アメリカの「EV化」の流れを無視して「ガソリン車」に執着する日本人のマインドとは?
こんばんは、@kojisaitojpです。先日から「アメリカは州ごとにEV化への取組度が違う」ということを解説してきましたが、一覧にまとまっている記事があったので引用しておきます。
一昔前なら「アメリカがやってるぞ」となると「日本もやらなきゃ」となったんだけどなぁ…。 https://t.co/QKcZcurtvb
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 28, 2021
私の場合2035年が3035年になってるのにいちいちケチをつける気はないです、記事を読めば誤植なことがわかることですので(笑)。
予備校でも仕事でも模試の採点会議などで問題作成者の誤植にいちいちケチをつける「それ意味あるの?講師なら誰が見てもわかるでしょ?」的な揚げ足取りに辟易したこともありますが。
まぁそれはともかくとして、最も有名なカリフォルニア州の2035年からの内燃機関車の販売禁止の他に13の州でガソリン車・ディーゼル車(内燃機関車)の販売を規制しようという動きが進んでいることが記事から明らかになります。
シアトルなどのあるワシントン州が2030年からとヨーロッパにおけるイギリスやオランダ並に早く規制しようとしているのが特徴で、バイデン政権の進める連邦政府レベルでのEV化の流れと呼応するかのようにアメリカの各州の動きも加速しています。
先日の記事では「世界のEV化事情」として主にヨーロッパと中国を取り上げましたが、それに補足する意味でアメリカの状況も取り上げたいと思います。
目次
アメリカの14州で「内燃機関車」が禁止の方向とEV化へ一枚岩の連邦政府
さて冒頭の記事の内容ですが、現在アメリカの14の州で「内燃機関車(エンジン搭載車)」の販売を規制する方向で話が済んでおり、
- 2030年から→ワシントン州
- 2035年から→カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、コロラド州、コネチカット州、デラウェア州、メイン州、メリーランド州、ペンシルヴァニア州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州
となっています。まだ法律として成立した州はありませんが、カリフォルニア州のように2020年9月に州知事の命令として(連邦政府でいう「大統領令」のようなもの)ゼロエミッション車以外の販売を禁止するように出ており、カリフォルニア州の法律となるのを待つ状態です。
以前トヨタがアメリカ政府にロビー活動をしてEV化を妨害していることに触れましたが、「法律」として成立する前に圧力をかけようという動きだったようです。今のところ成功した例がありませんが。
テスラ・フォルクスワーゲンと比べたトヨタのオワコン具合とは?【終わりの始まり・Prologue】
先日発表された「AYGO」がガソリン車であったことも衝撃でしたが、他にもトヨタはアメリカでEV化の流れを妨害するようなロビー活動や政府の補助金にハイブリッドも加えてもらうように圧力をかけているという情報が出てきました。EV化の流れに上手く乗ったテスラやフォルクスワーゲンとトヨタの間にはどのような差があるのか考察します。
まぁまだ法律として成立していないのをいいことに「広大な国土を持つアメリカがEV化なんかできるわけがない」的なことを言っている日本の自動車ジャーナリストなどはいますが、以前も取り上げたようにフォードの「F-150Lightning」の予約が10万台を超えるなど着々とEVが普及する足音は聞こえています。
バイデン政権が提唱する「全米50万箇所に充電ステーションを設置する」「連邦政府の公用車を全てEVにする」を実行するためのインフラ投資の予算案がいよいよ議会を通過しそうな状況です。
バイデン米政権、インフラ投資計画で超党派上院議員と合意、新規支出は5,790億ドル(米国) | ビジネス短信
「超党派での合意」とあるところがポイントです。シェールオイルなど石油産業に支持基盤のある共和党もこの予算案に合意しているわけで、アメリカ全体がEVを本格的に普及させていこうとやる気になっていることは見逃せません。
この状況が読めずに「ハイブリッド車も優遇してくれ」「EVだけではなく多様性が必要だ」と力説したところで、聞く耳を持ってくれないのが現実でしょう。
テスラのみならず、先ほどの「F-150Lightning」を始めとしてEVに注力し始めたフォード、「2035年までに全ての車をEVに」と宣言しているGMなどアメリカの自動車メーカーがEVに全面的に移行しようとしている中で日本メーカーに便宜を図ってくれるほど甘くはありません。
アメリカだとGMのOEMになるんだろうけどとりあえず公約に沿った動きのスタート。
ホンダ新型電動SUV「プロローグ」2024年初めに発売決定! GMと共同開発で北米での量産EV第1弾登場へ | くるまのニュース https://t.co/uBIpUtHj8P— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 28, 2021
ホンダがGMとの協業によって北米でEVを販売するというのは以前も取り上げましたが(この時は北米以外の動向が不明だったので私も批判的に書いてますが)、こちらは2040年までに全車EVとFCEVにするという方針に沿って動いています。
ホンダがGMに電気自動車を作ってもらう未来が来る?【提携という名の依存?】
昨年からホンダがGMと提携して、GMのプラットフォームで電気自動車を生産するという情報が流れていますが、このことが持つ大きな意味について考えてみます。先日発売された「ホンダe」がバッテリー調達に失敗したことから考えると「ホンダに電気自動車を生産する能力がない?」という可能性まで浮上してくる重大な意味を持つ業務提携です。
ホンダの「2040年までに全車EV化」がグローバルで生き残る手段?【日本郵便のEV化計画も紹介】
世界のEV化の流れに遅れていると思われていたホンダが日本勢で初めて「2040年までに全車電気自動車化」の計画を発表と衝撃が起きました。その計画もエリアごとに具体的なプランが練られており、日本市場の雇用も維持できる地に足がついた計画です。そのホンダの2輪EVを既に使用している日本郵便の脱炭素の計画と一緒に紹介します。
北米市場という日本メーカーにとって中国市場と並ぶ巨大マーケットで生き残るためにどちらの会社の判断が賢明なのかが数年も経てばわかることでしょう。
アウディに続きフォルクスワーゲンも「エンジン」止めます
先日私も取り上げたように「アウディが最後のガソリン車を2026年に発売して、その後は新規開発ストップ」というニュースがありましたが、フォルクスワーゲンもこれに続くようです。
Volkswagen Expects To Exit The ICE Car Business In Europe By 2035
With the rapid progress in battery-electric cars, it seems that it’s just a matter of time until we will see the end of internal combustion engine (ICE) cars.
アウディの発表があった後で日本国内のEVが嫌いな方々からは「アウディのような高級車をEVにして、フォルクスワーゲンやシュコダのような安い車作るメーカーはエンジン続けるだろ」と言われていましたが、あっという間に否定されました。
フォルクスワーゲンの目標は「2030年にEV比率70%(ヨーロッパ内)」でしたが、どうやら2033-2035年には内燃機関車(ガソリン車・ディーゼル車)の販売を止める方向のようです。
もちろん地域によって違いはあり、「北米と中国市場はその数年後、南米やアフリカは更にその後」とのことですが、それぞれの国のEV普及率や充電インフラの整備状況によって変化するのは当然のことです。
この辺の事情を取り上げて「アフリカでEVなんか普及するわけがない」とか「東南アジアでEVなんか無理だ」などと「日本で無理なものが発展途上国でできるわけがない」的な上から目線な物言いがEVを嫌いな方々に見られますが、これが不適切であるのは私のブログで以前から指摘している通りです。
「タイが2035年から全車EV化」が与える衝撃とは?【新興国・発展途上国こそEV化したがる?】
タイが「2035年から新車販売はEVのみ(ハイブリッド・PHEVも不可)」という全面的に電気自動車化する計画を新興国・発展途上国で初めて出してきました。「できるわけないだろ?」と先進国目線では思いがちですが、燃料代が国家財政を圧迫する国が多い新興国・発展途上国では再エネとEVの普及を先進国以上に待ち望んでいます。
「再エネ」「マイクログリッド」「EV」で格差を埋めるアフリカ【日本の方が後進国?】
先日紹介した南アフリカ共和国ほど裕福ではないアフリカ諸国にもXpengやBYDを始めとする中国のEVメーカーがどんどん進出しています。再生可能エネルギーとマイクログリッドによって電力供給を可能にし、EVによって移動手段を手にすることで先進国と発展途上国の格差がどんどん埋まっていく未来の可能性について解説します。
産油国など自ら化石燃料を産出する一部の国を除くと、発展途上国・新興国の財政を最も圧迫している原因が「燃料代」です。
再生可能エネルギーで発電した電力とそれによって走るEVが普及するというのは燃料代が国家財政を圧迫する発展途上国・新興国にプラスになるものであることが理解できていない層が多いのが日本の残念な現実です。
ここまでEVにネガティブなのは日本だけ?
今日はアメリカの各州がEV化に積極的な状況を解説しましたが、以前に解説した記事と合わせてヨーロッパ・中国・アメリカが本気でEV化を推進し、東南アジアやアフリカの発展途上国・新興国もEV化に前向きという世界の状況が明らかになりました。
むしろEVに対してこんなネガティブな態度をとっているのは日本くらいでは?という状況です。
これだと車メーカーの方が法律を決める各国政府より偉いって話になってしまうぞ。相変わらずだな。
EV生産比率を2.5倍に増やすマツダと政府の“パワハラ”:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン https://t.co/L2mUfcXYNM— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 28, 2021
そんな雰囲気に乗っかってこのような記事を書く自動車ジャーナリストが次から次へと現れるのが日本のお寒い現実ですが、忘れてはいけないのは「こんな車は販売していい、こんな車は販売しちゃダメ」というのを法律で定めるのは各国政府です。
世界各国の政府がEVを優遇し、内燃機関車についてはハイブリッド車も含めて規制をする方向なのが現時点での世界の流れです。
この記事の言い方だと「どんな車を売るか決めるのは車メーカーだから各国政府はその邪魔をするな」的に、本来「政府>車メーカー」のものを車メーカーが各国政府より格上であるかのような問題発言が見られます。
この流れにケチをつけて「マツダはEVをやりたくないのにやると言わされている=政府のパワハラ」と罵ったところで世界の流れは変わるものではないと思うのは私だけでしょうか?
そんなに各国政府の決定が不満であれば、今の新型コロナウイルスの感染状況だと直接抗議に行くのは難しいかもしれませんが、日本国内にある各国の大使館に抗議活動でもやればいいのでは?と思ってしまいます。
日本国内で、しかも日本語で自分の話を聞いてくれそうな人々向けに耳障りのいいことを言っているだけ、しかも「タピオカ屋のように増殖するEV」などとEVを罵るような発言を大手マスコミの記事に書いてしまうようでは先が思いやられるところです。
冒頭で引用したツイートにも私が呟いたように「一昔前」、つまり「ジャパンアズナンバーワン」などと言われ日本の技術が世界を席巻していた時代の方が「アメリカがやるなら日本もやらなきゃ」的に世界の流れを読む力が残っていたような気がします。
むしろ今のように先進国から転落寸前に衰退してから「何で世界の流れに合わせなきゃいけないんだよ!」的な意味のない自己主張を始める人が増えたような印象です。
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