ソニーが市販化を発表したEV「Vision-S」から感じるライフスタイルの変化とは?【マグナにファブレス?】
こんばんは、@kojisaitojpです。今日は違う記事を用意していたのですが、突然ニュースが入ったのでこっちを前倒しで取り上げます。
来るか?既存メーカーより期待できるぞ。
ソニーがEV新会社 | 2022/1/5 – 共同通信 https://t.co/Y2v2qkPuY7— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 5, 2022
ソニーは以前から「Vision-S」というコンセプトEVを製造し、市販化の予定はないものの車載のオーディオやインフォテイメントシステムなどを他社に販売すると言っていましたが、2022年になった途端「自社でEVを製造販売する」と宣言を出してきました。
ちなみにソニーの「Vision-S」については以前の記事で「ヒュンダイや起亜に対抗できるのは日本の自動車メーカーでは無理で、ソニーのような外部の会社では?」という文脈で触れてますのでよろしければご参照いただければと思います。
「Kia EV6」と「Hyundai Ioniq5」がEV戦争でテスラを倒す?【モデルY超えのスペック?】
ヒュンダイ「Ioniq5」の発表で驚異のスペックを持つ電気自動車(BEV)を出してきた現代グループが今度は起亜ブランドで「EV6」というテスラ・モデルYのスペックすら超える高性能なEVを発表しました。電気自動車では日本が完全に遅れている姿が際立ちますが、Sonyの「Vision-S」という希望を感じる面もあります。
まぁこれを書いた時には「韓国メーカーにトヨタが負けるわけないだろ!」「韓国のバッテリーなんて燃えるから使えねぇんだ!」などと誹謗中傷が飛んできましたけど(笑)。
というわけで今日は2022年になった途端自社でEVを開発・販売することを表明したソニーについて取り上げてみます。
目次
「Vision-S01」と「Vision-S02」の二種類を発表したソニーのEV戦略とは?
さて今回発表したソニーのEV化計画ですが、EVを中心としたモビリティ会社の「Sony Mobilitiy Inc.」を立ち上げたことと、以前から発表されている「Vision-S」を「Vision-S01」と名前を変え新たにSUVタイプの「Vision-s02」を発表したのが主な内容です。
「Vision-s02」については新しく動画もアップしています。
既にコンセプトカーのレベルを超えて「いつでも市販化できるよ」というメッセージが伝わってくる動画です。
EVとしてのスペックはまだ明らかになっていませんが、車内はEVらしく車内空間を広く取ったレイアウト(ホイールベースは約3メートル)が実現されており、最大7人乗りも可能なEVです。
ボディサイズは「Vision-S01」が「4,895×1,900×1,450mm(全長×全幅×全高)」で、「Vision-S02」が「4,895×1,930×1,650mm(全長×全幅×全高)」です。サイズ的にはミッドサイズの今EVで最もホットなサイズです。
競合他社のモデルだと「テスラ・モデル3」「テスラ・モデルY」やフォルクスワーゲン「ID.4」、日産アリア、トヨタbz4Xなどと同等です。
人によっては「テスラ・モデルYにそっくり」と思うかもしれませんが、現在世界で最も売れているEVを真似することは何も悪いことではありません。
あえて言えば「Vision-S01」がモデル3、「Vision-S02」がモデルYを真似しているようにも見えます。
会社の頭の中はこのような感じでしょうか。
ソニー(2018)
「EV面白そうだけど、人命に関わるし怖いなぁ…とりあえず試作車作ってみよ」ソニー(2022)
「メガサプライヤーの言う通りに作った試作車、意外と良いな…マグナってとこに任せれば車体の設計から生産までしてもらえるし。意外と簡単じゃね?EVやります!!」https://t.co/fu1jkyZxJB— ぺんきちさん🐧 (@Penkichi_san) January 5, 2022
「何で今更コンセプトカーを商品化するんだ?」と思うかもしれませんが、コンセプトカー止まりだったEVを商品化するメリットがソニーにはあります。
ソニーがEVをやることにはメリットがたくさん
ちなみにソニーがわざわざ今からEV事業を専門の子会社を設けてまでやるメリットに以下のようなものが挙げられます
- ソニーの音響技術やコンテンツ(プレステ?)による車内空間の価値観の変化に対応できる
- そのために必須の自動運転技術(ソフトウェア)の開発力を生かせる
いきなり「音響技術」とか「コンテンツ(プレステ?)」などと書くと「車は人の命がかかってるんだ!」「車内でプレステなんてけしからん!」と怒る人はいるでしょうけど(笑)。
そういう方々には「自動運転」というもう一つの側面が抜けています。車内と上記のようなエンタメ空間にするためにはもちろん自動運転技術の進化が不可欠です。
このようなEVの車内空間を従来の車とは変えてしまうという試みは例えばヒュンダイ「IONIQ5」では車内空間のことを「リビング」と呼んでEVの長所である車内空間の広さを生かした自由なレイアウトが実現可能になっていたり、CMでもIONIQ5でキャンプに行けば家電製品が自由に使えるシーンなどを見せて従来の車とは違った「EVだからできること」「EVが実現する新しいライフスタイル」をアピールしています。
同じようにテスラも新型の「モデルS」「モデルX」ではゲームなどのエンタメを以前よりも充実させています。
ここから先は憶測になりますが、ソニーと同じように車内空間を充実させる豊富なコンテンツを持つAppleも現在開発中のEVを発売する際には将来の完全自動運転を見据えた、これまでの「車」の概念を変える「エンタメ空間」を楽しめるEVを出してくるのでは?と予想することができます。
現時点では自動運転レベル2(テスラのオートパイロットと同じ)対応で、将来的には自動運転レベル4への対応へ向けて準備しているとのことです。
日本にいるとわかりにくいですが世界の流れとしては「EV化は確定、問題は次の完全自動運転技術を見据えた車内空間の実現」の方向へ移っています。今になっても「本当にEVは普及するのか?」などという議論をやってるのは先進国では日本くらいです。
もちろんソニーにも黒歴史がありますけど
とソニーがEVに参入してくれたことを称賛していますが、もちろんソニーにも「黒歴史」があること位私だってわかっています。
今でこそスマホはiPhone、タブレットはiPad mini、PCはiMacとMacBookですが、10数年前まで私のPCはVAIOでしたから(笑)。
Mac買うまで長年VAIOだったのでよくわかります💦💦💦
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 5, 2022
10年以上前のPCのことをある程度覚えている方ならこのトーク理解できるかと思います。実際私がVAIOを愛用してた理由は「見た目」だけです。他に理由はありません(笑)。
当時はノートPCを持ち歩いてカフェなどでWiFiに接続して仕事をしてるなんて人ごく少数でしたから。しかもビジネスマンの大半はパナソニックの「レッツノート」だったので正直VAIO使ってると目立てました。
今でいう「スタバでMacをいじってる意識高い系」のようなことを10数年前に時代を先取りしてやってました。先取りし過ぎて誰も構ってくれませんでしたが(笑)。
他にも私がソニーの黒歴史に加担していた過去はあります。
多分一番の黒歴史は2000年頃にソニーが出したメモリースティックさせば音楽聴けるというウォークマン携帯買ったこと(笑)
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 5, 2022
これ覚えてる方どのくらいいるでしょうかね? 「SO502iWM」という携帯を2002年頃にソニーが発売したのですが、「初のウォークマン携帯」と言って発売した携帯はメモリースティックに録音した音楽を聴ける、しかも選曲等は「ジョグダイヤル」でというある意味ソニーの全盛期らしい一台でした。
この頃のソニーはやりたい放題でしたので、充電プラグもガラケーなので各社共通だった中でソニーだけ別のプラグだったりと破茶滅茶だったのですが。
自分は購入してませんが現在の「Xperia」からは想像もつかないようなガラパゴスでした(笑)。
そんな黒歴史があるので「まさか充電プラグをソニー専用にしないだろうな?」と疑いたくなるところですが、ソニー自体に当時の勢いがないのでおそらくあり得ないでしょう。
まぁそこも「ヨーロッパはCCS2、日本はCHAdeMO」とやってしまうと私が以前から指摘している低スペックなCHAdeMO充電器に普及の邪魔をされるという悲劇が待っている可能性はありますけど。。。
などと過去にやってきたことから生じる疑問はいくつかありますが、基本的には先日のトヨタ「bz4X」同様に日本のEVラインナップが多彩になることによるEV化の推進につながるものであると私は評価します。
「エンジン」の縛りがない門外漢のソニーの方がEVでは有望?
今回のソニーの発表に対する反応を見ていると、元からスマートフォンなどのガジェット好きの方々やテスラユーザーやファンのように「EV=走るロボット」というのが理解できる層には概ね歓迎されているようですが、既存の自動車メーカーなどの目線は冷ややかです。
「安全性ガー」「ディーラー網ガー」「車は甘くない」とできない理由ばかり挙げてソニーを評価しないヤフコメ(笑)。
ソニーがEVを販売する新会社ソニーモビリティを設立。「VISION-S」を買える日へ一歩前進 #ces2002(ギズモード・ジャパン)#Yahooニュースhttps://t.co/tGUVIE1kk0— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 5, 2022
私がヤフコメなどでリサーチ(?)した感じだと今回のソニーのEV事業への本格参入に対する批判は次の2点です。
- 車メーカーでもないくせにできるわけないだろ(技術面でも販売網などのアフターサービスも)
- 製造を委託するならなぜ日本メーカーに委託しないんだ?
まず「車メーカーでもないくせに」という批判で必ず出てくる「車作りのノウハウがない」ですが、これに関しては「ファブレス方式」、ノウハウのある会社に製造を委託すれば簡単に解決できます。
ソニーの場合は試作品の「Vision-S」からマグナシュタイヤーに製造を委託してますので特に問題なくクリアできるかと思います。
「販売網ガー」「アフターサービスガー」というのも既にテスラの例を見ての通りで、既にネット販売でEVを世界中に販売しています。世界の大都市にショールームはありますが、これはあくまでも商品であるEVを展示してる場所であり、ここでEVを購入する場所ではありません(納車は行ってますけど)。
それどころかEV化が進んでくると日本中・世界中に販売店を設けるという従来の販売方式(と修理対応)が高コスト体質の原因となり、むしろ自動車メーカーの経営を圧迫するのでは?というのは私が以前から指摘していることです。
電気自動車(BEV)が露呈させる販売網の再構築とは?【ディーラーもオワコン】
昨日は「バッテリー」という技術面で旧来の自動車メーカーが不利な立場に陥ることについて説明しましたが、今日は「販売網」という面から指摘したいと思います。旧来の「ディーラー」という販売・整備を行う拠点を前提としたビジネスモデルはガソリン車に比べて整備の頻度が減る電気自動車では高コストで不要なことをテスラが示唆してくれます。
ディーラーという「コスト」がかからないことがテスラの利益率30%という、既存の自動車メーカーでは考えられない収益率につながっています。
アフターサービスについても当然何もしないわけではなくテスラでは「モバイルサービス」があり、日本の各地に出張で修理を行っています。
車の故障のかなりの部分を占める「エンジンとその周辺」が存在しないことがディーラーを設けない販売スタイルを可能にしてますし、そもそもEVの場合は「OTAアップデート」と呼ばれるオンラインでのソフトウェアの更新で日々バージョンアップしていくことができるので、これによって不具合の解消を図ることも可能になっています。
つまり「車を買うためにディーラーへ行く」「車を修理・車検に出すためにディーラーを利用する」という機会を消滅させるのがEVの大きな長所です。
この「OTAアップデート」と「ディーラー」の関係については以前も解説してますので、よろしければご参照ください。
「テスラ方式」からは程遠いマツダ「MX-30」のアップデート【ディーラー行く意味あるの?】
「テスラ方式」のソフトウェアアップデートでMX-30のリコール対応を行うと表明したマツダですが、そのアップデートはオンラインではなくディーラー行くという旧態依然なもので、そこがテスラ方式なのかという感じです。片やLFPバッテリーの不具合が指摘されていたテスラはオンラインでサクッとアップデートしたのと対照的です。
次の「製造を委託するのがなぜ日本メーカーじゃないんだ?」という批判については元々の「Vision-S」製造の経緯を調べてから言えよというのが正直な感想です。
数年前にソニーは市販化予定までは考えてなかった試作品の「Vision-S」の製造を日本メーカーに依頼する考えで交渉していました。ですが製造してくれる日本メーカーがなくやむなくオーストリアのマグナシュタイナーに依頼したという流れがあります。
以前取り上げた話で言えば佐川急便が「自社の配送用EVを日本メーカーに頼んだものの交渉が不調で中国メーカーに」というのと一緒です。
佐川急便が商用車を中国製EVにする衝撃とは?【日産(三菱)以外は終了?】
佐川急便が配送用の軽規格のEVを日本のベンチャーが企画し、中国メーカーが生産したものを導入するという衝撃の発表がありました。しかもこの中国メーカーは「Wuling HongGuang Mini EV」を販売する「広西汽車集団」です。日本市場への中国メーカーの進出が始まったことに日本メーカーは危機感を持つ必要があります。
Appleが自社の製品を台湾のホンハイ(フォックスコン)に製造を委託する例などに見られるファブレス方式が自動車業界では一般的ではないのがソニーや佐川急便には逆風だったのもあるかもしれません。
とはいえ日本メーカーの中でもトヨタがマグナシュタイナーに「スープラ」の生産を委託してたりする例はありますので、全く理解できないということはないと思うのですが。
それよりは「異業種が車業界に入ってきて欲しくない」という意識の方が先に立ったかもしれません。
「自動車は大規模な工場と日本全国、世界各国に販売網を持つ自動車メーカーが独占すべきもの」という意識が抜けていないように思えます。
ですがそんなことを言っているとソニーの他にもAppleもEVを開発していることは以前から何度か記事にした通りで、他にも中国ではAppleがスマートフォンなどの製造を委託しているホンハイ(フォックスコン)やファーウェイなどもEVへの参入を表明しているのですが。
「エンジン」という自動車メーカーが独占的に開発していた技術が不要になるEV化の時代になっても意識を変えられない既存の自動車メーカーには苦しくなるだけだと思うのは私だけでしょうか?
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