「世界がEV化」の「世界」にはヨーロッパ・中国・アメリカ全部含まれる?【ノルウェーだけじゃない】
こんばんは、@kojisaitojpです。EV好きでもアンチEVでも「ノルウェー」というと単語にはビクッと反応するところですが、私はもう一つの「アイスランド」という単語が気になりました。
ノルウェーじゃなくても日本同様に地熱が豊富なアイスランドもEV化率50%だというのに。
ノルウェーは75%が電動車 欧州のEV急増は一時的な現象か https://t.co/EghjMLKXdr— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 24, 2021
ノルウェーが世界で最もEV先進国であることは周知の事実なのですが、それを熱く語ったどころで「ノルウェーなんて水力発電で電力をほとんど賄えるんだから日本とは違う」とか「日本は再生可能エネルギーに向いてない国なのでEVにも向いてない」などとアンチから叩かれるEV好きの方々を見かけることも多いです。
ですが「アイスランド」は冬は雪に埋もれるほど寒い国(日本よりはるかに高緯度)でありながらEV化率50%を達成しています。その理由として挙げられるのが主なエネルギー源が「地熱」であるという点です。
実はアイスランドは日本同様に火山や温泉が多く、「地熱発電」に向いた国です。
「日本では原発より地熱発電が向いている」と先日の記事でも言いましたが、日本と同じような環境でEV化に成功しつつあるので「できない理由」にはならないと思うところです。
「できない理由」を探すより「どうすればできるのか?」を考えるべき?【典型例が地熱発電】
「できない理由」を並べる姿勢を批判していますが、EVと並ぶ例として「再生可能エネルギー」があります。特に火山が多い日本には世界3位と言われる地熱資源が眠っていると言われていますが、「温泉が枯れる」「国立公園は開発不可」のように「できない理由」に阻まれて「どうすればできるのか?」を考える方向に進んでいないのが問題です。
日本の文脈だけを見ていると「世界がEVに向いている」と主張しても「え?何言ってるの?」と言われることも多いですが、今日は今のアイスランドやノルウェーを含むヨーロッパの現状と、それに加えて中国やアメリカの現状も見ながら
目次
アウディも2026年からエンジンを廃止するEV化最先端のヨーロッパ
ヨーロッパがEV化に恐ろしい速度で突き進んでいるのは多くの人に理解されているとは思いますが、その流れにアウディも具体的な日程を明らかにしてきました。
Audi Will Introduce No New ICE Vehicles After 2026
Volkswagen’s luxury arm will only keep selling the models it already offers after that date, but those should be phased out in another 5 years.
以前から「2030年以降は新規でガソリン車・ディーゼル車を販売しない」とは言ってましたが、それがいつからなのかははっきり明言してませんでした。
そして先日出してきたリミットが「2026年以降は新規でガソリン車・ディーゼル車を販売しない」というメッセージです。
当初は2030年頃と言われていたので予想以上に早いペースです。先日私のブログでも解説しましたが、アウディより早いのはイギリスのジャガーくらいです。
ジャガーが2025年に全車電気自動車化する衝撃とは?【XJブランド消滅?】
2030年からエンジンを搭載した車の販売を禁止するイギリスに本拠地を持つジャガーが2025年以降は全車電気自動車化すると発表をしました。ヨーロッパの状況を考えるとむしろ当然という判断なのですが、長年君臨してきた「XJ」の名前を捨てる発表もされました。ここに電気自動車に勝負をかけるジャガー社の決意の強さを感じます。
まぁ日本のネット上(ヤフコメや5ch)などでは、「どうせEVに失敗してエンジンに帰ってくる」だとか「高級ブランドはEV化してフォルクスワーゲンとかシュコダとか格安ブランドがエンジンやるんだろう」などと都合良く解釈している人が多いです。
ですがフォルクスワーゲンについては先日の「PowerDay」について述べた記事で、チェコの自動車メーカーシュコダについは「オランダでシュコダのEVエンヤックが爆売れ」という記事で取り上げたようにフォルクスワーゲングループ全体でEV化している事実を無視してはいけません。
フォルクスワーゲン(VW)の驚異の電動化プランを検証【日本もトヨタもオワコン?】
フォルクスワーゲングループが「Power Day」において、大規模なバッテリー生産工場の設立とそこで生産される「Unified Cell」と呼ばれる新しいバッテリー技術、充電スポットの設置、V2Xを含めた再生可能エネルギーを有効に活用するための蓄電池として電気自動車(BEV)の活用など日本メーカーとは別次元の計画です。
シュコダ(Skoda)「エンヤック」から感じる「EVのコモディティ化」とは?【兄弟車VW「ID.4」のGTXも紹介】
「意外」というと失礼かもしれませんがオランダの2021年4月の新車販売で電動化率が20%を超えているのも驚異でしたがランキング2位にチェコの「シュコダ(Skoda)」の「Enyaq(エンヤック)」が入りました。フォルクスワーゲンと共通のEV専用プラットフォームを使い「ID.4」とほぼ同等のスペックに仕上がっています。
EVが高級車中心でというのはもう10年近く前のテスラが「ロードスター(初代)」や「モデルS(初代)」を発売していた頃の話で合って、既にフォルクスワーゲンの「ID.3」やプジョー「e-208」、フィアット「500e」などに見られるように小型車や大衆車に中心が移ってきています。
EVや再エネに関する議論を見ていると「この10年でどのくらい進化したのかを全く見てないな」と思うくらい情報がアップデートされていない人が日本では多く見られて呆れることが多いのが思考停止した日本の痛いところかもしれません。
中国もハイブリッドではなく「新エネルギー自動車(NEV)」でEV化へ
同じように思考停止した日本人(要はアンチEV)がよく主張することとして「世界最大のマーケットである中国ではハイブリッド車を認めている」というのをなぜか錦の御旗のようにドヤ顔で主張してくるのも特徴なのですが、これも大きな勘違いです。
中国ではEVのことをNEV(新エネルギー自動車)と呼んでいますが、新エネルギー自動車は中国独自の定義で、電気自動車[EV]、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。
通常のハイブリッド車[HV]は含まれてません。
今の中国のルールですと、NEV以外のモデル、中国で伝統能源車(従来からの動力を搭載したクルマという意味)と呼ばれるカテゴリーについては、2025年に全新車販売台数での平均燃費目標を5.6ℓ/100km(17.86km/ℓ)、2030年には4.8ℓ/100km(20.83km/ℓ)、2035年には4ℓ/100km(25km/ℓ)と厳しい燃費制限を設けています。
燃費制限が未達成の場合にはペナルティになるのですが、このペナルティの対象にハイブリッド車が入ってます。
通常の伝統能源車(ガソリン車。ディーゼル車)の生産では1台ごとに「マイナス1」というペナルティクレジットが与えられますが、低燃費車(ハイブリッド)だとこれが0.5倍、つまり0.5台=2分の2台分のペナルティとして計算されます。
ペナルティが半分になると言えば聞こえはいいですが、ペナルティ(つまり違反)であることは変わりません。
予定では2022年は低燃費車1台が伝統能源車0.3台に計算され、さらに2023年には0.2台になる。0.2台ということは、低燃費車を5台作ってやっと伝統能源車生産のペナルティが「1」になります。
わかりにくいので定義を整理しますが、
- 伝統能源車→従来の内燃機関車(ガソリン車・ディーゼル車)
- 低燃費車→燃費基準をクリアする内燃機関車(ハイブリッドはここに入る)
- NEV(新電源車)→EV、PHEV、FCVなど
ペナルティのポイントがマイナスであることに変わりはなく(つまりハイブリッド車以上にEVを生産する義務は残る)、ハイブリッド車の減点が少ないことを挙げて「ほら、中国はハイブリッド車を歓迎している」と断定してしまうのは間違いでしょう。
減点されないEVやPHEVより0.5点でも減点されるハイブリッドを中国が国として歓迎してるなどど言い出すともはや意味不明、「支離滅裂な思考・発言」になります。
こういうことをわかっていないのか、わかっていて無視しているのかはわかりませんが、「中国はハイブリッドを歓迎している」的に大袈裟に語る自動車ジャーナリストが何人もいて呆れるところです。
中国「2035年にエンジン車禁止」の本当の内容「中国はエンジンを使うハイブリッド車については“熱烈歓迎”なのだ」|Motor-Fan[モーターファン]
去る10月27日、中国政府が「2035年をめどに新車販売のすべてを環境対応車にする方向で検討する」と発表した。これを受けて日本では「フランスやイギリスに続いて中国もエンジン車禁止」と報道された。しかし、中国の発表は「検討する」であり、決定ではない。さらに中国は、内燃機関エンジンを使うハイブリッド車については「熱烈歓迎」なのである。
TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)
「低燃費車(ハイブリッド車など)の燃費基準を達成不可能なレベルまで引き上げたらハイブリッドすら売れなくなる」ということがわかっていないようです。
普段中国のことをボロクソに言う方々がなぜかこの件に関しては批判しないのが私には謎です。
あの中国のことですから「トヨタのハイブリッドの技術を無償提供してもらって自国メーカーがハイブリッド車も製造できるようになったらあらゆる理由をつけて日本メーカーのハイブリッド車が売れないように仕掛けてくるのでは?」と思えないのでしょうか?
普段中国のことを激しく攻撃しているマスコミなどがハイブリッド車の話になると手のひらを返したように「中国政府は現実的な判断をしている」と持ち上げるのも意味不明です。
バイデン政権の「インフラ政策」でアメリカもEV化へ
そして世界の主要国の中では最も「脱炭素」に後ろ向きだったトランプ政権からバイデン政権に代わったことにより、アメリカもいよいよ本格的にEV化・再生可能エネルギー化を進める準備が整ってきました。
いよいよアメリカが動くぞ。 https://t.co/sywJhiONjV
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 24, 2021
以前から言われていた「連邦政府の公用車のEV化」や「全米50万箇所に充電ステーションを設置」など、バイデン氏が大統領選挙の時から唱えている公約を含むインフラ計画が、ようやく民主党と共和党の間で合意に達しました。
議会の通過はまだですが、着々と公約であるEV化の実現に向けて動いています。
となると「ヨーロッパ・中国・アメリカ」がEV化の方向に走り出したことになります。いくら「EVよりハイブリッドの方が優秀だ」と熱く主張しても世界の主要マーケットを抑えられて日本以外のどこで売るつもりなの?と思うところです。
私の場合はいたずらに「日本オワコン」というの煽るのではなく、「現実問題としてハイブリッドを売れる国が日本以外なくなるぞ」「日本以外の国で車を売れなくなったら日本経済自体が詰んでしまうよ」というのを警告しているわけですが、これを主張すると「日本の悪口を言うな」とDMなどで叩かれることも時々あります。
私のような話を聞きたくないのであれば、一部の御用ジャーナリストの記事や地上波のテレビでも見て「日本すげぇ」と勝手に興奮してれば良いと思うのですが、わざわざ私や他のEVを賞賛する記事や動画を発信している人を攻撃してくるのも意味不明です。
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