工場にお祝いに来ることは普通ではありません。
いかにイギリスが「EV」とEVの最重要パーツの一つである「バッテリー」を重視しているかがわかります。
今日はこのようにイギリスにバッテリー工場をオープンさせた日産と、ほぼ同時にフランス国内にバッテリー工場の建設や「ルノー5」をEVとして復活させるプランを発表したルノーのEVに関する動きについて解説したいと思います。
目次
反撃開始の「ルノー・日産・三菱連合」のバッテリー増産とEV化計画
今回イギリスのボリス・ジョンソン首相がお祝いに駆けつけた日産の工場は、日産サンダーランド工場(ヨーロッパの日産で最大規模)に隣接して新設されるバッテリー工場です。
以前も私のブログで取り上げたことがありますが、元々日産の子会社で現在は中国資本(もちろん日産も大株主)となった「エンビジョンAESC」との共同のプロジェクトで、太陽光を中心とした再生可能エネルギーで稼働し、当初は年間最大10万台の日産EV向けバッテリーを製造とのことです。
実は日産は日本の茨城県にも同規模のバッテリー工場を建設予定であり、こちらと合わせて年間20万台のEVを生産できる量のバッテリーを調達する予定です。
サンダーランド工場の方は、稼働当初は年間9GWhで生産を開始する予定ですが、将来的には2030年までに最大25GWhへ生産能力の増強が図られ、最終的には35GWhまで拡張の予定ですので、テスラのギガファクトリーやフォルクワーゲンがノースボルト社とヨーロッパで稼働させることを表明しているバッテリー工場とほぼ同規模です。
またこの工場の稼働により4500人の新規雇用を創出すると書かれており、この工場で発電する風力や太陽光をサンダーランド市が推し進める「マイクログリッド」の計画に使う電力として供給する予定です。
この辺まで話すと、日産という所詮イギリスからすれば外国メーカーの工場のオープンにボリス・ジョンソン首相がお祝いに来た意味が分かりますよね?
自動車工場・バッテリー工場の稼働によりイギリス国内に雇用を創出し、しかも「脱炭素」の要となる再生可能エネルギーの創出にも貢献してくれるわけですから。
日本と違い国内に大規模な自動車メーカーが存在しないイギリス(当たり前ですが高級車のジャガーとかアストンマーチン、ベントレーなどの年間売り上げ台数はたかが知れてます)では、外国メーカーの工場の経済に与える影響がとても大きいです。
なるほど、このままだとイギリス国内で生産するEVがなくなってしまうという危機感があるのか。その最大の原因はトヨタだとはっきり言われてる(笑)。
Will UK's Share of European Electric Vehicle Production Drop from 50% to 4%? https://t.co/ktTaqpoImT @cleantechnicaより— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) July 5, 2021
引用した記事は「このままだとイギリス国内で生産するEVのヨーロッパにおけるシェアが50%から4%に下がってしまう」ことを危惧した記事です。もちろんブレグジットが影響していることは間違いありませんが、グローバル企業のイギリス国内の工場でEVが全然生産されていないことを問題視しています。
最上位で批判されているのがトヨタです(笑)。
このままだと2025年からノルウェーを筆頭に2030年からはイギリスやオランダなど内燃機関車を販売できなくなる国が続出するヨーロッパでは死活問題になりますので、今回の日産の計画をイギリス政府を代表してボリス・ジョンソン首相が手放しで喜ぶ理由がお分かりかと思います。
ちなみに念のために言っておきますが、中国資本とはいえ元々日産の子会社だったエンビジョンAESCの本社は神奈川県座間市と日産のお膝元にあります。
ヤフコメなどで「中国メーカーかよ」と叩いている人もいますけど、過去の日産の経緯を知らないのでしょうか。
ルノーも「ルノー5(サンク)」をEV化させて復活
そしてイギリスの隣フランスに本社のあるルノー(ご存知でしょうが日産の親会社)も次々とEV化計画を出してきました。
280万で400キロ走れて何の不満があるだろうと思うけど、これも張り切って叩くんだろうな。
【クラシックなEVハッチバック】新型ルノー5 価格は280万円前後か 新技術採用でコスト削減(AUTOCAR JAPAN)#Yahooニュースhttps://t.co/2az5ROP9KW— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) July 2, 2021
昔からのフランス車好きからすると「あのルノー5(サンク)がEVになって復活か!」と嬉しい情報になりますが、価格や航続距離が注目で日本円で約280万円、航続距離400キロを達成させるEVとして発売する意向のようです。
決して高くはなく、ルノーは先日私が紹介した「メガーヌe-Vision」同様にEVの本格的な普及を狙った価格帯で勝負してきそうです。
ルノー「メガーヌ E-vision」と本気のEV化計画とは?【もちろん日産・三菱も貢献】
ヨーロッパのメーカーの中ではEV化が遅れ気味だったルノーが「メガーヌE-Vision」を発表し、同時にEV専門の新法人を設立し、2025年までに40万台のEVを生産する計画を発表しました。同じアライアンスに所属する日産「アリア」のプラットフォームを活用するなど、日本の技術を生かしたEV化計画は注目に値します。
一応言っておきますが「ルノー5」は日本では「サンク」の呼称で定着しています。知らない世代が「ルノーファイブ」などと言ってたりもしますが私はガソリン車の時と同様に「サンク」表記で行きます。
同様に「ルノー4」も「ルノー4(キャトル)」で行きます。従来であれば日本ではフランス語読みが使われるはずですので。
バッテリー工場についても先程の「エンビジョンAESC」がフランス国内にもルノー向けにバッテリー工場をオープンさせることが発表されています。
中国の遠景、ルノーEV向けバッテリー工場を仏に建設へ-20億ユーロ
中国の遠景科技集団(エンビジョングループ)はフランスのルノーの手頃な価格帯の電気自動車(EV)向けにバッテリーを供給する工場を仏北部に建設するため、最大20億ユーロ(約2600億円)を投じる計画だ。
「ルノー・日産・三菱連合」ですので、バッテリーやプラットフォームを共有するのは当然のことですが、これでようやく「ルノー・日産・三菱連合」も本格的にEVの生産に取り組んでいくようです。
ルノーは「ZOE」、日産は「リーフ」、三菱は「i-MiEV」と世界のどこの自動車メーカーよりも早くEVに取り組んでいたにもかかわらずここのところ進歩についていけてない印象でしたが、不安材料はこれで払拭されました。
今もノルウェーで、世界で人気の「日産・リーフ」
最後は再び日産の話題に戻りますが、先程のサンダーランド工場からおそらく輸出されているであろうノルウェーでこのような数字が出ています。
発売から10年以上が経過し、当時と違ってフォルクスワーゲンやアウディ、メルセデス、ボルボなどヨーロッパ各社がどんどんEVを投入している中で「リーフ」が今でも売り上げ上位(先月は6位)に入ってくるのは驚異としか言いようがありません。
後日また他のヨーロッパ諸国と合わせて取り上げますが、ノルウェーの2021年6月の電動化状況はこの状況です。
BEVだけでも64.7%、PHEVも含めた電動化率は85%と、もはやガソリン車とディーゼル車の売り上げを合わせても8.2%と買ったノルウェー人に「なぜ内燃機関車を買ったんですか?」とインタビューしたくなる位マイノリティになっています。
まぁ以前記事にはしましたが、「ノルウェーのEV化」について語っても「ノルウェーは特殊なんで」と無視されるでしょうからもう多くは語りませんけど。
ノルウェーが電気自動車最先進国になった理由とは?【2025年にはエンジン禁止?】
日本とは真逆の電気自動車化で最先端を行くノルウェーについて取り上げてみます。PHEVと合わせた電動化率が8割を超えるノルウェーではむしろ電気自動車に移行しない方が国民が損をするように上手に誘導しています。産油国でありながら2025年にはエンジンのある車自体の販売を禁止する予定のノルウェーで電動化できた理由を探ります。
ちなみに「リーフ」に関してはノルウェーだけではなく、世界規模で見てもこのような数字が出ています。
日産リーフは2021 Q2に4,804台を販売、前年同期比で約4.5倍、日産の乗用車の約4.8%に相当。
この販売数は2015 Q2以来の水準であり、22年にアリアが控えていることを考えると優秀な結果ですね👀
US: Nissan LEAF Sales Rebound To Almost 5,000 In Q2 2021 https://t.co/owE5cwz4Zf pic.twitter.com/B2TeckMitR
— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) July 2, 2021
日本では既にテスラ・モデル3にリーフが抜かれている状況ですので、この数字の大半は海外で叩き出したものです。
世界で「日産・リーフ」が一つのブランドして認知されるくらいの信頼感をこの10年で作ってきたと言えるのではないでしょうか?
このような世界で誇れる部分もあります。
炎上を強調するより「日産リーフのバッテリー発火案件はゼロだぞ」って方を自慢する方が全然聞こえが良いと思うんだけどそれすら知らないのかな。
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) May 21, 2021
「テスラが燃えた」「ヒュンダイが燃えた」など世界各社のEVから発火案件が起きているにもかかわらず日産だけは2010年のリーフ発売以来「発火案件ゼロ」を続けています。
私の見解としては既に先日紹介したようにXpengやNIOなどの中国メーカーも進出しており、ヨーロッパの各メーカーは言うまでもなく先日紹介したようにフォードも「マスタング・マックE」を投入しているなど、世界のあらゆる国のEVが集結しているノルウェーにおいて今も日産リーフがトップ5前後の売り上げを誇るのは驚異です。
などと「日本すげぇ」の一部分として「日産・リーフ」を取り上げても「こいつは日産の回し者だ」的に叩かれてしまう残念な状況が今の日本ですけど。
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