「EVへのルール変更」に抵抗し始めたらトヨタもオワコン?【しかもコスパ最悪のbZ4X】

お金 ビジネス 趣味

こんばんは、@kojisaitojpです。以前からヨーロッパやアメリカの政府と衝突することが多いトヨタですが、今度はイギリス政府と衝突してるようです。

「EVの生産割合を増やせ」というイギリス政府からの要求に対して「生産停止」「イギリスからの撤退」を匂わせて抵抗してるようです。

まぁトヨタのこの手の話には私も既に飽き飽きしてますが取り上げないわけにはいかないので、今日は現在イギリス政府とトヨタが何を巡って衝突してるのか?について解説し、ちょうど同じタイミングでイギリス市場への投入が発表されたトヨタのEVである「bZ4X」の価格やスペックが競合他社と比べてどのような状態なのかについて解説します。

イギリス政府に「生産停止」の脅しをかけたトヨタの狙いとは?

ボリスジョンソンと日産リーフ

さて今回イギリス政府に「生産停止も」と脅しをかけたトヨタですが、その根拠としてあげられているのが、

  • イギリス政府のBEVの生産割合引き上げが早すぎる
  • 目標未達のメーカーにはペナルティ
  • トヨタとしては2035年の完全BEV化には対応したい

という内容です。要は「今すぐBEVの比率をガンガン増やしていくのは時期尚早」「でもEV化に対応する気はある」だというこれまで日本やアメリカなどでも主張してる内容と全く同じです。

以前は2020年のアメリカ大統領選挙において「トランプ氏の信奉者が米国議会を襲撃した後も政治献金を続けた」ことが問題になったことは私のブログでも触れましたが、今回もイギリス政府の「イギリス国内で生産する自動車のEV比率を2024年から一気に引き上げる」ことへの反発のようです。

もちろんメーカーが政府に対して「そんな要求をするなら工場の生産を停止する。生産を停止したら労働者が困ることになるけどいいのか?」と駆け引きをすることが間違いではありません。

活動そのものはロビー活動同様に「自社の意向を政治に反映させるための行動」ですので何も問題はありません。

問題は「生産停止やイギリスからの撤退を匂わせて効果あるの?」という部分です。

これは2019年のデータですが、トヨタのイギリス市場におけるシェアはたったの4.6%です。

少し前のデータなので多少変動が出てる可能性が高く、例えば起亜がトヨタよりシェアが低い4.2%になってますが、先日も増えたように2022年1月には起亜がシェア1位になってたりします。

端的に言って「影響力がない」と思うのは私だけでしょうか?

いや、それどころか世界でもかなり早いペースで「2030年から内燃機関車(エンジン)の新車販売禁止(PHEVについては2035年から禁止)」を政策とするイギリスです。

「EV作りたくないってごねるなら出て行ってもらっても全然困らないよ」と言われるかもしれませんよね。

以前も触れたように「世界全体がEVへのルール変更」に向かってることを理解しないで自分に都合の良い主張を続けてると相手にされなくなる可能性があります。

BEVの「bZ4X」は発売するもののコスパ悪すぎ?

トヨタbZ4X

などという話をするとおそらく「トヨタはbZ4Xの発売発表してるんだからEVやる気ないわけないだろ!」と烈火の如く怒り狂ったコメントが殺到しそうですが(笑)。

私がブログやTwitterで日産やマツダなどを批判した際にはそういう風に怒り狂ったコメントはまず来ないのですが、なぜかトヨタを批判した時だけ来ます。「だからどうしたの?俺を脅しても考え曲げるわけないのに」としか返す言葉がありませんが。

話戻しましょう。イギリス市場にトヨタが「bZ4X」を投入することはわかってますが、その「bZ4X」の価格設定に疑問符がつきます。

ちなみに「41950ポンドは約670万円(1ポンド160円で計算)」ですので、この記事は価格の表示から間違えています。

同じ日本勢の日産「アリア」が「41845ポンド(約669万円)」です。まさか意図的に為替の換算を間違えて「日産より安いよ」と強調しようとしたとは思いたくないですが…。

ちなみに今あげた価格は「bZ4X」の「Pure」という最も廉価なグレードで前輪駆動モデルになります。日産「アリア」もB6という最も廉価なグレードで前輪駆動です。

同じように最も廉価な前輪駆動(又は後輪駆動)のグレードで競合他社の価格を比較すると、

  • ヒョンデ(ヒュンダイ)「IONIQ5」は「37600ポンド(約601万円)
  • フォルクスワーゲン「ID.4」は「34955ポンド(約559万円)
  • 起亜「NiroEV」は「34295ポンド(約548万円)
  • テスラ「モデルY」は「54990ポンド(約879万円)

となります。「あれ日本勢だけ高くないか?」と思ってしまいますよね。。。

テスラストア・パリマドレーヌのモデルY

テスラ「モデルY」については現在イギリスで販売されているモデルがギガファクトリー上海製であること(要は輸送距離が短いギガファクトリー・ベルリン製になれば少し下がる)、航続距離や充電性能などのスペックが他のEVと比較してずば抜けているので同列に論じるべきではないと思います。

ホテル前で充電中の起亜NiroEV

実際に先日の記事でも指摘したようにイギリス市場では起亜「NiroEV」が売上首位に立つ月もあるほど売れています。片や日本勢はランキングにも入っていません。

しかも「bZ4X」の場合は先ほどの日産「アリア」の価格と同程度でありながら、「アリア」には最初から搭載されている「電動シート・シートヒーター・ハンドルヒーター」などがオプションとなっており、これらを追加すると更に価格が上がります。

シートヒーターやハンドルヒーターがEVでは必須のものであることはEVに乗っている方であればお分かりかと思います。

ということは「bZ4X」は日産「アリア」、ヒョンデ「IONIQ5」、フォルクスワーゲン「ID.4」、起亜「NiroEV」と比較して「非常にコスパの悪いイギリス価格」となってしまいます。

この事実を見ると「実はEVで勝負するとイギリス市場だと勝負にならないから政府に対してゴネてるんじゃないの?」という意地悪な見方をすることも可能になります。

「ルノー・日産・三菱連合」はイギリスでEVを大量生産へ

日産グローバル本社のリーフ
その一方で日本メーカーでも日産は(正確には「ルノー・日産・三菱連合で」というべき?)イギリスにバッテリー工場を設立したりと積極的にEV化を推し進めていく方向です。

イギリス・サンダーランドにバッテリー工場を設立する「エンビジョンAESC」が「元日産の子会社で中国資本になった今でも大株主」というのはEVのことを知っている方には常識すぎる話ですが、毎回言っておかないと「中国メーカーと組んだ日産なんて」と猛烈に叩かれますので。

そしてこの「エンビジョンAESC」が日本の「茨城県に設立する工場からホンダにバッテリーを供給するかも?」というのは先日の記事に書いた通りです。

日産「リーフ」にバッテリーを長年供給するエンビジョンAESCのバッテリーは「発火案件ゼロ」「自然空冷式のリーフでもバッテリー劣化しない」というのは以前から指摘してる重要な事実で、実は日産の強みの一つです。

リーフのバッテリー消耗率

「EVはバッテリーが劣化して交換が必要になるのでぇ〜」というのは2015年以降のリーフには全く当てはまらない話、今でも「EVのバッテリー劣化」を主張する人がいたら疑ってかかった方がいいというのは以前から指摘してる話です。

まぁトヨタの場合は日本市場でのみ「バッテリーが劣化するからサブスク」と言っておいてヨーロッパでは普通に販売しますので、「日本市場向けにデマを流してるのか?」と思うだけですけど。

「日本製品=高い」で滅びた家電と同じ道をEVで行く自動車業界?

ナショナルのテレビ
このように「高いから売れない」という問題は家電業界で以前直面したのと同じものです。

しかも今回の場合価格に加えて「EVシフト」という技術革新まで伴います。

技術革新を伴うものになると「ガラケー→スマホ」が真っ先に思い浮かびますが、その昔(と言っても10数年前)「Nokia」というフィンランドの会社がガラケーでは世界トップのシェアを誇っていたのを覚えてますでしょうか?

NokiaとiPhone3G
NokiaとiPhone3G

私の場合iPhone3Gを買う前はNokiaを使っていたのでよく覚えていますが(Nokiaは「Vodafone→ソフトバンク」で細々と展開してました)、日本では全く売れてなくてもNokiaのガラケーは世界のトップシェアでした。

それが今や…という話ですよね。

なんて言うと「スマホと車を一緒にするな!」と怒り狂う人が必ず現れるのですが、今回は「ガラケー→スマホ」の時と違って世界の各国政府による「ルール変更」まで伴っています。

イギリスという国は一国単位で見れば小国ですが、今回のEVシフト再エネシフトなどに見られるように「世界のルール設定」という面ではアメリカやEUなどに絶大な影響力を持つ「外交の達人」で、基本的にこの国が向いてる方向に逆らうとロクな目に遭わないのは歴史が証明しています。

現在イギリスは「ウクライナ支持、ロシア敵視」で動いていますが(ロシアへの経済制裁なども世界で一番強烈です)、日本もその昔「日英同盟」があった頃は日露戦争でロシアに勝利しましたが、「鬼畜米英」と背を向けて戦った第二次世界大戦ではこっぴどくやられています。

まぁこのような話をしても「車の話をしてないから内容が薄っぺらい」などと猛烈な批判が来たりするので「言っても無駄な人には無駄なんだな」と思うだけですが、今回トヨタがイギリス市場から撤退ということになれば他の国も(特にEU諸国とアメリカ)トヨタに対する圧力を強めるようになることは誰の目にも明らかです。

「イギリスから撤退」→「EUから撤退」→「アメリカからも圧力をかけられる」とドミノ倒しのように衰退する一方だと思うのは私だけでしょうか?

このブログを始めた当初は私も「このままじゃ日本メーカーやばいよ」とか「日本メーカーの奮起を期待します」のように何とか頑張って欲しいなという思いが前面に出た記事が多かったのですが、トヨタのここまでのEVに対するやる気のなさ、ヘタをするとEV化を妨害するようなロビー活動を行っている様子を見ると「変化に適応できないなら一回滅びてしまえば」と思うようになりました。

今は「進化に適応できるなら頑張って欲しいけど、進化に抵抗するなら一回滅びた方がいい」と思うだけです。

人気記事電気自動車専門のカーシェア・サブスク・EV販売店立ち上げのためのクラウドファンディングを始めます!

人気記事電気自動車(EV)を日本で普及させるために誤解を解消する【過去記事総まとめ】