電気自動車(BEV)という「ルール変更」に適応する韓国勢と抵抗する日本勢【ウインタースポーツを見習え】
こんばんは、@kojisaitojpです。日本の自動車メーカーとは対照的な判断をしたメーカーがあります。
そんな起亜は2022年にPHEVがピークアウトすると予想。
EVと比べてコスト的にメリットがなく、インフラさえ整えば実用性にもほとんどの人は困らないので、当然の予想でしょう😌
Kia: PHEV Sales To Peak In 2022 And Then Start To Fade Away https://t.co/a9ebNnaeah
— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) February 10, 2021
と引用すると「なんだ、韓国かよ」という反応をする人が一定するいるからややこしいですが、現代自動車グループ(ヒュンダイと起亜)の世界シェアは5位です。
フォードやホンダ、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)よりも世界シェアが上というのが客観的事実です。
同じグループのヒュンダイは既に電気自動車化を表明しており、前に紹介した「Ioniq」シリーズという電気自動車専用のブランドを立ち上げています。
ヒュンダイ「Ioniq5」が驚異のスペック?【電気自動車も韓国に負ける?】
ヒュンダイが2021年に販売予定の「Iconiq5」の情報がリークされましたが、航続距離、急速充電などスペック面でフォルクワーゲンや日産を凌駕するほどのハイスペックです。スマホにしろ液晶テレビにしろ韓国メーカーとの競争に負けた日本企業は電気自動車でも負けるのでしょうか?今のやる気のない状況を見ると否定できない危機です。
電気自動車に関しても既に「Niro」のEV版を販売しており、ヨーロッパなどでも上位の売り上げを誇る状況です。
「Niro」はヒュンダイと共用のE-GMPプラットフォーム(Electric-Global Modular Platform)を用いておりEVとPHEVとHVの3つの車種を一つのプラットフォームで生産した世界初のモデルです。
今回のニュースはこの中でPHEVとEVを捨てて、電気自動車のみをこのプラットフォームを用いて2026年までに11種の電気自動車を販売する予定と発表しました。
何より「PHEV」の賞味期限が来年2022年までと見切ったところが私の注目を引きました。
今日はそんなふうに電気自動車化の姿勢を鮮明にしている韓国メーカーと、多少は変化が出てきたものの依然として電気自動車に消極的な日本メーカーの対照的な動きを取り上げます。
目次
元々「ハイブリッド」はEVまでの過渡期の技術だった?
このような起亜自動車の動きとほぼ同時にトヨタもようやく北米市場限定ですが、電気自動車を生産する意向を表明しました。
【PSA】トヨタが米国市場向けに2台のバッテリー式電気自動車(BEV)を今年デビューさせると発表しました。
「私たちは、25年近く前にプリウスを先駆的に導入したことから始まった電化のリーダーであり続けます」https://t.co/HpVrijsk1m #EV— ガスフリング⚡️脱炭素しないと30年後地球住めなくなる (@Gusfrin92486024) February 10, 2021
しかし現時点ではEVを販売することを発表したものの車種も非公表、電気自動車専用プラットフォームを開発した形跡もありません。
おそらく従来の車種のプラットフォームにバッテリーを乗せた中途半端なものができることでしょう。
確かに世界で最初にプリウスのような量産型のハイブリッドを生み出したのは事実です。
当時はブラッドピッドなどハリウッドのスターもプリウスを購入し、「世界で最も環境に配慮した企業」の名をほしいままにしました。
ただ当時から「ハイブリッドはEVが実用化されるまでのつなぎの技術」と言われていました。
つなぎの技術で大成功したから「これで十分」と思ってしまったのか、20数年が経過した今でもトヨタが本格的に電気自動車を開発・販売する動きが見えません。
今になっても「電化のリーダー」を自称するというのはもはや失笑されるレベルです(笑)。
実際バイデン政権誕生の前日(大統領就任の前日)に和解しましたが、排ガス規制に違反すると連邦政府から訴訟を提起されていたわけで、「環境に優しい企業」というのはもう過去の話です。
ハイブリッドカー誕生(1997年)
世界初の量産ハイブリッド乗用車プリウスの発売までの様々な取り組みと開発の舞台裏や環境対応車の広がりを紹介。
1997年にプリウスを当時の技術では考えられないリッター28キロの燃費、215万という赤字を覚悟するような驚異のプライスで世界に送り出した当時とは雲泥の差です。
トヨタはどこでボタンの掛け違えが発生したのか?
「ヨーロッパや中国が日本のハイブリッド技術に敵わないから潰すために電気自動車化を進めたんだ」と力説する方が多いですし、それは間違いではないでしょう。
しかしこの「ルール変更」に策を打てなかった、正確には日本メーカーを代表してホンダが「内燃機関車(エンジン搭載車)の新車販売を禁止」することを検討しているイギリス政府に「ハイブリッドも加えて欲しい」と圧力をかけたもののジョンソン政権を納得させることはできなかったという残念な事実があります。
「ルール変更」に抗えなかった以上急いで電気自動車に本腰を入れるのが企業の生き残る唯一の道なのですが、なぜか日本メーカーは日産以外は電気自動車に本腰を入れなかったというのが実際のところです。
過去日本勢は様々な分野でこの「ルール変更」に泣かされてきたという歴史があります。
「ルール変更」という武器を持つヨーロッパ勢と戦うには?
私は北海道出身なのもあり、子供の頃から普通の日本人よりはウインタースポーツを観る環境で育ったと思うのですが、実はウインタースポーツをよく知っているとこのヨーロッパ勢の「ルール変更」の恐ろしさが分かります。
ハイブリッド潰し、電気自動車化も同じパターンなんだけど理解できてない奴が多い。
ノルディック複合 ルール変更で起きた世界のオギワラ潰し|NEWSポストセブン https://t.co/FONwVBA6TC #newspostseven— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) February 11, 2021
1990年〜1995年くらいにかけてノルディック複合の世界最強国は日本でした。実際に1992年アルベールビル五輪、1994年リレハンメル五輪では金メダルを獲得し、W杯でも日本勢がメダル独占というのが普通でした。
強さの秘密は「ジャンプ」にありました。元々日本人は体格的にもクロスカントリーでヨーロッパ勢と勝負するのは不利でした。
ところが日本勢はジャンプの選手以外はまだ本格的に取り入れてなかったV字ジャンプをいち早く取り入れてノルディック複合の選手とは思えない大ジャンプを連発していました。
大抵の大会では最初のジャンプで挽回不能なリードを奪う位のポイントを稼ぎ、その貯金でクロスカントリーも逃げ切るというのが定番の勝ちパターンでした。
ところがルール改正が行われ、ジャンプの点数換算が以前ほどクロスカントリーに反映されなくなると日本勢の全盛期が一瞬で終わりました。
それでもクロスカントリーでもある程度戦える荻原健司選手などはルール変更後も世界で結果を出しましたし、近年だと渡部暁斗選手のように世界でトップ争いができる選手は時々いますが、90年代前半のように日本勢が無敵というわけではありません。
何でウインタースポーツの話を急に始めたのかというと、この「ノルディック複合」という競技で伝統的に強いのは「ノルウェー」です、その次が「ドイツ」です。
まぁ「ノルディック」なんて書いてあるから誰でもわかるかと思いますが、電気自動車の話でもないのにノルウェーが出てきましたね(笑)。
しかも次に出てきたドイツもフォルクスワーゲングループのように電気自動車に全振りしてる国。。。
実は「自分たちに有利なようにルールを作る」という意味で手強い国なのです。
電気自動車の話をすると必ず賞賛されるべき対象としてノルウェーを挙げることにはなりますが、実際はこういう連中です(笑)・
ちなみに1994年、日本勢が金メダルを取ったリレハンメルはノルウェーの都市です。地元で恥をかいて頭にきたのかもしれません。じゃあ次の長野で日本勢に恥をかかせてやれ的な。
ノルウェーは北海油田を持つ産油国であり、世界の株価の行方を左右する巨大な年金ファンドを持ち、ヨーロッパにいながらEUへの加盟は拒否(何度か国民投票で否決しています)して独自のポジションをキープして、発言力を保つ。したたかな連中です。
ただその好きか嫌いかという価値観を持ち込んでも何もいいことがないので普段は触れませんが、私もそういう連中なことは重々承知した上で電気自動車の話ではノルウェーを持ち上げています。
ノルウェーが電気自動車最先進国になった理由とは?【2025年にはエンジン禁止?】
日本とは真逆の電気自動車化で最先端を行くノルウェーについて取り上げてみます。PHEVと合わせた電動化率が8割を超えるノルウェーではむしろ電気自動車に移行しない方が国民が損をするように上手に誘導しています。産油国でありながら2025年にはエンジンのある車自体の販売を禁止する予定のノルウェーで電動化できた理由を探ります。
自分たちに有利なようにルールを変えるというのは歴史上ヨーロッパ諸国の常套手段で、それはスポーツの世界からビジネスの世界まであらゆる分野に及びます。
ですので一旦「世界の流れ(ルール)」を作られてしまうと、その土俵の上でどう勝負するか考えるという選択肢しかなくなってしまいます。
実際に度重なるルール変更で日本勢に不利なようにルールが改正される先ほどのノルディック複合やジャンプなどでは、新しいルールに合わせて対策を練って、日本勢はどうにか世界のトップを追える位のポジションはキープしてます。選手やスタッフ、用具メーカーなどの努力は本当に大したものです。
自動車はどうでしょうか?
「ハイブリッドこそが最高の技術なんだ!」と騒いでも「内燃機関車(エンジン搭載車)」の新車販売を禁止するというルールにハイブリッド車を加えてくれた政府は実質日本政府だけ(中国政府も今のところ入れてくれてますが、いつ梯子を外されるか分かりません)というのが結果です。
このままだと実質日本市場以外でハイブリッド車も、先ほど起亜自動車が「賞味期限が2022年」と言ったPHEV車も2025年のノルウェーを皮切りにヨーロッパ諸国では販売できなくなります。
となると電気自動車を本気で開発する以外に生き残る方法はないと思うのは私だけでしょうか?
「ルールを愚痴る」のではなく「ルールに適応する」ことが電気自動車でも必須
「ヨーロッパと中国は日本のハイブリッドを潰すために電気自動車化を推進しているんだ」という言い方は間違いではありません。間違いなくそういう意図があるでしょう。
しかし現在ではヨーロッパ・中国が主導した流れにバイデン政権の誕生により「全米50万箇所に充電ステーションを設置」とか「連邦政府の公用車を全てEV化」など日本と大差のない電気自動車の普及率だったアメリカもこの流れに乗ってきました。
更に私のブログでは何回か取り上げたことがありますが、アフリカなどの発展途上国も「バカ高い原油代を払いたくない」と電気自動車化へ前向き(自然が溢れているので元々太陽光などの再生可能エネルギーに向いている)な状況ですから、もはや日本と中東の産油国以外はほとんどの国が電気自動車化へ舵を切っています。
アフリカに輸出される中古車も電気自動車化?【想像以上のペースです】
日本では売れないような多走行・低年式の中古車がアジアやアフリカの発展途上国に輸出されるのは昔からの流れですが、その中古車にも電気自動車化の波が押し寄せているようです。ですが日本から輸出できる電気自動車が日産リーフのみなのもあり、韓国のヒュンダイなどもアフリカ市場に参入してきて、日本の独壇場だった世界にも変化が見えます。
上記の記事でも取り上げましたが、日本ではバッテリー性能やヒーターに問題があり、航続距離が全くないと不評だった初代初期型の日産リーフ(2010〜2012年)の中古車でさえアフリカ諸国から欲しいというオファーが殺到するというのが現実です。
そして「アフリカで電気自動車をやったら勝負になる」とアフリカの各国に工場を設けて格安の電気自動車の生産を始めているのが本日取り上げた「ヒュンダイ・起亜グループ」です。
「日本の品質の良いEVがあったら買いたいけど、玉数が少ないからヒュンダイとか起亜でもいいか」とアフリカなどの発展途上国で思われているかもしれません。
日本勢が「電気自動車はエコじゃないのでぇ〜」「ハイブリッドの方が優秀なのでぇ〜」と理屈をこねて電気自動車に真剣に取り組まない間に日本以外の世界各国で電気自動車化が進んでいます。
そして日本勢が入れない市場に入ってくるのが韓国勢と中国勢という、まるで少し前の家電やスマホで見たのと同じ光景が自動車業界でも繰り広げられているのが今の状況です。
実際にハイブリッドの方が優秀かどうかは問題ではありません。「デファクトスタンダード」として「世界のルール」のように電気自動車化の流れをヨーロッパ勢と中国に作られてしまったのですから、乗る以外に日本企業が生き残る方法はない、そして残された時間は少ないというのが現実です。
日本の自動車メーカーにも聞かせたい言葉だな(笑)
不利なルール変更を批判しなかったジャンプ・船木和喜の矜持|NEWSポストセブン https://t.co/RTrCd1DfKk #newspostseven— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) February 11, 2021
こちらはノルディック複合ではなく、ジャンプの話ですが船木和喜選手が「不利なルール変更を批判せず」に新しいルールの中で何とかして適応しようとしたことがインタビューに答えています。
ちなみに船木選手は1998年の長野オリンピックで団体金メダル、個人ラージヒル金メダル、個人ノーマルヒル銀メダルと世界の頂点に立った選手ですが、45歳の現在でも現役を続けている「レジェンド」です。
具体的にルール変更について述べておくと、長野オリンピックの翌年1999年、スキー板の長さが「身長×146%」と規定され、ヨーロッパ系の選手に比べて小柄な日本人は長いスキー板を履けなくなり、スーツのゆとり幅も制限されるようになったなどの不利なルール改正がありました。
露骨ですね。相手はそういう連中なので仕方ありませんが(笑)。
当時「世界一美しい」と言われた船木選手の飛行フォームが生み出していた飛型点も、飛型点の採点基準が緩くなったことで他の選手とのアドバンテージを大幅に削られるなど最も不利益を被った選手の一人です。
でもルールの批判をせずに選手として努力を続けて、今も現役というのは頭の下がる話です。反対に「ハイブリッドこそが優秀だ」と今でも叫んでいるのが日本の自動車メーカーです。
同じように「レジェンド」と呼ばれる葛西紀明選手の場合は、1994年リレハンメル五輪で銀メダルを取った後に、ルール変更があり低迷した時期もありましたが、諦めずに頑張り続けたことが、リレハンメルから20年後の2014年ソチ五輪でのメダル獲得につながったと言えます。
日本の自動車メーカーも学ぶべき点がここにあります。
人気記事電気自動車専門のカーシェア・サブスク・EV販売店立ち上げのためのクラウドファンディングを始めます!