「宏光MiniEV」改め「FreZe Nikrob EV」ヨーロッパ上陸の衝撃とは?【激安EV】

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こんばんは、@kojisaitojpです。私のブログでも何度かその脅威について説明したことのあるあの車がいよいよヨーロッパ市場に上陸です。

「Wuling Hongguang Mini EV」については過去に何度か取り上げてきましたが、中国市場で驚異の約45万円という激安の電気自動車です。

「これが世界の安全基準に対応して輸出しだすと大変なことになるぞ」というのが以前からの私の主張ですが、ラトビアのメーカーDartsモーターズが「Wuling Hongguang Mini EV(宏光MiniEV)」のプラットホームを使用してヨーロッパの安全基準を満たす自動車として発売予定で既に公道でテストも行なっています。

ヨーロッパの安全基準を満たすということは日本やアメリカの基準も満たすことになりますので世界中への輸出が可能になります。

今日はヨーロッパ市場向けに「Wuling Hongguang Mini EV(宏光MiniEV)」から「FreZe Nikrob EV」に改名したこの驚異の激安EVの詳細の解説とこれが世界に与える影響について考えてみます。

「Wuling Hongguang Mini EV(宏光MiniEV)」改め「FreZe Nikrob EV」の驚異のコスパ

「FreZe Nikrob EV」
まずは生産形態についての説明ですが、ラトビアの自動車メーカーであるDirtsモーターズと組んで「Wuling Hongguang Mini EV」のプラットホームを利用して「FreZe Nikrob EV」として生産するとのことで、既に公道でのテストも開始しているようです。

背景としてラトビア共和国について説明すると、バルト三国の真ん中に位置する、旧ソ連の小さな国です。

歴史あるアールヌーヴォーの建築群である【ユーゲントシュティール建築群】や、世界文化遺産に指定されている美しい旧市街が魅力で、EU加盟国の中では比較的簡単に永住権が取れる国と言われている点が特徴です。

EU加盟国でありながら比較的滞在許可証を申請しやすいと言われるラトビア共和国でラトビア永住権を手に入れると、シェンゲン協定加盟国のメリットも生かしてEU圏居住につながることで有名な国の一つです。

なのでEUの中で比較的参入しやすい国を中国側が選んだという可能性もあります。「Wuling Hongguang Mini EV」をそのまま売るとEUの安全基準に合格しませんので、EUの安全基準に改造する必要がありますので現地のパートナーが必要です。

「FreZe Nikrob EV」

今回選ばれた「Dirtsモーターズ」という会社はラトビアで長年装甲車などの軍用車などを製造するメーカーとして一部のミリタリーマニアには知られている会社です。

Dirtsモーターズの装甲車
Dirtsモーターズの装甲車

その「Dirtsモーターズ」が今回は電気自動車専門ブランドとして「Freze」という別会社を作って「Wuling Hongguang Mini EV」改め「FreZe Nikrob EV」として発売します。

当然EUの安全基準に適応するようにESPやエアバックなどの必要な装備は搭載されます。EUの安全基準に合格すれば日本やアメリカなど世界に輸出が可能になりますので、今後も中国メーカー進出の足掛かりとして「Freze」が利用される可能性もあります。

これに伴って「Wuling Hongguang Mini EV」の仕様が若干変わり「搭載バッテリー容量13kWh、航続距離200キロ(NEDC)、普通充電のみ」というスペックです。

中国仕様と比べてバッテリー容量が大きくなり、航続距離もアップしています。

「FreZe Nikrob EV」

またエアコンやオーディオも標準装備されるので中国仕様よりは価格は上がり9999ユーロ(約120万円)になります。

このサイズの車にどこまでEU各国の補助金が適用されるかは不明ですが、トータルで100万円を切る可能性は高いです。この価格ですと現在ヨーロッパで最安の「Dacia Spring Electric」と比べて2000ユーロ(約26万円)ほど安くなり、ヨーロッパの格安EV市場で競走できる価格です。

先ほども言ったようにヨーロッパの安全基準をクリアしてこの価格で発売するということは、日本市場などに投入する場合もこの水準に近い価格で販売できるということになります。

価格面でも日本の軽自動車よりも安い価格で勝負してくれば日本の軽自動車メーカーは一気に窮地に陥るかもしれません。

ヨーロッパ市場で売れるようになるということはいずれ日本市場に進出してくる可能性は大いにあります。

「カタログ上の航続距離」もEPAならアテになる?

「FreZe Nikrob EV」
航続距離は中国の従来の基準であるNEDCで200キロと言われています。

ちなみにNEDC基準というのは従来中国が用いてきた航続距離基準で、全くアテにならないものです。

これを「高速道路を時速100キロでクーラーをつけても達成可能な、実用使いにおいて最も信頼に値する(笑)」EPA基準に換算すると120〜150キロになります。

「ほら、中国の基準なんて…」と言う人もいるでしょうが、その中国すら最近は欧州WLTCモードを用いた航続距離を表示するように切り替わってきましたので以前よりはアテになるケースが増えてきました。

むしろ「JC08モード」という中国のNEDCより更にアテにならない基準を今も用いてカタログ上の航続距離だけはやたらと長く見せようとしている日本という国もあります(笑)。

燃費にしろEVの航続距離にしろ長年アテにならない数字を見せられている日本人の感覚だと「どうせEPAとかいうのもそこから更に距離が減るんだろ?」的に捉えがちですが、それは間違いです。

近年特にアメリカなどではカタログ値と実際の値にズレがある場合はすぐにバレて叩かれるようになっています。

下手をすると訴訟になってメーカー側が「虚偽表示だ」と負けるケースもあり得ますのでどこの自動車メーカーも実数にかなり近い値を出してくることが普通になっています。

私も過去に数回テスラ車や日産リーフをカーシェアで乗りましたがEPA基準はほとんど嘘をつかないなと実感しています。かなりアテになる数字だと思って差し支えありません。

もちろん「アクセルは常にベタ踏み、ヒーターもクーラーも風量MAXでガンガンかけないと気が済まない方はそのEPAで表示される航続距離が更に減りますけど(笑)。

どこかで機会があればこの「運転の仕方による航続距離の違い」も記事にしてみようと思います。

「Wuling Hongguang Mini EV」にも日産リーフにもバッテリーヒーターがある?

ノルウェーで充電中の日産リーフ
まぁ中国ブランドというと偏見があるでしょうから「本当に120〜150キロ走るのかよ?」と思う人もいるでしょう。

先に結論を言うと走ります。なぜならバッテリーヒーターが搭載されているからです。

ラトビアの気温
札幌市の気温

土地勘のない人には想像できないかもしれませんが、現在「FreZe Nikrob EV」を開発中のラトビアはヨーロッパでも北欧並みに寒いエリアです。

このように日本で言うと札幌並みに寒いですし、公道テスト中の画像を見ての通り雪も積もっています。

実は格安でありながら中国版の「Wuling Hongguang Mini EV(宏光MiniEV)」にもバッテリーヒーターが搭載されており(中国も内陸部はかなり寒いです)寒冷地でもバッテリーが十分の性能を発揮できるように工夫がされています。

寒冷地向けの電気自動車にはそれ相応の工夫がされており、以前も言いましたが「寒い地域だと電気自動車では…」というのは偏見に過ぎないのです。

なぜ日産リーフが今もノルウェーで売れるのか?

2021年3月ノルウェーの新車ランキング

こちらは後日取り上げる予定の「2021年3月のノルウェーの新車売り上げランキング」なのですが、既に新車売り上げの8割以上を電気自動車(BEV・PHEV)が占めるノルウェーにおいて今も日産リーフが3位と大健闘です。

なぜ今でもリーフがノルウェーでこのくらい売れるのだろうかと考えていたらこのようなご指摘をいただきました。

「BMS(バッテリーマネージメントシステム)」というと冷やす機能と温める機能がありますが、どうやら寒冷地向けの日産リーフにはバッテリーヒーター(日本市場向けには搭載されていないようですが)が搭載されており、十分なバッテリー性能を発揮できるように工夫されています。

日本でアンチEVの方々がよく言われる「電気自動車は寒さに弱いのでぇ」という理由は全く理由にならないということです。

まさか冬場ほとんど太陽が出ない北欧が北海道より寒いと思っている人はいませんよね(笑)。

ですのでこの「Wuling Hongguang Mini EV(宏光MiniEV)」改め「FreZe Nikrob EV」が日本市場に上陸する可能性も大いにあるということは忘れてはいけません。

「軽自動車サイズの安いEVガー」と言っている人々には元々私が推奨する三菱アイミーブの中古と同時にこの「FreZe Nikrob EV」もおすすめできる日が来るのも遠くはなさそうです。

「日常の通勤・買い物用」に割り切った用途ならベストの「Wuling Hongguang Mini EV(宏光MiniEV)」改め「FreZe Nikrob EV」

「FreZe Nikrob EV」
100万円前後で購入できる格安の電気自動車となるとこの車と先ほども言った「Dacia Spring Electric」くらいになるのですが、どちらの車種も急速充電はなし、カーナビもコスト増につながるのでスマホをナビ代わりにという割り切ったスペックです。

なお「Dacia Spring Electric」については以前紹介していますのでよろしければご参照ください。

「急速充電できないと困る」「何でナビないんだよ」と怒る人がいるかもしれませんが、それで車両価格が何十万上がるのとどちらがいいですか?という話になります。

「普通充電のみ」というのに引っ掛かりを感じる人もいるかもしれませんが、このバッテリー容量でこの航続距離であれば用途は日常の通勤や買い物に割り切って使うことになりますので、自宅で普通充電ができれば何も問題は起きません。

「急速充電」にこだわる人は多いかと思いますが、このバッテリー容量であれば6kWの普通充電でも2時間くらいで満充電できます。

実は同じことは「三菱アイミーブ」にも当てはまることで、普通充電でも短時間で充電できるのであればあえてバッテリーを痛めるリスクを冒して急速充電をする必要はありません。

航続距離に関しても120キロ程度走れるのであれば「三菱アイミーブ」と同等ですので、日常の通勤や買い物が主な用途で夜は自宅で普通充電という使い方が主な用途になる人であれば問題なく使えるスペックです。

日常の通勤・買い物という割り切った使用に限定してたまに遠出するときにはカーシェアやレンタカーを使用するというライフスタイルであれば、無理に高い車両価格を払って航続距離の長い車を買う必要はありません。

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