「原発がなしでもOK」を証明した電力危機からEVと再エネの可能性を考える

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こんばんは、@kojisaitojpです。以前から取り上げようと思っていたネタだったのですが、様々なEVの話が入ってきて後回しになってました。ですが偶然論じるべきタイミングになったようです。

本日の話なので東京電力・東北電力のエリアに住んでいる方なら誰もが「停電」の危機感を持ったことでしょう。

結果的に辛うじて停電は起きなかったわけですが、「電力が足りない」という話になると必ずと言っていいほど「原発を稼働しないからだ!」とネット上などで大声で騒ぐ輩が出没します。

ですが私が最初に思ったのは「原発が稼働してても結果は同じでは?」という点です。

そこで今回は起きたばかりの「電力危機」を取り上げて「本当に原発があれば危機を回避できたのか?」「その役割に再生可能エネルギーやEVは貢献できないのか?」について考えてみます。

「原発なしでもOK」を証明したのが今回の電力不足?

福島第一原発
まず今回の「電力不足」の問題についてですが、前提は「先日の地震で一部の火力発電所が停止してる」というのがありました。

この状態で本日は東京でも最高気温が5度前後と3月にしては非常に低く、しかも雨だったので太陽がほとんど出ないという太陽光発電にも向かない悪天候でした。

実際に東北地方では雪が積もった地域もあったようです。

この影響により昨日から東京電力では「電力供給が追いつかない・停電になるかもしれない」というニュースが流れ、私のところにもLineやメールなどで注意喚起と節電要請の連絡が来てました。

東京電力からの警告LINE

そして電力が足りないという話が出ると必ず「原発が稼働してないから電力が足りないんだ」と熱く語り出す人々が現れます。

事故後の福島第一原発

しかし今回のケースは原発は全く関係ないです。

  • 現在の日本の原子力発電所は国が定めた安全基準を満たしてないので停止中
  • これを「再稼働しろ」と言うことは安全基準を無視して再稼働しろと言ってることになる。

別に原発反対派がうるさいから原発の稼働を自粛してるなどどという話ではありません。東日本大震災を契機に国が定めた安全基準の審査をパスしないから稼働できてないだけです。

実際に国内でも一部の原発は審査をパスして再稼働してます。関西電力・四国電力・九州電力の話なので今回の件にはほとんど関係ありませんが。

こちらは昨年の柏崎刈羽原発で起きた不祥事についての記事ですが、今回の電力不足でも当事者である東京電力の杜撰な管理が問題になっています。

「むしろ原発再稼働ができないように東京電力が自滅してる」ようにも見えてしまいます。

とはいえこの辺の事実を見ないで「太陽光や風力なんてアテにならん!原発を再稼働しろ!」と騒ぐ声が大きくなっているのも事実です。

ですが現在のように全く稼働していない、火力発電所も一部停止中、しまいに悪天候で太陽光がほとんど発電できない状態でも辛うじて危機を乗り越えてます。

これだけの悪条件を原発抜きで乗り切ったのだから反対に「原発不要が証明されただけでは?」と思うのは私だけでしょうか?

災害に強いのが「再生可能エネルギー」と「EV」

ソーラールーフとパワーウォール
「再エネは不安定だからアテにならない」と言われがちですが、実際は逆です。

EVと蓄電池・太陽光パネルを搭載した家は災害に強く、アメリカでもこのようなことが言われています。

本来温暖なはずのアメリカ・テキサス州で昨年異常な寒波が襲い、送電網などが凍結してしまい大停電を起こしたことがありましたが、この時もテスラのEVやパワーウォール(蓄電池)・ソーラールーフ(太陽光パネル)を搭載した家は無傷だったという話は私も過去に取り上げました

自宅の太陽光パネルで発電した電力をパワーウォール(蓄電池)とEVに蓄電していた家ではこれまでの常識では考えられなかった寒波も無傷で乗り切っています。

実は今回の日本の電力危機でも太陽光発電が全く役に立たなかったのかというとそうでもないです。

東北電力の電力需給

例えばこちらは東北電力の本日の電力需給ですが、下の方にごくわずかの量ですが赤い線のグラフがありますよね?

これが太陽光発電の発電量です。本日は東北から関東にかけて全面的に悪天候で太陽がほとんど出てませんでしたが、東北電力のエリアではこのわずかな発電量が加わったことで100%を超えないで済んだ時間帯があったようです。

東京電力の電力需給

東京電力の方を見てもこのようにごくわずかではありますが、全く太陽が出なかった今日も発電しています。

などという話をしても「電力が足りない時にEVに充電なんかしたら電力が足りなくなる」という批判があるかもしれませんが、大半のEVユーザーは電力が余っている深夜(だから日本の場合深夜電力は安い)に充電してます。

実は自宅に太陽光パネルがない家でも昨日のうちにEVや蓄電池に十分な電力を充電していれば本日のように「電力供給が危ない」と言われる日は蓄電した電力のみで生活しています。このような例はツイッターなどで検索するといくらでも出てきます。

「一見災害に弱そうに見えるけど、実はEVも再エネも災害に強い」ことについては以前の記事で書いてますのでこちらもご参照いただければと思います。

EVを運用してる方にはもう周知の事実ですが、実はEVはただの「車」としての側面だけでなく「蓄電池」としての側面もあることを忘れてはいけません。

そしてヨーロッパではこの「蓄電池」としての側面を活かす試みも始まっています。

EV化を促進することが電力の安定につながる?

フォルクスワーゲン本社
「電力が足りないのにEVなんかけしからん!」とか「EVが増えると原発の増設が必須になるけどいいのか?」のような野次というか脅迫するようなメールは私のところにもよく来ます。

他にも「太陽光や風力なんてアテにならないからベース電源としては使えないんだ!」と力説してくる人もいます。

ですが現在ヨーロッパでは全く逆の方向の議論が進んでいます。

フォルクスワーゲンのV2H計画2

こちらはフォルクスワーゲンが出した資料で、「年間6.5GWhの再エネが使われてないで捨てられている、この発電量で270万台のEVの年間の電力を賄える」と再エネが活用されないで捨てられている現状を問題にしてます。

そしてフォルクスワーゲンが提唱する再エネの活用法は「余った電力をEVに充電しよう」です。

フォルクスワーゲンのV2H計画

矢印が双方向になっていることがポイントです。

一番わかりやすいのが太陽光なので例にして説明すると、

  • 太陽が出てる時間帯(昼間)は必要とされる量以上の電力を発電してしまう
  • これまでなら捨てられた電力をEVに充電する(「グリッド→EV」)
  • 夜間や天候の悪い日は反対に「EV→グリッド」に電力を供給する

簡単に言えば電力が余っている時間帯(太陽光発電の場合は晴れた日の昼間)にEVをグリッドに接続させてどんどん充電させてしまおう。そして反対に悪天候の日や夜間は蓄電されたEVからグリッドに電力を戻してやることで需給バランスを取ろうという試みです。

現在はドイツの一部の都市で試験的に行われているだけですが、これが成功すればヨーロッパ中に広まる可能性があります。

このように電力の需給を調整する存在としてEVが活用できることを主張しています。

もちろん同じ役割は蓄電池でも可能ですが、EVを蓄電池代わりに使えば蓄電できる電力量を大幅に増やせるということです。

などと言っても「机上の空論だ」と怒る人がいるでしょうが、フォルクスワーゲンの構想ではこれを一方的にユーザーに負担を強いる義務にはしてません。ですので昼間の時間帯にEVを使用して移動することも自由にできます。

あくまで「EVを使わない、駐車してる時間帯にグリッドに接続する」だけです。

そしてこのグリッドに接続するプロジェクトに協力してくれたユーザーに対してはフォルクスワーゲンが提供する急速充電インフラが供給した量に応じて無料で使えるという電力会社にもユーザーにも「win-win」な計画です。

「再エネは発電量が不安定なので(太陽光なら昼間だけ、天気悪い日は1日アウト、風力なら風量次第)」と日本では再エネを否定したがる勢力が用いる理屈を逆に使って「再エネだけで電力供給を賄える方法」を考えている点で見事です。

「できない理由を考えるのではなく、どうすればできるのかを考える」というわかりやすい例です。

実際に日本でもこのような試算が出ています。最近はテスラ車やヒョンデ「IONIQ5」のように50kWh以上の大容量バッテリーを搭載したEVもありますが、この試算だとEV化率がたったの4%だとしても(現在は1%くらい)120GWhで大規模な水力発電所5時間分の電力を蓄電できるとのことです。

普及率が10倍の40%ならどうなるか、50%ならどうなるか、更に増えるとどうなるか?考えると「EVを蓄電池として活用」することが再生可能エネルギーの可能性を大きく広げます。

これにより需給調整が可能になり、原発や火力発電に頼らなくてもやっていける社会が見えてきます。

幸いなことに日本には世界初の量産EVの日産「リーフ」の発売以来中古のEVがたくさんあります。仮に初期の24kWhのリーフがセグ欠け(消耗)して12kWhしか使えない、

EV化・再エネシフトに抵抗する老害(老衰?)国家・日本

再生可能エネルギー
実は日本でも上記のドイツのように「余った再エネが捨てられてる問題」は発生しています。

この「出力抑制」の問題を解決するには「余った電力を貯めるための蓄電池やEV」があればいい話です。

たったそれだけのことができれば「電力不足」というリスクを回避できる可能性を秘めているのですが、なぜか日本だと「再エネは不安定だからアテにならない」「やはりアテになるのは原発だ」と世界の脱炭素・再エネシフト・EVシフトに抵抗する勢力がかなりの数いて思うように進んでいません。

まぁ日本がロシアや中東諸国のように原油や天然ガスを産出する「産油国」ならそれでもいいかもしれませんが、ご存知の通り日本の原油・天然ガスは99.9%輸入です。

これは今日たまたま拾ったニュースですが、世界最大の産油国であるサウジアラビアにフォックスコン(台湾)の半導体やEVを生産する工場を誘致するという計画が出ています。

世界最大の産油国であるサウジアラビアでさえ「石油に依存した経済からの脱却」を掲げて動いています。

本来であれば天然資源が全くない日本こそが「再エネシフト」に積極的になることで、産油国に依存しない国を作るべきだと思うのですが。。。

私はTwitterでもブログでも既得権益に寄生する勢力のことを「老害」と批判することがありますが、実は「老害」と「老衰」に分けるべきでは?と思うようになりました。

トヨタのEV発表会と社長

例えば何度もネタにしてる日本最大の自動車メーカーの社長。「トヨタはEVにも本気です」と言っておきながら日本では「bZ4X」の販売は無しで実質リースと変わらないサブスクでの提供、しかもサブスクにする理由を「バッテリーが劣化するので」という「それいつの時代の話?」という理屈でEVのネガティブキャンペーンのようなものを展開してます。

ちなみに以前からトヨタが世界各国でEV普及の邪魔をするロビー活動をやっていたことは日本以外では有名で、海外メディアに叩かれていることは以前の記事でも解説してます。

こういう風にEVの普及を自らが積極的に、能動的に邪魔してくる勢力を私は「老害」と呼びます。

ですが世の中の大半はそこまで積極的に「EVは嫌だ」「再エネなんかアテにならん!」と騒いでるわけではないですよね。

周りの雰囲気に流されて(「テレビで言ってた」のような言い方が典型例)「EVって使えないんでしょ?」とか「太陽光なんてアテにならない。やはり日本には原発が必要だ」と何となく思ってる抵抗勢力の方が多数派ですよね。

このように「新しいものは嫌だ」「今更新しいことなんかやりたくない」と技術の進化を拒絶して現状維持(例えば「原発」や「ガソリンエンジン」)を臨む勢力を私は「老衰」と呼びます。

当たり前のことですが技術の進化を受け入れない、「できない理由」ばかり並べて拒絶してると世界の流れから取り残されるだけです。そのような生き方をして衰退していくのは「老衰」と呼ぶのがふさわしいのでは?と思います。

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