電気自動車「先進国」のヨーロッパと「後進国」の日本の違いとは?【2017年までは上位だったのに】
おはようございます、@kojisaitojpです。2月に入り、先月2021年1月の世界各国での新車販売台数についての統計が出てきています。
2020年12月の世界のプラグイン車シェアは6.9%(BEVは4.9%)、約57万台で前年同月比で約2倍に。
2020年の累計では4%(BEVは2.8%)約312万台で、前年比で約1.5倍に。
年間の車種別では上位からダントツでテスラ モデル3、後ろに宏光 MINI EV、ルノー Zoeが続きます。
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— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) February 2, 2021
「前年同月比」ですから2019年の12月と比べて2020年の12月を比較すると電気自動車(BEVとPHEVをまとめて世界では「Plug-in」と表記します)の販売台数が2倍に増えているようです。
電気自動車に積極的なヨーロッパやアメリカ・中国以外の国を入れてもこの数字ですから驚異的な伸びです。
車種別で見ると「テスラ モデル3」が首位なのはある意味当然ですが、年度の途中で販売したにもかかわらず3位にフォルクスワーゲン「ID.3」が入ってきており、来年は首位テスラ・モデル3を脅かす可能性もあります。
他には中国メーカーが上位にたくさん入っているのが目立ちます。XpengやBYDが輸出も手がけていますが、大半の中国メーカーは(今のところは)輸出用に改良などを行っていないので、中国一国で叩き出した数字だとわかると驚異です。
本日はヨーロッパと日本の電気自動車化率や電気自動車化が停滞しつつある日本の状況を消化しながら、今後の展望についても考察してみます。
目次
電気自動車「発展途上」どころか「逆走中」の日本
今日は最初に日本の現状を見てみましょう。
日本の場合、ヨーロッパで引用させてもらっているようなデータはないのですが、国土交通省にあったデータを引用すると、
小さくて見にくいかもしれませんが、EV(電気自動車)を表すオレンジ色はほとんど増えていません。今も1%に達しない水準です。
相変わらず「ハイブリッド」を「EV/PHV普及の現状について」という資料で取り上げる国土交通省もどうかと思いますが(しかも「PHV」じゃなくて「PHEV」という世界標準の表記を使うべき)、このグラフからハイブリッドを除くと肉眼でわからないような小さなグラフになってしまいますよね。
日本での電気自動車の普及具合を測るのにちょうどいい「日産リーフ」の日本市場における年間売り上げ台数を調べると、
- 2015年 9057台
- 2016年 14795台
- 2017年 16925台
- 2018年 25722台
- 2019年 19789台
- 2020年 11286台
実は2018年をピークに失速しています。もちろん現在はモデル末期でモデルチェンジが待たれる時期であり、また日産は2021年に「アリア」を投入予定ですので多少の売り上げ台数が落ちるのはわかりますが、それにしてもヨーロッパのように毎年毎年電気自動車の売り上げ台数が新記録を更新しているのと比較すると明らかに退化しています。
ヨーロッパ市場では今でもトップ10に入るくらいの売り上げ台数を誇るリーフでもこのありさまです。
また同じことは「充電インフラ」にも現れており、
「GoGoEV」様より拝借しましたが、2017年までは順調に増えていたのにその後は横ばいです。
つまり日本の電気自動車は2017〜2018年をピークにその後はむしろ衰退しているとも言えます。
某YouTuberが盛んに「電気自動車発展途上国の日本」と連呼していますが、私からすると発展「途上」ですらありません。
これから発展させようと頑張っている国に失礼です(笑)。
一応現代文の講師だったのもあり、こういう言葉遣いには敏感に反応してしまいます。若者から「説教くせぇんだよ」と言われるかもしれませんが、先ほどの「PHEV」を「PHV」と表記する国土交通省も役所として某自動車メーカーに肩入れしすぎじゃないの?と言葉遣いから良からぬ想像ができてしまいます。
「後進国」、下手をすると「逆噴射」しています。最近のマスコミや自動車ジャーナリストによる揚げ足取りのような電気自動車への誹謗中傷を見ていると「電気自動車を進化させるどころか退化させたいのか?」と思うことも多いです。
2021年1月「イギリスの電気自動車普及率」は?
ノルウェーから出すと怒る人もいるでしょうから、まずはイギリスから行きます(以下資料は全てcleantechnica様より引用)。
イギリスの2021年1月は電気自動車(BEV)とPHEVを合わせて13.7%、2020年が10.7%でしたので順調に伸びています。
ちなみに新型コロナウイルスの変異種の影響によりほぼイギリス全土がロックダウンされている状態で、昨年の1月に比べると新車販売台数は40%ダウンしていますが、その逆境でも電気自動車の販売数を増やしているのですから驚異です。
売り上げ上位の車種は「テスラ・モデル3」、「日産リーフ」「ジャガーI-pace」「起亜Niro」「ルノーZOE」の順です。
今でも日産リーフが2位というのも驚きです。
ちなみにようやくイギリスでは右ハンドル仕様のフォルクスワーゲン「ID.4」の発売も開始されたようですので、来月以降は一気にランキング上位に来る可能性が高いです。
【ブランド初の電動SUV】新型フォルクスワーゲンID.4 英国で発売 航続距離500km
新型フォルクスワーゲンID.4の初期モデルが英国で発売されました。ドイツや中国、米国で生産される予定。
「右ハンドル車完成してるなら日本にも持ってきてくれ」と言いたくなるところですが、残念ながら日本市場への投入は2022年以降の予定です。
2021年1月「ドイツの電気自動車普及率」は?
次はヨーロッパ最大の自動車大国ドイツを見て見ましょう。
ドイツの2021年1月は、電気自動車の比率(BEV+PHEV)が21.7%で、昨年の同時期と比べて3倍のシェアです。
ちなみに2020年トータルのEV化率が13.5%でしたので、私がよくいう「指数関数的な上昇」に入りつつあるかもしれません。
売り上げ上位の車種はフォルクスワーゲンのお膝元なのもあり「ID.3」「ルノーZOE」「テスラ・モデル3」の順番です。
4位に「ヒュンダイ KONA EV」が入っているのも目立つところです。世界の自動車事情を理解している人であればヨーロッパ各国のランキングに「ヒュンダイ」や「起亜」が入っていることは不思議ではないのですが、今でも「日本車の方が格上」と頑なに信じている人には受け入れ難い事実でしょう。
年末近くの発売だった「ID.4」も9位にランクインしているのも驚きで、年間通して販売する2021年は間違いなくトップ争いに入ってくることでしょう。
毎年トヨタと販売台数を競っている世界最大の自動車メーカーのフォルクスワーゲンが「2025年までに全車電気自動車化」と宣言していることもドイツにおけるEV化の速度を加速させることに貢献していることは間違い無いでしょう。
2021年1月「スウェーデン」の電気自動車普及率」は?
次はノルウェーに徐々に近い場所で、ノルウェーのお隣スウェーデンです。
スウェーデンを母国とするボルボが昨年までBEVよりもPHEVを中心に販売していた影響から、他のヨーロッパ諸国より特殊な電気自動車化のプロセスをたどっています。
全体の33.5%が電気自動車化している中で、PHEVの比率が高いのはヨーロッパではスウェーデンくらいです。
ですがスウェーデンも2030年からはハイブリッド車やPHEV車の新車販売を禁止する予定ですので、今の時期にPHEVを買っている方々も次回の買い替えの際には電気自動車(BEV)を選ぶ可能性が極めて高いです。
売り上げ台数は何と「起亜 Niro」が首位、ボルボの電気自動車ブランド・ポールスターの「ポールスター2」が2位、またまた3位に日産リーフとここでも日本とは全く立場が違う日産リーフを見ることができます。
2021年1月「ノルウェーの電気自動車普及率」は?
最後に引用するのは、アンチEVの方々が名前を聞くのも嫌がるノルウェーです(笑)。
見ての通りです、もう電気自動車(BEV)だけでも過半数超え、PHEVまで入れると80%に達してしまいます。
この水準まで来るともうガソリン車(あるいはディーゼル車)を探す方が難しくなり、おそらくガソリンスタンドもかなり減少(需要がないので当然です)しているでしょうから、ノルウェーでガソリン車やディーゼル車を乗り続けるということは非常に困難、もうごく一部のカーマニアの方々が骨董品のように趣味で持つ車になりつつあります。
ノルウェーでの売れ筋は圧倒的に「アウディ E-Tron」です。日本市場にもようやく投入されましたが、ヨーロッパでは既に大ヒット中です。
他にはプジョーのE-2008(SUVの方)やお隣スウェーデンのボルボ「XC40」なども売れていますが、日産リーフも6位と大健闘です。
実は日産リーフの価値をわかっているのは日本人より、ヨーロッパ諸国かもしれません。
リーフは実は中古車としてアフリカでも人気なのは以前の記事で紹介しました。
アフリカに輸出される中古車も電気自動車化?【想像以上のペースです】
日本では売れないような多走行・低年式の中古車がアジアやアフリカの発展途上国に輸出されるのは昔からの流れですが、その中古車にも電気自動車化の波が押し寄せているようです。ですが日本から輸出できる電気自動車が日産リーフのみなのもあり、韓国のヒュンダイなどもアフリカ市場に参入してきて、日本の独壇場だった世界にも変化が見えます。
右ハンドルの国では日産リーフ、左ハンドルの国ではヒュンダイや起亜の電気自動車が求められているのがアフリカの現状です。
電気自動車「後進国」である日本が発展する方法は?
世界の全ての国で1月という月は新車販売台数がもっとも落ちる月ですので、人気車種のランキングはアテにならないかもしれません。
しかし新型コロナウイルスの変異種の影響で全土がロックダウン状態のイギリスや、夜間の外出制限などロックダウン一歩手前状態にあるドイツでも電気自動車に関しては前年同月比を大幅に上回る販売台数です。
コロナでロックダウン中だろうが「買い替えは電気自動車で」という流れが継続しているのは恐ろしいことです。
「指数関数的上昇」という表現を使っていますが、電気自動車の割合が20-30%に達している国は1〜2年の間にノルウェーのようになっていても全く驚きません。
片や日本のように今になっても「電気自動車は寒さに弱いのでぇ〜」「航続距離が短いのでぇ〜」「充電できる場所が少ないのでぇ〜」とあらゆる理由をつけて電気自動車の存在を否定するような発言が日々飛び交っている国は絶滅危惧種のように少数派です。
そのおかげか、2017年くらいまでは世界各国と比較しても決してペースが遅いわけではなかった日本が、世界の流れからどんどん周回遅れにされている状態です。
ドイツではフォルクスワーゲン「ID.3」など国内でトップシェアを誇るフォルクスワーゲン社が電気自動車化に舵を切れば、流れは簡単に変わりました。
日本でもトヨタなどが本気で電気自動車に取り組んで、日本のユーザーが欲しいと思う電気自動車を生産・販売できるようになれば変わるような気もします。
またそれと同時に充電ステーションの整備も急ピッチで進めるべきです。
案外多くの「いいね」を頂いたので引用して見ますが、
電気自動車もこんな感じで駐車場とかパーキングメーターにバンバン設置すればいいんだよ pic.twitter.com/0UDQdz7HyW
— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) February 3, 2021
羽田空港でたまたま見かけた充電スペースがパリやロンドンなどで見られる「パーキングメーター」に似ていたのでツイートしましたが、パーキングメーターなどに付属していれば一回60分の制限時間内にかなり充電することができます。
設置に多大な費用がかかる急速充電ではなく、家庭用のコンセントからでも充電可能とコスト面で安く済む普通充電だったとしても、数十キロ〜100キロくらいの充電は可能ですので、設置する意味は大いにあると思います。
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