2022年6月のヨーロッパ・世界のEV化率は?【フォルクスワーゲンも反撃開始?】
こんばんは、@kojisaitojpです。毎月恒例ですが、2022年6月の世界各国のEVランキングなどの情報が出そろっています。
奴らがドヤりそうなネタが出てきたけど要請してるのはヨーロッパの主要国ではない。
EU5カ国、ガソリン車の販売禁止5年延長要請 40年までに https://t.co/w6F5UpzHBA— saito koji@IONIQ5で日本全国移動中 (@kojisaitojp) June 27, 2022
なんてヨーロッパの話をしようとするとおそらく上記のネタを持ち出して「ヨーロッパもEV化にストップがかかってるんだ!」と叫ぶ人々が現れるでしょうけど、この提案は否決されてますよ。
この提案がEUに提出された時点で「ほら、ヨーロッパもEVを諦め始めた」とはしゃいでいる人が多数いましたが、EUの中のたったの5カ国、しかも主要国のフランスやドイツが関与してない時点で論外な提案だと私は思いましたけど。
とはいえロシア・ウクライナの戦争やコロナによるテスラ・ギガ上海(ヨーロッパ向けの輸出拠点)のロックダウンなどの事情によってこれまでであれば「EV化率が右肩が上がりに増えていて」という内容に終始していたのが少し変化してる事実はあります。
今日は同じタイミングで2022年5月のものですが世界全体のEV販売ランキングも出てきているのでこれについて取り上げながら、「ロシア・ウクライナの戦争」がヨーロッパのEV化にどんな影響を及ぼしているのかについても考察してみたいと思います。
目次
テスラ以外は中国勢がほぼ独占の世界のEV販売ランキング
具体的なヨーロッパ諸国を見る前にまずは世界全体でのEVの売上について取り上げてみます。
世界全体の統計は1ヶ月遅れで2022年5月のものですが「宏光MiniEV」とテスラ「モデルY」「モデル3」が不動の三強となっています。
「宏光MiniEV」が首位というとおそらく「中国でしか売れない車出すんじゃねぇ」と猛反発されそうですが、既に海外での販売も始まっており、例えば先日インドネシアでの発売が発表されています。
2022年6月2日、インドネシアでリリースされたSAIC-GM-Wuling(SGMW)Air EV(宏光mini GameBoyとデザイン違い)。
内外装デザインは女性が行ったんですね。
充電はメネケスACのみ。
バッテリー容量28.4 kWh、電費9.5 kWh / 100 km
航続距離300km。価格$4,950(67万円)https://t.co/NBiHl1W23u pic.twitter.com/CBf6Um8UGm— 松野博 Hiroshi Matsuno (@stonecold2000) July 11, 2022
私が名古屋大学に展示されている「宏光MiniEV」を昨年見に行きましたが、その頃と比べると格段に進歩しています。
そして現時点では中国一国の売上台数で首位の「宏光MiniEV」に続くのがテスラ「モデル3」とようやく日本でも発売が発表された「モデルY」です。
まぁテスラについては今更説明不要でしょうが、その後に続くBEVがBYDの「元プラス(yuan plus)」なのも衝撃です。
私のブログではまだ取り上げたことがありませんので、BYD「元プラス(yuan plus)」については説明が必要です。
「全長4455mm×全幅1875mm×全高1615mm」のコンパクトな車両で、搭載バッテリー容量が49.92kWhと60.48kWh、航続距離はそれぞれ約344kmと約408km(中国NEDCをEPAに換算)と必要十分のスペックで価格が衝撃の240万円〜260万円です。
「EVなんて高くて買えねぇんだよ!」と怒る層はBYDや「宏光MiniEV」のような廉価なEVが世界に進出し始めている事実が見えていません。
BYDはこういう市場を着実に取っていくだろうな。で、これに続くのがヒョンデ・起亜というのが俺の予想。
中国BYD、コスタリカでのEV販売好調 シェア5割に(36Kr Japan)#Yahooニュースhttps://t.co/r7xXYrQc3u— saito koji@IONIQ5で日本全国移動中 (@kojisaitojp) July 10, 2022
「コスタリカ?そんな小さな国なんて」と思うかもしれませんが、もう既にBYDが世界各国に進出し始めている事実は過去の記事で指摘してます。
「Blade Battery(LFPバッテリー)」を持つBYDが最も怖い中国メーカー?【EVバスはとっくに日本上陸】
BYDが電気自動車(BEV)の輸出をジンバブエ・ケニアとアフリカ諸国に、年内にはオーストラリア・ニュージーランドへの輸出も予定しています。最大の魅力が「LFPバッテリー」と「Bladeバッテリー」という技術です。レアメタル不使用でコストを削減した安価なバッテリーが発展途上国を含む世界に受け入れられる可能性は高いです。
「BYD」など中国のバッテリーメーカーが電気自動車で仕掛ける戦略とは?【敵は強大です】
「BYD」という中国のバッテリー・電気自動車などのメーカーを知っているでしょうか?電気自動車化のトレンドの中で中国メーカーの発言力が増し、今や世界の覇権を取ろうとしていることは意外に知られていません。今日は「BYD」がリリースする電気自動車を紹介しながら、「BYD」や「CATL」などの中国メーカーの世界戦略に迫ります。
レアメタルであるコバルトを使わないゆえ格安である上に安全性も最強レベル(バッテリーに釘刺しても発火しない)「Bladeバッテリー(LFP)」を武器に既に世界に進出しています。
「燃える」と叫びたければこれ見てから言えよと思うんだけど、そう奴らって見ようともしないんだよな。
Nail Penetration Test on NCM Battery and BYD Blade Battery https://t.co/Phk2EUj7De @YouTubeより— saito koji@IONIQ5で日本全国移動中 (@kojisaitojp) May 11, 2022
上記の記事でも取り上げましたが日本にも既にEVバスやタクシーは導入されています。
個人的には「価格という面でテスラより有利なので世界でシェアを伸ばすかも」と思う会社です。
という世界のEV販売状況を見た上でヨーロッパ主要国の6月の統計を見てみましょう。
2022年6月のイギリスのEV化率は?
まずはこの数ヶ月BEV・PHEVよりもハイブリッドが増えていたイギリスから見てみましょう。
2022年6月はBEVが18.1%、PHEVが5.5%の合計が21.6%、前年同月の17.2%から着実に増えています。
しかも自動車の販売台数が1996年以来最低の数字なのにEVの販売台数は増えているという衝撃の事実もあります。
イギリスの場合は車種別の統計は遅れて出てくるので現時点ではメーカー別のシェア率しか出ませんが、イギリスはヨーロッパの中で数少ない右ハンドル市場なのもあってかテスラがある程度納車されたようで、24.8%とダントツのシェアになっています。
そして何度か指摘してますが2位が起亜、5位がヒョンデという事実にも注目すべきでしょう。
もちろん「ヒョンデ・起亜」がテスラに次ぐ数字を叩き出すのは通常であれば2位に入るはずのフォルクスワーゲンが全く生産できない状態なのも影響してはいるでしょう。
ですが今年1月のように起亜が1位になったりと韓国勢が猛烈にシェアを伸ばしているのがイギリス市場の特徴です。
2022年1月ヨーロッパのEV化状況からわかることとは?【ヒョンデ・起亜・中国勢の脅威】
毎月恒例のヨーロッパのEV化状況に関する2022年1月統計が出てきたので取り上げます。1月はテスラが全く納車しない月なので全体の売上台数やEV化率は下がってるように見えますが、前年同月比では大幅にプラスです。しかもどこの国でもヒョンデ(ヒュンダイ)や起亜が上位に入っており、着実にシェアを伸ばしていることがわかります。
個人的なことを言えばイギリスにはヒョンデ「IONIQ5」をメインに取り上げるYouTuberが多数存在しており、私も例えばこの方のYouTubeチャンネルは自分のチャンネルのネタ探しに活用させてもらっています。
この動画は「IONIQ5は本当に18分で10%-80%まで充電できるのか?」という内容でIONITYの350kW充電器を使って18分と数秒で到達した話です。
日本との充電インフラの差を見せつけられて悔しくなりますね(笑)。適切な充電インフラがあれば私の「IONIQ5」もこの位できるのに…と思ってしまいます。
2022年6月フランスのEV化率は?
次はフランスです。
2022年6月のフランスではBEVが12.8%、PHEVが7.0%の合計19.8%で前年同月の18.7%から微増です。
今年前半は20%超えが当たり前だったからか「フランス人もEVの限界に気づき始めた」とヤフコメなどではしゃいでいる人々が見られますが、そういう方々は「通常ならテスラが大量納車する月が6月」だということを忘れています。
通常であれば6月はテスラが大量に納車する月ですが、今年は上海工場がロックダウン、新規オープンしたベルリン工場もまだ本格稼働には至らずで、テスラの納車がいつもより少なくなっています。
にもかかわらず前年同月比よりプラスという事実、「テスラの納車がわずかでも他のメーカーのEVで前年同月比プラス」という事実を見るべきでしょう。
おかげで「モデルY」こそ上位に入っていますが、バックオーダーが全く解消されないくらい積み上がっているようです。
代わりに伸びたのが他のメーカーのEVで「フィアット500e」「プジョーe-208」「ルノーZoe」などの常連に加えてルノーの新型EV「メガーヌ」も上位に顔を出しています。
ルノー「メガーヌ・e-tech」は以前も取り上げたこともありますが、同じアライアンスの日産「アリア」と同じプラットフォームを使用したEVで、価格が30000-35000ユーロ(約400〜460万)とアリアより安いことから売れるのは当然かもしれません。
ちなみにテスラの納車の有無で発生するEV化率のばらつきは既にヨーロッパ向けの生産を担う「ギガファクトリーベルリン」が稼働してることからいずれ月による変動は少なくなるはずです。
2022年6月のドイツのEV化率は?
次はヨーロッパトップの販売台数を誇る自動車大国であり、私も昨年フォルクスワーゲンの「アウトシュタット」を訪れた際にも触れたドイツです。
6月はBEVが14.4%、PHEVが11.7%で合計26%と、2月の24.9%、3月の25.6%と比較しても変動なく(要は前年同月比で見ると大幅増加)順調にEVが伸びていることがわかります。
ちなみに前年6月は23.6%ですので、先ほどのフランス同様にテスラの納車台数に限界がある状態でも前年同月比でプラスという事実を見る必要があります。
「ロシアから天然ガスが輸入できなくなったからドイツの脱炭素もEV化も終わり」とSNS上で叫んでいる方々はどんな統計を見て言っているのでしょうか?
もちろん車種別の統計を見ると、ロシアとウクライナの戦争の影響を感じる部分はあります。
数ヶ月前からドイツでフィアット「500e」が首位という状況は異常です。
というかEVのランキングでもフォルクスワーゲンとテスラ以外が首位というのは通常ではあり得ないです。
逆に言うと「テスラもフォルクスワーゲンも思うように納車できない状態なのに前年よりEVが売れている」ことがいかに驚異かわかりますでしょうか?
ちょっと前の記事だけどフォルクスワーゲンも反撃体制が整ってきてるぞ。
独VW、半導体供給「明らかに」改善、年内に生産回復も=CEO https://t.co/uqhGhoD9Kp— saito koji@IONIQ5で日本全国移動中 (@kojisaitojp) July 12, 2022
生産できないから終わるというわけではなく、今年の後半には半導体やこれまでウクライナから調達していたワイヤーハーネスにも目処がついてきたようで一気に反撃に転じるかもしれません。
テスラのギガ上海も生産を再開してますし、ギガベルリンも徐々に生産台数を増やしてくることでしょう。
その時にドイツの、ヨーロッパのEV化率が何%になるのか?と考えるととんでもない数字が出るかもしれません。
ロシア・ウクライナの紛争は「化石燃料への依存を止めよう」という方向、「だから再エネとEVにシフトしよう」という方向にに加速度をつける出来事になるのでは?と以前から私は予想してます。
「脱ロシア依存」が進めば進むほど再エネとEVへのシフトが進むのは必然です。
2022年6月ノルウェーとスウェーデンのEV化率は?
今回は最後にノルウェーを取り上げます。
Twitter上ではノルウェーの話をすると「ノルウェーの話なんかするな!」怒り狂う方々が一部いるようですが、寒冷地でもEVが普及する例として日本にも参考になる部分はあると私は思います。
BEVが78.7%、PHEVが11.2%で合計が89.9%と前月同月はBEVが64.7%、PHEVが20.3%でしたからノルウェーではPHEVすら大きくシェアを落としBEV一色になってきています。
その他のハイブリッド、ガソリン車、ディーゼル車は2-3%とほとんど絶滅寸前です。
まぁこの絶滅寸前の中でPHEVで一番売れてるのがトヨタの「RAV4」、ハイブリッドとガソリン車では「ヤリス」らしいので「真面目にBEV売ればすぐにでもトヨタがシェア取れるんじゃないの?」と思ってしまいますけど。
車種別だとテスラの「モデルY」が独走で、それにフォルクスワーゲン「ID.4」が続いていますが、純粋な台数で見ると以前より数字が落ちています。
これはこれまで述べてきたようにテスラはギガ上海のロックダウン、フォルクスワーゲンは部品が調達できずに生産台数が大幅に減っていることが原因でしょう。
「いや、EVがもう限界なんだ!」と発狂したい方は2022年後半の統計が出てからお話ししましょう。今の時点であれこれ言うのはただの妄想で価値がありませんので。
そもそもEVの比率が90%に迫る国であれこれケチをつける方が不毛だと思いますけど(笑)。
その他で目立つのはチェコのシュコダオートの「ENYAQ」やBYDの「TANG」など多彩なEVが目立つのはノルウェー市場の特徴です。
ちなみに「ノルウェーだけが特殊なんだ!世界はEVなんか望んでない!」と発狂される方向けにノルウェーの隣のスウェーデンの統計も出しておきます。
BEVが31.6%、PHEVが23.5%で合計が55.1%と前月同月はBEVが24.1%、PHEVが25.3%でしたからPHEVのシェアが後退してBEVが主軸になっていることがはっきりわかります。
EV(だけじゃなくガソリン車にも影響)が全く生産できない状態が続いている状態でも、ヨーロッパ各国の統計でBEVの比率が一方的に増加しているのは誰の目にも明らかです。
「世界はEVの限界に気づき始めた!」「ロシアの影響で脱炭素もEV化も終わりだ!」と叫びたいなら私のように統計資料を出して理屈で話をして欲しいところです。
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