「80%が乗り続けるEV」と「20%がガソリン車に戻るEV」のどっちが重要?【充電への難癖?】

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こんばんは、@kojisaitojpです。記事のタイトルを見た瞬間にマスコミの悪意を感じたのは私だけでしょうか?

「20%のユーザーがガソリン車に戻る」ことと「80%のユーザーはEVに乗り続けている」ことを比較して前者の方が重要なのでしょうか?

普通に考えれば8割のユーザーが継続してEVに乗ってるという時点で顧客満足度は高いと見るべきなのが常識的な見方かと思いますが。

「EVに関してはひたすらネガティブな面を強調する」という報道の一例かもしれません。

今日はこの記事で述べられている「2割のユーザーが抱く不満」からまだまだ残るEVの「バッテリー容量」と「航続距離」に対する誤解について考えてみます。

「20%のガソリン車に戻ったEVユーザー」の原因は充電インフラ?

長野スーパーチャージャー
さて冒頭で引用した記事の内容ですが、その2割のオーナーがEVを嫌になってガソリン車に戻った理由として挙げられているのが「充電」です。

そのまま引用しますが、

約3分で、フォード・マスタング(Ford Mustang)のガソリンタンクは満タンになり、V型8気筒エンジンで約300マイル(約483キロメートル)を走ることができるようになる。

だが、ブルームバーグの自動車アナリスト、ケビン・タイナン(Kevin Tynan)がフォードに借り受けた電動のマスタング・マッハ-E(Mustang Mach-E)を家庭用コンセントに1時間繋いだところ、航続距離はわずか3マイル(約4.8キロメートル)だった。
(「EVユーザーの20%がガソリン車に戻った…充電問題の解決が急務」Business insider Japanより)

アメリカで書かれた記事を翻訳しただけのようですが、ガソリンスタンドでの給油とEVの充電を同列に論じている時点でそもそも論外です。

「5分で満タンにならないと困るんだよ!」的にEVにケチをつける人がわかっていないことについては以前も指摘しましたので、こちらの記事もご参照ください。

引用した記事のように低速の充電になった原因は電圧です。120Vのコンセントで充電したのが原因で全く充電速度が出なかったようです。

日本だと「100Vか200Vか」の選択になるのですが、自宅に充電器を設置する場合は200Vにするのが基本です。電流も30A以上にしておけば普通充電器でも6kWの充電速度が出ますので、引用された記事のように全く充電できないということはあり得ません。

まぁアメリカでもEVのことをロクに勉強せず、ガソリン車と同じ感覚で使用できると勘違いして買った人がこの20%のガソリン車に戻る人に該当するのかな、というのが私の感想ですが。

「充電が面倒」というのはガソリンスタンド感覚で「充電しに出かける」ことから起きる問題であり、夜に自宅に帰宅して翌日出発するまでの間に充電するのがEVの基本的な使用法であると理解していればこのようなトラブルは発生しません。

ですが残念なことにEVの充電に関する正しい情報がまだ十分に行き渡っているとは言えないのが現状です。

だからこそEVに対する批判として「こんな航続距離じゃ」「こんな小さいバッテリー容量じゃ」的なことが言われることが多いです。

とはいえ見方を変えるとこのような「短い航続距離」や「小さいバッテリー容量」もマイナスとは必ずしも言えない側面もあります。

バッテリー容量が小さいことも時にはメリットに?

三菱アイミーブ
EVの使い方をしっかりと理解できていないと「こんなバッテリー容量じゃ」「こんな航続距離じゃ」という批判がすぐに殺到するのですが、見方を変えると「むしろバッテリー容量が小さいEVの方が便利なこともある」と言うこともできます。

三菱の「アイミーブ」のMグレードの場合搭載バッテリー容量は10.5kWhしかありません。

と言うと「そんなバッテリー容量と航続距離じゃ」とすぐに叩かれるところですが、「バッテリー容量が小さい=充電もすぐ終わる」とプラスの面もあります。

引用した例では急速充電器を使っています(たった10分で終わりというのも驚異ですが)が、仮に普通充電器を使っても3時間もあればほぼ満充電に近いくらいに充電できます。

三菱アイミーブ

一日の走行距離が100キロ未満であればこのくらい手軽に充電できるEVの方が使いやすいですよね?

まぁ頻繁に充電してると「そんなことやってるとバッテリーが消耗して交換ガー」とアイミーブを知らない方だと言ってしまうところですが、全くそんな心配は要りません。

ちなみに10万キロ20万キロ乗っても全くバッテリーが消耗しない東芝のSCiBバッテリーとアイミーブの凄さについては以前記事にしてますのでこちらをご覧ください。

まだ噂や憶測の段階ですが、2022年〜2023年に発売が予定されている日産と三菱が共同開発の軽自動車規格のEVも「航続距離は200キロ前後」「バッテリーはLFPバッテリー」と言われています。

昨日取り上げた「ミニキャブミーブ」についてはまだ情報はありませんが、コスト重視であれば同様に「LFPバッテリー」を採用する可能性もあります。

「LFPバッテリー」の抜群の耐久性については以前BYDの「Bladeバッテリー」について解説した際にも言いましたが、日産・三菱は同じ中国のCATLのLFPバッテリーを使うのでは?との説が有力になっています。

「航続距離は短いけどバッテリーの耐久性があって消耗しないLFPバッテリー」は、レアメタルであるコバルトを使用しないゆえに安価でもあり、コストを抑えることが必須である軽自動車規格のEVを販売するためにはベストの選択であると言えます。

個人的にはここで「東芝のSCiBバッテリーを」という方向に行けない東芝の惨状を見てると「やはり日本オワコンか…」と嘆きたくなるところですが。

EVの物差しが「バッテリー容量」と「航続距離」だけでいいのか?

日産・三菱の軽規格EV
この三菱「アイミーブ(Mグレード)」や昨日紹介した「ミニキャブミーブ」の航続距離はJC08モードでそれぞれ120キロ・180キロなのですが、EVのことをある程度理解している人であれば「高速道路を時速100キロで走行し、クーラーをつけても達成可能な、実用使いにおいて最も信頼に値する」EPAサイクルに換算すると80キロとかになってしまいます。

ですが「高速道路を時速100キロで走行するアイミーブやミニキャブミーブ」という時点で違和感ありますよね(笑)。

既に乗られている方なら「そんな風な使い方滅多にしないよ」と思われるでしょう。特に2台持ちで近所の買い物や通勤はアイミーブ、高速などの長距離移動は別の車を使っている方ならなおさらでしょう。

「全く信頼に値しないJC08モードなんかよりEPAの方がいいんだ!」との声も聞かれましたが(基本的には間違ってません)、アイミーブの場合実際のオーナーの体験談を見てもJC08モードの120キロより走行できたという例はいくらでも出てきます。

軽自動車規格ですので100キロという高めの速度を出すと電費が落ちる、むしろ一般道を適度な速度で走る方が航続距離が伸びる(登録車ですが日産・リーフにもこの傾向があります)のがこれらの車種の特徴なのですが、EPAサイクルでは測定できない部分です。

私は高速道路での走行がベースになるEPAにも測定し切れない要素があるよということを私は言いたかったのですが、当然現在用いられているJC08モードという日本独自の基準も基本的には全く信頼に値しないことも事実です。

まぁ「どうせ80キロしか走れないんだ」と勘違いして不必要な急速充電を繰り返したとしてもバッテリーが全く消耗しないのがアイミーブの「Mグレード」の特徴でもありますので、問題がないと言えばないのですが(笑)。

このように「航続距離」を測る基準すらまだまだ発展途上なのがEVを巡る状況です。EVに乗る際の目安となる航続距離の測定方法なども今後考えていかなければならないところです。

ですので冒頭に引用した記事のように8割の人がそのままEVに乗り続けているという多数派の動向を無視して、「20%のユーザーはガソリン車に戻ってくる=だからEVはダメなんだ」と誘導するような報道には悪意を感じてしまいます。

そしてこのような記事がYahooなどに掲載されるとEVの悪口をこれでもかと書き込むヤフコメで埋め尽くされるところに「日本オワコン」ぶりを感じてしまうのは私だけではないはずです。

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