サウジアラビアもドバイも?産油国も新興国もEVシフトする世界の流れとは?【日本だけ孤立?】
こんにちは、@kojisaitojpです。このニュースが私にはあまりにも衝撃的だったので取り上げないわけにはいきません。
「産油国だって大急ぎでEV化」と言ったところで「日本では普及しないんだ!」と発狂されるだけなのでアホらしくなる。
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) April 28, 2022
アメリカのEVスタートアップの「Lucid」については私のブログでも取り上げたことがあり、1500万オーバーのフラッグシップセダン「Air」が2021年中にアメリカで納車が始まることに触れました。
アメリカの新興EVメーカーをまとめて紹介【Rivian・Lordstown・Lucid】
アメリカの新興EVメーカーの中でこれまで取り上げたテスラとCanoo以外のメーカーとして「Rivian」「Lordstown」「Lucid」を紹介します。現在多数の新興EVメーカーと既存の自動車メーカーが電気自動車という新しい市場で競争していますが、ピックアップに特化、商用車に特化、高級車に特化とそれぞれ個性的です。
一年以上前に書いたものなのでその後事実に多少のずれは生じていますが、この「Lucid」社がアメリカに続く生産拠点としてサウジアラビアを選び、サウジアラビア政府も公用車に5万台発注(後に最大10万台まで増える可能性も)というニュースが目に入ったので衝撃でした。
「え?産油国なのにEV?」と思いますよね。
先に結論を言うとこれが世界の現実です。
そこで今日はこの「Lucid」社のサウジアラビア進出について解説しながら「産油国でも広がるEV化」について考察してみます。
目次
アメリカ「Lucid」のEVをサウジアラビアで生産?
今回話題の「Lucid」社の「Air」は1500万オーバーのテスラもびっくりの高級車なのですが、これと今後Lucidが開発するSUVタイプのEVを5万〜10万台購入するというだけで驚異ですよね。
ところがサウジアラビアの場合は政府関係者や王族関係者だけで何万人という需要が生まれてしまいます。
日本の皇族のようなイメージだと「ごく僅かの人数しかいない」と思ってしまいますが、一夫多妻制の中東の場合王族の人数はネズミ算式に増えていきます。
現時点で「サウド家」の関係者と思われる人数が5000人から10000人はいると言われています。
サウジアラビアの人口が約3500万人ですから3500人に一人は王族ということになります。王族の数が日本と桁違いですよね。
これに加えてサウジアラビアの政府関係の車両に「Lucid」のEVを導入すればあっという間に万単位の台数になりますよね。
高級車過ぎる? いや、ドバイなどのショッピングモールの駐車場へ行くとフェラーリとかランボルギーニとか見飽きるくらい停まってるのを私も見たことがありますので納得です。
産油国恐るべしというところです(笑)。
そしてこれにとどまらない恐ろしいところは「2023年からサウジアラビア国内の工場でLucidのEVの生産を開始するというニュースです。
これまでのサウジアラビア(だけではなく大半の産油国も)は外貨を獲得する手段が「原油」や「天然ガス」など資源の輸出のみに依存する国がほとんどでした。
当然ですが「原油が枯渇したらどうする?」という疑問は産油国自身もわかっているわけで、
- LucidのEVを歓迎する富裕層の存在
- 自国で生産し輸出することで外貨獲得の拠点に
- 自国の工場で生産してくれると雇用が生まれる
「EVが普及すると原油が売れなくなって困るんじゃないの?」と思うならそれは浅すぎます。
原油は車の燃料以外にも様々な場面で使われますので(現時点では例えば航空機の燃料や船舶の燃料は化石燃料依存です)別にガソリンが売れないから困るというわけではありません。
それに「脱炭素」というのは先進国のみならず産油国にも課せられるものですので、サウジアラビアも「2050年までにカーボンフリーの実現」を目標に掲げています。
今日はメインテーマではないので話しませんが、日本が今注目してる「水素」もサウジアラビアなどの中東で生産されたものが輸出される可能性もあります。
話を戻しましょう。
「自国で生産し輸出することで外貨獲得の拠点に」というのはテスラが上海に「ギガファクトリー上海」を作った際にも中国政府がこれをメリットだと解釈したからこそテスラだけは例外的に単独での工場設置(中国で自動車メーカーは原則は中国メーカーとの合弁会社じゃないと生産できません)を許可したというのがありました。
「Lucid」に対するサウジアラビア政府の姿勢も同様でしょう。
「原油以外での外貨獲得の手段」になると同時に「サウジアラビア国内の雇用を増やす」ことにつながるので「Lucid」にとってもサウジアラビア政府にとってもWin-Winの関係です。
「原油だけに依存する経済からの脱却」にEVが貢献するのは皮肉にも思えますが、産油国でもこのような動きが活性化していることが注目に値します。
ドバイでも自国ブランドのEVを生産する動きが
このように「原油に依存した経済からの脱却」は産油国が長年抱えているテーマの一つで、他の産油国より早く金融や不動産にシフトすることで繁栄したドバイの存在は誰でも知っていることでしょう。
そしてそのドバイにもEV化の波が押し寄せてきています。
ガソリン激安のドバイでEV充電してもガソリン代より安いという衝撃の話が。
Dewa's charging stations help Dubai's EV users save 73% on fuel costs https://t.co/kbTHY3KuSC @TheNationalNewsより— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) April 29, 2022
実はドバイにはテスラも2017年から店舗を出店しており、現時点ではまだ富裕層のみしか浸透してませんがEVの販売を行っています。
またアラブ首長国連邦のドバイでは「ユーザーとしてEVに乗る」だけではなく「自国でEVを生産する」というのが既に始まっている点ではサウジアラビアより一歩先に行ってるかもしれません。
UAE company opens new electric vehicle manufacturing plant in Dubai Industrial City
The Dh1.5bn factory for M Glory Holding Group is expected to manufacture 55,000 EVs and create 1,000 jobs
「M Glory」というドバイ発のスタートアップ企業が先月2022年3月に「Al Damani DMV300」というドバイで生産された自国ブランドのEVを発表しています。
ドバイブランドのEVをドバイ内の工場で生産する、これまでは世界各国から(主にヨーロッパや日本)車を輸入するだけだったドバイが変わりつつあると言えます。
先ほどのサウジアラビア同様に「自国でEVを生産して輸出することで新しい外貨獲得手段になる」「工場のおかげで雇用の創出ができる」とドバイの経済にも好影響を与えます。
私もドバイには何度も行ったことがありますが、ホテルなどで配車を頼むと出てくるのは「デラックスタクシー」と呼ばれるBMWやボルボなどのヨーロッパ車が多いですが、街中のタクシー乗り場で拾うタクシーはそのほとんどが日本車、それも圧倒的に多いのがトヨタ「カムリ」でした。
例えばこれがテスラの「モデル3」やドバイのメーカーが生産したEVに置き換わっていく未来が想像できますよね。
日本車のシェアがどんどん失われていく時がすぐそこに迫ってると思うのでは私だけではないでしょう。
もちろん成功するかどうかはわかりません。ですがこれまでは「自動車は輸入に依存」だった産油国や新興国が変わり始めている事実は認識しておくべきかと思います。
EVシフトで新興国・発展途上国が日本メーカーに依存しなくなる?
今日はサウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)を具体例に「実は産油国でもEV化は進んでいる」事情について触れてきましたが、おそらく「ただ同然でガソリンが手に入るのに何でEVなんかやるんだ?」と思う人もいることでしょう。
エコかどうかなんて話より世界の権力闘争なことを理解できないから置いていかれるわけで。
EV化が進む「自動車産業」 覇権握るのは米中?欧州? EU議会の提言を読み解く(Merkmal)#Yahooニュースhttps://t.co/BAwaU3WnjO— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) April 29, 2022
これについては私の中では既にある程度の結論が見えていて、自動車業界の内部で見ると「内燃機関からEVへの転換」という権力闘争だと思っています。
そしてその権力闘争を主導する側にいるのが個人的に「外交の達人」と呼ぶイギリス、今や世界経済への影響力はバブル期の日本をも超える規模になった中国、そしてバイデン政権の誕生後に急速なEVシフト・再エネシフトを打ち出したアメリカと強国だらけです。
これらの国を相手に「エンジンは不滅だ」と日本だけ意地を張っても相手にしてもらえないと思うのは私だけでしょうか?
このような「強国」だけではありません。
以前私のブログでも「ベトナムやトルコでもEVを生産する動きがある」と解説したことがありますが、実はEVになって自国でEVを生産しよう、これまでは自動車の純輸入国だった国が輸出もやろうという方向に世界が動いています。
ビンファストはガチの本気でEV普及させようとしてるのが伝わってくる。
かつてのトヨタを彷彿? ベトナム初の自動車メーカー「ビンファスト」が仕掛けるアメリカ本格進出と周到な「手土産」(Merkmal)#Yahooニュースhttps://t.co/ATXq1PWEmq— saito koji@バルセロナ行き中止ならオスロ行くか? (@kojisaitojp) April 25, 2022
もちろんこのような動きに対して「エンジンがないからって車は簡単には作れないぞ」「大半は失敗するよ」と説教臭いことを言うこともできます。
ですがこのように「自動車を輸入に依存」することを止めようと動く国がいくつも出てきてることを見逃していいのでしょうか?
いずれまた取り上げますがこのベトナム「ビンファスト」などは私の個人的な予想でもかなり成長するのではと思うのですが。
ビンファストは2輪もやって本気で新興国・発展途上国をEV化しようとしてるな。
【ベトナム】ビンが新電動二輪発表、フル充電で200キロ(NNA)#Yahooニュースhttps://t.co/4LkbsyCx7V— saito koji@バルセロナ行き中止ならオスロ行くか? (@kojisaitojp) April 28, 2022
東南アジアの新興国などへ行ったことがあれば「交通のキーマンは四輪よりも二輪」というのは誰でも実感できることだと思いますが、ビンファストは既に電動バイクの開発も行っているわけで、「本気で全部EVに置き換えようとしてる」のがわかるかと思います。
ちなみにこれまでベトナムに最も多く自動車を輸出している国は「日本」です。他の東南アジア諸国もたとえばタイやインドネシアなども日本車の独壇場でし「た」。
あえて「でした」と過去形にしておきます。
成長して自国でEVを供給できるようになると当然ですが新興国・発展途上国で世界トップのシェアを誇っていた日本車の牙城が崩れていきます。
これに何の危機感も持たないで「どうせ失敗する」などと余裕をぶっこいた状態では足元をすくわれるのでは?と思うのは私だけではないと思います。
本日取り上げたサウジアラビアやドバイ(アラブ首長国連邦)だけではなく、ヨーロッパで最もEV化に前のめりのノルウェーやイギリスも北海油田を持つ産油国です。
ついでに付け加えると大統領就任後に急速な「EVシフト・再エネシフト」を打ち出したバイデン政権のアメリカも産油国ですよね。
産油国でさえ必死にEVシフト・再エネシフトを推進する中で原油をほぼ100%輸入している日本が何も変わろうとしない状況が私には意味不明です。
いや、意味不明だと言っているだけだと「口だけなら何とでも言える」と攻撃されるので「じゃあ俺もビジネスとしてEVにコミットしてやる」と行動しようとしてるわけですが。
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