アメリカのEV充電器設置計画から感じる「日本でのEV普及に必要なこと」とは?
こんばんは、@kojisaitojpです。大統領就任前から「全米に50万基のEV充電器を設置」を公約としているアメリカのバイデン政権ですが、ようやく具体的な施策として出てきました。
「150kW以上の充電器を4基」、しかも50マイルごとにという効果的な施策を考えるのがアメリカ。
Four fast chargers every 50 miles—US unveils EV infrastructure plan https://t.co/LVHO8eQJcK— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 14, 2022
まぁ予算案がなかなか議会を通過しないのもあって紆余曲折はあるようですが、やる時はガチの本気でやってくるのがアメリカですよね。
今日はこのようにようやく実現へ向けて動き出したバイデン政権によるEV充電器設置計画から「日本のEV化に必要なこと」について考えてみます。
目次
「150kW以上の充電器を4基、高速道路で50マイルごとに」という日本でも理想の充電器を設置するアメリカ
知ってる方は当然知ってるでしょうが、フォルクスワーゲンがディーゼル車の排ガス不正問題に関する米国の規制当局との和解の一環として設立したのが今回の充電器設置計画で脚光を浴びる「Electrify America」なのですから、罰ゲームとして始めた会社が脚光を浴びるというのはフォルクスワーゲンとしても嬉しい誤算でしょうけど(笑)。
なぜかヤフコメなどではフォルクスワーゲングループが「EV化の諸悪の根源」のように言われ「日本メーカー潰しを画策してる」と陰謀論も言われていたりしますが。
今回バイデン政権が打ち出した「補助金支給のための条件」というのが「150kW以上の急速充電器を最低4基設置すること」と「高速道路では50マイル(80キロ)ごとに設置すること」なのですが、他にも連邦政府からの充電器への補助金を受給するためには厳しい条件があり、
- 充電ステーションの信頼性(ステーションあたり少なくとも1台の充電器が97%以上稼働すること)
- 電力網への影響を抑制すること
- 需要の増加や充電料金の値上げに応じ、充電ステーションを簡単に拡張・アップグレードできるように設計すること
あちこちで壊れていて使えない、あるいは最大50kW、下手をすると20kWの低速の急速充電器ばかりの日本の充電器だとまず許可はおりないでしょう。
また「電力網への影響を抑制」というのも重要なテーマで、これに対応するためには充電器に蓄電池の設置などが必須になりますが、この辺りにも「地に足がついた」、実現可能な政策にしようという意欲がうかがえます。
なんて言うと「アメリカみたいに国土が広いところでEVなんか普及しねぇんだよ」と乱暴に文句を言ってくる輩が大量に現れますが、既に前例があります。
横から失礼いたします。添付画像は現時点での米国でのテスラ一社の超急速充電網です。すでに皆さん、主戦場のアメリカで走り切っていらっしゃいますよ。 ^安川 pic.twitter.com/7K9fPzLLtq
— evsmart (@evsmartnet) July 28, 2021
実際にこのように一定距離間隔に急速充電器を設置するという計画は既にテスラが自社のスーパーチャージャーで実現しており、既に全米横断に成功しているユーザーはネット上でいくらでも見つけることができます。
「できない理由」を並べて何も改善しようとしない日本人のマインドとは違い、「どうすればできるようになるか?」を合理的に考えるアメリカ人のマインドとの格差がうかがえます。
逆に言えば「アメリカのような広大な国土でも可能なのに何で日本の狭い国土でできないの?」となりますよね。
片やe-MobilityPowerのオワコンEV充電器は…
片や昨年2021年末に首都高の大黒PAに設置されたe-MobilityPowerの最新の充電器が残念充電器、オワコン充電器であることについては私も何度も取り上げてきました。
大黒PAに設置直後に行ってきた時の記事はこちらになります。
e-MobilityPowerの新型充電器がオワコン?【これが専門家・プロのやること?】
e-MobilityPowerの新型充電器が首都高の大黒PAにオープンしたので見学に行ってきましたが速度が出ない・不具合で充電できないなどのトラブル続出のようです。6台同時に充電可能でデザイン性が高い点は評価できますが肝心の充電性能が世界レベルには程遠く、ここに日本の充電インフラとEV化の障害を感じます。
またその後私がマツダ「MX-30」を借りて大黒PAに行った際に「10kW」と驚愕する速度しか出なかった際の記事はこちらになります。
ついにマツダのEV「MX-30」に試乗して大黒PAの充電器を使った話【Gベクタリングが快適?】
これまで多くのEVに乗ってきた中で試乗したことのない数少ないEVの一つ、マツダ「MX-30」に試乗してきた感想をお話しします。「Gベクタリング」がもたらすEVとは思えない制御技術の高さ、テスラのデザイナーにも受け継がれる上質なデザインは高評価せざるを得ません。また噂の大黒PAの充電器も試してきたので結果を報告します。
「最大90KW、6台同時に充電可能」と言っておきながら90kWの速度が出るのは最初の15分だけ、しかも複数台が同時に充電を始めると速度がどんどん落ちて最大でも30kWに落ちるという困った充電器ですが、設置したe-MobilityPowerは「10年先を見越した先行投資」とトンチンカンなことを言ってます。
先ほどのアメリカの充電器設置における補助金の支給基準と比較するといかに終わってるのかがお分かりいただけるかと思います。
まぁ私がこの指摘をしても「プロなんだから当然そんなことわかっててやってるんだ!」とか「こういう充電器を設置せざるを得ないのは何か理由があるんだ!」と謎に擁護するコメントがわいてきたりもしますが、問答無用でオワコン充電器だという見解は何も変わりません。
しかもこのようにガソリン車が当たり前の顔して駐車してる困った状況で(しかもドライバーの一人は寝てました)、救いようがない状況なのが日本の急速充電インフラです。
でもEV普及のために最優先なのは普通充電器です
と急速充電の話ばかりしていると問題の本質からそれてしまうのでしつこいですが「EV普及のカギは普通充電器の設置」であることには繰り返し触れておきます。
日本のEV化に関する文脈で必ず出てくる「充電インフラガー」という批判はあたかも急速充電器しか見てないかのようで私としては不満があります。
「急速充電でギャーギャー騒ぐよりまずは普通充電器の大量設置」という私の持論についてはこちらの記事もあわせてご参照いただければと思います。
EV化で最優先すべきは急速充電器ではなく普通充電器?【EV普及のたった一つの方法】
「充電インフラが整わないうちはEVは」というのがEVへの典型的な批判になりますが、この時の「充電インフラ」とは何を指すのでしょうか?どうも日本では「充電=急速充電」という間違ったイメージがまかり通ってますが、実は自宅や職場、旅行の際のホテルなどに普通充電器があれば車を置いている間に充電できて急速充電が不要になります。
急速充電器が本当に必要になるのは例えば「高速道路を利用した長距離移動」などの場合ですが、そもそも高速道路で何百キロも移動するというケースが年に何回ありますか?という話です。
それよりは日常生活のあらゆる場面に普通充電器があることの方が重要ではないでしょうか?
テスラやIONIQ5のように400キロ500キロ走れるEVを出しても批判されるだけですので、あえて航続距離が200キロ前後と短いマツダ「MX-30」を出します。
自宅で普通充電が可能な環境で満充電で出発して毎日200キロ以上走る人がどれ位いますか?
仮に自宅充電できない環境だったとしても職場の駐車場、ショッピングセンターの駐車場など長時間滞在する場所に普通充電器が満遍なく設置されていたらバッテリー容量が35.5kWhのMX-30なら5-6時間あれば満充電になります(普通充電器の速度が6kWの場合)。
普通充電器が街の至る所にあって常に満充電にできる環境があれば航続距離が最も短い方のMX-30でも長距離移動以外は問題なく日常生活を送れます。
まぁこういう話をすると「うちは毎週東京→大阪を車で移動するんだ!」と例外アピールをしてくる人が必ず現れますが、基本的に無視します(笑)。
だけど、管理組合で可決しなければならない分譲にくらべて、オーナーの意識さえ変われば可能になる賃貸の方がスムーズな気もします。
不動産屋に、「今時エアコン付いてないと入りません」だったのを、「今時EVコンセントぐらいないと入りません」と言ってもらいましょう(笑)。
— しょに鉄@給電計装 (@electric_jn24) February 14, 2022
「自宅への普通充電器設置」で必ず問題になるのが「管理組合の承認が必要な分譲マンション」と「オーナーの承認が必要な賃貸マンションや月極駐車場」になりますが、こういう場所に普通充電器を気軽に設置できればEVの運用に全く支障がなくなるというのはノルウェーの事例が証明しています。
先ほども引用した、私がMX-30に試乗した記事でも「なぜノルウェーでMX-30がそこそこ売れるのか?」という理由として「ノルウェーではエンジンの始動をスムーズにするためにエンジンブロックヒーターが必須で、このために設置されたコンセントがEVの充電に使われている」という話に触れています。
ついにマツダのEV「MX-30」に試乗して大黒PAの充電器を使った話【Gベクタリングが快適?】
これまで多くのEVに乗ってきた中で試乗したことのない数少ないEVの一つ、マツダ「MX-30」に試乗してきた感想をお話しします。「Gベクタリング」がもたらすEVとは思えない制御技術の高さ、テスラのデザイナーにも受け継がれる上質なデザインは高評価せざるを得ません。また噂の大黒PAの充電器も試してきたので結果を報告します。
航続距離がアメリカのEPAサイクルで100マイル(160キロ)と酷評されたマツダ「MX-30」でもノルウェーでは売上ランキングに時々顔を出しているという事実と「どこの駐車場にもコンセントがあっていつでも充電可能」というノルウェーの事情には関連があると私は思っています。
日本でも間違いなくEVへの関心は高まってます
このように日本の終わっている充電器設置状況を見ていると絶望的な気分になりそうなところですが、実は私自身はそこまで悲観してません。
その一つの根拠がこれです。
テスラに対する強めのヘイトを目にしたのですが、こちらが想像しているよりも大きな嫌悪感を抱いている人も少なくないのだなと、、、その熱量の高さに驚きます。。
だからなんだ、という話ですが、
そういう目で見られている可能性もあるということを頭の片隅に置きつつ、街中を走ろうと思います。😅— Hampton (@hamptonbo3) February 14, 2022
これは「高速道路でオートパイロットなら寝てても平気」とか「任意保険不要」などと呟いていたテスラオーナーに向かって猛反発している様子を語ったものです。
私自身の見解としては「でもアンチがそれだけの熱量でテスラに発狂する=テスラに興味がある」ということの裏返しになるのでむしろいい傾向なのでは?と思っていたりもします。
もっと誰も注目せず無視されるかなと予想してたからこれだけアンチがIONIQ5に発狂してくれると前より欲しくなっま(笑)
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 14, 2022
同じことは先日日本市場への再参入が発表されたヒョンデ(ヒュンダイ)のEVである「IONIQ5」にも向けられており、マスコミの報道にIONIQ5が出るとヤフコメなどにはものすごい勢いでヒョンデを罵るコメントが殺到しています。
これを見て「これだから日本ではEVなんて普及しない」と思ってしまいがちですが、私の見解は逆です。
何度も引用してるけどこれ(笑) https://t.co/3QwwlDwoAF
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 14, 2022
別にオリックスファンだからではありませんが(いや、多少はあります)、私が日々引用するイチローの発言です。EVでも同じことが言えると思ってます。
テスラやヒョンデ(ヒュンダイ)に対してヤフコメや2ちゃんねるなどでアンチによる悪口が沸騰すればするほど「そっか、これだけでEVに対して、テスラやヒョンデ(ヒュンダイ)に対して関心があるんだな」と私はポジティブに解釈してます。
これは予備校講師としての経験も影響してますが、基本的に人気講師にはアンチも多数わいてくる業界でしたから(笑)。
実際サーチコンソールを見ていると私のブログにも「電気自動車 寒さに弱い」とか「EVネイティブ 気持ち悪い」とか「ヨーロッパ 電気自動車 失敗」などの検索ワードからの流入がここのところ急増しており、検索ワードの性質からアンチEVの方々が何とかしてEVのネガティブ材料を探して必死で検索している姿が想像できます。
私からすれば大歓迎です、それだけEVへの関心が増大してるわけですから。
後は可能な限りEVに関する正しい情報を提供していくこと、EVでビジネスをやろうとするならただ商品を並べるだけではダメだなと思ってますが。
もう外観はできてる。期待しかない。 https://t.co/0fwlG6vsyM pic.twitter.com/sh4KaDPWXo
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 14, 2022
なので「IONIQ5」の試乗も初日に予約したので現在のところ無視を決め込んでいるモータージャーナリストなどより早く情報をアップしたいと思ってます。
モータージャーナリストなどが無視していても私のような一般人でも情報発信できる現代社会のメリットを最大限活かして何かをやっていきたいと思います。
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