アフリカでも電気自動車(BEV)に市場を奪われる日本勢?【「ORA BLACKCAT」の脅威】
こんばんは、@kojisaitojpです。ほとんどの人は関心がないでしょうが、また一つ日本の市場が食われ始めているようです。
ほら、黒猫がアフリカに進出した。
You Can Now Get The Ora R1 In Ghana! https://t.co/tGVkOk4bgq @cleantechnicaより— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) February 15, 2021
アフリカ市場というとピンと来ないかもしれませんが、価格的に新車ではなく先進国から輸出される中古車が中心で、これまでなら最も主流派だったのは「故障が少ない・燃費がいい」と言われる日本車でした。
日本ではもう売れなくなったような低年式・多走行の中古車の行き先といえばアフリカやアジアの発展途上国で、特にハイエースやランドクルーザーのような使い勝手の良い車は思わぬ高値で取引されることもあります。
そのアフリカ市場にも変化が起きていて、その変化とはもちろん「電気自動車化」です。
発展途上国の予算でも買える格安の電気自動車、中国の長城汽車(GreatWall社)「ORE BlackCat」がアフリカのガーナで販売が開始されたというニュースです。
これまで日本車の独壇場だったアフリカ市場にも電気自動車が入ってきており、日本車が供給できない状況に中国や韓国のメーカーが参入しているという話が、今日のテーマです。
目次
格安EVの「ORA BlackCat」がアフリカに上陸の衝撃
以前であれば日本の中古車がガソリン車、ハイブリッド車を問わず大人気だったのがアフリカの市場(経済水準が違う南アフリカ共和国を除く)でしたが、今や様変わりしているのは以前お話ししました。
以前の記事でもアフリカの電気自動車化には触れたことがあり、「バッテリーとヒーターに難があり、日本では不評」だった初代初期型の日産リーフ(2010〜2012)でさえオファーが殺到というジンバブエの例を挙げたことがあります。
「アフリカなんて電気自動車どころか電気すらマトモに普及してないんだろ?」などと何も知らないと思ってしまいがちですが、実は溢れる大自然を活用した再生可能エネルギー(太陽光でも風力でも地熱でも何でも行ける)発電が近年盛んです。
「ORA BlackCat」を発売することが発表されたガーナではむしろ電気が余っている状態です。
電気が余っていて、しかも産油国ではないのでガソリン代が高いとなれば「電気自動車(BEV)使おうか?」となるのは自然な発想です。「二酸化炭素の排出量が変わらないのでぇ〜」「原発が必要になるのでぇ〜」と何とかして電気自動車を否定する材料を必死に探して変化に抵抗するどっかの国とは違います。
反対に貧乏な国ほど「ガソリン代が高い」という死活問題を解決するために「再生可能エネルギーを使って電気自動車」という方向に行きます。
そこに入ってきたのが先ほどの「黒猫(BlackCat)」です。
「黒猫(BlackCat)」は中国の「長城汽車(グレートウォール・モーター)」が「ORA(オーアールエー)」というブランド名で販売する小型(日本の軽自動車サイズ)の電気自動車です。
スペック的には「搭載バッテリー容量37kWh、航続距離(EPA)約240キロ、最大充電出力30kWh」で価格が約130万円という電気自動車では「Hongguang Mini EV」の次に安い車種となります。
以前私も解説した「Hongguang Mini EV」が発売されるまでは世界で最も安いEVとして中国国内で爆売れしていた車種で、現在でも「Hongguang Mini EV」や「テスラ・モデル3」などの売れ筋と並んで中国ではトップ5以内に入る人気車種です。
そんな格安の電気自動車をアフリカへ輸出し始めたというのが現在の状況です。
以前アフリカへの中古車輸出をやっている業者と話をした際に「アフリカなんて100年経っても電気なんか普及しねぇよ」的なことを言ってて見通しが甘いなと思ったことがありますが、こういう隙のあるところには中国や韓国のメーカーが入ってくるというのはその昔家電とかスマホの市場で繰り返された光景と同じです。
ちなみにガーナにはヒュンダイも進出しており、「Kona EV」を販売しています。
ナイジェリアでは自国生産の電気自動車が
中国や韓国製の格安EVだけではありません。ナイジェリアでは自国で電気自動車を生産しようとしています。
スペックはこんな感じです。
- 100kwh /120kwh battery packs with active thermal management (liquid cooled)
- Length 4725mm
- Width 1931mm
- Height 1969mm
- Wheelbase 2890mm
- Curb weight 2485kg
最大のポイントは「flexible photovoltaic solar cells are seamlessly integrated into the roof seamlessly and beautifully」で、何と天井にソーラーパネル搭載で発電しながら走れるという点です。
元々のバッテリー容量も100kWh/120kWhと大型でバッテリーマネージメントシステムも搭載ですし、本当に発電しながら走れるのであれば日本で「人馬一体」をうたうメーカーが出したSUVよりレベルは上になるかもしれません(笑)。
そういう意味でもナイジェリアの「BrightCloud社」は今後も注目して追いかけていこうと思います。
アフリカでは南アフリカ共和国(要は最も経済水準の高い国)にはトヨタや日産、メルセデス、フォルクスワーゲンなども工場があり、現地生産をやっていたのですが、それ以外の国に展開する例は非常に少ない状態でした。
しかも生産するのがガソリン車とハイブリッド車とEVを生産する能力はありません。
そこで最近になって先ほどのヒュンダイが現地(今のところエチオピア・ナイジェリア)に工場を建設したり、現地の業者が自国でEVを生産しようとしたり(オリジナルの場合もOEMの場合もある)という流れが出てきました。
「日本で誰も乗らなくなった中古車輸出すれば喜んで乗るだろ」と言えた時代も終わりが近いかもしれません。
発展途上国のシェア抑えられると「詰む」のが日本の自動車メーカー
先進国で「電気自動車化(エンジン搭載車の販売禁止)」が進む中で、規制がゆるい(というか厳しい規制を課しにくい)発展途上国は「故障も少なく、燃費がいい」日本車が重宝される大事な市場でした。
もちろん今でもそれなりに需要はありますが、今日見てきたような電気自動車化がどんどん進むと先は不透明です。
ですが肝心の日本メーカーからそれほど危機感が伝わってきません。
「え?今からハイブリッド?」というのが正直な感想です。まぁ軽自動車は日本独自の規格なので、2035年以降もハイブリッド車の販売がOKな日本市場だけのために生産するのも間違いではありませんが。
ですが例えば「スズキ」が抱えている最大の市場はインド市場です。
そうです、テスラの進出を先日話題にしたインドです。
米テスラ、インドでのEV製造合意近い-関係者 https://t.co/KbUzWuTN1N @businessから
— tesla_ev_dream (@dream_tesla) February 15, 2021
現在日本のGDPはアメリカ、中国に次ぐ世界3位ですが、次は2030年くらいにインドに抜かれて4位に転落するというのが大方の予想です。
中国以上に成長する潜在能力のあるインド市場でもテスラが先陣を切って電気自動車が進めば、これまでトップのシェアを誇っていたスズキもピンチですが、当のスズキに電気自動車を開発する気はないようです。
「インドなんてみんな貧乏で電気もロクに通ってないだろ?」のように自分の知らない世界を軽く見てバカにしがちなのが日本人の悪い癖だと私は思っているのですが、この画像は「インドのシリコンバレー」と呼ばれるバンガロールです。
GoogleやAppleに加えてテスラも進出したインドでも最先端を行くハイテク都市です。
もちろんこのような(一昨年ニューデリーで私が撮影)カオスなインドという一面もあるので、まだまだ貧富の差はあります。
でもそういう一面だけ見てその国のことをロクに知りもしないのにバカにするという傲慢な態度こそが日本が衰退する原因のような気がします。
インドでもアフリカでも同様ですし、「ドイツは原発やってるフランスから電気買ってるから電気自動車化できる」のようないつの時代の話なの?というカビの生えた知識をアップデートしようとしない姿勢も同様です(今やフランスは万年電力不足で、再生可能エネルギー主体のドイツから電気買う立場です)。
若者だろうが老人だろうが年齢に関係なく私が「頭が加齢臭」と揶揄するのはそういう類の人々です。
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