e-MobilityPowerの新型充電器がオワコン?【これが専門家・プロのやること?】
こんばんは、@kojisaitojpです。ヨーロッパ旅行の後に(もちろん自主隔離明け)Perfumeのライブで大阪と広島に行ったので飛行機やホテルの記事を書きたいのですが、割り込みでこのネタを取り上げないわけにはいきません。
作ってる人のマインドが加齢臭だとデザインは現代風に誤魔化せても中身は誤魔化せないという典型例。 pic.twitter.com/nPwz708BQC
— saito koji@ヨーロッパからの隔離も終了 (@kojisaitojp) December 17, 2021
首都高の大黒PAにe-MobilityPowerの新しい充電器が設置されたので広島からの帰りに羽田空港から直接向かってみたのですが、行く前からツイッターには多くのEVユーザーから「速度が出ない」「接続できない」などの不満が続出していました。
私が行った時には誰も充電してる人がいなかったので実際に速度を見せてもらうことはできませんでしたが、「セッかく6台同時に充電できるというのは大きな進歩だったのに」という印象です。
そこで今日はe-MobilityPowerが大黒PAに設置した急速充電器のオワコン具合と日本でEVを普及させるために必要な充電インフラについて考えてみます。
目次
欠陥だらけの大黒PAのe-MobilityPower充電器
まずは実際に大黒PAの充電器を使ってみたオーナーの声を引用します。
大黒PAの新しい急速充電器、事務所のモデルXでテスト。
やはりモデル3での報告と同様10個のコンバーターのうち1個しか割り当てられないようで、15kW止まり。
自宅のウォールコネクタ(200V 72A 14.4kW)とほぼ同じ出力で、全く急速充電器としての役割を果たしていません😓 pic.twitter.com/OH8LqhH56f
— 🌸八重 さくら🌸 (@yaesakura2019) December 19, 2021
テスラ・モデルXのオーナーですが、速度が15kWと「自宅のウォールコネクター(普通充電器)とほぼ同じ出力」と、とても急速充電器のスペックではないことを指摘しています。
20分やって6kwとか悲しくなる pic.twitter.com/wvLJnnHY7X
— sono106 (@sono106) December 16, 2021
こちらはテスラ・モデル3のオーナーですが「20分で6kWh」ということは60分で18kWh(もう少し速度は落ちるでしょうけど)、速度は18kWということになります。
15kW前後の充電器は世界基準で見ると「普通充電器」の範囲に入る低スペックです。
こちらは私がドイツ・ヴォルフスブルクのアウトシュタットで見てきた「Ionity」というヨーロッパの急速充電器ですが最大で350kWと桁の違う充電性能を誇ります。
e-MobilityPowerの新型充電器は「6台トータルで200kW、1台のMAX速度は90kW」と元々の性能から問題ありなのですが、その本来のスペックすら発揮できない有様です。
「まぁテスラは外車なんだから」と日本のEVじゃないことを言い訳にする人もいるでしょうが、国産のEVでもこの有様です。
大黒来たけどオイオイオイ
電話したけどすぐには復旧できないとか言われたし pic.twitter.com/9ClgFD9VDm— なわい (@nawaEV) December 16, 2021
アイミーブのオーナーは充電不能だったようです。他にもホンダeで充電できなかったという例も上がってきており、「もしかして日産リーフ以外のEVテストしてないの?」と思われる惨状です。
e-MobilityPowerの側からも既に不具合のリリースが出されています。
【お詫び】 首都高速・大黒パーキングエリア新型充電器における充電不具合について
平素よりe-Mobility Powerの充電サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。 12月16 […]
ですがテスラ車も「モデル3」の不具合は上がってますが、上記のツイートにあるように「モデルX」でも速度が全く出ない状態ですからこのリストに加えられることでしょう。
e-MobilityPowerよりオーナーが先に気付くというのは異常事態だと思いませんか?
事前に日本国内で販売されているEVを全部テストしないままリリースしたの?と思ってしまいますよね。
「EVユーザーナメてるの?」と罵声を浴びせられても文句を言えないe-MobilityPowerの失態です。
そもそものe-MobilityPowerの新型充電器のスペックから問題
そもそもe-MobilityPowerの新型充電器は当初のスペックから問題だらけだったのは以前の記事でも解説してますので、ご参照いただければと思います。
e-mobilityPowerの残念な充電インフラ設置計画が判明【これじゃ日本ではテスラ一択?】
電気自動車(BEV)で不可欠なのが公共の充電設備の設置なのですが、日本でこれを担う「e-mobilityPower」が急速充電器を高速道路上に設置するプランを出しましたが、残念な計画で、テスラのスーパーチャージャーと比較するとかなり問題があります。ワクチンでも見られる兵站や補給路の確保が下手な日本の欠点が露呈してます。
「終わってる充電器」であることはこの画像にまとまっています。
- 最大200kWと言っても1台辺りの速度はMax90kW
- 6台でシェアすると1台辺り25kW〜50kWに落ちる
- 仮に1台で充電しても90kW出るのは最初の15分だけ
当初予定されているスペックから終わっているのですが、このカタログ値に遠く及ばない充電速度だったり、そもそも不具合が出て充電できないEVが続出しているのですから更に終わってますが。
ディーラーに急速充電器よりも経路充電の充実がキモ
e-MobilityPowerの充電器設置計画に疑問を感じてるからなのか、日産やトヨタが新しい充電器設置計画を打ち出していますが、これもピントのズレた計画になっているようです。
日産ディーラーの急速充電器更新。
EVネイティブ氏の情報通り90kW1〜2台になるか、はたまた予想を裏切って150kW1台になるかで今後のアリアの売れ行きが大きく左右されそうな予感🙄
というか軒並み各社130〜150kW級の充電出力に対応しておきながら日本国内ではMax90kWしか享受出来ないって嫌がらせだ?— takuya.82@日本人の島国根性に闇堕ち (@takuya8212) December 16, 2021
多くの日産ディーラーが充電器設置の補助金を申請していたことから「日産もアリアの発売に向けて充電器をハイスペックなものに更新か?」と噂になっており、実際入れ替え中のディーラーも多いのですが最大で90kWと来年以降発売される「アリア」の最大充電出力130kWにすら対応できない充電器を設置しています。
なんて話をすると「いや、日本のCHAdeMOで90kW以上の高速充電するための水冷ケーブルがないから」とか「ハイスペックにすると電力契約が高圧になって高額になるから」などとできない理由がたくさん飛んでくることはわかってますけど。
日本のCHAdeMO規格が日本のEV化推進の障害になっていることは、以前プジョー・e-2008を取り上げた記事で触れてますのでご参照いただければと思います。
日本のEV化の阻害要因はハイブリッド車ではなくチャデモ?【プジョーe-2008を見て感じたこと】
プジョー「e-2008」のCM曲にPerfumeの曲が採用されていることから個人的に「e-2008もいいな」と思ったのですが、落ち着いて考えると「チャデモ」という日本のガラパゴスな充電規格でかなり不便な運用を強いられる可能性が高く購入を悩んでしまいます。実はこの充電インフラの貧しさがEVが普及しない原因かもしれません。
後日私のブログでも取り上げますが、先週トヨタが今後のEV化計画を発表しましたが、この中で「トヨタの全ディーラーに急速充電器を設置し、他社のEVにも開放する」という発表を行っています。
トヨタが電気自動車に本気宣言〜2030年に350万台のBEV販売を目標 – EVsmartブログ
2021年12月14日、トヨタ自動車がバッテリーEV戦略について発表し、2030年までに世界の販売台数を年間350万台にする方針を明らかにした。レクサスでは2035年までにEVを100%にすることを目指す。
トヨタのEV化計画についてはいくつか疑問を感じる点があるので後日取り上げますが、充電インフラに関しても「ディーラーに設置」というのはピントがずれた計画です。
- 原則は自宅で普通充電するのがEV
- 長距離移動の際に高速道路のSAPAで急速充電をするのが「経路充電」
- ディーラーの充電器は自宅で充電できないユーザー向けの補助的なもの
これがEVの充電インフラの基本です。
私も以前取り上げましたが「自宅と目的地で普通充電器を設置」が原則で、「急速充電は長距離移動する際の経路充電」というのが基本スタイルです。
「日本のEV充電インフラが貧弱」なのはどこを改善すべきなのか?【目的地充電】
EVの普及にあたって「日本は充電インフラが弱いので」と批判されることが多いですが、具体的にどの部分が弱くてどの部分を改善すればユーザーが快適にEVを使える環境になるのでしょうか?今回は私が実際に長距離移動をしてホテルでの目的地充電や道の駅の急速充電器を見て感じたことから今後の日本の充電インフラの課題について考えてみます。
ですので日産やトヨタの計画も高速道路のICの近くのディーラーに急速充電器をガンガン設置するのであればまだ理解できるものです。
ですが全てのディーラーに設置というのもピントがズレています。
もちろん「自宅で充電できないユーザーにインフラを提供する」と言い分があるのはわかりますが、「そこ力入れるポイントなの?」と思ってしまいます。
むしろ「ディーラーで充電できるから別にいいや」と簡単な工事で普通充電器を設置できる一軒家や集合住宅の駐車場への充電器設置の妨げになるのでは?という嫌な予感すらします。
「専門家・プロが言うんだから間違いない」が大間違いの典型例がe-MobilityPower
まぁ私のところにもよく「トヨタのような一流企業がそんなことも考えてないと思ってるのか!」とか「トヨタの社長になられたような優秀な人が間違えるわけないんだ!」という批判が飛んできます。
一言で返してやると「一流企業だから間違えないとなぜ言えるの?」「トヨタの社長になった=絶対に間違えない位優秀となぜ断言できるのか?」に尽きると思いますが。
この前のトヨタを批判する記事を書いた時にはこのようなクソコメントが大量にきましたが、今日のようにe-MobilityPowerを批判する記事を書いても同様でしょう。
e-MobilityPowerは東京電力と中部電力が主要な出資者(トヨタ・日産・ホンダ・三菱も少しだけ出資)ですので役員はみんないわゆる「一流企業」の出身者ばかりですが。
もちろん「専門家・プロなんだからきちんと考えた上でやってないんだ!」と擁護する声もあるでしょう。
- 90kW以上の急速充電に対応する水冷ケーブルがない
- 電力契約が高圧で非常に高額になるからコスパが悪い
このように「できない理由」であればいくらでも並べることができます。
ですが実際にテスラは日本国内においてもスーパーチャージャーという150kW〜250kWの急速充電が可能な充電ステーションをどんどん設置しています。
今年は「1ヶ月1箇所以上のペース」でSCを開設したテスラさん⚡️
①赤坂
②湘南
③函館
④松戸
⑤伊賀
⑥代官山
⑦熊本
⑧天王寺
⑨大津
⑩新潟
⑪鳥取
⑫日比谷
⑬筑波
⑭高知
⑮郡山 ← New!🏅
↑ここまで2021年↓ここから2022年初頭⚡️
①山形
②福井
③富山
④札幌
⑤金沢 pic.twitter.com/TVxSGwHOr9— Model3 Life! (@Model3Life) December 18, 2021
2021年だけでこれだけのスーパーチャージャーを設置しています。日本で設置するのが不可能という言い訳は通用しないと思います。
他にもポルシェが自社のディーラーに90kW以上の急速充電器を設置しています。
ポルシェセンター金沢の急速充電器
サービス開始してます
右側のコネクタは現状90kw
150kwは左側に追加予定だそうです
これとは別に普通充電8kwが2機設置されてました
全てポルシェオーナー専用だそうです pic.twitter.com/BsTLrVhJNa— masayan (@masayan_kazu) November 21, 2021
ポルシェの場合もテスラ同様に自社のオーナー専用の充電器のようですが150kWまで対応するようです。
テスラの充電プラグはテスラ独自のものですが、ポルシェは日本市場にはCHAdeMO規格で入っています。
「CHAdeMOだと水冷ケーブルがないのでぇ」というできない理由を自社で開発することで返上しようとしています。
片やe-MobilityPowerはとても急速充電器とは言えない低スペックな充電器を「10年先を見据えた先行投資」とドヤ顔で設置している状況です。
「自動車の専門家・プロが素人でも思いつくことを検討してないとでも思ってるのか?」「検討した上で無理だと判断したに決まってるだろ!」という批判もありましたが、検討した結果がこの惨状でしょうか?
テスラ車のみならずアイミーブ・ホンダeのような国産のEVが充電できるかどうかのテストすらやっていなかった会社をかばうことはできないと思います。
私からすると「一流企業」「社長」「専門家」「プロ」だから全面的に正しいとなぜ思えるのか?と逆に聞きたくなるところですが。
人気記事電気自動車専門のカーシェア・サブスク・EV販売店立ち上げのためのクラウドファンディングを始めます!