PHEVに依存する危険なトヨタのEV戦略とは?【EV作れない?遅れてる?】
こんばんは、@kojisaitojpです。私も少し絡みましたが面白い議論がありました。
横から失礼いたします。トヨタさんの数字はそれなりに計算されてます。仰る通り2030年にはガソリン車はゼロ、HVはBEV/PHEVの足を引っ張る側。HVは全て規制値超過と思います。しかし、残りをPHEV/FCV込みでZEV化すればOK。このロジックの欠点は、PHEVがZEV除外に規制が変わると破綻することです。^安川
— evsmart (@evsmartnet) May 13, 2021
トヨタが具体的に出してきた今後のEV化戦略についての議論なのですが、トヨタ側が発表した数字が色々なことを示唆してくれます。
「世界最高の技術があるんだからEVなんていつでも作れる」のような感情論では何も話が進展しませんが、メーカー側が実際に出してきた数字を根拠に判断すると今後の電動化戦略がどのようなプロセスになるのかが予想できます。
というわけで今日は、2021年3月期決算発表の際にトヨタが公表した今後の電動化計画の妥当性について考えてみます。
目次
PHEV偏重のトヨタのEV化戦略はわざわざヨーロッパ・アメリカに潰される戦略?
トヨタが発表した電動化計画はEVよりもPHEVに軸足を置いた戦略になっています。それは2030年のバッテリー生産量が180Gwhと出ていることから計算するとわかることで、
800万台は電動車で、うちEVは200万台ですから、仮にEVの電池容量の平均を60kWhとすると120GWhですね。
残り60GWhを600万台のHEVとPHEVで分けるとすると、HEVが1kWh、PHEVが15kWhなら、概算でHEVが215万台、PHEVが385万台になります。— Brownie (@browniejp) May 13, 2021
メーカーが見積もったバッテリー生産量を元にPHEVとBEVではそもそものバッテリー容量が違うことからこのような計算が可能になります。
要は一言で言えば「バッテリーの生産量がメーカーの規模から考えると少なすぎる」ということなのですが。
PHEVについては私も先日記事にしたように「BEVへの移行への橋渡し」としてであれば使えるというのが正直な評価です。決して悪いものではありません。
プリウスPHVにみんなで乗ることがEV化への近道?【案外本気です】
これまでガソリン車しか経験がない、ハイブリッド車しか経験がないという人でも「プリウスPHV」であれば悩むことなくバッテリーのみで走るEV走行を体験できます。一旦バッテリーのみで走行する楽しみを知ってしまうと極力ガソリンスタンドに行かない生活になるようで、EVを試してみたいけど何となく不安という人にもオススメです。
しかし問題は「世界がこのようなスローペースな電動化を許すのか?」という話であって、
欧州がガソリン車やHVだけでなく充電可能でなPHEVも早期の規制を検討、今後数年以内に販売が難しくなる可能性。
もし法案が可決された場合、インフラ整備の更なる加速が期待されています🧐
EU Wants To Phase Out PHEVs Sooner To Accelerate EV Transition https://t.co/PmMEaP6SQT
— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) April 13, 2021
ヨーロッパではフォルクスワーゲンを筆頭にメルセデスやBMW、ジャガーなど「今後は新規でエンジン開発を行わない」ことを表明したりもっと進んで「〇〇年から全車EV化」を表明しています。
同じことはアメリカでも起きていてEV専業のテスラは関係ありませんが、GMが2035年から世界で販売する自動車を全車EV化、フォードは2030年以降EUで販売する自動車は全車EV化の方針です。
「PHEVが生き残って得をするのは日本メーカーだけ」という状況が非常に危ないことがわかりますでしょうか?
私がヨーロッパやアメリカで政策立案する人間なら「PHEVに規制かけて使えなくしたらトヨタ詰むな」と思ってトヨタを潰す方向で政策を立てていきますよ。
忘れてはいけないのは「こういう自動車は売っていい」「こういう自動車は販売禁止」を決めるのは車メーカーではなく法律を作成する各国政府です。車メーカーがああしろこうしろと叫んだところで政治の世界で「法律」として通らない限りは売ることすらできません。
「EUと中国が結託してトヨタを潰そうとしてる」と怒っている向きをSNS上などでは多数見かけますが、「やることが汚い」と思います?
ビジネスの世界で「汚い」とか言ってもほとんど意味がないと思います。ライバルとなる会社が困るようなルール設定、法律の規制が入るというのは常套手段です。
特に「ハイブリッド車・PHEV車」で得をするのが日本勢、BEVで得をするのがヨーロッパ勢・アメリカ勢となっている状況でどこの国の政府が日本メーカーを優遇する政策を採用するでしょうか?
あ、一国だけありました。「電動車」という世界では通用しない謎のカテゴリーを作ってハイブリッド車もPHEVもOKにした「日本」という国が(笑)。
結局自国のメーカーに有利になるように政策を立案するというのはどこの国もやっていることで、それに対して「汚い」だの「陰謀」だのを言っても状況は何も変わらない、いや乗り遅れると企業の収益が減るという不利な方向にしかいきません。
私が以前「ハイブリッド車をEVに含めるかというルール設定で負けたんだから次はおとなしくEVで勝つ方法を考えるしかない」という趣旨の記事を書いたのはそういう意図です。
電気自動車(BEV)という「ルール変更」に適応する韓国勢と抵抗する日本勢【ウインタースポーツを見習え】
韓国の起亜自動車が「PHEVの賞味期限は2022年」と断言し、一気に11車種の電気自動車の開発・販売に踏み切ることを発表しました。2025年のノルウェーを皮切りにPHEVさえ販売できなくなる国が続出する中でハイブリッドに固執する日本勢が生き残る方法はあるのでしょうか?実はウインタースポーツの世界にヒントがあります。
日本国内限定ならPHEVでもいいけど
なんて話をすると「お前もこの前プリウスPHVを推奨してたくせに」と思われます?
あれはあくまでも既にガラパゴス化してしまい、EVを乗ったこともないのに拒絶する層が一定数いそうなことから私が考えた苦肉の策です。
プリウスPHVにみんなで乗ることがEV化への近道?【案外本気です】
これまでガソリン車しか経験がない、ハイブリッド車しか経験がないという人でも「プリウスPHV」であれば悩むことなくバッテリーのみで走るEV走行を体験できます。一旦バッテリーのみで走行する楽しみを知ってしまうと極力ガソリンスタンドに行かない生活になるようで、EVを試してみたいけど何となく不安という人にもオススメです。
今回のトヨタの発表にしろ先日ホンダが発表した全車EV化戦略にしろ日本市場の電動化率はヨーロッパ・中国・北米よりもスローペースで設定しています。
ホンダの「2040年までに全車EV化」がグローバルで生き残る手段?【日本郵便のEV化計画も紹介】
世界のEV化の流れに遅れていると思われていたホンダが日本勢で初めて「2040年までに全車電気自動車化」の計画を発表と衝撃が起きました。その計画もエリアごとに具体的なプランが練られており、日本市場の雇用も維持できる地に足がついた計画です。そのホンダの2輪EVを既に使用している日本郵便の脱炭素の計画と一緒に紹介します。
これ自体は地に足がついた戦略であって間違いではないのですが、トヨタの2030年で「BEV+PHEV」で10%という計画は低すぎます。
この数字にはPHEVが含まれていませんが「そもそもその頃にはガソリンスタンドがどのくらい減っているのだろう?」と思ってしまいます。
「あれ?エンジン要らなくね?」と思うユーザーが一定数を超えた瞬間に、あるいはその前にガソリンスタンドが急減したことにより「充電より給油の方が不便じゃね?」となる可能性が高く、その時にPHEVは役目を終えると私は予想しています。
ですのでEVの大半を小型のバッテリーで済むPHEVで想定しているトヨタの予想は甘いと思う次第です。
「日本の売上台数<海外の売上台数」なのにガラパゴスにこだわるトヨタの謎
「どうしてトヨタはEVに対して後ろ向きなのか?」については以下の点に集約されると思います。
- まず本格的にEVを売るならバッテリーの調達量が致命的に足りない
- 再三EVをDisる発言を繰り返す社長の存在
- 各国政府にハイブリッドを優遇するよう圧力をかけるも日本以外はほぼ失敗
特に「バッテリーの調達をどうするの?」という問いにきちんとした回答をしてきたトヨタのファンの方を見たことがないのが本当に疑問です。
「まぁパナソニックと協業したし、国も出資するから何とかなるでしょ」的な曖昧な回答しか返ってこないことが多いのですが、何度か言ったように国内でパナソニックと共同でバッテリー生産を行うプラネットエナジーソリューションズの年間生産量は0.39Gwhで、テスラのギガファクトリーの100分の1の規模です。
RAV4の発火案件とEVにおけるバッテリーの重要性【やっぱりトヨタはオワコン?】
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ここに日本政府が出資してどのくらいの規模に拡張できるのかは分かりませんが。
しかもパナソニックには「テスラ」という最大の顧客がいます。トヨタだけを見て仕事をしてるわけではありません。
「部品なんて部品メーカ煽ればいつでも手に入る」と思ってるのだとしたら「バッテリーに関してはそうは行かないよ」というのが私がこれまでブログで再三指摘してきたことです。
電気自動車(BEV)のレイヤーマスターは「バッテリー」?【中国企業を育てたのは日本企業】
ガソリンエンジンではエンジンを作る自動車メーカーを頂点としたトップダウン型のサプライチェーンでしたが、電気自動車でレイヤーマスターとなるのはバッテリーメーカーです。バッテリーの世界シェアを握った企業が自動車メーカー本体より力を持つということなのですが、ここを日本企業はBYDやCATLなどの中国メーカーに取られています。
それにそもそも根本の疑問なのですが、
「HEV、PHEVでも80%はエンジンが停止している」と力説するなら「エンジン要らなくね?」と素直に認めればいいのに。
トヨタが目指すのは数字か政治か。2021年3月期決算説明で「電動化戦略」が明らかに | 自動車情報サイト【新車・中古車】 – carview! https://t.co/py0qjwc2Qw— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) May 16, 2021
「ハイブリッドでもPHEVでもエンジンが停止してる時間が大半だからエコだ」と力説している記事なのですが、それであれば「そもそもエンジン不要では?」と思ってしまいます。
そこまで書いてくれるとこの記事を書いた記者も私と同志になるのですが、どうしてもエンジンの存在を前提にしてしまうようです。
そうではなくむしろ「エンジンを外してその分バッテリー容量を大きくすれば万事解決するのでは?」と思ってしまうのは私だけでしょうか?
今後2025年のノルウェーを筆頭に、2030年頃からはイギリスなどヨーロッパの主要国で内燃機関を搭載した新車販売が禁止になればPHEVすら売れなくなります。
アメリカも2035年以降内燃機関車の新車販売を禁止するカリフォルニア州を筆頭に、EVと再エネの推進を公約に大統領に当選したバイデン政権によって急速にEV化が進んでいきます。
「中国が残ってる」と強気な方もいますが、NIOでもBYDでもXpengでも国内メーカーの大半がEV専業の国でPHEVをいつまで認めるの?と思ってしまいます。ああいう国ですからある日突然「明日からハイブリッドもPHEVも販売禁止」的に強権発動しないとも限らないマーケットに依存するのは考えものです。
するといつの間にかハイブリッドもPHEVも「日本でしか売れないガラパゴス規格」となってしまいます。その前に素直にBEV(どうしてもというならFCVも可)中心にシフトすべきだと思うのですが目先のことしか見えない日本人がまだまだ多いようです。
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