ベトナム・トルコなどに見られる新興国発のEVが世界の流れを変える【実は先進国より本気?】

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おはようございます、@kojisaitojpです。最近のニュースでよく見かけるネタなのですが、これに対して否定的な意見がヤフコメなどのネット上ではなぜか散見されます。

ガソリン車がメインの時代であれば日本車の独壇場であった新興国・発展途上国においてEV化の動きが立ち上がっており、これにより日本車の市場が脅かされているという記事です。

以前から私のブログでは「アフリカでEV化の動きが」という内容は取り上げていますが、今日はベトナムとトルコという例を取り上げて「これまではガソリン車の輸入国だった国でのEV化の兆し」について触れてみたいと思います。

「新興国=電力も不足してるのにEVなんて…」は過去の話

アフリカの風力発電の光景
「新興国や発展途上国でEV化が」という話をすると必ず出てくるのが「電気もロクにきてないような新興国・発展途上国でEVなんか普及するわけがない。新興国や発展途上国が求めてるのは安価なガソリン車だ」という批判です。

確かに現在は日本でも電力供給が逼迫して…という話題が出ますから「新興国や発展途上国はもっと大変なのでは?」と思いますよね。

太陽光発電を行うアフリカ

日本の自動車メーカーにとっての主要な輸出先(あるいはタイのように現地生産もしている国)なのは事実ですが、大事なことを忘れています。

  • 高騰する燃料代(ガソリン代)が国家財政を圧迫
  • 内燃機関(エンジン)を作れないから日本などからの輸入に依存

「高騰する燃料代(ガソリン代)が国家財政を圧迫」というのは日本のような化石燃料の輸入国ではどこでも起こっていることですが、実は新興国・発展途上国の方が更に悲惨です。

海外へ行ってガソリンスタンドへ行ったことがあるとお分かりかと思いますが、発展途上国でガソリンスタンドへ行くと安くてもせいぜい1リットル1ドル位です(もちろん産油国は除きます)。

日本と比較して国民の平均年収が何分の1、何十分の1の国でもガソリンが1リットル100円とかだとどの位負担になるか分かりますよね? 日本でも「ガソリン代ガー」と叫んでる人は多いですがそんなレベルの苦しみではありません。

この状況で「エネルギーを化石燃料から再エネに切り替えてはいかが?」と誘われると乗りたくなるのは当然です。

この記事で指摘されている「再エネ輸出」と現在中国が国策で推進しているEV化が合わさるとどうなるか想像できますか?

太陽光パネルや風力発電用の風車の生産で世界のシェアを握っている中国が新興国・発展途上国に輸出する、そして再エネで必要な電力を確保できたら今度は中国製のEVをガンガン輸出する、これで電力の問題も解決し、ガソリン代の高騰に悩む新興国・発展途上国の負担を軽減することにつながります。

いつか世界の覇権を握ってやろうとたくらむ中国ならいかにも考えそうなことですよね。

そしてこの流れに呼応するように「自国でEVを生産しよう」という流れが新興国・発展途上国から出てきています。内燃機関(エンジン)のように高度な技術が求められる時には考えられなかったことが起きつつあります。

以下の項ではその例としてベトナムとトルコを取り上げます。字数の都合でEVそのものの具体的な性能については軽く説明するにとどめますが。

ベトナム「ビンファスト」は北米市場にEVで殴り込み

ベトナム「ビンファスト」のEV
まずベトナムですが「ビンファスト」という古くからの財閥(元からガソリン車の生産はやってます)が突如EV化戦略を発表してきました。

『VF5』(セグメントA)、『VF6』(セグメントB)、『VF7』(セグメントC)、『VF8』(セグメントD)、『VF9』(セグメントE)と一気に5車種のEVを発表し、しかも2022年をもってビンファスト社自体が内燃機関車(ガソリン車・ディーゼル車)の生産をストップし全車EVに切り替えるという衝撃の発表が年明けになされました。

詳細なEVとしてのスペックは後日ビンファストを単体で取り上げる際に解説しますが、本気を感じるのはデザイン面でも同様で、イタリアのデザイン会社ピニンファリーナがデザインを担当しています。

車好きの方々であればお分かりでしょうが、フェラーリやアルファロメオ、マセラティなど世界の高級車のデザインも行っているあのピニンファリーナです。

そしてEVについてはアメリカとベトナムでの販売をスタートされることを発表しています。

またビンファストは充電サブスクリプションのプログラムも発表しており、サブスク形式で月額で定額を払えば充電が無制限に可能、しかもバッテリーも充電・放電容量が初期の70%以下になった場合に交換するというアフターサービスもつけて「ガソリン車の時よりも少ない出費で済むように配慮」しているようです。

またEV用のバッテリー生産についても積極的で、ビンファストは北部紅河デルタ地方ハイフォン市にある自社工場でバッテリーセル生産ライン2本を建設中です。

このプロジェクトには韓国や台湾のバッテリー製造メーカーが5社ほど関わっているようです。

そしてあまり知られてないことですが、実はベトナムは早い段階から再生可能エネルギーにも莫大な投資をしています。

2020年の再生可能エネルギー投資額が世界8位です。再エネの話になると日本では必ず出てくる「電力の安定ガー」などという懐疑論を無視して世界は動いています。

トルコでもEVメーカーが誕生

トルコTOGGの電動SUV
同じような動きはトルコでも見られており、トルコでは「TOGG」というスタートアップ企業が既にEVの工場も設立し生産体制を整えています。

実はToggという会社は「Turkish Automobile Joint Venture Group」の略で、エルドアン大統領が打ち出した「トルコ独自の自動車ブランドを立ち上げる」という構想に従い、2018年に合弁会社として設立されたトルコ政府がバックアップする新興のEVメーカーです。

良い意味でも悪い意味でも独裁者として有名なエルドアン大統領肝入りのプロジェクトですので当然トルコ政府が全力で支援することは誰もお分かりかと思います。

トルコ「TOGG」の電動セダン

先ほどのベトナム・ビンファスト同様にアメリカ・ラスベガスで開催された「CES 2022」にコンセプトカーとしてセダンタイプとSUVタイプのEVを発表しています。

発表によると中国の電気自動車(EV)用電池メーカー、ファラシス(孚能科技)と合弁でEV用充電池の新工場建設を建設し、自社のEV用のバッテリーも開発すると本気です。

以前取り上げたことがありますが私が「この会社は本気」と判断する材料として、

  • EV専用のプラットフォームで生産する
  • バッテリーは可能な限り自社開発

新興のEVメーカーの場合は最初からEV専用のプラットフォームになるので既存のメーカーのように「プラットフォームをガソリン車と共用」ということはあり得ませんが、「バッテリーの自社生産」にどの位こだわりを見せるのかは本気度を測る一つの指標になると思います。

トルコ「TOGG」のEVプラットフォーム

この点で見ればトルコの「TOGG」にしろベトナムの「ビンファスト」にしろ自社のプラットフォーム、自社のバッテリーでのEV製造をやろうとしてますのでまずは合格です。

実は最もEVに積極的なのは新興国?

アフリカで販売される中古のリーフ
私も以前からアフリカを例に「EVと再エネがセットで普及することで脱ガソリン車依存・脱化石燃料依存から解放される」ことについて触れてきました。

ですので過去に書いた内容と繰り返しになるので記事の紹介にとどめますがいくつか例を挙げます。

以前の記事で解説しましたが、エジプトの「El Nasr」社が中国のDonfeng(東風汽車集団)と合弁でエジプトでEVを生産する計画があります。

同じアフリカではナイジェリアでも「BrightCloud Automotive」社が自国でEVを製造する方向で動いている記事も過去に紹介したことがあります。

もちろん背後には中国メーカーが出資してたりと怪しげな影の存在は感じますが、「ガソリン代が高い」という悩みは日本のような先進国以上に深刻な事実が新興国をEVへと駆り立てているのは事実です。

例えば日本のスタートアップが「アフリカに太陽光パネルと中古の日産リーフを持参して参入」なんて動きがあってもいいと思うのですが、なぜかそういう動きが日本勢からは見られません。

わずかに見られるのがケニアでの「地熱発電」に日本の商社(豊田通商など)が絡んでいるというのは以前の記事でも解説しましたが、「再エネとEV」を結びつけてビジネスにしようという動きがありません。

「電気の足りない発展途上国なんて一生ガソリン車乗ってりゃいいんだよ」と新興国・発展途上国を見下した態度をとっていると日本より先にEV化が進み、エネルギーも再エネ中心になり日本より先に脱炭素を達成してしまうという未来が待っているかもしれません。

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