ボルボのEVトラックから感じるトラック・商用車もEV化の流れとは?【中国勢に劣勢の日本メーカー】
こんばんは、@kojisaitojpです。昨日はマツダディーラーにMX-30の試乗に行った記事が割り込みましたが、ヨーロッパでは今週このような動きもありました。
どっかの国で水素水素言ってる間にEVトラックが課題を乗り越えそうな勢い。
Electric Trucks: Volvo Increases Range 85%, Kenworth Triples Orders https://t.co/11FJhIZuqB @cleantechnicaより— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 17, 2022
ボルボがEVトラックの第二世代を発表し、これを2022年の第二四半期(4-6月)には生産を開始する予定とのことです。
以前の記事で私は「大型トラックに関してはBEVよりもFCV(水素燃料電池)の方が可能性があるのでは?」と予想したことがありますが、それも覆されるくらいEVの進化のスピードが早いようです。
「できない理由」ではなく「EVトラックを可能にする方法」を考えるメルセデスとテスラの計画とは?
メルセデスが電動トラックの計画として長距離用にはBEVとFCVの2種類の生産計画を出してきました。バッテリーと充電時間的に難しいと言われる長距離のEVトラックにはFCVも用意してきましたが、片やテスラは「Semi」に新型バッテリー4680セルとメガチャージャーを用意してEVで勝負します。両社の試みをそれぞれ紹介します。
以前取り上げた際はメルセデスがトラックに関してはEVとFCVの両方を用意するという計画でしたが、今回のボルボはEVのみに特化してその性能を向上させてきました。
そこで今日はボルボの進化したEVトラックである「VNRエレクトリック」について紹介し、大型車の場合に必ず言われる「充電はどうするんだ?」という問題についても考えてみたいと思います。
目次
ボルボの第二世代EVトラックが大幅に進化
ボルボは2020年からEVトラックを発売していましたが、今回ボルボが発表した「Volvo VNR Electric」の進化版ではまず航続距離がこれまでの240キロから440キロと1.8倍に伸びています。
これまでのEVトラックの設計を変更することでバッテリーの搭載容量を増やしたことと、「6battery Package」という新たなオプションを設けることにより、最大搭載バッテリー容量565kWhで275マイル(440キロ)まで航続距離を伸ばすことに成功しています。
既にヨーロッパや北米ではEVトラックは先日のメルセデス同様にボルボのものも広く普及しており、このようなゴミ収集車など幅広い用途で使われています。
今回発表したボルボの新型EVトラックは最初にアメリカ・バージニア州の工場で2022年第2四半期(4~6月)に開始される予定となっています。
ただしあえて欠点を指摘すると、今回のボルボの発表だと、急速充電の出力は250kW(これでも以前より高速化)、6バッテリーパッケージの場合は90分、4バッテリー仕様の場合は60分でバッテリー容量の80%の充電が可能になるとのことですので、「4時間走って30分の間に充電」まではまだ進化してません。
ですが急速充電となるともちろんあのメーカーがそれ以上のパフォーマンスのものを出してきそうです。
あのメーカーとはもちろんテスラです。
テスラ「Semi」にはメガチャージャーが
テスラは以前から「Semi」という大型トレーラーの開発を行なっていますが、大型車両には必須の「大型車両向けの急速充電器(メガチャージャー)」についての情報も少しずつ出てきています。
米国で設置が進められているテスラの大型EVトレーラー「Semi」向けのメガチャージャー、見た目はアーバンチャージャーとそっくりながら高さは7-8フィート(2m以上)と2倍以上との報告。
出力は既存のV3スーパーチャージャー(250kW)の6倍となる1.5MWで、ケーブルの水冷装置を内蔵していると思われます🧐 https://t.co/5F9UvC75pd
— 🌸八重 さくら🌸 (@yaesakura2019) January 17, 2022
現在のスーパーチャージャーと比べるとかなり巨大なようですが、最新のスーパーチャージャーの6倍の速度(250kW×6=1.5MW)と実現すれば驚異の速度です。
テスラ「Semi」の場合搭載バッテリー容量が300マイル仕様は528kWh、500マイル仕様は880kWhと言われていますが、30分メガチャージャーで充電すれば軽く80%以上まで充電可能になります。
「そんな高圧で充電したら電力はどうなるんだ!」と怒る人が必ず現れそうですが、できない理由を並べることより「どうすればできるのか?」を考えることにこそ未来があります。
低圧受電契約で最大120kW高出力が可能な蓄電池搭載型EV急速充電器の予約販売開始 ~電気自動車充電インフラ、ソフトウエア事業に参入~
ENECHANGE株式会社のプレスリリース(2021年6月18日 08時00分)低圧受電契約で最大120kW高出力が可能な蓄電池搭載型EV急速充電器の予約販売開始 ~電気自動車充電インフラ、ソフトウエア事業に参入~
これは普通のEV用の充電器ですが、160kwhの大型蓄電池を搭載しており、低圧受電契約のままで(通常は50kW以上になると高圧受電契約になり電気代が跳ね上がる)急速充電が同時に2基可能になる充電器(1台だと100kW、2台だと60kW)です。
実は日本のCHAdeMO規格にも対応しており、蓄電池を活用することで設置者の電気代の負担が少ない状態で高速の急速充電が可能になっています。
「日本のCHAdeMO規格には水冷ケーブルがないから90kW以上の急速充電器は無理」などとできない理由を並べるe-MobilityPowerについては以前から再三問題視してきてますが、「蓄電池を活用することで高速化」は何も難しい話ではありません。
むしろ「やればできるのになぜやらないの?」状態です。
実際にこれも普通車EVの話になりますが、ポルシェはポルシェユーザー専用ですが既に150kWの急速充電にCHAdeMO規格で対応してます。
Porsche E-Performance – Charging - ポルシェジャパン
国内最速150kWのポルシェ ターボチャージャーなど独自の充電インフラを、正規販売店や公共の場へ。さらに自宅充電にも多彩な選択肢を用意しています。
まぁ「ABB社(スイス)とポルシェの共同開発」とありますので、特許などの関係で他社が導入できる充電器なのかは私はわかりません。
ですが「やればできる」という一つの例です。
現在の日本に設置されている一般的なEV用急速充電器は90kWが最大で、高速道路のサービスエリアに設置されているもので40~50kW、コンビニなどに設置されているものの中には20kWなどの「低速」と言っても差し支えないような急速充電器とは一線を画す世界が既に日本の中でも誕生してます。
来週は「ポルシェ・タイカン」の試乗にも行ってきますので、ついでにこの充電器についてもポルシェの方に取材してみようと思ってますが。
テスラのメガチャージャーのように「最大充電出力1.5MW」でも蓄電池を併用することで送電網に負担をかけないように充電器を設置することは不可能ではないはずです。
商用車・バス・トラックのEV化でも劣勢の日本勢
と後半は「大型EVトラック用の充電器」の話にも行きましたが、日本勢の場合充電器どころかEVトラックの段階から既に劣勢です。
いすゞ、米社部品でEV試作 中型トラックで実証実験
いすゞ自動車は20日、米エンジン大手カミンズの電池やモーターなど電気自動車(EV)の基幹部品を使い、中型のEVトラックを試作すると発表した。6月までに北米で始める実証実験の結果を踏まえ、同トラックを販売するかどうか決める。エンジン大手のカミンズは電動化に向けた技術開発にも力を入れており、いすゞとは2019年5月、商用車のパワートレイン(駆動系)事業での協業を発表していた
日本勢もようやく三菱ふそうがEVトラック「e-キャンター」を発売し、日野・いすゞも発売へ向けて動いてはいますが、本日取り上げたボルボのような大型トラックはまだの状態です。
先日は「EVバス」についての記事で中国のBYDで既にかなりのシェアを取っている話をしましたが、実は一般の乗用車以上にバス・トラック・商用車の分野でのEV化が遅れています。
「BYD」の電動バスが世界中でシェア拡大中?【バスも日本オワコン?】
乗用車のみならずバスの分野でも電気自動車化は進んでおり、実は中国の「BYD」の電動バスが世界中でシェア拡大しており、日本のバス会社にも導入されています。路線バスだと運行する区間も決まっており、バスを電動化することは乗用車よりも簡単ですし、整備や燃料代がかからなくなることから今後どんどん普及する可能性が高いです。
そして日本勢が劣勢のところにはこのBYDを始めとする中国勢が入ってきます。
中国製EV、日本の宅配業者にじわり浸透-圧倒的な低価格武器に https://t.co/OLAHY1dLni @businessより
— Keiichiro SAKURAI (@kei_sakurai) January 17, 2022
以前の記事でも佐川急便が中国メーカー製造の配送用EVバン(正確には日本メーカーのOEM製造)を導入する計画について解説してことがありますが、日本勢のEVトラックやバンが高額なのもあり現時点で取り入れる話はほとんどありません。
せいぜい以前の記事で取り上げた日本郵便が三菱「ミニキャブ・ミーブ」やホンダ「ベンリィe」の導入を進めてるくらいです。
ホンダの「2040年までに全車EV化」がグローバルで生き残る手段?【日本郵便のEV化計画も紹介】
世界のEV化の流れに遅れていると思われていたホンダが日本勢で初めて「2040年までに全車電気自動車化」の計画を発表と衝撃が起きました。その計画もエリアごとに具体的なプランが練られており、日本市場の雇用も維持できる地に足がついた計画です。そのホンダの2輪EVを既に使用している日本郵便の脱炭素の計画と一緒に紹介します。
世界的な脱炭素の流れの中でトラックやバス、商用車などを使う運送業でも従来通りガソリン車・ディーゼル車を使うことは「投資マネーの流出(ESG投資的に大マイナス)→株価の下落」につながり会社の価値の毀損にもつながります。
ですので日本メーカーがなかなかEVトラック・EVバスなどを発売しない、発売しても高くて中国勢などに敵わない状況が続けば自然と日本メーカーの商用車を使う会社が減っていくのも当然の流れではないでしょうか。
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