「サブスクのフリした実質リース」で投入する「フィアット500e」は終了?【トヨタに続きフィアットも】
こんばんは、@kojisaitojpです。私が期待していたEVの一つだったのですが、非常に残念な登場の仕方をするようです。
でも残念ながらこの「サブスク」もトヨタ同様に実質リースのとても使えるものではない。https://t.co/MxzDFkMBPP
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) April 5, 2022
このEV自体には以前からかなり期待しており、昨年ヨーロッパに旅行した際にも路上のパーキングスペースに置かれているカーシェア車両のフィアット500eを目撃したりして「国際免許用意してくれば借りれたのか…」と後悔した記憶があります。
同じ場所にはルノー「ZOE」のカーシェア車両も置かれていましたが、日本にはないコンパクトサイズのEVを気軽に借りれる環境が羨ましいと思いました。
と好印象だったフィアット500eがようやく日本市場への投入を表明したところですが、「サブスク」という問題含みの投入になると聞いて私の態度が変わりましたけど。
というわけで今日は日本市場に投入が表明された「フィアット500e」についての解説と「実質リースをサブスクと言いはる自動車業界の闇」について触れたいと思います。
目次
「サブスクという名の実質リース」で日本市場に「フィアット500e」が登場
フィアットでは昨年の早い段階から「日本市場に500eを投入する」ことを表明しており、私もブログで何度か取り上げてきました。
「フィアット500EV」が2021年に日本に上陸?【何とヨーロッパの次が日本】
昨年2020年にヨーロッパ市場に投入された「フィアット500EV」が2021年中に日本市場に投入されるとの発表がリリースされました。本国イタリアのあるヨーロッパの次に投入する市場が日本だということも驚きですが、価格も電気自動車の中では最もリーズナブルで、ファッション性も高く、人気の出るEVになる可能性を秘めています。
上記の記事と重なりますが、今回日本に入ってくるグレード「Icon」のスペックを再度引用すると、
- 搭載バッテリー容量42kWh
- 航続距離は321キロ(欧州WLTC)でEPAだと約260キロ
- 急速充電は「CCS→CHAdeMO」のアダプター経由で85kW以上に対応
この中では充電規格をアメリカなどで用いられている「CCS」で日本に投入し、CHAdeMO規格にはアダプターで対応するというテスラのような方式(テスラはテスラ独自の充電規格)なのは他のメーカーには見られない戦略です。
「将来的に日本のCHAdeMO規格が廃止されて日本の急速充電もCCSに切り替わる」と予想してるのでしょうか?
アダプターで対応という点に不安はありますが、本国イタリアや他のEU諸国同様の85kWの急速充電に対応可能のようです。
バッテリー容量が42kWhと比較的小さいのでこの位の速度が出れば30分の充電時間でも80%以上の充電残量に回復させることができます。
サイズが「3630mm×1685mm×1530mm」という日本の軽自動車にも近いサイズのEVは非常に取り回しが楽で、道幅の狭い東京都心の道路などでも問題なく使えます。
だからこそこれまで私は「フィアット500eは日本でも使いやすいEVになる」とヒョンデ(ヒュンダイ)「IONIQ5」とは違った方向から称賛してきました。あくまでも「きました(過去形)」に既になってますけど。
航続距離的には搭載バッテリー容量がほぼ同等の日産「リーフ」の40kWh位とイメージすれば良いかと思います。
40kWhの日産「リーフ」なども同様ですが、このような「実質200キロ台の航続距離」のEVは「航続距離が短すぎる」と叩かれることがなぜか多いですが、そもそも「毎日200キロ以上走るの?」と思ってしまいます。
先日の日産・三菱の軽EVについては「200キロ未満の航続距離なので自宅充電が必須」のようなことを言いましたが、フィアット500eの場合は「自宅充電がなくても運用できるけど、ないとそれなりに不便かも」位に私のニュアンスは変化します。
まぁEVは「自宅の駐車場にある普通充電器で充電する」のが本来のあり方ですから(スマホを自宅で充電するのと一緒)、EVを購入する際に一軒家なら迷わず設置、集合住宅や月極駐車場ならダメもとで交渉してみる位の行動を起こすことをおすすめしますけど。
しかし航続距離は別に問題がないとしても、「一般販売なし」で「サブスク」か「法人向けリースでのみ提供」というのは意外でした。
もっと正確に言うと「このやり方で本当に普及させることができるの?」と疑問を感じました。
「サブスクという名の実質リース」が常態化する自動車業界の「闇」
個人的には以前の記事でも紹介した最も廉価版の24kWhのバッテリーを搭載した「Action」が日本には入ってこないのが残念ですが、そんなことよりも「全車サブスクで提供」というのが仰天した部分です。
「フィアットよ、お前もトヨタと同類か…」とツッコミたくなるところです(笑)。
これに対して「でも毎月定額でガソリン代も要らない、税金も保険も込みなら別にいいじゃないの?」という声も聞こえます。
確かにそういう一面もあるでしょう。任意保険や税金、故障の際のメンテナンス費用まで定額の料金に含まれているという「サブスク」のやり方はわかりやすいですし、楽です。
しかし「最低契約期間3年又は5年」というのが痛いです。途中で手放したくなった際にはフィアットの場合は4ヶ月〜1年分の使用料、トヨタの場合は5ヶ月分の使用料を解約手数料として取られてしまいます。
しかも3年又は5年乗った後は強制的に手放すことになります。「残価設定ローン」のように残価部分を精算したり、再度ローンを組み直して自分の所有物にすることができません。
私は以前からこれを「サブスク」と言うことに疑問しか感じません。
ちなみにフィアット同様にトヨタが最初のEVである「bZ4X」を「KINTO」という自社のサブスクでのみの提供を発表したことは先日の記事で批判しました。
「bz4X」をサブスク(実質リース)でのみ提供のトヨタのお寒いEV計画とは?
トヨタが2022年発売予定の「bz4X」の情報を出してきましたが、年間6万台という非常に少ない台数、しかも日本市場には自社のサブスク「KINTO」でのみ提供と販売はしないことも明らかになっています。先日は日産のハンバーガーを批判して「日産オワコン」と言いましたが、トヨタもEVに関してはオワコン臭が漂ってきました。
よく誤解されますが私は別にアンチトヨタではないです。EVに後ろ向きな姿勢こそは繰り返し批判してますが、別にトヨタが嫌いだから批判してるわけではありません。
実質リースの使いにくい提供方法を「サブスク」と称することを批判したかったわけで、その理屈から行くと当然今回のフィアットもトヨタ同様に批判の対象となっているだけです。
これを「サブスク」などと自称されてしまうと「月額課金・定額制」であることは認めますが、自由に解約できず強制的に3-5年使わされるのでは「リースと何が違うの?」と思ってしまいます。
「ユーザーの利便性より自動車メーカーの儲けの方が重要なのかな?」と感じてしまう不親切なサービスです。
ボルボ「C40Recharge」の方式は本物のサブスク?
なんて言うと「車は月単位でサブスクなんかできないんだ!」と怒る人がいそうですが、「ボルボはやってますよ」の一言で終わりです。
ボルボ C40 Recharge サブスクリプションキャンペーン | ボルボ・カー・ジャパン
いよいよ、デビューを迎えるボルボの電気自動車C40 Recharge日本市場デビューを記念した特別なサブスクリプションを抽選で限定100台ご用意いたします。全く新しいフレキシブルなボルボのEVライフをご体感ください。
「既にサブスク分の割り当ては終了しており、現在は一般販売へ向けた試乗会を開催している」というのは先日私が試乗に行った記事でも説明しましたが、ボルボの「C40Recharge」の提供の仕方は我々がイメージする「サブスク」にかなり近いです。
ボルボ「C40Recharge」の試乗会に行ってきた話【IONIQ5やアリアとも互角以上】
ボルボが最新のEV「C40Recharge」の試乗会を開催したので行ってきました。日本市場への投入が発表されてから1年以上経ってようやく実物に触れることができましたが、駐車場に困らない妥当なサイズ、以前最高レベルと評価したヒョンデ「IONIQ5」とも同等レベルの優秀な回生ブレーキなど噂通りのクオリティの高さです。
保険や税金、アフターサービスについては当然コミコミの設定になっており、解約についても「サブスクリプション期間は最長で36か月となります。ご解約をご希望の場合には、解約月の3ヶ月前までにお申し出頂く」と書かれており、終了3ヶ月前に申し出れば解約手数料は発生しません。
登録や名義変更など他の物品のサービスより手間がかかることを考慮しても「3ヶ月前に申し出ればいつでも解約OK」であれば我々がイメージする「サブスク」にかなり近いサービスになります。
やってできないことはないのです。単純にやろうとしないだけ、「途中で解約されると儲からない、手続きが煩雑だからやろうとしない」だけです。
「ボルボ以外の自動車メーカーがやろうとしないなら俺がやってやろうか?」と言いたくなる場面です。
「誰も思い付かない斬新なビジネス」ではありませんが、これまで自動車業界が提供してるサービスより「ほんのちょっとマシなもの」を提供するだけでも面白いと思うのは私だけでしょうか?
本来はEVと「サブスク」「カーシェア」の相性はいいのに…
と今日はフィアット500eが「実質リースと変わらないサブスク」で日本市場に投入されることを批判的に論じてきましたが、実は私自身は「所有という形態自体がもう古い」という観点からカーシェアやサブスクのようなサービスには肯定的です。
「じゃあなぜ批判するんだ」と言われそうですが、それは単純に「最低契約期間3年から5年」という長すぎる縛りが発生することと「途中解約の際には高額の解約手数料が発生する」からです。
逆に言えばここさえ変化してくれれば「ガソリン車・ディーゼル車よりもEVの方がカーシェアやサブスクに向いている」とさえ思っています。
カーシェアやサブスクを肯定する理由はいくつかありますが、
- EVは「エンジン」のような経年劣化する部分が少ない(メンテナンスが楽)
- ソフトウェアアップデートにより常に最新の状態をキープ
- 「EVは不安」という人がお試し感覚で使ってEVを知るきっかけになる
例えばエンジン車であれば「10万キロ走った」→「目に見える症状はなくてもエンジンが劣化してる」→「定期的な整備・点検が必須」となります。
EVの場合は「メンテナンス費用は格安」であることは以前も解説しましたが、「メンテナンス不要」とまでは行かなくてもエンジンほどマメなメンテナンスが必要ではないEVはカーシェアやサブスクで提供するのに向いている車両であると言えます。
なんて言うとお約束のように「バッテリー劣化ガー」と言ってくる人がいますが、
「またかよ」と言われるくらい引用してますが、これが日産「リーフ」の年度別のバッテリー消耗具合です。
HansjörgGemmingen氏は、最も古いバージョンのテスラモデルS P85で走行距離100万マイル(160万km)を達成しようとしています!
彼はこれまでのところテスラ車で世界記録を保持しています。東京から大阪まで片道およそ500kmありますが、これを毎日休みなく10年間走り続ければ達成できる距離です。 pic.twitter.com/lcPnGDOATi
— がす | テスラおじさん (@Gusfrin92486024) March 29, 2022
ここまで行くと「達人」を超えて「変人」の域に入りますが、テスラ「モデルS」の最も古いバージョンを100万マイルまで乗っている人もいます。
ガソリン車をこの距離まで乗ったら「どれだけメンテナンス費用かかるんだ?」と考えるだけで恐ろしいですよね。
実はEVこそが「走行距離に関係なし、不特定多数が乗っても劣化しない」ということです。「エンジン」という走れば走るほど燃料やオイルを燃やした際のカーボンが付着するなどして劣化する仕組みとの大きな違いです。
「劣化しない」というのは「ソフトウェア(ファームウェア)アップデート」にも当てはまります。
常に最新のソフトウェアで制御されたEVは年式が古くなろうとも最新のEVに近い性能を発揮し続けることができます。一番わかりやすい例がテスラ車です。
だからこそ「AndroidOSが8.1のままでアップデートをした形跡もないホンダe」は先日カーシェアで借りて乗った際に厳しく批判しました。
「ホンダe」がなぜ使えないかを運転して考えてみた話【コンパクトEVのおすすめは?】
EVを批判する記事で取り上げられる例が日産「リーフ」と「ホンダe」に偏ってるのはなぜだろうとふと思ったので約1年振りに「ホンダe」をカーシェアで借りてみて「どこがマズいのか?」「なぜヨーロッパで全く売れないのか?」について真面目に考えてみました。問題は航続距離などの動力性能ではなくソフトウェアにありそうな気がします。
車の性能面でも進歩がないことになりますが、そもそも時代遅れのOSを使うことはセキュリティという面でもハイリスクです。
2022年現在でWindows7のPC渡されたら困りますよね? 同じことです。「スマホやPCと車は違うんだ!」というわけにはいきません。
EVでもEVとしてのメリットを生かす気のない車両には厳しい姿勢で臨みます。
なんて自動車業界を批判していると「じゃあ俺がEVを専門に取り扱う会社でも立ち上げるしかないか?」と思ったりもします。
元々アイディアは浮かんでますが、EVの仕入だけでもかなりの資金が必要になるので前に進んでませんが。具体的には、
- 誰でも気軽にEVに触れられるように短期の「カーシェア」と月単位の「サブスク」を併用
- 気に入ればその車両を中古車として購入も可能
- あるいは希望に合う中古車又は新車を仕入れて販売
「EVコーディネーター」と肩書きをつけると大袈裟ですが、顧客の生活環境(家族構成や収入、主な使用用途など)やドライバー本人の性格(心配性なら航続距離の長いEVやPHEVも提案)をよく聞いた上で最適なEVを提案する、他にも一軒家であれば普通充電器の設置サービスや集合住宅であれば管理組合やオーナーと充電器を設置できるように交渉するなど「EVがある生活」をトータルにコーディネイトするところまでカバーします。
なんて「自動車メーカー・中古車店・レンタカー屋」の隙間をつくような「こんなサービスがあったらいいな」というビジネスを構想してたりします。
「お前のように自動車業界の経験もない奴がやっても絶対失敗する」などと野次が飛んできそうですが(笑)。
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